2004年11月02日

「2046」周慕雲捕獲計画

そんなに見つめないで…世をすねモードの周慕雲。

 「モスクワは涙を信じない」
 違った。
 「周慕雲は女の涙で引き止められない」。
 止めてくれるなおっかさん、鼻下でゲーブルヒゲが泣いている。
 意味不明。

 というわけで(どんなわけだ!)、”過去の女性関係””どうしても言えなかった一言”という雪の女王に囚われ、記憶を凍りつかせてしまったとてつもなく厄介な男・外見がトニーで中身が王家衛という「チョビヒゲおじさん」「添い遂げられない男No.1(nancixが名づけた)」周慕雲を捕獲でき、細く長くお付き合いする相手には、どんな女が適格なのか考えてみました。
 
 つまりは白玲小姐の逆、かなり王靖[雨/文]小姐に近い線をいけばいいわけです。

 拘束しない。
 独占欲を見せ付けない。
 男の仕事の邪魔をしない。むしろ仕事の手助けになる。
 他の男を引き込まない。
 他の男を愛していない。
 平手打ちなんか決してしない。
 とりわけ、周の元妻が駆け落ち先に選び、王靖[雨/文]が愛するTakさんとゴールインに漕ぎ着けた「日本」とは何ら関わりがない(爆)

 というわけで、一人の女を妄想してみました。
 仮にパン・リーファー彭麗華と名づけておきます。
 あ、特にモデルはいませんので。
 容貌は、最近生物の記録映画を世界中回って撮ってるとかいう台湾出身の女優のンー・シンリン呉倩蓮の10年前でどうでしょう。
 彼女は周慕雲の小説に惚れ込んだ、某新聞社出版部の編集者です。「全集を出しましょう!」と周慕雲をかきくどきます。
 年齢は30歳前後。色気はないです。チャイナドレスをガンとして着ずに、擦り切れたオーダーメイドの細身のテーラードスーツを着てベレー帽なんかかぶってたりします(もはやこの時点で王家衛ワールドのヒロインからはみ出しているかも…)。ジャケットの袖口が万年筆のインクで汚れていても平気です。新聞社では「鉄の女」と陰で言われるほど、強情っぱりです。
 最初は「生活のために書き飛ばした官能小説や武侠小説まで再版したかないよ」と渋る周慕雲ですが、彼女の熱意にほだされ、また自作の小説への鋭い洞察に一目置き、とりあえず過去の原稿整理を任せます。
 彼女は仕事の虫で、昼夜問わず周慕雲に加筆の要求や草稿と決定稿の差異の確認をしてきます。新聞社の仕事の傍らなので、生活は不規則に。朝帰りも続き、下宿の女主人が怪しんで「夜な夜な男と遊びまわるふしだら女には住んで欲しくない」と苦情を言ってきたので大喧嘩になります。下宿を引き払った彼女が平然と「今日から宿無しです」と言うので、周慕雲は呆れて東方酒店=オリエンタルホテルの空室に入れるよう、管理人に口添えします。管理人は彼女が新聞社勤務だというので、またまた気軽にOKします。
 しかし彼女はガンとして「2046号室」には入らないと頑張ります。「私はあなたの小説を全て読んでいるのです。"2046の女"があなたにとってどういう存在なのかよく存じています。断じてそこには住みません」と、階上の3047号室に引っ越します。周さん、彼女の暮らしぶりを覗けません…(うふふ、ざまあみろ)

 ある夜、せっかくホステスを連れ込んでベッドインしたばかりの周の部屋に、彼女が飛び込んできます。「どうしてもここの字を確かめたいんです。鉄頭子ですか、鉄頭陀ですか? …でも鉄頭子は2ページ前に死んでいますが?」
 ……しらける周さんと女。ホステスは憤然と帰ってしまいます。
 「仕事熱心もいいけど」と苛立った周さんはイヤミを言いますが、彼女はへこたれません。
 彼女は周さんの新作執筆も手伝い始めます。やがて新聞社の仕事との両立が難しくなり、彼女は新聞社を辞めてしまいます。完全に周さんの助手となり、台湾の出版社にも小説を売り込み始めます(文化大革命中の中国と香港は当時、断絶状態だったはずなので)。当時は珍しい女の出版エージェントです。周さんが小説執筆に行き詰まると「ナイトクラブで新しい女の子を捜して口説いてみるといいですわ。霊感を与えてもらえるかも。頑張って〜」と平然と勧め、ネクタイを選んで送り出したりもします。周さんは目を白黒させます。
 レストランで酔い潰れた周さんを、タクシーで迎えに行ったりもします。周さん完全に沈没。彭女史は車内で彼を膝枕してやって、ホテルの2047号室に寝かせます。周さんが寝言でリーチェンという名前を呼んでも、彭女史は動じません。「かわいそうに」と子供に言うようにつぶやくのみです。

 ある日、周さんに振られた女が逆恨みし、刃物持参で東方酒店に乗り込んできます。
 周さんの2047号室で、たまたま原稿の清書をしていた彭女史に、逆上した女が襲い掛かります。彭女史は気丈にも応戦し、両腕とも切り傷だらけになりながら周さんをかばいます。周さんは泣き喚く女から刃物を取り上げ、毅然として追い返すのでした。
 周さんが扉を閉めると、彭女史はとたんに腰が抜けて立てなくなるのですけど(^_^;) 非力だけどマメな周さんはせっせと彼女の両腕に包帯を巻き、さじで食事を食べさせてやるのでした(「ブーエーノースーアーイーレースー」…)。

 やがて周さんは、彼女との共同執筆が生きがいになってきます。酒量は減り、彭女史が紹介した洋行帰りの書籍装丁デザイナーの張偉平さんら、飲み仲間ではない教養人との付き合いにも刺激を受け、小説世界はぐんと広がります。
 ベストセラー小説も出ます。小説のタイトルに「堕落天使」「難以忘記的女人」「為情所困」「従前…以後」なんてのもあったりして。(いえいえ、単なる独り言です)

 クリスマス。周さんはついに、彭女史を酔っ払わせることに成功。それまでどんなにカマをかけてもつかみきれなかった、彭女史の過去の一端を知ります。彼女は10代で親の決めた男と結婚していました。しかし夫の浪費癖と女遊びに呆れ果て、ついには離婚し、クリスマスの夜に男の子を死産していたのです。
 「世界じゅうの人が一人の男の子の誕生を祝う夜に、私は私の赤ちゃんを失いました。可笑しいくらい不運でしょう」と苦く笑う彼女。決して涙を見せずに虚無的な表情で「誰かの妻には、二度となりません」とつぶやきます。
 ほだされた周さん、またまた罪作りにも、彼女の手を取ったり背中を撫でたりしてしまいます。でも内心(…彼女の表情描写で、第一章完結。うん、小説に使えるな)と思ってるのかもしれない。
 
 えっと。どうしようかな。
 そのクリスマスの夜は、一線を越えますか? 越えませんか?
 周さん、どうしますか? 色気のない女じゃ、無理? その気にならない?

 彭女史は「男は私の父も含めてみな同じ。赤ちゃんみたいに手がかかる」が口ぐせ、という設定なんですけど。
 細く長く付き合うためには、一線を越えないほうがいいのか。

 まあいいや。「全集」編纂がかなり進み、後は新聞に連載中の「周慕雲初の完全私小説」の完結を待つばかり、となったある日。
 編集部に男の子の声で、電話がかかってきます。
 「あの小説を書いている人は、もしや僕の父さんなのでしょうか? 僕のママは、夜中に台所で小説を読んで、日本製炊飯器を抱きかかえて声を出さずに泣いているんです」
 電話を取り次がれた彭女史は、その幼い声に直感します。
 彼こそ、蘇麗珍が産んで一人で育てた少年ではないのか?
 実は彼女、周慕雲が気づかず書かなかったことまで、小説の行間から読み取って、ある推理をしていたのです。
 周が一度香港に戻り、あの貸し間のあったアパートメントを訪れた時に見たという男の子は、もしや蘇麗珍の子供ではなかったかと。

 ここで彭女史が少年の家に乗り込み、蘇麗珍?と対面して子供の父は誰かと追求すれば、あらゆる謎が解ける。
 真相がわかれば、母子と周慕雲を引き合わせないと、女がすたるってもの(ん?)。
 しかしもしも3人が対面し、そうか俺の子だったのか、じゃあ一緒に暮らそうとなり、めでたくよき夫・よき父の周慕雲となってしまったら。
 あのデカダンできらびやかで哀しみのこもった小説を、彼は二度と書けなくなるかもしれない。

 彭女史は葛藤するのです。

 さて、この”後日談”の顛末は如何に。
 実はnancixも考えていない(爆)

 こんなヒロインで、本当に周慕雲を捕獲できるのかな…_| ̄|○。
 よく考えたら、後日談ってことは70年代香港に突入しちゃうぞ。
 60年代後半にモッズファッション、サイケ族も登場する。
 75年にベトナム戦争終結。ジーンズ、ホットパンツ、ダウンジャケットやダウンベスト、スニーカー、トレーナーが流行ってしまう。日本のニュートラだって、真似する香港の女の子がいたかもしれない。
 だーめーーだーー。男女の典雅な関係なんか、時代に吹き飛ばされてしまう。
 
 やはり王家衛ワールドには、後日談など必要ないようです。

 周さん、やっぱりnancixはタクシー運転手役を志願する!
 酔い潰れたあーたを、空も飛べるタクシーで、日本に連れ去っちゃうから!
 ソウルでケガなんかしないでねー! 風邪引いて寝込んだりしちゃいやよー!
posted by nancix at 03:46 | Comment(9) | TrackBack(0) | 2046
この記事へのコメント
nancixさまは、昨日の夜からずーっとPCの前で
創作なさったいらしたのですね。m(__)m 頭が下がる思いです。
ファンとしてはうれしい限りですが、このところの激務続き、ご自愛を。
本当に先月はトニー台風、ご不幸、サーバートラブルと大変でございました。感謝の至りです。

べストセラー小説のタイトルが・・・(笑)
「男はみんな赤ちゃんみたいに手がかかる」
これ、nancix語録に入れときましょう。
王家衛より真実味があったりして。いったいどんな男と?(失礼しました)

さて、トニーさん今年のスキーは苗場じゃないんでしょうね、地震もあったし。
竜平? リゾートまで韓国か?
Posted by do-jeh at 2004年11月02日 10:28
もう、一気に最後まで読んじゃいました。
そしてところどころトニさんの左口端あがりならぬ右口端あがりで(私、左はあがらん・・・)フ!と笑いながら・・・

で、で、で、後日談はないとな?
( ̄〜 ̄;)??こんなに書けてるのに
どうなるか、私たちの想像できないような、
できるような続きを読みたいです!
ハァー、面白かった!
Posted by ドンチャ at 2004年11月02日 10:37
nancixさん、これは是非、出版に持ち込みましょう。ウォン監督のように「一人の男」にこだわり、続編、続々編と長〜く引っ張っていってください。
「チャウ氏捕獲」は永遠に叶わぬ立場の私、せめてヒロインに感情投入して「夢」を見たいっす(^.^)
Posted by スモーカー at 2004年11月02日 12:58
そうです!スモーカーさんのおっしゃるとうり、これを出版社に持ち込んで「もうひとつの『2046』━男はみんな赤ちゃんみたいに手がかかる」というノベライズとして世にだしましょう。
そして、出版記念パーティーを企画。トニーさんを来賓として招く〜ってのはいかが?そんときはnancixさん、オーダーメードの細身のテーラードスーツを着てくださいね。
Posted by ふみちゃん at 2004年11月02日 13:13
面白かったです。「鉄の女」女史、nancixさんの分身では、と勝手に内心思いながら読ませていただきました。(^.^)
Posted by ぐう at 2004年11月02日 20:42
nancix先生 すばらしい!(^^)
小説家(いや作家)デビューはいつなんですか?。本出版時の”帯”コメントは、
トニーにお願いしないと!。
編集を王監督にすると、出版社の締め切りに
間に合わないかもしれないから、要注意。
創造力の高さに脱帽です・・・。
Posted by ムーン at 2004年11月02日 22:29
昨日に引き続きお邪魔します。
とっても面白かったです。
私も一気に読んでしまいました。
ところどころ笑いながら。
nancixさん最高です!
Posted by asyurank at 2004年11月02日 22:32
 話を構想したのは1時間半の通勤列車内。ぜんぜんずーっとではありませんでしたです。(帰宅してからついつい長電話してしまったので…(-_-;))

 もっと先まで映像が浮かんだけど、すっかり王家衛ワールドではなく漫画になっちゃったので取り止め。

 うんにゃ、nancixはぐにゃぐにゃペカペカ簡単に溶けるのアルミの女でござる。
 第一、細身のテーラードスーツなんかわき腹の贅肉が邪魔して、ちょっとも入りませぬ!(きっぱり)ユニクロのジップアップシャツ、愛用しとりますゆえに。
 あくまでこれは呉倩蓮が演じたら、が大前提の架空のキャラクターでござります。
 
Posted by nancix at 2004年11月02日 22:34
 テーラードスーツの呉倩蓮といえば『等着イ尓回來』の小柳ですね〜。
 楽しませていただきました、ありがとうございます〜(^。^)。
Posted by noe at 2004年11月03日 01:17
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