簡単なトーストとコーヒーのモーニングサービスでいいのに、何で高架下は朝っぱらからカレーやラーメン屋しか開いてないのだ?
地下の「マイアミ」にとりあえず入ったが、失敗した…1000円メニューがずらりと並ぶ。
朝っぱらから関西人が1000円も出せるか! 電子レンジでチーン!のメニューばっかりなのに! 大阪じゃ390円で腹いっぱい和食が食えるぞ!
と怒鳴りたいのを抑え、ホットサンド単品を頼んだ。
しばし雑談、ホテルに戻る。寝床に潜り込んだけど、11時のチェックアウトまで1時間半ぐらいしか眠れないなあ…むにゃむにゃ。
ホテルからは渋谷駅まで、バスに乗った。東京駅構内で、駅弁と一緒に太宰治の「斜陽」新潮文庫版を買った。
トニーファン仲間に見せてもらったパンフレットに、Takさんのあのラブレターの一節は「斜陽」から引用したものだと書いてあったからだ。
車内であっというまに読み終え、後は耳栓してアイマスクして爆睡。
「斜陽」は確か、高校時代に読んだっけ。
旧華族令嬢で、離婚・死産も経験したけなげな29歳のヒロインが、病に倒れる母と、ヤク中で屁理屈ばっかりですぐ死にたがって働かない弟(太宰治の過去の投影)を抱えて奮闘するのに、どういうわけか貧乏たらしく愚痴ばっかり屁理屈ばっかりで働かない、くっだらない男(太宰治の分身)にうっかり恋心を抱いて、「自分がとても可愛がられている」という超勘違いを経て未婚の母になる話ですよ。
ま、だめんずウォーカーのハシリです。
改めて読むと、ほんっとーにくだらない男。
周慕雲の方がよっぽど女のヒモにはならないという気概があり、都市生活者の孤独を享受する覚悟があり、生活力がある(○欲も…)。
下着姿で毛布かぶってもぐもぐ何か食べてもサマになる。貧すれどもカッコイイじゃないのん。(ひいき目が過ぎる)
とにかく、問題のくだりはココ。
「(前略)六年前の或る日、私の胸に幽かな淡い虹がかかって、それは恋でも愛でもなかったけれども、年月の経つほど、その虹はあざやかに色彩の濃さを増して来て、私はいままで一度も、それを見失った事はございませんでした。夕立の晴れた空にかかる虹は、やがてはかなく消えてしまいますけれど、ひとの胸にかかった虹は、消えないようでございます。どうぞ、あの方に聞いてみて下さい。あのお方は、ほんとに、私を、どう思っていらっしゃったのでしょう。それこそ、雨後の虹みたいに、思ってらしたのでしょうか。そうして、とっくに消えてしまったものと?(後略)」いやもう……そっくりじゃん!
これを夢見るヒロインが書くならうなずけるけど、60年代の日本人商社マンの若者が、書くものかなあ。
男と女の入れ替えをやっちゃった時点で、王家衛は虚構の上塗りをしちゃったんである。
もう一つ。
「他の生き物には絶対に無くて、人間にだけあるもの。それはね、ひめごと、というものよ。いかが?」周慕雲がアンコールワットの壁の穴に埋め込み決して他人には打ち明けない秘密。
「姉さん。
僕に、一つ、秘密があるんです」
繰り返しtakさんがささやくのに、決して明らかにされない「秘密」。
そのモチーフが「斜陽」には出てくるのである。
「斜陽」の姉弟のひめごと、秘密とは、既婚者への片思いであるわけなのだけど。
ちなみに「斜陽」が書かれたのは昭和22年、1947年。
やはり王家衛は本当の、ビートルズも訪れた60年代香港を描いたのではない。
60年代香港に40年代上海をだぶらせようと試みたのだ。
翻訳されて出版された中国本土でもこの小説は広く話題を呼び、上海でも斜陽族とか何とかいう呼び名が流行ったとか、何かで読んだなあ。(あいまい過ぎ)
王家衛は「花様年華」公開時も、トニー・レオンが歌ったイメージソングCDに寄稿し「トニーを見ていると、太宰治の短編小説『美男子と煙草』のタイトルを思い出す」と語っていた。
それにしても、高校時代に耽溺し、いったんは卒業した太宰治に、こうしてアジアの映像プロジェクトを通して再会しようとは……。奇しき縁ではある。
Takさんの出番がどーだ、コン・リーの横槍がどうだとか無責任に噂するひまがあったら、世間の皆様は太宰治でも再読しとけ、日本人のくせに、と言いたくなった。
ちなみに太宰治は「人間失格」で鋭く指摘している。
「世間」とは結局のところ、誰のことかをね。
「斜陽」は、昨年トニさんCD→「美男子と煙草」繋がりで太宰作品濫読したので(動機不純すぎ!)、木村青年が「6年前〜」とやりだしたときはひっくり返りそうなほどびっくりしました。
私は、彼も文学好きでジンウェイと気があったのかなーと思って観てました。海外でも名高い日本人作家ですから、太宰作品の話がきっかけで恋が始まり、木村青年はそれを思いだしながら、胸が焼き焦げるような切羽詰った恋心を、太宰からの引用で伝えたのではいかな、と。楽しげに文学を語らう過去の二人と今の悲劇的状況がオーバーラップして、切なくなりました。・・・そんなときにあのBGMを流さないでよ泣いちゃいましたよ(涙)
「秘密」のほうは、思い至りませんでした。そうかー、なるほど。
それほど「日本」をとり入れた作品なのに、王監督ったら来てくれなかったんですね・・・冷たいかも(泣)
・・・ではまた、チャウさんの海に戻ります。
あ、東京人も朝食1000円は高く感じますです。(1000円あったら映画観れるもん、水曜)
本を読まない、漫画も読まない、雑誌も何となく目を通すだけでケータイメールにふけり「ヒマだー」「退屈ー」ばっかり言ってるから、「2046」もチンプンカンプンなんでは?
太宰の話ができる方がいてくれてうれしいです。
うん、60年代文学青年と文学少女の恋ね、あり得るわー。レイさんの着眼点素晴らしい!
うつむいてばかりのフェイ、本当に繊細なムードでいじらしくて。あんなに前衛的なメイクに衣装で舞い歌う、ステージのフェイとは別人28号! 彼女にあの役を割り振る王家衛、やっぱりとてつもなく妄想王っす…。
映画関係ではなく、東京大学近代文学研究会を詐称して王家衛監督を招いたら、喜んで来てくれるかもー!(犯罪)
私も早く映画館通いしたい…。
しかし最寄りのシネコンで6時半の回を逃したら、レイトショーの終了が午後11時半の回しかないのです。終電がぁぁ。
でも文庫版が絶版にならないだけマシ?
午前の上映の部にせっせと通っていますが、空いてますよぉ〜(泣けます)。結構年輩の方々がいて、トニーさんのギシギシをどう受け取っているのか、すごく気になります。
1000円のメニューは、きっと夜勤か早朝人件費込みですね。うちの近所では、朝7時からの営業で、コーヒー+トースト350円が相場です。店によって、小さなちいさなポテトサラダがついたりします。