この道は交通量が少なく、片側が土手に面していて、騒音を撒き散らす線路や道路が無いので、確かにロケにはもってこいかもしれない。「世界杯」ではない別のパブ入り口から女性が飛び出してきて、恋人か友人らしき男が後を追って来て彼女を引きとめようと腕をつかみ、その手を彼女が払う…というような撮影を、スタッフが遠巻きに眺めながら繰り返し続けていた。特に通行の規制もしていなかったので、ゆっくりと歩きながら様子を見守る。俳優は…あまり有名人では無さそうに思えた。

……こんなドラマ撮影を日夜続けた延長に、トニーの今があるんだよなあ…。
さて、昨日の明るいうちに撮影したスポーツパブ「世界杯」の外観は、こんな感じ。

「傷だらけの男たち/傷城」撮影時は、もっとサッカーにちなんだポップな外観だった。2006年8月24日、トニーがロケ中だった頃はこんな感じ。↓

今は、随分とシックに改装されていた。
ドキドキしながら「世界杯」の扉を開けて中を覗くと、真っ赤なソファー席はほぼ満席。でも表面が照明で何色にも変わって光る乳白色のカウンターなら、席が空いていそうだった。
ああぁ、あのカウンターに、マカオ帰りに律儀にエッグロールのお土産を買って来る阿邦と、無造作に食いまくる阿頭がいたのね……。
中に入って指1本を立て、店員らしきお兄さんに「1位(一人)」と言い、積極的にカウンターの空いたスツールに座った。
まもなくバーテンダーが前に来て「何を飲む?」と聞いてきた。「生力(サンレッ)ロ卑酒(=サンミゲルビール)」と指1本立てて伝えると、まもなくカウンターにミニ瓶とグラスが置かれた。バーテンがまだ前から動かないので、(前払いなんだ)と気が付いて、財布を取り出す。……幾らだっけ? ちょっと高いと感じたんだよなあ…75香港ドル=900円くらい? チャージ料込みだったのかなあ。

これが生力ロ卑酒、サンミゲルビール。古くは「男たちの挽歌/英雄本色」で若き刑事キット(レスリー)が注文していた、由緒正しき?ビールである。
店内を見回すと、2台ある液晶テレビには、競馬の結果発表らしき映像が映り、サッカーや他のスポーツではなかった。ちょうど目ぼしい試合の中継がなかった時間帯なのかも。

賑わう真っ赤なソファー席の間を歩き回っているのは……ビヤ・ガール!
胸ときめいたが、それはスー・チー舒[ミ其]が扮したサンミゲル・ガールではなく、もちろん元祖バドワイザー・ガールでもなく、白と緑の2トーンのミニワンピを着た、カールスバーグ・ガールだったんである。ちょっと残念。でもなかなかキュートな女の子でした。

あとで登場するオーナーの一人と彼女に、きちんと許可を取って撮影したので、皆さんはいきなりフラッシュパチパチ焚いて撮影し始めないように。”ライダースーツ姿のタチの悪いチンピラ”はいなかったけど、どんな方々が居合わせて怒り出すか、わかったものではないので。
映画ではこういうカウンター席だったが、

改装されてこんな感じのカウンター席になっていた。(同じ角度からは撮れず)

ここで、nancixを日本人だと察して話しかけてくれたのが、テレンスさん。彼は日本語がかなり堪能で、このスポーツパブの共同出資オーナーの一人だと、自己紹介した。
お酒が好きなテレンスさんは、本業の傍ら、自分の居場所作りのためにこのスポーツパブの共同出資の話に乗ったのだそう。昔、テディ・チャン陳徳森監督(「インファナル・アフェア2 無間序曲」の小悪党4人組の最若手・火鍋屋オーナー役も演じた)がやっぱりバーに共同出資、そのバーを訪問してみるとイー・トンシン爾冬陞監督が、雑誌「電影双周刊」にも登場した銃火器専門家とカウンターで歓談していたり「インファナル・アフェア2」のヤンパパ役だった張同祖おじさまら、名だたる映画人がぞろぞろ個室に入っていったことを思い出す…。
「傷城」の撮影はどうだったか知ってる?とテレンスさんに聞くと、「僕は立ち会っていないけど、他のオーナーの話では、午前2時から朝まで、3日かけて撮影したそうだ」と教えてもらえた。
映画撮影はこの店の改装直前に行われ、だから扉の周囲は映画では壁面だったのが、現在は内側からだけ見えるマジックミラータイプのガラス張りに変わっている、とのこと。
「改装する予定だったから、撮影で俳優達は思い切り暴れられたのかな?」と聞くと「そうだね、本当に乱闘してたんだって」とテレンスさんは笑った。
…あのへっぴり腰で、金城君に隠れるようにして背後から何かを投げていた阿頭を思い出すと、今でもちょっと笑えてくる…。
「このスポーツパブがロケに選ばれた理由は何? アンドリュー・ラウ劉偉強監督とオーナーが知り合いだから?」と聞くと、テレンスさんは「いや、劉偉強じゃない。彼の会社のスタッフが頼んで来た」と言った。ロケハン専門のスタッフかなあ。ってことは、ここに劉偉強監督や彼のスタッフが飲みに来ることはない、か…。
テレンスさんのおかげで、カールスバーグ・ガールとも2ショット写真を撮らせてもらえた。……もちろん、ビールの宣伝に来ている彼女に「ウイスキーくれえ」と無理強いしたり、女子トイレに無理やり引っ張って行ったりはしないぞー(変態だ)。
バーの女性店員も「ワタシ、日本語、習いたい!」とファンキーに話しかけてくれ、日本のドラマの若い主演女優が大好きだと言うのだが、名前の日本語読みがおぼつかない。後で考えると「松たか子」と言いたかったのかな?と思うのだけど。
もう一人、かなり酒臭い青年阿wing君が、自分はスポーツショップの社員で、日本の某メーカーと取引があって、夏には大阪に行くんだ!と繰り返し、自分の名刺をくれて「メールくれー!」と頼んで来た。こんな言語不自由なおねーさんをナンパしても、君どーにもなんないよ?と思いつつ、こちらのサブメールアドレスも教えたけど、やっぱり今に至るまでメールは来ない(苦笑)。酔いが覚めたら「誰だ、このアドレス?」の類か…?
ミニボトル1本を飲み終え、奥の座席に移動していたテレンスさんに「もう帰るよ。今度は友達連れてくるねー!」と挨拶して、店を出た。テレンスさん、女の子たち、親切にしてくれてありがとー! いつか映画ファン仲間と一緒に再訪するからね!(次はマカオのエッグロール持参で…か?)
すっかりほのぼのして「世界杯」を出たとたんに、携帯電話が鳴った。Iさんからだった。「もう食事終わったわ、あなたは? これからどこで待ち合わせようか?」
…急いで食事を終わらせてくれたんじゃないかな…申し訳ない…「まだ食べてないけど、軽くでいい。私はこれからランガム・プレイスに行くの。今夜の映画のチケットを買うの」と伝えると「じゃあ、ランガム・プレイスのマクドナルド麥當勞なら私も解る! 着いたら電話するね」と言ってくれた。