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2006年01月09日

全米映画批評家協会賞は撮影賞のみ受賞

 うーん、アン・リー監督の「ブロークバック・マウンテン」が最終優秀作品賞、外国語映画賞を「2046」が…という、制覇の夢はかないませんでしたか。

 第40回全米映画批評家協会賞にノミネートされていた「2046」、Best Cinematographyのみを獲得しました。昨年の「LOVERS」も撮影賞を受賞。…同等クラスですかそうですか…。
 でも、数年前までは映画批評家のごく一部と、カンフーアクションではないアジア映画オタク…好事家だけが熱狂していた王家衛作品なわけですから、メジャーにのし上がったと間違いなく言えるのでは。

 詳しい結果は英文のコチラ。この賞では、結果を発表するだけで、受賞パーティーは行われません。
 「カポーティー(原題)」、気になります。監督賞は、レスリー・チョン張國榮を「M.バタフライ」に起用しようとして北京まで口説きに来たあのデイビッド・クローネンバーグですか。
 おっ、(RU - Wong Kar-wai - 2046)というのは、次点という意味? そうなの?
満面の笑顔の王家衛(資料画像)
 昨年の監督賞は、チャン・イーモウ張藝謀だったのになあ。

 チャン・ツイィーも最優秀助演女優賞のRUです。
 ……助演だったの? 香港電影金像奨では、最優秀主演女優賞だったわよ?
>>蛇足なのだが、続きを読む
posted by nancix at 00:54 | Comment(2) | TrackBack(0) | 2046

2005年06月14日

フランス版特典ディスクに夢中ー!

 ……Blog更新、滞っています。
 申し訳ない。なにせ、新パソコンが戻って以来、借り物のフランス版「2046」特典ディスク(PAL方式、我が家ではパソコンでしか見られない)に夢中なのです。

 特典なのに、30分以上もありやがる!

 しかも、メニューが入り組んでいて、探しにくいったらありません。
 nancixは大学でドイツ語を第二外国語に選んだので(漢文はあっても中国語の学課がない大学だった、今はどうなったか知らんけど)、フランス語はさっぱりです。
 かろうじて英単語の乏しいボキャブラリーをフル稼働させて、
 (多分、こりゃ「カンヌの伝説」やな)
 (きっと、「数字で綴る2046のキーワード」っちゅーこっちゃな)と解釈しながら見てます。
 
 トニーはインタビュー(日本版メイキングとは異なる背景、髪型)で英語を話しているのですが、今のところ、話している内容の聞き取りよりもその表情に釘付けです。
 …あああ、疲れからか、左の鼻のそばに赤い吹き出物がぽっちりと出来てるし。
 トニーもアレルギー体質だからなあ…過労や気苦労、取り越し苦労が皮膚に出やすいのよ。

 しかし、カンヌでカリーナと並んで歩きながら、カメラに向かってVサインするトニーは可愛いです!!!!
 祝賀パーティーで、クエンティン・タランティーノに話しかけられ、マシンガントークの相手を務めるツーイーに比べ、トニーは何となく手持ちぶさた? カメラに向かって、また「イーーーッ」みたいなそーーーんな顔してみせちゃって、お茶目さーん。

 2002年から2004年にかけての、ティーザー(セールス用ダイジェストフィルム)の変遷も興味深いです。
 当初の執筆中の作家・周慕雲、ヒゲがない!
 未来フェイも長髪を背中でくくり、廃墟の屋上にたたずみ、何やらアンニュイ!

 詳細解説は、くまなく観終わるまで、しばし待て!


 ていうか、早く香港版を出そうよーー、ジェット・トーン…。
 「同じ2046の下にドジョウが…」なんて言わないからさー。

 もったいないよ、あの2046号室を訪れるコン・リーの蘇麗珍や、
 幻想の宮殿で階段を昇って、ついに巡り会い、しっかりと抱き合う周慕雲とアンドロイド・フェイが…。
 クールな美少年と化した、未来チャン・チェンの鋭くもセクシーな一瞥が……。
posted by nancix at 11:29 | Comment(5) | TrackBack(0) | 2046

2005年06月07日

日本語吹き替えで見た「ウォン・カーウァイ スペシャルコレクション」

ウォン・カーウァイ スペシャルコレクション / 『2046』<=>『in the Mood for Love ~花様年華』
 やっとこさ週末に、「ウォン・カーウァイ スペシャルコレクション / 『2046』<=>『in the Mood for Love ~花様年華』」を通しで見ることができましたーー。
 初めて、日本語吹き替え版で、両作品を見てみました。

 うぉぉおおおー、周慕雲が美声過ぎ!
 二枚目ヒーローです、これじゃ。
 じゃあトニーは二枚目ヒーローじゃないのか? ってことになりますが、正統なボイスレッスンを受けていないトニー・レオンの話し声は、美声というには微妙にこもっていて、ひずんでいます。
 そのひずみ具合が、絶妙な温かみと何ともいえない人間味を醸し出すのです。

 外見と声は、"東洋的クラーク・ゲーブル"。
 なのにランニングシャツにパンツ1枚で、安下宿でパテみたいなのをパンに塗ってたり。
 トニー・レオンがにじませる生活感と、美声がどうもちぐはぐなのです。
 ナレーションも、トニーが芝居し過ぎずに、抑えておさえて話していたんだなと言うこと、改めてよく解りました。
 声優さんって本来は舞台劇の劇団所属の人が多かったし、声優養成スクールの講師の皆さんも舞台劇出身者が多いんです。だから、声で"芝居"してしまいがち。
 アクション映画や、けれん味たっぷりに見得を切るカンフー映画ならそれでいいのですが、王家衛作品に芝居っ気は……実に、合わないのですよね。
 原音声のままのTakさんがとてもナチュラルに思えてくるから、不思議です。

 日本語吹き替えの台詞は、実に理解しやすいです。意訳もまじえ、字幕では出し切れない各人物の心理のひだを表現しています。ますます周慕雲のひょうひょうとした、つかみどころのない、時にはすっとぼけた、浮雲のようなムードが強められています。ほんっと、食えない奴だぞー(そこが好き)。
 これで、トニーの生声だったら…。
 音声のデジタル処理技術がさらに進化したら、いつかはトニーの声色のまま、正確な日本語の台詞で聞けるようになったりするのでしょうか?(もちろん声優さんの仕事の確保も大事だが)

 「花様年華」では「芝麻糊」の日本語訳が「ゴマの水飴煮」ではなく、「黒胡麻汁粉」になっていたので、ホッ。
 ラジオから二度流れてくる"お誕生日ソング"、チョウ・シュエン周[方旋]の名曲「花様的年華」は「かようねんか」と発音されていましたけどね。

 そして、特典です。
 「花様年華」のメイキングは、香港特別版(スペシャルバージョン)でも見たし…となめてかかってたら、とんでもなかった。
 香港版にない、クイーンズカフェ皇后飯店(「欲望の翼」ロケ現場として有名、ただし移転後の店舗)でのトニー&マギーの撮影現場や、「食をテーマにした男女の物語」という初期構想で演じるトニーとマギーの姿も見られるじゃないですか!
 ジェットトーン、何を出し惜しみしてたんですか!
 黒い帽子を目深にかぶった、憂いのマギー。エプロン姿もニヒルなヒゲのコンビニ店長(王家衛の話では、ワンタン職人)姿のトニー。
 これが第54回カンヌ映画祭で上映されたという、20分間の「花様年華2001」の一部ですね!
 ちょっと上海で撮影された新天葡萄酒CMに似た雰囲気になりそうだけど。
 いったい「花様年華2001」は、いつ日本人に見せてくれるのかねー…_| ̄|○
 もう編集してあるんだから、出し惜しみしないでよ、王家衛。

 あのー、それで「映画祭&授賞式」というから、カンヌ映画祭でのトニーの最優秀男優賞受賞の瞬間か!と思いきや、韓国・釜山での釜山国際映画祭・野外上映の模様がたったの1分、収録されていただけでした。場所と日時ぐらい、字幕入れればいいのにねえ。問い合わせてくだされば、お答えしたのに…。
 マギーの隣には、オリヴィエ・アサイヤス監督の姿が。
 あーあ、この頃はお二人、結婚してたのよねえ。
 才気煥発、闊達で伝統だの因習だのに縛られたくないマギーを優しくおおらかに包み込み、パートナーシップを築くことができるのは、香港人男性、いや華人男性じゃなくて、欧州男性だと信じ切っていたのにー。

 で…あら? 「授賞式」、は?
 カンヌ映画祭も、2000年10月30日の東京国際映画祭・香港映画祭セレモニーでの王家衛、トニマギの舞台挨拶の映像も、収録できなかったのかー…。

 「2046」特典では、上海での記者会見がかなり長く収録されていたので、大歓喜。
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posted by nancix at 17:31 | Comment(6) | TrackBack(1) | 2046

2005年03月12日

映画「愛の神、エロス」4月16日公開!

 来ましたきました! 映画監督の王家衛、スティーブン・ソダーバーグ、ミケランジェロ・アントニオーニの3話オムニバス映画「愛の神、エロス」(原題eros)が、4月16日に公開開始ですーーー!

若き日の周慕雲じゃなくて、悲痛なチャン・チェン張震

 って、シネスイッチ銀座、Bunkamuraル・シネマでのことなんだけどさ…。
 大阪公開はぁ?(涙)

 作品の基本データに目を通していて、音楽:カエターノ・ヴェローゾというところに思わず息を呑んだ。
 ええ、王家衛作品のファンなら、息を呑まずにはいられませんよ。
 ペドロ・アルモドヴァル監督の「トーク・トゥ・ハー」のファンでも、だけど。

 「ブエノスアイレス」で、イグアスの滝の壮観に重なり合う、「ククルクク・パロマ」の男の歌声。
 しんしんと心に染み入るような。
 あれこそは、ブラジルのマルチアーティスト・歌手・作家のカエターノ・ヴェローゾの歌声だったのだ。
ブエノスアイレス 摂氏零度 シャーリー・クァン關淑怡によるリリカルかつアンニュイな女声バージョンも「ブエノスアイレス 摂氏零度」で聞けるけど、やはりトニーとレスリーの愛憎渦巻く世界を表現するには、男の裏声による、あのやるせなさがぴったりだった。
シネマ・カエターノ
 なんと5月15日から25日にかけて、ヴェローゾ8年ぶりの来日公演決定ですよ! 大阪フェスティバルホールから東京国際フォーラムまで、全国を回っちゃいますよ。
 「ククルクク・パロマ」が生で聞けるんなら、泣きに行きたいけど、果たして歌ってくれるのかどうか? 最新アルバムからの曲だけかなあ?

 ソダーバーグやイタリア人のベテラン監督、アントニオーニとヴェローゾの接点は、あまりなさそう。
 となると、この「愛の神、エロス」の全篇を通して、王家衛がかなり総合プロデューサーとして腕をふるっているのかなあ、と類推してしまう。

 この作品公開を記念して、Bunkamuraル・シネマでウォン・カーウァイの特集上映が決定。
 「いますぐ抱きしめたい」「欲望の翼」「ブエノスアイレス」「天使の涙」「花様年華」「2046」
 が、4月2日(土)〜15日(金)の間に上映されるそうで、詳しいスケジュールはまだ未定。

 それよりさー、上映権が切れた「恋する惑星」に続いて、 「いますぐ抱きしめたい」「欲望の翼」が日本での権利上、最終上映になるっていうのよー(泣き崩れる)。
 S原さーーーん、「欲望の翼」の永久上映権とか、買えないのぉーーー? 「風とともに去りぬ」や「マイ・フェア・レディ」に匹敵する永遠の名作だと思うんですけどーーー!
 そのへんの権利関係、全然わからないんだけど、いつぞやジェットトーンが表明していた「全作品DVD-BOX」発売が日本でも実現できたとしても、もう記念の特集マラソン上映会なんてのは、できないわけね…?
 映画祭や文化祭やシンポジウムでの、営利を目的としない小規模上映も、無理なのかなあ…?
posted by nancix at 18:01 | Comment(4) | TrackBack(4) | 2046

2004年12月15日

とりあえず2046香港版「side disc」速報

 あああ…。
 _| ̄|○

 「驚喜」がなーーーーい!
 予告編やメイキングはもちろん、NG集まで隠してあった「無間道」や「地下鐡」DVDが、贅沢すぎたのか…。
 あ、ここからは「注文してあるから、まだ中身を知りたくないの」という人は読まないでくだされ。
 2枚組だけに収録のside discの内容は、大きく7つに分かれていました。

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posted by nancix at 00:47 | Comment(6) | TrackBack(1) | 2046

2004年12月14日

香港版DVD到着ーーー!

 待ちに待ってた「2046香港版DVD」が到着しました!
 ちなみに左は「王家衛電影BGMセレクト」CD。別に買ったものです。お間違いなく。
2046香港版DVD
 DVDはmain discとside discの2枚組、日本のDVDプレーヤーでも見られる(はず)リージョンALLです。
 広東語と国語(北京語)と英語字幕が選べます。
 音声も広東語と国語が入ってますが、当然チャン・ツイィーは国語オンリー、Takさんは日本語のままです。

 ケースとジャケットはほぼ同じデザイン。未来都市・ホンコンはともかく、そぞろ歩くトニーとツイィーが採用されるとは、ちょっと意外。日本版はこうはいかないでしょうね。
 中身はこんな感じ。
2046香港版DVD内部

 中にはブックレットか!と思いきや、DVD制作会社の美亜のカタログでした。何だぁ。
 そしてカードが5枚。変わった材質の紙です。ポストカードか?と思いきや、裏にも白黒で印刷があって、郵便には向きません。
 …香港では「ヨクアル話ですよー!」
2046香港版DVDカード
 年賀ハガキよりこんなに大きい。

 というわけで、これから鑑賞に入ります〜!

 電話も出ないしメールも書かないし掲示板チェックもしないし深夜の洗濯もしないぞ!
 
posted by nancix at 22:05 | Comment(3) | TrackBack(0) | 2046

2004年12月13日

第17回ヨーロピアン・フィルム・アワード非欧州作品賞に「2046」

Yahoo!ムービー ニュース: [バルセロナ 11日 ロイター] 欧州版アカデミー賞の第17回ヨーロピアン・フィルム・アワードの授賞式が、11日に当地で開催され(中略)非欧州作品賞には「2046」(ウォン・カーウァイ=王家衛=監督)が選ばれた。
 日本市場への宣伝そっちのけで、監督がヨーロッパであれこれと事前工作した成果が、実を結んだみたいですね。もともと出資は上海以外はフランス、イタリアの会社なんだしね。

 王家衛の作風自体、米国よりも日本よりも中華圏よりも、欧州好みだというのはわかりきっていたけど、何か悲しい。

 まあ、日本人はマネーと音楽家だけ供出してろってことかなあ。
 
 辛い食べ物や韓国人特有の「ワシの酒が飲めんのかい、ささぐぅっともう一杯」攻撃、厳寒のなかでの水中格闘シーン…過密スケジュールによって吹き出物をこさえながらも、韓国ロケを終えて無事に香港に戻れたトニーさん、それでも「香港映画の状況は来年もっと厳しくなるはず。韓国や他国との合作が欠かせない。今後、僕が韓国映画に出演する可能性はある」と見解を述べています。正論でしょう。

 しかし合作が増え、海外ロケを増やし現地スタッフを起用すればするほど、香港での人材育成が進まず業界は空洞化します。かつてはテレビ局から"洋行帰り"の有能な人材が映画界に導入され、香港ニューウエーブを形成しましたが、現在のTVBやATV、ケーブルテレビにそんな人材は転がっていそうにありません。またこうも香港POPがじり貧では、MTVで映像センスを磨いたユニークな才能の持ち主を発掘するのも難しそうです。香港監督協会や香港演芸学院が設置している演技コースやスタッフ育成コースも、軌道に乗って人材を輩出するまで、まだまだ時間がかかりそうです。てっとり早いのは海外から才能をかき集めてくること、とどうしてもなってしまいがちな香港…。
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posted by nancix at 10:38 | Comment(2) | TrackBack(2) | 2046

2004年12月07日

日本だけ公開…3部作最終章「ロード・〜」完全版

 SANSPO.COM:世界的人気映画シリーズ3部作の最終章「ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還」の完全版が、来年2月26日から日本だけで独占公開されることになった。このほど配給元の日本ヘラルド映画が発表した。

ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還 コレクターズ・エディション うわっうわうわうわーーーーーっ!
 「ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還」の完全版ーーーーーーーーーーーー!
 203分で公開してもまだ50分も未公開だったなんて!

 そうだよなあ、いちばん見たかった、哀しき片思いの男装の姫君エオウィンが、かなわぬ恋の痛手から立ち直って新しい恋に一歩踏み出す部分が、映画ではばっさりカットされてたし(T_T)。
 ホビットの村での魔法使いサルマン&蛇の舌の、トホホな姿も省略されてたし。

 しかしピーター・ジャクソン監督言うところの「みなさんの期待している“あのキャラクター”も出演しますよ」って、誰だれだれのこと?
 蛇の舌? サルマン? レゴラスってことはないよね?
 気になるーーーーー!
 でね、こんなことが可能なのなら「2046」だって「日本だけ公開…カンヌバージョンからカットしたシーンも含めて240分完全版公開!」なんての、できないかなあ〜〜。

 ……だめか。「LOTR」ほど大ヒットしたわけじゃなし。
 「LOTR 王の帰還」は日本興収102億円の堂々たるヒット作だもんなあ。
 「2046」の興収は……「王様のブランチ」によると、11月27日段階で7.5億円程度だったっていうもんなあ。細々と上映を続けてても、8億前後?

 あーでも見たい。特にこの↓シーンはどういうわけなのか知りたい。
 ぜひともスクリーンで見たい。
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posted by nancix at 02:55 | Comment(4) | TrackBack(3) | 2046

2004年12月04日

さらば日本公開版。イ尓好香港版。

 昨夜、梅田ブルク7で日本公開版「2046」に別れを告げてきました。
 昨日は大変業務がヒマで、午前中にほとんどの用事が済んじゃった。
 昼休みを利用し、あらかじめディスカウントショップで買っておいた割引券(1550円)を座席指定券に交換。真ん中の通路から3列後方の真ん中を指定。
 退社後、映画館に直行。うわーい「カンフーハッスル」のディスプレイに見とれた〜。
 でも「カンフーハッスル」予告編は見られなかった。ちぇっ。
 もーいいよ「Mr.インクレディブル」と「ニュースの天才」と「ナショナル・トレジャー」。飽きた。
 nancixがいま見たいのは「カンフーハッスル」「ターミナル」と、ジョニー・デップの「ネバーランド」だけ。

 観客はほぼ半数の座席が埋まる程度。やっぱり「オールド・ボーイ」よりもおとなしいタイプと、王家衛オタクっぽい男の一人客が多いなあ。まだパンフレット買って読んでる人がいた。今日が初見なのか、そうかあ。

 で、ついつい覚えこんだ広東語セリフになると、声出さずに一緒に口を動かしてしまう。
 ツイィーの北京語も、短いものだと同時発音できる。
 こうなってしまうと、見れば見るほど緻密に組み合わされ遊び心もあるモザイク文様なんだとつくづく感心するのだけど、初めて見た人に「わかりにくい」「ストーリーがない」と断じられるのもまた、致し方ない作品である。そう感じた彼らは(あ、あの監督の映画わかりにくい。見なくていい」と二度と見ないで避けてしまうだろう。
 それも縁なんだよね、周さん?
 そうとわかっていてもこういう組み立て方しか、彼らにはできない。もしも誰か…日本のテレビドラマヒットメーカーor辣腕カリスマプロデューサーなんかが「いや初見でもわかりやすいように、この時系列を整理して」「ここで回想に戻らないでいいから」と口出ししたら、どうなるんだろう?
 ……どうにもならないか(^_^;)

 照明がついて明るくなると、あ、あれ? 右の席は見たことある人…あーーー!
 先日、関東からのトニーファン仲間の歓迎会で同席した×ちゃんじゃないですか!
 見回すと、着席した時は全然気づかなかったけど(ひたすら生ビールとパンを消化してた)、あのときの仲間が数人! 全部で8人!!
 当然、地下の中華料理店に流れてにわかオフ会を…と思ったら、なんとその店が貸し切りされてた(泣)
 また6階まで上がって「華中華」で宴会。気分は周さんの新しい女を見たいと集まった悪友たち。
 蛇スープと羊の煮込み食って、野獣になるだー!(ないない、そんなメニュー)
 席の用意ができるまで少し待たされたときも、隙間から覗きながら「今頃カリーナの血の痕を拭き取っているのよ」などと食欲減退させる悪いジョークを。

 でもあんまり「2046」の話題は出なくて、関西人ならではの愉快な雑談に終始しました。生ビール2杯飲んじゃった(酒を飲めない人、本当にごめんなさい)のに、1人1500円ぐらいで済んじゃったよ。オドロキ。

 うん、一人で周さんの低い温かみの有るささやきや表情を陶然となって反すうするのも悪くないし、2人でとりとめもなくシーン解析やセリフ検討をするのも悪くない。
 でも、こうやってトニーファン仲間でわいわいも楽しいなあ。
 少なくとも、クリスマスイブにフェイを見守りつつ一人去る周さんみたいな寂寥感とは無縁の夜でした。
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posted by nancix at 13:23 | Comment(7) | TrackBack(1) | 2046

2004年12月03日

二人が貸し借りしたもの。

 噛み合わず、うまくいかない男女の会話を聞くのって、辛いものがあります。
 特にこの、欲情から始まった周慕雲と白玲のやりとりは、身を切られるように切ない。拒否反応が出るのも致し方ありません。
 二人の姿に、どうしても懐メロの「♪心も体も開きあい そこからはじまるものがある〜それを愛とは言わないけれど…」という一節を連想してしまうnancixです。
 だけど、ストーリーの表層を追わずに、あるキーワードに従って交わされる男女の会話を「粋」だなあと感心してしまえるゆとりがあれば、この映画はちっとも難しくなんかないのです。

 会話のキーワードとは「貸し借り」。

 中国語の「借」は、借りるだけでなく貸すときにも用います。出借とは貸し出すという意味です。

 男女の間で情愛の貸し借りは、成り立つのでしょうか?

 キリスト教圏なら「愛の賃借関係なんてとんでもない、愛とは無償で与えるもの」なのでしょうが、そこは金銭、ひいては貸し借りにシビアな中華圏です。

 周慕雲は過去を背負い、もう無邪気に他者へ自分の何かを分け与えることができない存在と化しています。
 だけど彼にはまだ、茫洋とした無期限の時間が広がっていて、そのなかを目的もなく漂っていくしかありません。
 何が幸福なのか、何を生き甲斐とするのか、生きる目的は何なのか。
 彼自身、何度も自問自答しているのでしょうが、見えてはいない。とはいえ自死を選ぶほど絶望しきってもいない。
 まだ若い白玲は、夢を両手に街=香港に出てきて、何かをつかもうと女を武器に勝負をかけている真っ最中です。情欲も充たしたいし贅沢もしたいしちやほやもされたい、でも本当は一人の男にとことん愛されたくて、乾きを潤したいのです。「欲望の翼」のミミ/ルルとほぼ同じ状態です。
 そういうことをわきまえて周慕雲と白玲の会話をおさらいすると、おそらくはちゃんと見えてくるものがあるでしょう。
 あーしかし、周さんの広東語口語を聞き取れるようになりたいなあ。そうしたらまた言葉のニュアンスが違ってくるかもしれません。あしからず。
(クリスマスイブに初めて2人で飲みに行き、街路を歩きながら)
周:我這個人什麼都没有、有的是時間。我總得找點事情打發時間。
周:俺という人間は、何も持っちゃいない。あるのは時間だけさ。俺も何かを探し出して暇つぶししないわけにはいかないんでね。
白:拿人家填空イ尓呀?
白:他人を使ってあなたの虚しさを埋めているの?
 中国語字幕では「空」という文字が。発音がoの上に/のあるKongなら「隙間、空いているところ」の意味があり、oの上に-があるKongなら「空っぽ、虚しい」という意味がある。

周:也不能這麼説。有時候、我也把自己借給人家用一下。
周:そうとばかりは言えないさ。時には俺も、誰かのために自分を貸して少しばかり用立てることもある。
白:那今天晩上…算イ尓借給我、還是我借給イ尓?
白:じゃあ今夜は、あなたが私に貸してくれるの? それとも私があなたに貸してあげるの?
周:随便好了。上半夜、當イ尓借給我、下半夜、就當我回借給イ尓好了。
周:お好きなように。夜の前半は君に俺を貸し、後半は俺が君に返してもらうというのがいいんじゃないか?
白:少來這一套!
白:そんなの足りないわよ!
 少來這一套!がうまく訳せないよ〜。そんなの私が損するじゃない!みたいなニュアンスだと思うんだけど。

(マカオ帰りの周を白玲が誘惑して一戦交え、ベッドに横たわって戯れる下着姿の2人。周慕雲だけが起き上がり煙草を吸い出す)
周:我以為只有我才會獣性大發、誰知イ尓發作起來比我還凶。
  付銭!(広東語ではペイ錢!)
周:俺は自分だけが獣性を大いに発揮するんだと考えていたよ。誰がおまえの発作の方が凶悪だと知っていたかな。
 金払え!
白:誰叫イ尓這麼長時間不來找我?
白:誰がこんなに長い間、あなたに私を誘わせなかったのかしら?
周:我忙[ロ麻]
周:俺は忙しいのさ
白:(背中をぶって)イ尓少騙人! 根本不是這麼簡単!
白:嘘おっしゃい! そんな簡単なことじゃないでしょ
周:誰騙イ尓!
周:誰がおまえを騙すもんか
白:那天晩上的那女人是誰呀?
白:じゃあ、あの夜のあの女は誰なのさ?
周:那個女人?
周:あの女?
白:還装糊塗? 我親眼看見有個女人從イ尓房里出去! [女也]究竟是誰呀?
白:まだしらばくれる気?
  私はこの目で見たわよ、あんたの部屋から女が出てくるのを! 彼女はいったい誰なのさ?
周:朋友。
周:友だち。
白:朋友?(飛び起きる) 那[女也]來イ尓房間算怎麼回事?
白:友だちィ? じゃあ彼女があんたの部屋に来たのはどういうことなの?
周:(彼女を見つめ返して)イ尓別管我的事好不好? イ尓先回去、我還有很多事要忙。
周:おまえな、俺の事は放っといてくれないか? もう戻れよ、俺はまだいろいろしなきゃいけなくて、忙しいんだよ。
 周さん、ニヤニヤしてシラケ気分をごまかしながら離れて行きます。
白:(周の後姿に向かって)我不! 今天晩上我要睡在這兒! 
白:いやよ! 今夜はここで寝るの!
周:在這里過夜可不便宜。
周:ここで夜を明かすのは高くつくぜ。
白:没関係! イ尓要多少、我給イ尓多少。我要把イ尓包下來、我要イ尓天天陪著我!
白:関係ないわよ、あんたが要るだけ払うから。(しなだれかかって)私、あんたを貸し切りにしたいな。毎日私の傍にいてほしいの!
 ここでいつも(あーあーあー、甘えるのはや〜め〜と〜け〜相手が悪すぎる)とうめきたくなるnancixです。
 多少、は多少銭?(いくら?)の多少、なのかなあ。
 広東語では幾多銭?

周:短短無所謂、長包就免了。
周:短期ならかまわないが、長期貸し切りはごめんだな。
 「包」には、(妾を)囲うという意味もあります。他の者には手を出させない、包んで囲い込んでしまうということでしょうかね。広東語では「妾を囲う」のは「包二[女乃](ぱおいーない)」だもんね。通常は女が男を囲うなんて、言わないはずなんだけど。
 フーゾク嬢・白玲の勝ち気さ、じゃじゃ馬ぶりがうかがい知れます。手強いぞ、周さん! 男のなけなしの自由と誇りを守り抜け、周さん!
白:為什麼?
白:何でよ?
周:(とぼけた顔で)我不喜歓。
周:俺が好きじゃないんで。
白:那我會不會是例外?
白:じゃあ私を例外にしてくれない?
周:不會
周:ダメ。
 してやったりと笑う周さん。可愛い女の子を泣かせたがるイジメッ子か君は。
白:イ尓對所有女人都一様是[ロ巴]?
白:あんた、自分の女にはみんなにそうなの?
周:(飲み物を飲み干し)倒有例外的。
周:まあ例外はあるさ。
白:誰?
白:誰?
周:我媽!
周:俺のおふくろさ。
白:イ尓正經一點好不好?
白:少しはマジメにしてくれない?
周:(ニヤニヤして応えない)
白:我是不介意イ尓有其它女人。可是我不能跟[女也]們一様。不管イ尓喜不喜歓我、反正我是喜歓イ尓的!
白:あんたに他の女がいても私は気にしないわ。でも私は、彼女たちと同じようにはなれないんだから。あんたが私を愛してるかどうか知らないけど、私はあんたが好きなのよ!
 
 うつむいて煙草を吸うだけの周慕雲。
白:我後來再也没帯、其它男人回來過。希望イ尓以後也別帯其它女人回來。能答応我[ロ馬]?
白:私は今後、他の男を連れ帰らないわ。あんたもこれからは、他の女を連れ帰らないでほしいの! 承知してくれる?
周:不能。(広東語口語では唔得!)
周:できないな。
白:好呀。我們到此為止。我不會纏著イ尓。イ尓以後也別來找我!
白:(小さくうなずき)いいわ。私たちこれまでね。あんたにつきまとえないわ。あんたも今後は私を誘わないで!
 白玲、いったん出て行き、また戻る。
白:這十塊銭イ尓拿著! 今天晩上我嫖イ尓!
白:この10ドルはあんたにやるわ、今夜は私があんたを買ったのよ!
 [嫖]は女郎買いをすること、と辞書には書いてあります。これも当時のまっとうな正業についている女なら、口にする言葉じゃないはず…。
 出て行きかけた白玲を、周さん腕をつかんで引っ張り戻します。おっ、とうとう堪忍袋の緒が切れたか?
周:謝[ロ拉]、以來有什麼需要…随時來找我。我照様収イ尓十塊。
周:ありがとう、これからは何か必要があれば…いつでも俺を誘ってくれ。10ドルだけでやってやるよ。
 あの白玲の悔し紛れの台詞を繰り返す周さん。ほんっとーにヒトが悪いです。でも女が男のなけなしのプライドを傷つけようとすると、こういう報いがあるわけなんですね…気を付けよう。 

 中国語の「借」には、利用する、頼るという意味もあります。
 頼りたい女と、虚無と孤独を埋めるために利用したいだけの男。

 ここからは(日本版DVDが出てから見ようっと)と予定されている方は、読まない方がいいネタばれ?です。でも見事にオチがついてます。(オチというか、終止符というか…)>>続きを読む
posted by nancix at 03:10 | Comment(6) | TrackBack(0) | 2046

2004年12月02日

トニーの広東語台詞がいいんだよぉ

 昼休みに某企業の人の少ないカフェテリアに姿をくらませ、15分で飯食って後はノートPCで中国版「2046」DVDを再生し字幕を書き取り訳していたら、今日は書店でこんな語学学習書籍を見つけてしまった。

 「別冊聴く中国語 傑作映画セリフ選 心を打つ中国語」(日中通信社)

 11月25日発売で、もう「2046」の周慕雲と白玲小姐のやりとりが収録されてる!!! 仕事速い! 上海電影集団公司やジェットトーン香港澤東影業公司から正式に企画協力を受けての出版物です。

 ……_| ̄|○ワタシのここ数日の肩凝りが意味を失い……。

 このムックはCD付きです。さっそく聴いてみましょう。「恋する惑星」「少林サッカー」「花様年華」「さらば、わが愛〜覇王別姫」「LOVERS」などもあります。

 ……ん? 「恋する惑星」「少林サッカー」「花様年華」?
 いずれもトニーorシンチーは、バリバリ広東語でしゃべってたよね?

 聴いてみました。
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posted by nancix at 23:55 | Comment(1) | TrackBack(0) | 2046

2004年11月30日

「2046」地名の謎。

 もうそろそろ上映も終わりだから、ある程度ネタばらししてもいっかー。
 王家衛の再編集のせいで、もうめちゃくちゃ発注から納期までが短かったと思われる「2046」日本語字幕。
とくにしっちゃかめっちゃかになってしまっていたのが、例の2人のやりとりでした。

王靖[雨/文]:イ尓跟司機説這里、是加連威老道220號。
(あなたは運転手にこう言うのよ、グランビルロード220号って)

日本人商社マン:加連威…ガーリンワイロード?

王靖[雨/文]:由堪富利士道進去、接近金巴利道!
(ハンフレイス・アベニューから入れば、キンバリーロードに近いわ)

日本人商社マン:いやいやいや、もう一回、もう一回お願いします!

王靖[雨/文]:但イ尓千萬別轉進梳厘巴利道!
(だけど決してソールズベリー・ロードに曲がっちゃダメよ!)

日本人商社マン:もっとゆっくり! ゆっくり話してもらっていいすか?

王靖[雨/文]:還是給イ尓畫個圖ロ巴!
(じゃあ図に描いてあげる!)

日本人商社マン:(胸ポケットのペンを取ろうとした王靖[雨/文]をさえぎり)いやいやいや、これ僕のですから!

王靖[雨/文]:我再講一次、由堪富利士道轉進去、很接近金巴利道!
(もう一度言うわ、ハンフレイス・アベニューから曲がって入るの、キンバリーロードにとても近いから!)
但イ尓千萬別去了、梳厘巴利道ロ阿!
(でもあなたは決してソールズベリー・ロードに行っちゃダメなの!)
明唔明呀? 還是給イ尓畫個圖ロ巴!
(わかった? やっぱり図に描いてあげるわ!)

日本人商社マン:ガ、ガーリンワイ…?

王靖[雨/文]:由堪富利士道轉進去、千萬別去梳厘巴利道!
(ハンフレイス・アベニューから曲がって入るの、決してソールズベリー・ロードに行っちゃダメ!)
(彼は苦笑して去ってしまう)

王靖[雨/文]:千萬別去梳厘巴利道ロ阿!
(決してソールズベリー・ロードに行っちゃダメよ!)

 王靖[雨/文]ことウォン小姐(ホテル管理人の長女)が口にする固有名詞、もはや呪文のように耳にこびりついています。
 ハムフレイシって何だか、字幕訳者は分かってたかな? 手元に尖沙咀の地図があれば、一発で上記のように訳せたはずなのにー。
 書き言葉で書くと、こうなります。言文一致ではない広東語なので、口語=話し言葉では「決して」を意味する「千萬」が「千祈(チンケイ)」、「行くな」の「別去」が「唔好去(ンーホウホイ)」になってたりしますが。

 聖地巡礼=香港旅行に何度も行っている身には、彼女が何度も「ソールズベリー・ロード/Salisbury road」と口にしているのが聞き取れます。1960年代から現在までに香港が地名変更していなければ、これは九龍半島の尖沙咀東部から、香港文化中心とペニンシュラホテルの間を抜けてスターフェリー乗り場まで続く海岸沿いの大通りだと見当がつきます。今では星光大道=スターの手形が路面に埋め込まれた散策道に並行して続く、広い車道です。下の画像をクリックすると、大きな地図が見られます。いちばん下に、左右に続く梳厘巴利道がありますよね?
「香港街道地方指南」より尖沙咀その1
 日本人商社マンくんは湾仔の東方酒店(ホテル)から、海を越えて九龍半島へ行こうとしていたのですね。おそらくはスターフェリーを降りてから、目的地のグランビルロード220号までタクシーで近道してどう行くかを、フェイは教えようとしたのでしょう。

 するとハムフレイシーとはどこか?  個人旅行客の必需品、「香港街道地方指南」によると、尖沙咀きっての目抜き通りネイザン・ロードから東のカーナボン・ロードにつながる「堪富利士道(ハムフレイシートン)/Humphreys Avenue」という路地があります。
 …ロードじゃないやん。
 でもこれしか、該当する道路は尖沙咀にはありません。
堪富利士道がわかりますか?
 下のほうの堪富利士道がわかりますか? 平行した道を2本挟むけど、そのまま進めば確かにキンバリー・ロード金巴利道に近いです。
 キンバリー・ロードといえば、貧乏性個人客には心強いキンバリー・ホテルなど中堅よりちょっと安いホテルのあるあたり。よく利用したし、待ち合わせもしました。懐かしいなあ。
 そういえば、王家衛は香港に親と一緒に来たばかりの一時期、九龍半島の重慶大廈近くに住んでいたのではなかったっけ? 彼の当時の住所がこの堪富利士道あたりだったとしても、驚きませんね。
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posted by nancix at 23:30 | Comment(11) | TrackBack(2) | 2046

2004年11月22日

モノ笑いの種を提供してしまった…

 関東からトニー・レオンファンの"友来たる"。また楽しからずや。10人以上集まって、中華料理居酒屋で歓迎会があった。nancixにまで誕生祝いのフラワーアレンジメントをもらっちゃって、ひゃー恐縮至極にございまする。
 そして席上で、噂のトンデモ雑誌「この映画がすごい!」を見せてもらった。

 ……………_| ̄|○。

 その場ではひっくり返って笑い飛ばしたけど、一晩たっても腹ん中煮えくりかえっておりまする。

 誰よ、ファンサイトのバイオグラフィーを勝手に無断でパクってしかも歪曲しまくりのコラム形式に仕立てた恥知らずなライターは?

 「考え過ぎじゃないのぉ? 中国語の新聞や雑誌を検索すればトニーのバイオグラフィーなんていくらでも読めるんじゃ」って、香港や台湾さまざまな年代に及ぶトニー・レオンのいろんな発言やインタビューや日本語書籍・新聞・雑誌の記事をパッチワークしてまとめたバイオグラフィーは、まだ世界のどこでも書籍化されてないし系統だてて紹介されてもいない。
 え? キネマ旬報社の「フェイス・トニー・レオン」? あの本は不肖、ワタクシがバイオグラフィー部分を書かせていただきました…だから断言できるのだ。

 面白おかしく仕立てたなんてもんじゃない、全然笑えない。ユーモアやウィットのセンスなんかまるきりない。
 さぞかし書き手は「君は香港映画については物知りだねえ」とデスクにお誉めに預かって、めでたく原稿料もらったことでしょうねえ…って、それでいいと思ってんのかーーー!
 ネタ提供代として3分の2以上よこしなさい。いやいい、てめえと宝島社の金なんか反吐が出るほど汚れてる。くれると言ったって誰が受け取るものか。

 「アンディ・ラウと目も合わせないほど不仲」だとぉ? 互いの腰に、肩に回された手は見えないのか。上目遣いにはにかみ笑顔でアンディを見つめるトニーの生写真なら、いくらでも提供してやるのに。「えーと、何年めの共演だっけ?」と二人で顔付き合わせて指折り数える、まったく同じポーズを無意識にとってしまうきゃわいーい二人の動画だって!
アンディくんとトニーちゃん
 多分北京で。「何年ぶりだっけ?」「えっとぉ…」
台湾インタビュー番組出演の二人


 「レコーディングも別々」だとぉ? 香港版DVDの特典映像を見てから書け。録音スタジオで、向かい合って見つめ合って、アンディ兄さんの教育的指導を受けながら真剣に声を合わせるトニーの表情を見てないのか、え? 二人で夜を明かした仲だぞぉおおおお!
12月4日に香港の東方日報に載ったレコーディング光景

 ファッションセンスについては………いやでも、あんな赤い柄シャツを着ていたことなんかめったにないし、いつもは白黒か青ジャージかピンクのセーター! いったいトニーのどこをいつどう見て書いたんだよっっ! 香港ポリスさん並みに毎日毎晩芸能ニュースをチェックしての結論なら拝聴するけど、特集ページを任されたからってちょろっと中華ネットの画像見て書いただけだろっっ!

 「CREA」の2046特集噂の真相ページにだっていっぱい突っ込みたいところがあったけど、どうせ”姑の嫁いびり”扱いされるのわかってたから黙殺した。わかってんだよ長年「あーあ、香港映画オタクってウザい、怖い」と苦笑いされ敬遠されてきたからね。でも言わなければどんどん既成事実にされ「CREA」が映画特集をするたびに香港マスコミがねつ造したゴシップがそのまま蒸し返される。それを孫引きする連中も多い。
 共演女優との会食だって、10人近くの他のスタッフと一緒に出かけたのに、さも二人っきりであーんなことやこーんなことをしたふしだらな男のように書かれてしまう。

 本当にウンザリ。
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posted by nancix at 17:19 | Comment(17) | TrackBack(0) | 2046

2004年11月15日

大陸豪華版DVDをGET…

 香港版DVDが発売されるクリスマス・イブまで待てずに、買ってしまいました…。
 大陸豪華版DVD。もちろん広州で、ジェットトーンとの契約に基づいて広東飛仕影音有限公司から発売された、正規版です。
 DVD-9だけど。
 店のお兄ちゃんは「PAL方式でっせ」と言ってたけど、パッケージを見るとNTSCです。
 …中国版の場合、パッケージはまったくあてにならないんですけどね…。

 記念にテンプレートも変更。このままクリスマスに突入する勢い。

 だって、だって……この大陸版、Takさんの日本語以外は北京語吹き替えで声優がナレーションしているため、トニーのあの”声の魅力”が半減、ベッドシーンや愛撫シーンはあっさりカット、おまけに広州のDVD販売元のロゴがバンバン入ってシラけること極まりないのだけど、付録のメイキングがメイキングがーーーっ
 これは買いですよ!
 ていうか日本版DVDには絶対カットなし編集なし日本語字幕付けるだけで付録につけてくれい! 頼む!
 「HERO英雄」のメイキングみたいに短縮&別売りしないでほしい! 

 最初は(何だ、梅田ブルク7のロビーの液晶テレビで放送されてたインタビューと同じかぁ)と油断しながら見ていたのですが。日本国内では見られない金毛Takさんのインタビューも、トニー、フェイ、まだ髪の多いチャン・チェン、ワシャワシャパーマあてて毛の多いツイィーに並んで入っていた! もちろん日本語。

 それだけでなく、あのフジテレビ特番でさえ流さなかった特出し映像も出てきた!
 nancixを鼻血ブーで悶絶させた、王家衛とトニーの……については、「2046」上映終了後にご紹介するです。まだもったいないもん。
 トニーとマギーのね、タクシーシーンが、カラー映像で出てきたですよ!
 これについては、出し惜しみしない!
 
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posted by nancix at 04:26 | Comment(12) | TrackBack(0) | 2046

2004年11月13日

女性の役柄に従って音楽の変奏が進行した

※今回はかなりネタばれがあり、映画的知識が要求される話になっています。「2046」未見の方は飛ばしても可。とりあえず、サントラ盤をお持ちの方は流しっぱなしで。
「王家衛談文學與美学」の試訳2:インタビュー◎藍祖蔚
2046 オリジナル・サウンドトラック

Q(藍祖蔚):あなたのどの映画にも、大量の愛の睦言が使われており、哲学的思想に富んだ「王記」的な味わいを作り出していますね。どうしてですか?

A(王家衛):ラブストーリー、それは映画の最も表面的な層なんだ。誰もがそれをとても容易に受け入れられるし理解できる。ただしそれはただ男女の情愛にだけ適用されるのではない。人と人の間の感情でもあるんだ。
 観客が私の映画を見るとき、通常は私の作品と他人の作品とを比べるのではなく、私の過去作品と比較するものだ。あるときは以前の作品のほうがよかったと言い、あるときは今回の作品がよかったという。この種の情況は周慕雲のおかれた情況と同じようなものだ。彼の印象と回想のなかでは、以前の愛はより美しくよりよい思い出になる。いったん現在の愛が過去のものになれば、彼はまた多くの主観的な意見を付け加え、過去のものとして感嘆するだろう。どの映画監督も、自分の過去作品を忘れがたいものだ。彼はいかにして自分の現在の情況に対峙すべきだろう?

依随女性角色進行音楽変奏
女性の役柄に従って音楽の変奏が進行した


Q:あなたはご自分の過去の映画と音楽も忘れがたいようですね。「2046」中の音楽手法は明らかにリフレインしてはまたリフレインしている。どの部分の音楽も、少し味わうだけでも、奏でられるや否や美しく浸透していくようであり、誘惑するようでもある。音楽が再び出現するのを待って、観客は熟知し、適応し、自然にあなたの音楽美学によって洗脳され喜ぶようになります。あなたはそのように仕組んだのですか?

A:実は私はDJのようなものなんだ。他の人が音楽DJなら、私は映画のDJだ。しかし目的は同じようなものだ。私はただ(自分の)好きな音楽を、工夫を凝らして映画の中に出現させるんだ。人は重複だと感じるかもしれないが、私は重複に何の関係も感じない。私は当然、自分があるとき音楽処理に飽き飽きしたことを感じたよ。それは一つの危険な傾向だ、私は努力してそれを避けなければならない。
 「2046」のカンヌバージョンの音楽処理は、編集が全て終わらないうちに途中からやり始めた。音楽の長さを正確に判断することがひどく難しかった。だからある旋律とリズムはとても退屈なものになり、私は非常に不満だった。そこで最後の再編集と新たなミキシングのときに、私は音声部分を最初からやり直すと言い張ったんだ。私の過去の8作のなかで「2046」の音声と音楽は最も難易度が高かった。私は最大限の気力を振り絞ったものだ。
 私の以前の音楽処理は一定の基本規律に従っていた。たとえば「欲望の翼」の時は、音楽はとても少なく、とても重要なときに音楽を入れて平常は空白(音声のみ)にしていた。しかし「恋する惑星」では70%が音楽入りで、最も重要な時にはかえって音楽を無くしたんだ。「花様年華」のときには梅林茂とナット・キング・コール(とマイケル・ガラッソ)のテーマ音楽を調和させた。「2046」に至って、私はそれらの規律を放り出したんだ。ある音楽は表面上は、ある役柄の専属のようだ。ただし他の役柄の身の上にも印すことができた。たとえばカリーナ・ラウ劉嘉玲が登場する時に、私は「パーフィディア(不誠実、不実)」の曲を用いた。なぜならそれは元々「欲望の翼」で使用した曲だからだ。しかしこの曲は、私にフェイ・ウォンが登場するシーンへの道もつけたんだ。なぜだろう? この2つの役柄は基本的に同じ系統の女性だからだ。彼女たちは愛情に対する信念をとても頑固に守り、軽々しくあきらめることがないからだ。だから私は音楽を用いて彼女たちをまとめたのだ。

Q:あなたは「花様年華」ではただあの時代を「見る」ことを要求するだけではなく、同時に時代を「聞く」ことも意図しましたね。特殊な年代の時間基準(time reference)を表現し、映画のリズムを組み合わせた。その理念は「2046」のなかでさらに一歩進めて貫徹されたようです。ナット・キング・コールの「The Christmas Song」とコニー・フランシスの「シボネー」で60年代の時代のムードをかもし出し、また人物の感情を表現しました。しかし「花様年華」では日本の作曲家の梅林茂が、過去に鈴木清順監督の「夢二」のために創造したテーマ音楽を採用した。「2046」ではさらに一歩進めて、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督とクシシュトフ・キェシロフスキ監督の映画音楽も併用しました。なぜですか?

A:私は映画を見るのがとても好きだ。映画音楽にもとても興味がある。ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督とクシシュトフ・キェシロフスキ監督の映画にも、私は深い感動を受けた。「2046」のなかで彼らの音楽を採用したのは、一方ではそれらの曲が私の映画に適応すると感じたからだし、私はこのスタイルで大先輩に向けて敬意を表したのだ。しかし更に重要なのは、彼らもラブストーリー映画の名手であるということだ。誰でも新しい角度で人間の情愛を探る時に、更に新たに彼らの音楽を採用することで私の映画にさらなる化学的反応を生み出せると感じないだろうか? 私は(それを)期待したのだ。(訳註:「Decision, from ‘A Short Film About Killing’」はキェシロフスキ監督の「「殺人に関する短いフィルム」」(87)のBGM、「Dark Chariot」「Sysiphos At Work」のペール・ラーベンはファスビンダー監督の25作品の映画音楽を作曲した)

Q:「花様年華」では梅林茂のワルツとタンゴの旋律が男女の情愛の世界を象徴する力を持っていました。梅林茂が今回、あなたのためにまた「2046」のテーマ音楽を創作するときに、あなたはどんな新しい要求を提出したのですか? 音楽で「花様年華」との明確な区別をつけましたか?

A:私が再び梅林茂を作曲に起用した主要な原因は、男性主人公のトニー・レオンの扮する周慕雲の役柄が「花様年華」から生み出されたものだからだ。互いに関連性があるから、私は彼にメインテーマを任せたのだ。私はただ彼に、もしも「花様年華」の音楽が小規模の室内楽曲(Chamber Music)だとしたら、この「2046」の音楽はさらに壮大な構成であるべきだと簡単に告げただけだ。
 基本上それは一つの旅程を話すことであるべきだ。しかし順不同のドラマの章と段落には、それぞれに変奏がある。たとえば私は3人のヒロイン、コン・リー鞏俐、チャン・ツイィー章子怡とフェイ・ウォン王菲のために、異なった曲想の音楽を書いてくれと依頼した。私に言わせると、3人の女性は過去、現在、未来を代表している。ただ私は梅林茂にダンス曲の感覚で強烈なリズムのある曲を書いてほしいと望んだんだ。彼はとても多くのバージョンを書いてきたが、その中のタンゴとチャチャのバージョンを私は使わなかった。それらは「花様年華」ととても感覚が似ていて、私がすでに使ったリズムと重複していたからだ。私が採用したのはルンバとポロネーズの旋律だ。
 しかし梅林茂が最後に渡してくれた作品は、誰か一人の役柄に限定したものではなかった。私は彼がまとめた一つの主題を、イントロは荘厳で、とてもOver the top(頂点を超えて、もしくは度を過ぎて?)で、とてもオペラ的な感覚だと感じたんだ。それからルンバに変奏されたその曲は一種の酔いどれ、まるで酒を飲んで酔ったような感じだった。最後はポロネーズのダンスメロディで、始まりはとても軽快で、しかしだんだんととてもセンチメンタルになり、とてもSad(哀しげ)な感じがその中に現れるんだ。

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posted by nancix at 23:51 | Comment(1) | TrackBack(1) | 2046

2004年11月12日

狭苦しい空間に存在する寂しさと距離感

「王家衛談文學與美学」の試訳:インタビュー◎藍祖蔚
 これはあくまで試訳です、正確ではないかも(いやきっと不正確)

 存在於窄隘空間的寂寞與疏離
 狭苦しい空間に存在する寂しさと距離感


Q(藍祖蔚):あなたは「花様年華」でとても狭く小さな空間の人間関係を描きました。しかし「2046」の空間処理にはとても大きな変化が起こっています。映画は広いスクリーンとなり、空間は明らかに大きさを増し、屋上の看板、共同使用の電話機カウンター、2046ミステリートレインの長い通路だけでなくプライベートな秘密を呟く場所もです。登場人物は手前にある壁にさえぎられ、隅に追いやられています。映画空間は明らかに大きくなったのに、圧迫感はさらに増加しています。あなたの美学ではどう(空間処理を)考慮したのですか?

A(王家衛):私たちはとても込み合った空間を用いて狭苦しい感覚を表現することも、広大な空間を用いてとても狭い感じを物語ることもできる。その種の空間によって、さらに強烈に圧迫感を感じ取ることができるだろう。そのとき人と人の距離は広がり、個人の寂しさや感覚がさらに鮮明になるのだ
 私は実は毎回、撮影のたびにあることを考えるんだ。映画のなかの主役を人物ではなく、空間にできないか?と幻想する。もしも私たちが空間を擬人化することができたなら、スクリーン上の屋上は一人の人間として想像できる。彼はWitness(目撃者)で、屋上で発生する大小の事柄を見聞きすることができるんだ。1台のカメラを屋上に備え付ければ、それが人生を見聞きし、人生を記録できる。
 「2046」の中でも、私は新たなビジュアル効果を試した。以前の映画は1.66(縦横比1:1.16が正しい)のスタンダードサイズだった。なぜなら香港の空間はこんなに狭く小さく、ラインも直線的で、スタンダードサイズがそのようなシーンの表現にふさわしかったのだ。今回はシネマスコープサイズ(1:2.35、通称シネスコ)を用いて画面を横長に変えた。すると使える画面空間は突然大きくなった。しかし実際の空間はまだ同じように狭く、そのような技術要求はビジュアル表現上で非常に突出していた。しかし撮影と現場録音は難度の高い試練だったよ。なぜならスタッフが身を隠す場所がないんだから。だから今回の撮影カメラはとても固定されており、大きくカメラを動かすことはしなかった。

Q:あなたの以前の男女の情愛はセット内の小さな部屋の中での愛欲物語でしたが、「2046」では誰もが屋上に上がっていますね。閉じられた空間から開放的な風景へと上り、屋上の空間はロケによる表現となりました。まるで一つの視覚による新世界を見せるようでした。あなたの構想はどんなものだったのですか?

A:私にはそんなはっきりした考えはなかった。とても自然な反応だったんだ。撮影現場はもともとある監獄であり、60年代香港の暴動時期に政治犯を収容した場所で、今でもそのまま残されていた。撮影時、私はその監獄の場景をホテルに改装したんだ。
 私について言えば、屋上は非常に古典的な場所だ。子供の頃、私たちはいつも屋上で遊び、屋上でいろんなことを話し、あるいは逃げ出した。しかし現在では屋上の空間と概念はもう消失してしまったようだ。
 「花様年華」のトニー・レオンには家があり、一切の活動は家の中の範疇で進行した。「2046」では彼の活動はホテル内が中心だ。ホテルは公衆の場であり、個人のプライベートな空間を探し出すのは難しい。屋上なら最も都合がいい、屋上なら彼らのプライベート・スペースにできるんだ。
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posted by nancix at 02:39 | Comment(2) | TrackBack(1) | 2046

2004年11月11日

大阪3回目の「2046」鑑賞

 昨夜は、完成披露試写会から通算で5回目の鑑賞。
 おーーーい、20.46回見る!とほざいていたのはどこのどなたですかー?
 DVD買ったら「20回公約」は果たしますですよ、ふっふっふっ、ゴホンゴホンゴホゴホ。
 時間がなくて、地下でパン3個詰め合わせ200円なりを買い、映画館で生ビール買って夕食に。

 梅田ブルク7は、さすがにレディースデーとあって、3分の2は埋まってました。
 といってもシアター3に格下げでしたが(最初からこの広さでもよかったっすよ)。
 「なるべく前に」と希望したら、最前列独占でした…。
 周さんのアップ、両腕広げてぎゅっと抱きしめられるぐらいの独占状態(をいをい)。
 おかげで音響の細部まで聞き取れた。
 やっぱり気になる、メインテーマ曲に入っている少年の甲高い叫び声。エンディング曲では、どう聞いても香港のラジオ放送だなと思える広東語北京語の声も聞き取れた。テロップに「香港電台(ラジオ)」のロゴもあったから、ラジオ局がニュース音源を提供したのでしょう。もしかしたら「中国政府は50年後の2046年まで、1国両制度で香港の政治・経済体制を堅持すると発表しました」的な事をアナウンサーが読み上げているのかもしれない。日本人には単なるノイズですけど…。
 ホテル管理人の娘、王靖[雨/文]が国際電話で日本のTakさんに叫ぶように話すとき、トニーのナレーションの合い間に「カントンゴ、ハナサナイト」みたいな彼女の言葉が聞こえた。Takさんに向かって言ってたのかな?

 トニーさん渾身のエッチシーン接吻シーンにドギマギしなくても慣れた今回は、次の2点を重点的に見ようと決めていた。
その1:初登場のルルことカリーナ姐さんのドレスと、中盤以降に再登場するときのドレスが同じかどうかを確かめる。
その2:シンガポールの屋台で、周さんが黒蜘蛛姐さんに蘇麗珍の話をするときに、ナレーションでどう言い訳するか聞き取る。
 結果。
 ルルの初登場時は、黒地に丸い大きなスパンコールいっぱいつけたノースリーブドレスに、毛皮のショールもしくはコートを左肩にしょっていた。オリエンタルホテル東方酒店で周さんが2047号室を見せてもらった後、BGM「パーフィディア」に合わせて出てきて、チャン・チェンを色っぽく一瞥して去る赤いドレスのルル・ミミは、事件を聞き知った周さんの想像。その想像は、小説「2046」世界の白毛の女のエピソードにつながる。
 しかし中盤再登場で男を巡って口論するときは、紫っぽい縁かがりをしたピンクの無地ドレス姿。
 2046号室を掃除するボーイの姿に合わせたトニーのナレーションでは「恋人に刺された」とは言ってたけど、「去世」とも「去ロ左」とも「逝世」とも言ってないみたいなので、やっぱりルル/ミミさん死んではいなかったです…「中盤再登場は、周さんの回想のなかの再会直後のミミ/ルルだ!」と断言してきたnancixの立場は(冷や汗)
 で、2点目は。
 "複雑な彼"切なく目を伏せたトニーに見とれて、聞き取りを忘れてしまいました…ダメじゃん。
 再確認:
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posted by nancix at 16:29 | Comment(11) | TrackBack(1) | 2046

2004年11月09日

周慕雲の生い立ちを妄想する。

 「お金がない、借金返さなきゃ」と言いつつ日曜に「笑の大学」を見て、月曜に横光利一の「上海」文庫版を買ってしまう、こらえ性のない自分が空恐ろしい…。文庫版で1050円もするだなんて、あまりといえばあんまりだ〜文庫は450円までに抑えてほしい〜!とぼやいてる場合ではない…。
 
 「上海」は外国人排斥運動とストライキに大きく揺れる1920年代上海と、銀行員を辞めて彷徨う日本人男性参木とその友人の甲谷、運命に流されていく日本人の女たち、中国人の女闘士秋蘭らの織りなす群像劇だった。大学時代に途中まで読んで、参木や甲谷たちの区別がつかなくなり途中で放り出したんだっけ。ラストも結論の出ないままで、何だか釈然としないしなあ。
 何より、中国人が雲霞のごとく後からあとから湧いて出るような大群衆、個性を持たない肉塊、としか描かれていないのがキモチ悪かった。ヒステリー状態の暴徒に八つ裂きにされる同胞、日本人をうっかり乗せた車夫も同胞に捕まり殺される…。さすがは当時の日本人の視点から描いただけのことはある…祖父の代の人々も、あからさまに中国人をバカにする呼称や悪口を平然と口にしていたものなあ。
 参木も甲谷も、意中の女たちに執着しているけど、それは"愛情"か?というと、とてもじゃないけど愛情には思えない。独占欲、結婚したい一念、憐れみと自分が相手を救ってやれるんだというヒーロー願望…そんなものが入り混じって、彼らに女を追わせる。時には目の前にいる女性が、別の女性と重複し、自分でも訳がわからなくなっていく。あーあ。女ひとりを愛し抜くこともできないで、自分の心も見失ったまま、なんでそんな非常時に、二兎も三兎も追ってんだよあんたたち〜!(聞こえない)
 
 で、日本ではすっかり忘れかけられているような横光利一の著作って、中国語に訳されているのだろうか? 中文Googleにかけても、横の字が日本にない字体だからか、引っかからないよう。
 王家衛なら、参考までに読んだことあるかな?
 「そんな日本人、全然知らない」ってそっけなく言われそう。

 さて、周慕雲の生い立ちについて、勝手に妄想している。
 1963年に33歳ぐらいだったとしたら、彼は1930年生まれ。
 わっ昭和5年生まれか…。
 28歳ぐらいとしたら、1935年生まれ、わわっ、nancixの老父とほぼ同い年!_| ̄|○
 おんなじ昭和ヒトケタですよーん、お父上〜!
 てことは、日本との戦争が終わった頃には小学生or中学生かぁ。
 ま、このへんはあんまり深く考えないことにして…。

 まず両親。
 母親はきっと、幼い彼を残して消えている。それが病死なのか、自殺なのか、離婚なのか、彼を置いて外出し、戻ったときには事故で冷たい骸になっていたか、男と駆け落ちなのかはわからないけど。
 幼い慕雲にとって、母との別れは青天の霹靂で、生まれて初めて受けた女からの裏切りだったのだろう。
 いくら泣いても呼んでも、母は戻らない。
 無条件に信頼し、愛しているのに。
 あんなに細やかに愛してくれた母だったのに。

 その辛い体験は、彼に(いくら女を慕い、信頼したって応えてはもらえない。いつかは見捨てられる、裏切られる)という精神的外傷を残すのだ。
 父親は、ある程度裕福だっただろう。だが謹厳実直な性格で、息子に愛情を注ぐより、支配し命令するばかりで、感情教育は省いて事業に没頭していたのではないか。人前で泣くことを禁じられ、人前で笑うことも叱られ、いつしか慕雲は、父親の前では心を閉ざし、説教や演説を聞き流すことを覚える。父は「男の子には、父親の背中さえ見せておけば自然と人生を学ぶものだ」なんて言ってたりする。あるいは、母そっくりの面差しの息子を正視するのが耐え難いというのが本音だったのかもしれない。
 愛情表現が苦手な者同士の父と子は、顔を合わせるだけでお互い不愉快になる。当時は寄宿制の学校があったかどうか知らないが、父は思春期になると慕雲を男子校か親戚に預けて教育を受けさせた。末は事業を継ぐか、弁護士や軍人になるかしてほしかったのではないか。父から遠ざけられたことで、慕雲は(見捨てられた)と感じてさらに心を閉ざす。同年代の子どもたちのなかでは、あまり頑健そうでも大柄でもない細身の彼は、友人の少ない物静かな文学少年だったのではないか。
 父への静かなる反抗として、慕雲はあえて文学の道を選ぶ。
 彼に読書の喜びを、当時は「無用の用」はずの文学の楽しみを教えたのは、誰だろう? 家庭教師か、学校の恩師か、従兄や年若い叔父といった親族か…?
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posted by nancix at 18:05 | Comment(4) | TrackBack(0) | 2046

2004年11月07日

隣の作家さん。

 動画を再生すると液晶ディスプレイ一面に白い千鳥格子が広がってポインタも白い線状になってフリーズする現象、ちっとも直りません。 Windows Media Playerをバージョンアップしても修復かけてもダメ。Real Playerで再生してもダメ。フラッシュ画像なら不自由なく見られる。パソコン本体のビデオメモリ不足のせいなら、どうしようもないなあ。ペンティアム4の2.53GHzで512MB積んでるのに〜。
 広東語もちっとも上達しない。たった3、4行を途中でつっかえずに読み通すのがどうしてもできない。読んでる自分の声がなんて棒読みなんだろう、と自己嫌悪。
 Webサイトのレンタルサーバーに先月末、ギリギリに1年分\24,360振り込んで一息つきました。預金口座の残高と携帯電話料金をチェックしたらどっと落ち込んだので(20日近く、どう食いつなぐか?)、気分転換に「笑の大学」を見に行きたいんですが、先立つものが。”未来の自分”以外に借金はできるだけしたくない。それでなくても「2046」前売り券2枚を譲ってくれた関西の友人に現金封筒でお金送らないと〜(宛名書きはしたのに…中身調達しないと〜)。
 
 気を取り直して、ネットで拾った10月15日自由時報(台湾)副刊のインタビュー記事「所有的記憶都是潮濕的 王家衛談文學與美學」に読みふける。
 実に充実したインタビュー。日本ではとても考えられない内容だ。こういうのこそ、ちゃんとした映画評論誌で読みたいのに。
 っていうか、現代日本でちゃんとした読ませる映画評論誌って……(-_-;)

 小説すばるさんユリイカさん、どうですか? 「ウォン・カーワイ監督が語る文学と美学」。十分読み物になると思うけど。自由時報から翻訳権買いませんか? 映画がヒットしないと、無理?

 長いので興味を惹かれた部分だけちょこちょこ抜粋。
 「花様年華」で縦書きで表記された文章は、上海出身の香港在住作家、ラウ・イーチョン劉以鬯の「對倒」からの引用だというのは、キネマ旬報の輝峻創三せんせの解説にもあったこと。
 
 実は「2046」にも彼の「酒徒」(63)からの引用がある。
「所有的記憶都是潮濕的」である。
「満開の牡丹のように、彼女は…」も、そうなんでしょうね。

 大体やねえ、トニー・レオン一世一代の色事師ぶりも日本トップアイドルもミステリートレインの旅も2046年の香港もラウ・イーチョン劉以鬯小説へのオマージュもチャン・イーモウ張藝謀がツバつけた女優たち(=「謀女郎」と中国サイトでは総称されている…露骨だねえ)の今までにない姿もどさくさにまぎれてレスリーへの追想も、全部ぜんぶ1作に盛り込もうなんて、無謀すぎるって! 誰か止めなかったのか! 王様の首に鈴を付けられなかったのか! 2時間には収まらんから削ぎ落とせ、あるいは2作に分けろと忠告できなかったのかーっ!!(今さら叫んでも遅い)

執筆トニー。
 香港の情報誌「亜洲週刊」が、20世紀最強中文小説ベスト100の72位に選んだ「酒徒」は、戦後、香港に移民した一人の文学者を主人公としている。つまりはラウ先生の分身だ。外来者の視点から、文学者は商業化されていく香港社会を見つめ、現実社会を浮遊する人間像を描く。彼は友人に励まされ、文学者の使命を果たすべく頑張るが、悪劣な環境と薄弱な意志にかなわず、酒色に溺れるのだ。
 酒が主人公を残酷な現実からしばしの間、離れさせてくれる。素面では酒でプレッシャーを減じる必要があり、酒に酔っている間は、酒によって自己の確実な存在を証明できるというのだ。
 それじゃあまるで、中島らも先生…_| ̄|○

 主人公が服毒自殺しようとするのを救ったのが雷老夫人。彼女も精神不安定な老婦人なのだが、主人公は彼女に最大のぬくもりを見出す。夫人は母のように接してくれたのだろうか? …だが主人公は思う。「自分は彼女を騙せない。彼女の精神はもう平衡を失っている。彼女は一人の気立てのいい老人だ。自分は自分を騙すことが出来る。しかし決して彼女を騙すことはできない」
 主人公は雷夫人のためにも禁酒しようとするが、結局はできない。飲んだくれは結局飲んだくれであり、午後には禁酒すると言いながら、夜になるとレストランでブランデーを飲んでしまうのだった。

 周慕雲が白玲とレストランで飲んでいたのも、ボトルから見て老酒ではなくブランデーでしたねー。

 王家衛は当初、この「酒徒」映画化を望んだが、すでに映画化権を誰かが買ってしまっていた。そこで「花様年華」「2046」では、劉以鬯にオマージュを捧げることしかできなかったそうだ。
 ラウ・イーチョン劉以鬯は1918年12月生まれ。1941年に上海の聖約翰大学(St. John's University)を卒業し、重慶・上海・シンガポール・マレーシアと香港で新聞特派員と雑誌編集者を歴任。内戦のため1948年に香港に逃れて来て、ずっと雑誌の編集の仕事を続けていた。
 たった一人で飛行機に飛び乗り、香港に来たばかりの頃を、ラウはこう語る。
 「香港には文学を好きな人間はとても少なくて、海外の華人はさらに受け入れてくれなかった。一時期、私は本当に何をどうすることもできずに、香港では発展できないと感じた。加えて人々はそっけないし、言葉は通じないし、私の持っていた金も(売れなかった?)文学書の山と一社の出版社に消えたさ。上海に戻ったって、国民党軍と人民解放軍は熱戦の最中だ。人民解放軍は長江を越え、すぐにでも上海に侵入しそうだった。私はどうすればいいんだ? そのとき、私は切実に運命に支配されている滋味を味わったね」。

 彼は幸い、「香港時報」編集部に副編集長として迎えられ、連載小説を書き始める。小説を書くことで、生計を立てる問題は解決できたのだった。最高で毎日13作もの連載小説を書いていたというからすごい。20年以上書き続けて、一日も原稿を書かなかった日はないという。
 もっともラウさんはお酒は飲まないようだ。妻と太古城(タイクーセン)のオーシャン・ターミナル海運大廈に行って飮茶をするのだけが、現在の唯一の気晴らしだという。飲み食いした後はタクシーで帰宅し、落ちた視力もものとはせずに、せっせと書き続けるのだ。
 ラウさんは結局、1985年から2000年に月刊専門誌「香港文学」の編集長を務め、2001年には香港特区政府から、中国語文学における成功と、香港文学事業の発展への大いなる貢献を認められ、栄誉勲章を授与されている。香港中央図書館には、劉先生が寄贈した蔵書を元に「劉以鬯文庫」が編まれているそうだ。ラウさんは、現在は香港作家協会会長と康楽文化事務署文学芸術顧問に任じられてもいるのである。日本で「新感覚派」ともてはやされ、心理主義を取り入れた斬新な手法を用いたが49歳で没した横光利一(1898-1947・明治31年-昭和22年)と比較研究する研究者も、東大方面におられる様子だ。

 主な作品には「酒徒」(63)、「對倒」(72)、「寺内」、「天堂與地獄(天国と地獄)」、「島與半島(島と半島)」、「他有一把鋒利的小刀(彼は鋭利なナイフを持っていた)」、「劉以鬯実験小説」、「龍鬚糖與熱蔗」など。
 小説のなかでは「對倒」が、名作の誉れ高いそう。
 英語では「Intersection」、交差点の意味だ。これは、天地が逆になった切手の対から着想されたという。
 こんなの。
対倒の着想の元になった切手
 決して交わらない、平行に発展していく物語。

 ラウ先生はSF掌編も書いていて、「間違い」「文芸編集の白日夢」「蜘蛛の精」「天国と地獄」(以上、渡辺直人訳)は「中国SF資料之六」(中国SF研究会) に掲載されているそうな。…って、どこで入手できるんだよおおおおおぉ。

 「花様年華」は彼の「對倒」の影響を受けていると評され、製作会社のジェット・トーンは「A Wong Kar wai Project」を題してウィン・シャ夏永康が撮影した「花様年華」スチールと、「對倒」の英訳(トレーシングペーパーに印刷した中国語文章も添付)、ラウ先生へのインタビューを組み合わせたCDアルバムサイズ写真集も出版した。…製本が例によって甘いので、外箱からめったに出せませ〜ん(T_T) しかも外箱の内側には、蘇麗珍にのしかかるベッド上の周慕雲が……っ! ああっ箱を破壊しないとちゃんと見られない! 拷問だ!! 早くに気づいていれば2冊買ったのに!(ウィン・シャの思う壺)


 この「對倒」は「花様年華」公開後にさっそく単行本化された上に、王家衛の仲介で、フランスの出版社が版権を買ってフランス語版作品集の出版も決定。
 まさに王家衛サマサマなのでした。
 「對倒」には1972年版の長編と、75年版の短篇があるとのこと。長編の方については、estrangementとsolitudeについて描いている。70年代香港に生きていながら、意識は20数年前の上海と香港から離れられない主人公が淳于白だ。…彼は友人が少なく、妻にも去られた孤独な男で、絶えず煙草をふかしては回想にばかりふけっている…目を開いていながら白昼夢を看ており、現代感覚に乏しい「思豪酒店(ホテル)」にいて、木造のスターフェリー乗り場の建物を見下ろしている…といったシーンが出て来るそうなんですわ。

 一方ヒロインの亞杏は、一人娘として母親に溺愛され学業にも仕事にもつかずに済み、家事もしなくていいご身分。毎日街をふらふらとさまよっているだけの女。「馬券が当たったら最新流行ファッションを全部買い占めるのに」「機会があったら映画界に入ってもう1人の陳寶珠(当時の少女スター)になるのに」「チャンスがあればナイトクラブの売れっ子歌姫になるのに」なんて夢見てばかりのお嬢さんなのだった。淳于白と亞杏の物語が同時進行で語られ、二人はある日、映画館で隣り合わせに座るだけで、すれ違って行き、別々の結末へと発展していく。

 実は王家衛にはもう一人、忘れられない作家がいた。

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2004年11月06日

香港大暴動と「2046」

 「花様年華」でカンボジアのシアヌーク閣下の姿を報じるニュース映像が流れたとき、実は狐につままれる思いをした。
 「2046」では、香港史を語る上で避けては通れない「香港大暴動」ニュース映像が流れるけど、現代日本じゃそれこそちんぷんかんぷんだよね。だって学校で教えてないもの。

 細々とした家内制手工業から工場が激増した60年代香港。労働争議が絶えず、搾取しようとする富裕層=経営者と、組合を結成して突然のクビを防ごうとする労働者は衝突を繰り返した。中華系=華人はようやく”植民地の人間”から脱し、労働者としての権利に目覚める。それは今まで支配者層として特権を謳歌し、「二等市民」と華人を見下してきた英国人への反感が強まることにつながった。
 組合には当然、中国で筋金入りの洗脳を受けた"文革派"も潜入していて、過激な行動を取るよう煽動しまくっていた。”親中国・反英国”の香港人が起こしたのが香港大暴動だ。
 1966年春から、中国本土では文化大革命が表面に浮上してきた。毛沢東を、北朝鮮における金成日以上に神格化し心酔した行動部隊の紅衛兵が「造反有理」と叫び、毛沢東語録を押し頂いて、社会改革の理想のため、新しい時代の夢のため、封建社会の名残と思われるモノ・文化・人を片っ端からぶっ壊していった。親兄弟さえも告発した。
 その影響を、地続きである香港ももろに受けた。1965年に始まった米軍のベトナム戦争本格介入も、東アジア人には欧米への反感をかきたてた。1967年1月末に米国第7艦隊の原子力空母エンタープライズ号が香港に入港し、北京政府は香港政庁と英国政府に強硬な抗議を発し、やがてそれは高圧的な外交要求となり、英中関係を悪化させていく。(このエンタープライズ号は翌年に日本の佐世保に入港、学生運動家と警官の衝突騒ぎを引き起こすのだけどね)
 画像は「1:99電影活動」香港版VCDより。
デモに参加し、警官隊と対峙する労働者や学生たち 1955年生まれ、当時11、2歳のアグネス・チャン陳美齡は「造反有理」と大書された壁新聞がビルの壁に張り巡らされた光景を覚えていると、エッセイに書いていた。ストライキやデモ、政庁関連の建物への投石騒ぎが相次ぎ、デモ一行は警官隊と激しく衝突し、ゴム弾や木弾が発射され、警官は容赦なく警棒を振るいデモ参加者の頭を割った。双方に死者が出た。爆弾テロが増え、車ごと爆殺された政庁要人もいた。
 暴動が最高潮に達したのは1967年夏。それまでに破裂もしくは発見された爆弾(大半がニセモノか不発弾だったが)は、5千発以上と言われている。
暴動鎮圧に向かう英国人警官たち 戒厳令が出され、人々は7ヶ月で9回も外出を禁止され、銀行では取り付け騒ぎが起こり、不動産は暴落する。バス、タクシー、スターフェリーはストライキで運航停止となり、香港の社会機能は麻痺した。映画会社も人材が流出し、製作を中止せざるをえなくなる。その間に周慕雲は(金雀餐廊で)小説を書き続けて「改心したのか」なんて言われちゃったわけだ。
  中国大陸と香港の行き来は遮断され、中国国内では台湾など海外に家族、親戚、友人を持つだけでスパイの嫌疑を掛けられた。「新中国建設」の甘言に乗せられ、日本の華僑が金を出し合ってチャーターした無料船で祖国に戻った青年たちも、迫害され下放され苦難を味わったのは神戸の華僑の皆さんがよくご存知だ。タイ王国では共産主義が伝染し王制を脅かすのを怖れて華人の行き来を許さず、そのためにやはり新中国に戻ったピーター・チャン監督の両親は、父母兄弟の待つタイに戻れなくなった。香港に留まり、映画界に仕事を得てピーターと妹を生み育てたのだった。
 人も行き来できないが、水だってそうだった。1967年、異常渇水と英中対決のための珠江の水の給水協定改定が不調に終わり、中国側の送水が一時中断され、4日に1度、4時間しか給水が行われなかった。「2046」のオリエンタルホテル東方酒店が、各部屋に水差し(魔法瓶?)しか置かず、客が自分で給水タンクに水を汲みに行くのも当然だったのだ。
 何しろ社会機能が麻痺しているのだから、まともな市民生活など営めない。「花様年華」ラスト近くで、上海人の家主のおば様が「米国の娘が心配してうるさいから、移民するの。あっちに行ったら毎日孫の守りだわ」と荷造りに追われ、隣人が去ったことを嘆き、蘇麗珍に部屋を借りたいと言われて喜ぶのも、文革・大暴動の影響なのだった。
 そして「2046」冒頭。
 周慕雲がシンガポールでの暮らしに「俺にはもうここでの発展がない」と見切りをつけて、香港に戻ったのは1966年12月。
 シンガポールの華人系新聞社の組織変革によって周慕雲が「顧問」になり給料が半分になったというのも(もしかしたら、正社員ではなく契約記者にされたと中国語台詞では言ってないかな?)、あの新聞社が右派だったか左派だったかわからないが、シンガポール当局に「文革派の手先の巣窟か」とにらまれたせいかもしれない。シンガポールの華人らも新聞を読むどころでなく浮き足立ってしまっただろう。
香港領事動乱日誌―危機管理の原点 ちなみに、香港大暴動前後について最も詳しい日本語の読み物は「突入せよ! あさま山荘事件」原作者、佐々淳行氏の「香港領事動乱日誌―危機管理の原点」だろうと思う。
 あくまで在留日本人、しかも警察関係者から見た、一方的な視点なんだけど。

 7ヶ月に及んだ香港大暴動は、文化大革命の変質の影響もあり、67年12月にはようやく鎮静化していく。
 というわけで、周慕雲ものんきに同年のクリスマス・イブのディナーを楽しめたわけである。
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posted by nancix at 04:51 | Comment(8) | TrackBack(5) | 2046

2004年11月04日

「花様年華」特典映像で分かる?「2046」その後

 「花様年華」香港版スペシャル・エディションの特典映像ディスクを見てしまったら、止まらなくなってしまった。
 「ブエノスアイレス摂氏零度」と同じく、王家衛の試行錯誤=フィルムと時間の無駄遣いが、トニーマギーのインタビュー、「花様的年華」を歌った歌姫周[王旋]の白黒映画断片などと共に記録されている貴重なDVDだ。
 何せ「撮影開始した当初は、正常人で善良だった…のにだんだん…」とトニーが証言する周慕雲は、ホテルの2046号室(当初は307号室だったので、スタイリッシュなサングラスのトニーがフロントでキーをもらうシーンは無駄に終わった)で蘇麗珍を待ち受け、ノックの音に(ついに罠にはまったな、これで彼女は俺の思うツボ)とニヤリとする、こんな腹に一物ありそうなワルに変貌を遂げるし、
ニヤリ周慕雲

 「花様年華」のエピソードは1972年まで構想しており、周慕雲の元妻役(ただし後姿のみ)を演じた女優の孫佳君が、シンガポールで出会い、周にまとわりついて離れなくなった女友達ルル露露をも演じたのだった。
 ……またルルかよ!
70年代の周慕雲の恋人ルル
 ルルはあのアパートメントを堂々と訪問し、まもなく海外移民のためアパートメントを引き払う予定のスー・リーチェン蘇麗珍に部屋を見せてくれと頼み「新聞記者の周の妻。だけど周夫人とは呼ばないで、そういうの好きじゃないの。ルルと呼んでちょうだい」と名乗って対決する。
 一歩も引かないエレガントな蘇麗珍。女の格がやはり違う。
 なのにどうして周さんは悪妻タイプの、こんな鼻っ柱の強いヒステリックな女とばかり関係してしまうのか(号泣)

 そして「パンタロンに柄シャツ柄ジャケット、口ヒゲにティアドロップサングラス」の、若き日の藤竜也がニヤケまくったようなトニーが、ルルとアパートメント前の路上で口論する…。
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posted by nancix at 23:52 | Comment(3) | TrackBack(1) | 2046

2004年11月02日

「2046」周慕雲捕獲計画

そんなに見つめないで…世をすねモードの周慕雲。

 「モスクワは涙を信じない」
 違った。
 「周慕雲は女の涙で引き止められない」。
 止めてくれるなおっかさん、鼻下でゲーブルヒゲが泣いている。
 意味不明。

 というわけで(どんなわけだ!)、”過去の女性関係””どうしても言えなかった一言”という雪の女王に囚われ、記憶を凍りつかせてしまったとてつもなく厄介な男・外見がトニーで中身が王家衛という「チョビヒゲおじさん」「添い遂げられない男No.1(nancixが名づけた)」周慕雲を捕獲でき、細く長くお付き合いする相手には、どんな女が適格なのか考えてみました。
 
 つまりは白玲小姐の逆、かなり王靖[雨/文]小姐に近い線をいけばいいわけです。

 拘束しない。
 独占欲を見せ付けない。
 男の仕事の邪魔をしない。むしろ仕事の手助けになる。
 他の男を引き込まない。
 他の男を愛していない。
 平手打ちなんか決してしない。
 とりわけ、周の元妻が駆け落ち先に選び、王靖[雨/文]が愛するTakさんとゴールインに漕ぎ着けた「日本」とは何ら関わりがない(爆)

 というわけで、一人の女を妄想してみました。
 仮にパン・リーファー彭麗華と名づけておきます。
 あ、特にモデルはいませんので。
 容貌は、最近生物の記録映画を世界中回って撮ってるとかいう台湾出身の女優のンー・シンリン呉倩蓮の10年前でどうでしょう。
 彼女は周慕雲の小説に惚れ込んだ、某新聞社出版部の編集者です。「全集を出しましょう!」と周慕雲をかきくどきます。
 年齢は30歳前後。色気はないです。チャイナドレスをガンとして着ずに、擦り切れたオーダーメイドの細身のテーラードスーツを着てベレー帽なんかかぶってたりします(もはやこの時点で王家衛ワールドのヒロインからはみ出しているかも…)。ジャケットの袖口が万年筆のインクで汚れていても平気です。新聞社では「鉄の女」と陰で言われるほど、強情っぱりです。
 最初は「生活のために書き飛ばした官能小説や武侠小説まで再版したかないよ」と渋る周慕雲ですが、彼女の熱意にほだされ、また自作の小説への鋭い洞察に一目置き、とりあえず過去の原稿整理を任せます。
 彼女は仕事の虫で、昼夜問わず周慕雲に加筆の要求や草稿と決定稿の差異の確認をしてきます。新聞社の仕事の傍らなので、生活は不規則に。朝帰りも続き、下宿の女主人が怪しんで「夜な夜な男と遊びまわるふしだら女には住んで欲しくない」と苦情を言ってきたので大喧嘩になります。下宿を引き払った彼女が平然と「今日から宿無しです」と言うので、周慕雲は呆れて東方酒店=オリエンタルホテルの空室に入れるよう、管理人に口添えします。管理人は彼女が新聞社勤務だというので、またまた気軽にOKします。
 しかし彼女はガンとして「2046号室」には入らないと頑張ります。「私はあなたの小説を全て読んでいるのです。"2046の女"があなたにとってどういう存在なのかよく存じています。断じてそこには住みません」と、階上の3047号室に引っ越します。周さん、彼女の暮らしぶりを覗けません…(うふふ、ざまあみろ)

 ある夜、せっかくホステスを連れ込んでベッドインしたばかりの周の部屋に、彼女が飛び込んできます。「どうしてもここの字を確かめたいんです。鉄頭子ですか、鉄頭陀ですか? …でも鉄頭子は2ページ前に死んでいますが?」
 ……しらける周さんと女。ホステスは憤然と帰ってしまいます。
 「仕事熱心もいいけど」と苛立った周さんはイヤミを言いますが、彼女はへこたれません。
 彼女は周さんの新作執筆も手伝い始めます。やがて新聞社の仕事との両立が難しくなり、彼女は新聞社を辞めてしまいます。完全に周さんの助手となり、台湾の出版社にも小説を売り込み始めます(文化大革命中の中国と香港は当時、断絶状態だったはずなので)。当時は珍しい女の出版エージェントです。周さんが小説執筆に行き詰まると「ナイトクラブで新しい女の子を捜して口説いてみるといいですわ。霊感を与えてもらえるかも。頑張って〜」と平然と勧め、ネクタイを選んで送り出したりもします。周さんは目を白黒させます。
 レストランで酔い潰れた周さんを、タクシーで迎えに行ったりもします。周さん完全に沈没。彭女史は車内で彼を膝枕してやって、ホテルの2047号室に寝かせます。周さんが寝言でリーチェンという名前を呼んでも、彭女史は動じません。「かわいそうに」と子供に言うようにつぶやくのみです。

 ある日、周さんに振られた女が逆恨みし、刃物持参で東方酒店に乗り込んできます。
 周さんの2047号室で、たまたま原稿の清書をしていた彭女史に、逆上した女が襲い掛かります。彭女史は気丈にも応戦し、両腕とも切り傷だらけになりながら周さんをかばいます。周さんは泣き喚く女から刃物を取り上げ、毅然として追い返すのでした。
 周さんが扉を閉めると、彭女史はとたんに腰が抜けて立てなくなるのですけど(^_^;) 非力だけどマメな周さんはせっせと彼女の両腕に包帯を巻き、さじで食事を食べさせてやるのでした(「ブーエーノースーアーイーレースー」…)。

 やがて周さんは、彼女との共同執筆が生きがいになってきます。酒量は減り、彭女史が紹介した洋行帰りの書籍装丁デザイナーの張偉平さんら、飲み仲間ではない教養人との付き合いにも刺激を受け、小説世界はぐんと広がります。
 ベストセラー小説も出ます。小説のタイトルに「堕落天使」「難以忘記的女人」「為情所困」「従前…以後」なんてのもあったりして。(いえいえ、単なる独り言です)

 クリスマス。周さんはついに、彭女史を酔っ払わせることに成功。それまでどんなにカマをかけてもつかみきれなかった、彭女史の過去の一端を知ります。彼女は10代で親の決めた男と結婚していました。しかし夫の浪費癖と女遊びに呆れ果て、ついには離婚し、クリスマスの夜に男の子を死産していたのです。
 「世界じゅうの人が一人の男の子の誕生を祝う夜に、私は私の赤ちゃんを失いました。可笑しいくらい不運でしょう」と苦く笑う彼女。決して涙を見せずに虚無的な表情で「誰かの妻には、二度となりません」とつぶやきます。
 ほだされた周さん、またまた罪作りにも、彼女の手を取ったり背中を撫でたりしてしまいます。でも内心(…彼女の表情描写で、第一章完結。うん、小説に使えるな)と思ってるのかもしれない。
 
 えっと。どうしようかな。
 そのクリスマスの夜は、一線を越えますか? 越えませんか?
 周さん、どうしますか? 色気のない女じゃ、無理? その気にならない?

 彭女史は「男は私の父も含めてみな同じ。赤ちゃんみたいに手がかかる」が口ぐせ、という設定なんですけど。
 細く長く付き合うためには、一線を越えないほうがいいのか。

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posted by nancix at 03:46 | Comment(9) | TrackBack(0) | 2046

2004年11月01日

周慕雲は悪い男か?

台湾版写真集より。本編にはないけど、この無邪気な笑顔がたまりません。
 Bloggerの皆さん、周慕雲を「史上最低な男」「嫌な男」、「芸域をえろじじい(爆)にまで広げんでも(汗)」「…島耕作」と書いているので、あららそうかなあ、と思ってしまう。
 ひいき目が過ぎるnancixの目には、極彩色ウロコが何枚も入りまくっているのだろうか。
 それともnancixの男脳度が高いので、どうしても女たちに感情移入できないのだろうか。

 とりわけチャン・ツイィー扮するバイ・リン白玲にはどうにも、感情移入できません。
 だって彼女は自分の美人度、男をそそる度を知りすぎている。それを武器に、世の中を独力で渡っていこうとする。
 何人もの男を気まぐれに引っ掛け、気に入らなければ突っぱね、がっかりして離れようとすると思わせぶりに甘くささやいて引き留める。
 両天秤どころか三股だってかけてしまうのも平気。男心を弄ぶのが楽しくてたまらないのだ。
 きらびやかなチャイナドレスとメイクに彩られて目がくらんでしまうけど、本性はそんじょそこらのモデル志願、タレント志願の女の子と変わりません。
 とてもじゃないけど「添い遂げられる女」じゃございません。nancixが男なら、遊び相手としてはスリル満点だけど、一生こういう女に振り回されてボロボロにされるのは、ごめんこうむります。お金で手っ取り早く一定の距離を置けて巻き込まれずに済むなら、出します、10ドル(当時の1000円?)ぐらい。

 そんな彼女の、若さゆえの過ちが、周慕雲=外見はトニー・レオンで中身は王家衛という手ごわい男=に心を許してしまったこと。
 さらに、楽しく夜を謳歌するセフレでいればいいものを、嫉妬丸出しに独占欲を発揮したこと。
 まず「(部屋に入れた)あの女は何なのよ」と食ってかかったのが過ち1
 (俺がそんなにも好きなのか、可愛いなあ)と鼻の下がビロ〜ンと伸びる男もいるかもしれませんが、周慕雲のような男はげんなりします。
 その上に情事の後に「朝までいたい」とせがんだことが過ち2。ただでさえ男は虚脱状態で何もかも面倒になっているのに、嫉妬の次は独占欲かよ、と引きまくりです。
 これはエッチ前、男がそそられてもうもう生理的欲求を我慢できない!やる! やらせてください!押し倒す!とはやっているときに「じゃあ、このまま朝までいてくれるなら、許してもいい」と交換条件にすべきでした。(…でもだいたい「そんなこと言ったか?」と忘れられちゃうけど。終わった後は。)
 それに周さんは、今から自室で仕事をするのです。執筆中に電話が鳴るだけでも腹が立つのに、背後から何やかんやと声をかけられ、注意を惹こうとあれこれいじられ壊されくすぐられ噛まれ、しまいに「私の相手をしてくれないなら、なんで私を部屋に入れたの。つまんない!」とむくれられ飛び出されるに決まってます。

 ………仕・事・に・な・る・かーーーー!

 男の仕事の邪魔をしない女。これが長続きのコツです。

 そして駄目押しで「ずっとあなたを独占していたい」。
 これ、最悪最低です。周慕雲は「ずっと」を信じられないデカダン男なのです。
 永遠の愛を誓ったはずの妻にあっさりと捨てられ、この女なら自分を理解してくれると感じたスー・リーチェン蘇麗珍にもついて来てもらえず、黒蜘蛛さんにも拒まれた男です。「ずっと」は禁句なのです。
 ずっと売文業で生計を立てていけるのか、政変続く中華圏で、動乱の続いた60年代香港で、東アジアで生き延びられるのか、未来が全然見えてない状況で、自分だけでなく足かせになる女までどうして面倒を見切れるでしょうか?
 中国本土ではインテリとその妻子が家族が、共産主義者に理不尽に糾弾され弾圧され、命さえ奪われていたのです。
 拷問の末、病院の廊下に放置され、のたれ死にした著名作曲家。
 やはり拷問を受け自己批判を迫られたあげく、自死を選んだ著名作家。
 そんな例が山ほどあったのです。
 「いいよ、一緒に生きよう」と一言言うのは本当に簡単です。単なる口約束なのですから。

 それを白玲に言えるぐらいなら、周さんは「花様年華」のスー・リーチェン蘇麗珍に「船の切符がもう一枚取れたら、僕と一緒に行かないか」を何が何でも言っています。
 あのとき言えずにあきらめたのに、お互いまだよく本性を見極めてもいないセフレに向かって口から出まかせを言うなんて、周さん的には許されないことなのです。
 彼には彼なりのモラルがあったのです。
 そのモラルを見抜けなかった白玲。あれこれ期待し過ぎた白玲。
 いじらしいほど未熟な彼女が傷つくとわかっていても、周さんにはあそこで徹底的に「望みは一切ないのだ」とわからせなければならなかったのです。
 でないと「ああ、口ではそんなことを言いながらも本当は」と勘違いは続き、つきまとわれ、二人ともくたくたです。「こんなに愛してるのに!」と刃傷沙汰にだってなりかねません。

 その上に面(つら)当てです。男を連れ込み、あえぎ声を盛大に隣室に聞かせる。
 もうダメです。修復不可能です。腹を立てれば、面子を潰されればそういうことをする女だとわかっていたから、周さ