予告編にタイ映画「チョコレート」が登場。ヒロインの可憐かつ勇ましいタイ人少女が、そこはかとなく志穂美悦子に見えてビックリ、明らかに高機能自閉症(HA)という設定の彼女が、動体視力に優れ、映像を見るだけでカンフーの高度な技をマスターでき、自分の身と母親を護るために…という設定にあぜんぼーぜん。
これって、すぐに患者団体などが「患者への偏見・差別を助長する」と抗議活動起こす日本では、公開大丈夫か…?
さらに、悪役だか謎のアジア人だかで、阿部寛が堂々と出現したのにも驚いた。「東京攻略」の伊藤タケシ役に比べると、出世したよねアベちゃん…ていうか、仲村トオルも二番煎じ邦画「少林少女」で、今回のアベちゃんと似たような役で出てるし…。「東京攻略」効果、おそるべし!である。
それにトニー・ジャーことパノム・イーラムらを輩出したタイ製カンフーアクション映画の王道で、ヒロインは吹き替え無し、CG合成無しで非常に危険なアクションに挑まされている。それこそ、花のかんばせに傷がついても構わずこれ1作で使い捨てにする勢いだ。嗚呼女工哀史(ちょっと違う)。
さてお待ちかね、「江山美人-An Empress And The Warriors」は、久々にあのUFO電影人製作有限公司のロゴから始まって、目頭が熱くなった。
今見ると実に稚拙で素朴なシルエットアニメのロゴなんだけど、このロゴから始まる「風塵三侠」「月夜の願い〜新難兄難弟」「君さえいれば〜金枝玉葉」「ボクらはいつも恋してる!〜金枝玉葉2〜」「世界の涯てに/天涯海角」「裏街の聖者/流氓醫生」「アンナ・マデリーナ/安娜瑪徳蓮娜」「ラヴソング/甜蜜蜜」「ラベンダー/薫衣草」「小親親」などの佳作の数々に、今までどれだけ楽しませてもらったか…。
今回は北京語版でしかもコスチューム・プレイ古装片ではあるのだけど、要するにUFOの作品ってのは、
煎じ詰めれば「少女マンガ」
なんである。
チャウ・シンチー製作映画がどうも少年ジャンプっぽい(スポ根もののセオリー、骨格を巧みに取り入れたストーリー展開)のに比べ、
アンディ・ラウ劉徳華主演映画がどうしても男のロマンとおセンチ満載のヒロイック・ファンタジーとなるのに比べ、
UFO作品は繊細で、感情描写に重きを置いていて、物語の骨格も線が細く、実に少女マンガなんである。
これは、ツイ・ハーク徐克らの電影工作室の出身で、UFOでの製作プロデューサーを経てケリー・チャンの辣腕マネジャーに転身した、クラウディー・チョン鍾珍女史の好みなのかもしれないけど…。いやいや、今回は製作に徹したピーター・チャン陳可辛さんのシュミ…?

今回も、中原が十国に分かれて戦乱が絶えない戦国時代、燕国の燕飛兒公主(王女)様(ケリー・チャン陳慧琳)が、幼馴染で兄のように頼りにしている、武骨で誠実で忠義に生きる若き慕容雪虎将軍(ドニー・イェン甄子丹)と、自然を愛し生命を育むというロハスな生活を送る飄々とした風来坊で世捨て人の色男・段蘭泉(レオン・ライ黎明)との間で揺れ動くという設定。
もちろん、悲恋で。
深夜のNHK BS-2で放送中のアニメ「精霊の守り人」や、以前の「十二国記」のようではないか。(決して、美青年キャラだらけで絶対にコミケ狙いのこっちではない) 小野不由美がシノプシスを提供しました、と言われても驚かないぞ、と。
…いやいや、流麗な描線の韓国コミックにも、こういうストーリー展開はありそうだなあ。
燕飛兒公主様(ケリー)は例によって、戦に傷ついた兵士の手当てに励む、ナイチンゲールタイプの心優しい女性。こういうステロタイプ、日本だけじゃないのね。
しかし、父王が悪大臣と組んだ王の甥?の胡覇(北京電影学院卒業の郭暁冬)の手で暗殺されたとき、彼女の運命が暗転する。国王は当初負傷した際、慕容雪虎将軍(ドニー兄さん)を後継者に指名していたのだが、親の名もわからない孤児だった彼が王の座に着くことを、胡覇一派は認めようとしない。父方の血筋を重んじる中国では"雑種"なんて言いますからね、父親のわからない子供のことを(怒)。
燕国が悪大臣+胡覇一派と、よい大臣の藤伯常+慕容雪虎将軍一派に分裂しそうになった時、公主様は雪虎将軍の苦境を救うかのように決断を下す。それは自分が軍に入隊し、厳しい軍事教練に耐え抜いて一人前の戦士となり、誰にでも認められる戦神と化して、一国を率いることだった。雪虎将軍は心を鬼にして、か弱い公主を鍛え抜く。
しかし、胡覇らはさらに、闇の
その森に独り暮らす、ロハス男の段蘭泉が事件の現場に居合わせた。彼は公主を連れて自分の
武人たちとはまるで異なるロハスな世界観、人生観を持つ心優しい段蘭泉に、公主はだんだんと警戒を解き、心を開いていくのだが…(このへんがコミカルで、まさに少女マンガ)。
その時、祖国は彼女無しではいられない、存亡の危機を迎えようとしていたのだった! 必死に公主を捜していた雪虎将軍は、森に近い草原の地面に深く埋め込まれた、ある名剣を見つけ、段蘭泉の過去を悟る…。それは段蘭泉が、ある哀しい宿命を背負った一族の最後の一人だったというもので…。
……なーーんだか、トニー・レオン&フェイ・ウォン王菲&チャン・チェン張震&ヴィッキー・チャオ趙薇主演の「天下無雙」の元ネタになった「江山美人」という民間説話とは、全くかけ離れたストーリーでありましたよ。どうして「江山美人」てなタイトルにしたんだろう? (ちなみに民間説話の方の「江山美人」は1959年にリー・ハンシャン李翰祥監督の手で映画化され、香港を代表する可憐な美人女優のリン・ダイ林黛が主演しました。あらすじはこちら。)
この「江山美人」は、先行する「HERO 英雄」「LOVERS/十面埋伏」「PROMISE/無極」「墨攻」や、
ましてやキンキラキンなくせに辛気臭い、日本公開中「王妃の紋章」、明日は冒頭だけでも観るつもりの「三國志之見龍卸甲」などとは、かなりテイストが異なる。
まあ骨格は「LOVERS」に近い三角関係といえば言えるが…、nancixはダンゼン、恋敵の男同士が憎み合うのではなく意気に感じてしまう、いかにも香港映画らしい「江山美人」を支持しますですよ! 仕事=責務と恋の両立に悩む女子たちには、必見だし!(「AERA」ならこう書くだろう)
だいたい、テンポが違う。香港映画だから、小気味よくあれよあれよというくらい早く、話が進む。これよ。これじゃなくちゃ。まあ、公主の決断は早すぎっちゃ早すぎなんだけど。(nancix以上の重大な責任を背負ってるんだから、もうちょっと悩めよ!)
それにケリーの裸身?も背中だけだし、ラブシーンもキスして重なり合ったらすぐに夜明け…(^_^;)と、実に香港スター映画の王道を行く作り。いいのか悪いのか新しいのは古めかしいのかは別として。
実をいうと、nancixはケリー・チャン陳慧琳が正統派美人の一人として香港芸能界に華々しくデビューした時から、この人を前髪立ちの若衆姿にさせてみたい、きっと眉の濃さ凛々しさが、ヘンにフリルひらひら、レースさらさらのフェミニンなドレスやワンピース姿よりも似合うだろうなあ…とヘンな妄想を抱いていたんである。ディスニー映画「ムーラン」(98)のの広東語バージョンではケリーがムーランの声をあてていたし、原作伝説「花木蘭」を香港かご当地中国で映画化し、ヒロインをケリーが演じるかも…っつー話題もありましたよね。
そこへいくと、今回の男装兵士ルックには大満足。甲冑も兜も、実に似合っている。細い手足は確かに「♪新兵さんは 可哀想だねェ また寝て 泣くのかよォ♪」(それは消灯ラッパがそう聞こえたという大日本帝国陸軍の…)的いじめに遭いそうな、か弱さではあるけれど。
「セブンソード/七剣」以来、久々にスクリーンで観る気がするレオン・ライ黎明(「情義我心知」(2006)はgraceちゃん宅で見せてもらったもので…)、飄々としていながらなかなかの智恵者で生き抜くすべを身につけていて、味方にしたらこんなに頼れるロハス男はいないかも。
人の近づかない深い森の中に、男がヨダレを垂らしそうなギミックたっぷりの秘密基地(宮崎駿アニメの影響か?)に住んで自給自足の生活を楽しみ、漢方薬や毒に通じ、諸葛孔明が発明したと言われる孔明灯からヒントを得たのかもしれない熱気球も自作し、まあ少々オタクっぽくはあるけれど、秘めた過去からちゃんと剣の腕も……(おっと、ネタばれ注意)。時折り、のぼーっとして見える最近のレオン・ライですが、今回はかなりオトコマエ度UP。(でも「梅蘭芳」はやっぱり心配なわけで…)
それにしてもドニー兄さん…あなた、風来坊で世捨て人のロハス男トニー・レオン梁朝偉に、愛する女性(ミシェール・ヨー楊紫瓊)の心を奪われ、どうあがいても取り戻せない、という絶望的な恋に身を焦がしてませんでしたっけ、「新流星胡蝶剣/秘術VS妖術」(93)で?
もう15年も経ってるのに、まーた似たような立場に…。まあこれ以上はネタばれなので詳しくは申せませんが。
で、いざとなると、やっぱり脱ぐんですよねー。上半身の充分に引き締まった筋肉、見せ付けてくれるんですよ。くぅぅぅ! たまらん。
で、彼が敵に周囲を囲まれ槍でつつかれ突かれ…というクライマックスの構図、どこかで見たぞと思ったら、日本の大河ドラマ「風林火山」での板垣信方=千葉真一(ドラマ終了後はJJサニー千葉に改名)の壮烈な最期に似ているような、しかしダンゼン「江山美人」の方がテンポよく、構図もいいような気がする。それが、後に「三国志之見龍卸甲」を見ると、同じシチュエーションでもアンディは気迫で四方八方の雑兵に槍を繰り出させずにどうにか脱出しちゃうんだから、いやはや何とも…(^_^;)
ま、煎じ詰めると「虻蜂取らずになった」公主さまではありますが、その後彼女が「エリザベス:ゴールデンエイジ」のごとく国に全てを捧げ、一生独身を貫き黄金時代を築いたかどうかは…?
何かあると、また何もかも嫌になっちゃって、馬で駆け去りそうだもんなぁ……(-_-;)
もう一つ突っ込みを入れるなら、公主さまぁ、その細腕にどんだけ腕力あるんだよ…片腕でそこまで……(以下自粛)。
キンキラキンで辛気臭い中国映画よりよっぽど、乞う日本公開。
でも地方だと映画館が空き空きになりそうなので、京阪神単館ロードショーロングランでも可。レイトショー&モーニングショーのみはやめてよして。
やっと香港で映画を堪能できたことに満足して、2回目の午前様でホテルに戻る。朝こそ新聞をたんまり買い占めなきゃー!……あ、ブログ更新……無理。寝る。