今回の香港映画祭上映作品について、できるだけ触れるのは、おそらく野崎先生に課せられた使命だったのでありましょう。日本未公開のレアフィルムについてばかり、聞いているわけには参りません。
セシリア・チョン張柏芝入魂の「ワンナイト イン モンコック/旺角黒夜」について、セシリアに「撮影当時の苦労について、お聞かせください」という質問が振られます。セシリア:「演じ方については問題はありませんでした。でもいつも、心が痛かったです。私は中国大陸から香港に来た売春婦の役で、そのような女性はいつも、社会ではバカにされ差別されている対象です。その痛みを表現したかった。心の中でいつも涙しているんです。また殴られるシーンがかなりあったのですが、相手にはいつも本当に殴ってくださいとお願いしました。見る人を騙すわけにはいかないんです。嘘の芝居はよくありません。」
……セシ、そこまで…。
日本の女優なら「顔はぶたないで! 私、女優なのよ!」なんですけどね。
プロ意識の発露の違いが、こんなところに。
セシリア: 「私がこの作品をご覧になる人に伝えたいメッセージは、目の見えない人が実は最もはっきり物を見ていることがあるように、決して表面だけを見ないで、心で見てほしいということです。主人公が心の中でどんなことを考えているのか、そこを皆さんに考えてくれればうれしいです」
野崎:「イー・トンシン爾冬陞監督は自ら脚本も書かれていますね。彼は初めからセシリアさんがこの役を演じることを想定して書いた(=アテ書き)のでしょうか?」
セシリア:「自分はファッショナブルでトレンディなキャラクターで、個性の強いアーティストだと思っていたので、初めは大陸生まれの女の子は到底演じられないのではないかと危惧しました。しかし、爾冬陞監督は『これは君しかできない、まずは君を思い浮かべて、君に合わせて書いた役だ』とおっしゃったので、それを信頼して演じました。自分はかなり完璧主義なんですが、監督がいいと思うかどうかによって」
野崎:「全面的に街中のロケをしていますね。クリスマス前後の3日間という設定、しかも世界最高の人口密度の旺角で。こういうのが香港映画ファンにはたまらないわけです。アクションシーンも多いのですが、こういう街中での撮影にはトラブルがつきまとうのではないのですか?」
セシリア:「いいえ、特にトラブルはなかったようです。演じている時は自分がセシリア・チョンだというのを忘れて役になり切って逃げまくっていたので、トラブルがたとえあったとしても、気づきませんでした」
野崎:「これは王晶監督にぜひ聞きたいのですが、フランス映画のゴダールは、香港映画風にシャンゼリゼで撮影したりしているのですが、隠し撮りなんです。その理由はフランスでは法的な問題があるからでした。一般人のプライバシーに対する考え方が厳しく、すぐに訴えられてしまうからです。ハリウッドでも同様なので、ロケでは交通規制をして一般人を締め出して撮影しています。本物の街中で、生き生きとした街の表情を撮影しているのが香港映画の醍醐味のように思いますが、どうでしょうか?」
王晶:「フランスやハリウッドと違い、香港では法律上では、一般人が映りこんでいても訴えられることはありません。しかし、香港人にプライバシーについての観念が乏しいことでは、悪い面もあります。パパラッチが一つの問題です」
セシリア・王晶:「香港ではいま、アーティストが団結して、(予告編のような)ショートクリップを撮って映画館で上映しています。これは多くのアーティストが観客に向かい、映画撮影のために迷惑をかけても不便があっても協力してほしい、どうかご協力くださいと呼びかける内容です」
毎年恒例、香港電影金像奨授賞式の予告フィルムのようなもの? あああ、それをぜひ連作化してVCDかDVDにして、我々にも見せてくれないかなあ…。
野崎先生、ラストには観客との質疑応答タイムを取ることを示唆して、次の作品に移ります。

野崎:「セシリアさんの主演で、若手でチャーミングな作品を作るウィルソン・イップ葉偉信監督の『ラヴァーズ&ドラゴン/小白龍情海翻波』(04)という映画が本当にとてもいい映画なんですね。『ワンナイト・イン・モンコク』とは対照的な、一種のおとぎ話ですね。本当に可愛いファンタジーですね。フランシス・ンー呉鎭宇が、座頭市がランドセルを背負っているような刺客なんです。セシリアさんが可愛いいことかわいいこと、たまんないほど可愛い。それに、空を本当に飛びまくるんですよ!」
野崎先生てば(^_^;)……熱っぽく語る先生こそ、可愛いですよー!
通訳さん、広東語の「ホー(ン)ゴイ可愛」と訳さずに、日本語発音の「カワイー」と伝えてましたよ。すっかり広東語化してるんですよね、「カワイイ」。
野崎:「ありゃ、ホントに飛んでるのかなぁと、ホントにバカな質問ですけど」(場内爆笑)
セシリア:「この映画の中ではいろんなアクションをこなしました。80%は自分で飛びました。私って体は女性なんですが、性格は男っぽいんです。無理なところだけはスタントに任せますが、ほとんど自分で飛びました」
野崎:「本当に飛んでるんですか!」
セシリア:「ハイ、だって高いところから飛ぶのは好きなんです。ワイヤーワーク、好きなんですよ」
やっぱりねー。高峰秀子さんも自伝で、いろんな監督や男優に「デコちゃんは男だよ」と言われたほどさっぱりとしたサバサバした性格だと自分を評しておられたけど、マギー・チョンもセシリアも、他の女優も、勝ち気で男性を凌駕するほどの激しさ、一徹さ、決断力を持ってないと、あのような過酷な環境での肉体労働はこなせないんじゃないかしらん。かえってトニーら、美男俳優の方が女性的な繊細さを持っているように思うぞ。

そんな感慨にふけっていると、話題は次の作品「ブラック・シティ/黒白森林」に移っていた。
野崎:「王晶監督の『黒白森林』は、やっぱり『インファナル・アフェア』のヒットを受けた、王晶版だと言えるんですけど。アンソニー・ウォンも出てますし、屋上シーンもありますし。比較できるところが多くて楽しいですね」
王晶:「実は『インファナル・アフェア』とは関係ないです。…どこのビルにいっても屋上はありますよ(笑)。まあ、アンソニー・ウォン黄秋生にはある役を演じてもらっていますが、基本的には関係ない。インファナル・アフェアとの共通点は、撮影のスタイル、使用したフィルムの種類が同じことですね。少し照明を落とさないと映らない、白飛びするものをあえて使用しました。たとえば白シャツがまぶしく映りすぎるような。これは、プレッシャーの大きいなかで誰もが仕事をしている、生活しているのだということを表現するためでした」
野崎:「アンソニー・ウォンがピアノで『エリーゼのために』を弾くのが、結構衝撃的なシーンなんですけれども。アンソニー・ウォン、最近の彼はいかがでしょうか?」(笑)
王晶:「彼は最近ダイエットして体重を落とし、ハンサムになりました(笑)。ピアノシーンについては、秋生が演じた役に立体感を持たせたかったのです。(主演の)レイモンド・ウォン黄浩然に、父親の仇と恨み、復讐したいと思っていた相手が、自分が思っていたような人物ではなかったと思わせたかった。結論としては、一番悪かったのは自分の父を殺した人間ではなかったと、レイモンドが気づくところまでもって行きたかったのです」
野崎:「本当に凝りにこったシナリオでしたね。それではまだ23分ほどありますので、皆さんどうか質問をどうぞ」
ううう、眠気に勝てません…質問タイムについては、また次のエントリーで…(我ながら、引っ張るなあ…)



つまらん質問ですが、コメントの部分はすべて
記憶ですか?(ーー゛)
すごいんですすごいんですね・・・
その記憶力私にもわけていただきとうごじゃります。
次回いよいよクライマックスでしょかね〜
楽しみにしております。
インタビュー、丁寧に書いて下さって、読みごたえありますね♪