うっかり麻布十番駅付近のビジネスホテルに荷物を置きに行って、遅刻するところでした。
タクシーに乗ったら、何も知らない運転手さんはレッドカーペットでの催し進行中の通りに、突っ込もうとするし(泣)。
案の定、迂回路に行かされかけて、飛び降りて上映会場に急ぎましたよ。
レッドカーペットなんて、人垣に遮られてちいとも見えませんでした。
なぬ、イーソンまでが一人で歩いたのか。
たまたま来日中の香港俳優、たとえばお忍びトニーさんが「僕も映画スターですぅ」と申告したら、歩かせてくれるのか?(そんなわけない)
ええ、そういうわけで。お待たせしました。
「アジアの風」部門の中華圏映画で唯一、日本配給会社が明記されている香港映画「ディバージェンス(原題)/三岔口」の番です。

この画像は今年の「第一回香港影視博覽會」開幕式にて。出演者の皆さん。
日本では劇場公開なのかビデオストレートなのか、いまだ不明ですが。劇場公開、するよね? してよね??
ところで「ディバージェンス」でネット検索すると、やたらに可愛い子ちゃんを揃えたホラーSFアニメ?「リバースムーン ディバージェンス」がヒットするんですが、タキ・コーポレーションさん、日本公開のあかつきにはぜひ「死の三叉路」に改題していただけないでしょうか。若き日の三国連太郎が佐藤浩市以上に色っぽい「死の十字路」にちなんで。
いや「アーロン・クォックの死の三叉路」じゃなくていいです。「アーロン・クォック、イーキン・チェン、ダニエル・ンーの死の三叉路」だと長いし。
そんな取らぬ狸の皮算用をしてしまうほど、実に大スクリーンに映える、香港映画です。
まさに「香港映画を、観たーーー!」という気にさせてくれます。
だって、「ベルベット・レイン」で観たばかりのエリック・ツァンとっつぁんもラム・シュー林雪も、サム・リー 李燦森や軟硬天師のジャン・ラム林海峰(2人とも老けないよなあ…)、ジャッキー映画でお馴染みのいかついユー・ウィンクォン于榮光まで出て来るんだもんなあ。「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」シリーズで半人半妖のロウロウを演じた、ラウ・チウメン劉兆銘さんも健在です!
誰だよ、「香港映画は、死んだ」なんて数年前に朝日新聞にのたまわった奴はよ(執念深い)。
王家衛がハリウッド女優で映画撮ろうと、ベニー・チャン陳木勝、テディ・チャン陳徳森、サムソン・チウ趙良峻、ジョー・マー馬偉豪ら職人的中堅監督に出資者を与え、撮影のチャンスを与え、秀作を日本公開できてりゃ、世に香港映画のタネは尽きまじってもんなんだよぉ!
もっと光を! 香港映画(大作でなくていいから秀作)の日本公開を!
主人公の衝撃・失意の末の放心を、あれだけすさまじいカークラッシュを用いて表現せずにはいられない監督なんて、世界のどこを探してもベニー・チャン陳木勝しかいないんじゃないの?
これだけ入り組みもつれた謎解き仕立てのジグゾーパズルを、最後の最後までピースをピシリとはめ込んで完成させられる力量は、娯楽作だからって決して無視しちゃいけませんよ!
「三岔口(広東語ではサムチャーハウ、北京語では…さんちゃーこう、かな?)」とは楊一族の壮大なスケールの悲話「楊家将演義」のハイライト部分。三叉(さんさ)路に面した宿屋で、同じ豪傑を助けるつもりなのに、互いに相手を豪傑の命を狙う刺客と誤解して腹の探り合いをしてしまい、ついには暗闇の中で大立ち回りとなってしまう。両者がかばおうとした豪傑が最後に登場し、誤解がやっと解けるという京劇です。歌舞伎の「だんまり」も、この京劇に影響を受けているんだろーか。よく知りません。
多分、ベニー・チャン監督ら製作者側は、この京劇の「3人の男が出会い、正体すらよく知らずに争い合う」という骨格だけをヒントにしたのでしょう。
ストーリーは公開前だから詳細を紹介しませんが、導入部の、本筋には関わりなさそうな、夜道を一人で歩く少女と、密かにつけ狙う街の不良青年のエピソードを、中盤まで忘れずに心に留めておいてくだせえ。
さて、10年前までは、警察の広報番組(「インファナル・アフェア」でアンディ・ラウが出演してくれと上司に言われていた例の番組。香港で見たことがあります。まさに明るい市民の公僕・香港警察の宣伝!)にも出演し、女学生にソンお兄ちゃん孫哥哥と呼ばれて親しまれたほど、将来を嘱望された、ソン孫刑事。
しかしいま、彼は10年前に身重の身だった恋人のソーフォン素芳が突然失踪したことによるPTSDが、ますます悪化しています。カナダからマネーロンダリング事件の証人を飛行機で護送中にも、雑誌の広告モデルが妻の顔に見えたり、乗客の女性が微笑みかける妻に見えたり、もうもう狂気の一歩手前までキテます。
横田めぐみさんの北朝鮮拉致事件や、テレビ番組「TVのチカラ」の数々の事件を見れば、愛する人や家族が生死不明っていうのがどれだけ宙ぶらりんで、人を参らせるか、何が彼・彼女をそうさせたんだろうと残された家族が自分を責めるか、もうダメなんだろうと思い切れないか、もしやもしやと藁をもすがる思いで待ち続けるか、解るはずです。
そういえば夜に「ちょっと買い物に行ってくるね」と軽装で出ていったまま、同棲中の彼女が帰って来なかった事件って、ありましたよね…。彼女は何キロも離れた場所で、遺体となって発見されたわけだけど。
何となく一晩待って、おかしいなあ帰って来ないじゃん、どうしたんだ?と首を傾げていて、遺体発見後は警察に執拗に尋問されたはずの彼氏、どれだけ辛かっただろう…。
本題に戻って、マネーロンダリング事件の証人っつーのがまた、横幅が広すぎ、品性下劣で警察を愚弄してニヤニヤしているどうしようもない、人でなし。
証人は、香港国際空港を出たばかりの走行中の車内で、明らかにプロの狙撃者の手により、ソン刑事の真横で射殺される。返り血を浴びたまま、奔走するソン刑事。(署内で着替える時間くらい、くれてやれ上司!)
職場では皆に「さわらぬ神に祟りなし」扱いされ、上司にはガミガミ叱られ敬遠され、ソン刑事が安らげるのは、微笑む妻の写真をぶら下げたマイカー内だけ。
それにしてもベニー・チャン監督、「香港国際警察」の主人公・陳國榮といい、よくもまあここまで男を心身共に追い込み、ずたずたにしてパッションの爆発を待つもんだ。……サド?
「香港国際警察」のジャッキー・チェン成龍は泥酔して傷付いた心を麻痺させていたし、ニコラス・チェーという天使が不意に舞い降りてきたけど、
ソン刑事は泥酔することもできず、ワーカホリックになることももはや許されず、幸せだった頃の回想すら、惨めな現実と直面させて心をさいなむだけ。
不意に舞い降りてきたのは、「踊る大捜査線」青島刑事コートのニコ君じゃなくて、大陸から来た死の天使・イっちゃってるダニエル・ンー呉彦祖だったりするのよね。
泣き面に、ダニエル。
うーん、サイアク。
気ままでユーモラスなニコ君と、トレードしてくれーー。
それと、これだけはぜひに言いたい。
香港ってのは、刑事や私立探偵はもちろんのこと、弁護士も実業家も、格闘技と銃の扱いに長けてないとやってけない街なのな(爆)。
ホリエモンや三木谷氏並みのエリートたち、どこで射撃を練習するのかなあ。グアムか、フィリピンか…やはりレスリー・チョン張國榮やアレックス・フォン方中信が出入りしていた射撃練習場ですか?(「ダブル・タップ」ネタ)
「インファナル・アフェア」1と3を見たとき、香港映画もとうとう心理学的アプローチを取り入れるようになったのね…と驚いたりそのビョーキぶりに嘆息したりしたものだけど、催眠を取り入れた「ヒロイック・デュオ 英雄捜査線/双雄」そしてトラウマやストーカー的執着、職業病的葛藤が高じての狂気を取り入れたこの「ディバージェンス」と、どんどん「(中国語の)神経病!」の症状が悪化しているような(泣)。
現代香港人、しっかりするんだー!
同じ東アジアの都市生活者・日本人が到底かなわないほど、おおらかに健康にたくましくいいかげんにしたたかに生きていた南方中国庶民パワーを、今こそ取り戻せー。
この映画では、最後のピースまでちゃんとはまり、観客の好奇心・疑問は全て満たされる。
しかし、完成したジグゾーパズル全体を眺めても、決して美しい絵画にならない。出会うべきでなかった3人の男たちのたどる運命は、取り返しがつかない。重い、物悲しい余韻が漂うだけ。
(何とかならんかったのかのう…)と嘆息も、出るというもの。
重すぎる心の傷をねっとり描くから、辛く厳しい現実に日々直面している観客が「いやもう、おなかイッパイ」って映画館に来ないんじゃないの? 無理からにでも、それなりのハッピーエンドにできないの?と、「ベルベット・レイン」「ディバージェンス」の製作者たちには、ささやいてみたいです。ハッピーエンドはクールじゃないって、そんなこたないのよ?
そして、アーロン・クォック郭富城。
まさに、台湾金馬奨の主演男優奨にノミネートされるにふさわしい、大人の男としての力演でしたよ。

トニー・レオン&ジャッキー・チュン張學友の「ワイルドブリット」に似た、もっとノスタルジックなムードの「ケネディタウン・ストーリー/西環的故事」(90)、アンディ・ラウのふるう剣に翻弄されてもんのすごい顔までさせられた「アンディ・ラウの神鳥伝説/九一神[周鳥]侠侶」(91)、アニメから抜け出たようなキャラクターぶりの「超級学校覇王」(93、未)、ロザムンド・クァンお姉様と一夏の体験をしてしまうヨット・ボーイぶりが可愛かった「夏日情未了」(93、未)あたりから見守って来た(※スクリーン限定)お姉さんも、もしもアーロンが受賞できたら、もらい泣きしてしまうよ。
フリーのカメラマンが居住するマンションの一室の窓から、ダニエルを追って高架の道路に飛び降り、迫る車の前で間一髪で立ち上がり、どこまでもどこまでも走り続ける、手に汗握るシークエンス。
(スタントか? アーロン自身か?)とまばたきも忘れて注視してたけど、ほとんどがアーロン自身でした。
続く、公設市場(北角?)でのダニエルとの死闘(香港ならでは!)の、緩急のリズムも見もの。
10年前の、単細胞で無邪気なアーロン。いい夫、いいパパになれそうだったのに。
ウィリアム・チョン張叔平おじさんを美術形象総監(アートイメージ総監督)として迎え入れると、こんなにも闇夜を彷徨う男たちが、色っぽくも美しくなるのね。
アーロンの、まさにアニメキャラ的なおっきなおっきな瞳、その白目部分が涙で波打ち、うるうるしているのが美しく照り映えて…。うっとりと見とれてしまいましたよ。
ダニエルの、規範に縛られたがらない自由人志向の野生の獣ぶりが、海千山千の女さえ引きつけて情をかけてしまうのも納得できるほど際立って。
「風雲」以来の、アーロンVSイーキンの対決ですよねえ。あれだけ表情に乏しくいつ何を観ても一緒に思えたイーキンの、クール・ビューティーぶりが、今までになく強まっていて効果的で。
アーロン、イーキン+レオン・ライが、客を呼べるマネーメイキングスターに育ってくれないと、トニーさんはお気楽に好きな仕事だけ選んでいられないじゃない。頼んだよ、香港の観客の皆さん!(放言)
テレビドラマ出演の方が印象深いロー・カーリョン羅嘉良、老け役に果敢に挑戦。ていうか、ティーンズアイドルのわが子がいてもおかしくないお年頃なのだ、トニーもアンディもジャッキーも。羅嘉良は顔は端正なのだけど、どこかは虫類的なねとっとした冷たさを感じるマスクで、表情に乏しいイメージだった。しかし今回は感情フルスロットルで、失踪した愛息にこだわりまくる。何だか最近日本で公開される香港映画のお約束と化した、ゲロシーンもこなしてます…。
この父と子、何となく海外帰国子女のエディソン・チャン陳冠希と、実業家ながらスキャンダルまみれのエジパパを連想してしまったんだけど、そんなnancixに平手打ち10発(自分で)。
ええ、こういう映画なら「女は脇! 花瓶!」でも仕方がないと、あっさり受け止めますわん。
アンジェリカ・リー李心潔、まつげの長い大きな瞳と、首の細さが痛々しくてはかなげで、やっぱり幽霊っぽい……。
宮沢りえと一緒に、はかなくも美しい女幽霊を演じてほしかったりして。
ニン・チン寧静はトニーの元カノをしっとりと演じた時代劇「天下無双」より、目元に険のある女になっちゃったかなあ。スキンヘッドはもちろん、全身から野性味と苛立ちを発していて、「天使の涙」のエージェント=ミッシェル・リー李嘉欣と捕らえどころのないはしゃぎ屋のカレン・モクを兼ね備えた、スリリングな存在と化していましたわ。
もう一度、今度は関西の映画館で、ニヤちゃんQooちゃんらと、ワクワク見たいです。
関西公開は、いつになるんだーーー!



関西公開ヨロペコリ〜m(__)m
『ディバージェンス』観に行かれたのですね。良いなぁ〜。私はチケット取れませんでした。日本での配給元が決まっているのですか?じゃあ日本公開まで待ちますか。公開…してくれますよね??
今日(27日)はパン・ホーチョン監督の『AV』を観て来ました。面白かった〜。エリック・ツァンの息子、全然似てなくてしかも二枚目でびっくり(爆)
(この路線やとテンロクかなぁ・・・)
私はあの終わり方好きです。
ハッピーかアンハッピーかは、見た人いろいろ意見を聞いてみたい。
3人が3人ともきちんと活躍しているのがすごかったです。3人そろってみんなかっこいいですね。
「ベルベット・レイン」がハッピーエンドだと思ってしまったのは私だけでしょうか?
「あとは愛が足りない」て、あの映画、愛しかないじゃん・・・。
「ディバージェンス」東京国際で見ました!
ここの熱い書き込みに大賛同の、とても面白い作品でした。アーロンの男泣きには思った以上にやられましたね!
どうやら4月公開が決定したようですよ!
詳しくはまだわかりませんが、また劇場で絶対みて、若干不明だった点を解明しんなければ!
これは、映画祭だけの上映ではもったいない出来の作でしたもんね。
香港映画界、目が離せませんっ。