2005年10月11日

「ベルベット・レイン/江湖」若者のすべて編

 さてさて、「ベルベット・レイン/江湖」若者のすべて編。

 字幕では「イック」なんて表記されてるけど広東語ではイエッ(ク)チャイ翼仔、つまり翼くんとTURBO、ターボくんの愛…じゃなかった、義兄弟愛編です。
 思えばこういうブラッド・ブラザースストーリー、いったい何作見てきたことか。
 実の兄がキレまくった人格破綻者なばかりに、義理の兄貴分チョウ・ユンファに心酔したアンディ・ラウ劉徳華という 「愛と復讐の挽歌・野望編/江湖情」(87)。で、ボスと弟のあまりの仲のよさに、カインとアベルの物語のごとく、実の兄が嫉妬し、ひねくれて続編「愛と復讐の挽歌/英雄好漢」でキレまくる(笑)。
 そして、愛した女より義兄弟の危難を救う方をあまりにもあっさり選ぶ「チョウ・ユンファのマカオ極道ブルース/江湖龍虎鬥」。クライマックス、男たちはぐわし!と抱きしめ合う。
 面倒見のいいアンディ劉徳華兄貴と、何をやってもダメ男くんのジャッキー張學友というイメージを確立した「今すぐ抱きしめたい」。
 もちろん忘れちゃいけない「ワイルド・ブリット」。
 トニー&ジャッキーだと、アンディとよりももう少し、心理的距離が近くなる。
 その後に見るとサイッコーに笑える「亞飛與亞基〜錯在黒社会的日子」。コメディですがよりリアルに、底辺のチンピラの悲哀を描いてる。エリック・ツァンボスも兄貴役で出てるし(爆)。
 他にもいろいろ、いろいろ、まあホンットに飽きもせずよく作るよなあ、と呆れるほど、無軌道・無為な青春を送る香港チンピラストーリーを満喫してきた。
 で、翼くんとTURBOも、その王道を行く関係。

 多分、TURBOとはターボ・エンジン、一度かかったらたちまちすッ飛び爆走暴走してしまう、キレやすい性格からついたニックネームなんでしょう。
 翼くんは、本名から、かな?
 真に怖いのは、キレやすいけど直情径行のTURBOではなく、内に秘めたエネルギーを暴発させたときの翼くん、なんだけどね、実は。
ショーン君の美しい瞳を満喫!
 肝が据わっていて、決断力があって。
 ただしまだ幼いから、童○を捧げた相手のヨーヨーちゃんが借金でがんじがらめと聞けば、大事の前で目立つなといわれているのにバンダナ程度で覆面強盗働くし…。
 一晩に、両替商を何店舗襲ってるんだよぉぉぉ。(看板の最後の文字だけ次々と変えて、同じ店かセットを誤魔化す苦肉の策、笑いました)。あんなショボイ店、日本のおねーさんが換えた数万の日本円程度しか置いてないんじゃないのかー!

 せっかくあんな思いしてやっと入手した銃弾も、あっという間に使い果たすし…ったくもー!
 翼くんの父親も実の兄も、黒社会に生き、黒社会の掟の中で短い命を散らしていった。
 ここんとこは「インファナル・アフェア」シリーズのヤンことチャン・ウェンヤン陳永仁と同じ境遇だ。
 異なるのは、早世したヤンの母親が妾の立場であり、連れ合いの稼業を恐れ、嫌い、息子を遠ざけ正業に就かせようとしたこと。
 だけど翼くんの母親(演じるのは「インファナル・アフェア2 無間序曲」で、ハウの姉にしてヤンの異母姉を演じたクララ・ウェイ惠英紅)は、手元にたった一人残った息子を襲う運命を、泣きも喚きもせずに従容として受け入れる気分のようですよね。
 極道の妻として、連れ合いの斬った張ったにも関わったことがあり、肝が据わっているのでしょう。でないと銃密売業者に、自分の名前を教えろなんて息子にいうわけがない。

 で、パンフレットには翼くんの母親は実は警官だと書いている人もいるのだが、あの制服のエンブレムには、United State何とかかんとか、と確かに読み取れたのだ。警察官は試験を受ける前に、厳しい身元調査を受けるはずで、マフィアの親族がいれば一発で不合格でしょう。
 The Hong Kong Police 香港警務處なら、こんなエンブレムこんなものが制服についてるはずで、第一自宅でずっと制服を着ているのも奇妙だ。
 女なら、制服は脱いでラフな格好になります。
 おそらく翼くんの母親は警備員か、パートタイム勤務の夜警で、正規の警察官ではない。夜勤への出勤直前だったのでは。

 TURBOくんの家族構成や生い立ちは、描かれない。
 翼くんとの年齢差があるのかないのか、小学校などで同級生だったかどうかも。
 ただ気が合う仲間という以上の身内意識を持ち、無我夢中で兄の助勢に行こうとする翼くんを、命を張って止めるほどの思い入れを持つことは、確かだ。
 あの時は止めたのに、男を挙げるチャンスである、鉄砲玉志願くじ引きのときは、止めないどころか手引きをする。
 翼くんが折りに触れ、男を挙げたい、一旗挙げたい、このまんまスーダラにチンピラ稼業をしていたくない、或いはコック見習いとしてどつき回され、バカにされていたくないと愚痴っていたのかもしれない。
 男なら、勇ましくパーッとハデに散りたい、命の炎を激しく燃やしたい、そのためになら死んでも悔いない。
 その心情を理解しきっていたからか、TURBOには相棒を死なせてしまう、二度と会えなくなるという悲壮感がない。
 出陣前に、翼くんが童○を捨てる手引きまでケロっとした顔でしてしまうTURBO、よくよく考えたら、奇妙な関係だ。
 何だかね、特攻隊として飛び立つ前に、基地を出て、遊郭に繰り出して女郎さんに筆下ろししてもらったという大日本帝国の若者たちと、全然変わんないじゃないですか。
 思わず歌っちゃいますよ、♪貴様と俺とは〜同期の桜〜。
 借金に縛られ、年季奉公中のヨーヨーちゃんって、見かけはふぁっしょなぶ〜るだけど、所詮は慰安婦並みの扱いですか? そういうのは、あんまり好きじゃないけどなあ、と唸っていたら、ちゃんといじらしいカップルに描写されていたから、ほっとした。
押し倒して、その後どうすんの?ショーン?

 見た目はイマドキの若者なのに、心根は「義気」を重んじる、妙に古い感覚の2人。
 なんで?
 最後まで見て、やっと、それにも、意味があったんだなあと納得する。
 時代考証をわざと外して物語を軽やかに疾走させるから、観客はクライマックスの交叉にあっと言わされる。
 …まあ、TURBOが耐え抜く凄惨なリンチで、解る人は何となく、ははーん、ということは、と気づかされるんですけどね。

 でも、気づいたと思ったあなた。
 なーんだと思うのは、ちょっと待った方がいい。

 東洋には輪廻思想も、因果は巡るっつー言い方もある。
 因果=今ある事物が以前の何らかの事物の結果であり、また将来の何らかの事物の原因であること。

 本当に、翼くん=洪仁就か?
     TURBO=左手哥、なのか?

 だって、ヤンといい、洪仁就といい、どーしてみんな成人してムショから出ると背が縮むの………(ボカスカドガッ)

 もとい。

 今あるのは、翼くんなのか、洪仁就なのか?
 翼くんの将来にあるのが、洪仁就なのか?
 洪仁就の以前にあったのが、翼くんなのか?
 それとも、いまは亡き伝説の英雄・洪仁就のような奴と言われ、翼くんはムショ内で改名を決意したのか?
水もしたたるいいアンディ

 TURBOは伝説の男・左手哥みたいな奴、と呼ばれ出した、ニュー左手哥なのか?
例のジャケットを着たエディソン 
 もしかしたら、男を挙げたい若者たちに切り刻まれ虫の息で寄り添った、中年男二人が一瞬思い浮かべた、
 今このとき、自分たちが地位も妻子も資産も何も持たない、失うものの何もない、恐れを知らない、
 ただ互いの友情だけを大事に持ち続ける若者だったら、という夢の中の存在だったのかもしれない。
 翼くんとTURBOは。
 もう一度、身も心もしなやかな若者に戻って、やり直せたら。
 二人の男は、薄れゆく意識のなかで、そう願ったのかもしれない。

 だから、翼くんの瞳はあんなに澄んで、輝いている。
 TURBOは意気揚々と、朗らかに振舞ってる。
 女一人の存在ごときで、二人の仲は壊れない。
 固く結びついた、心と心。

 洪仁就と左手哥の決裂に思いを馳せればはせるほど、若者たちの姿は、際立って美しく、はかなく見えてくるのだ。


 もうね、nancixはショーン・ユー君については、映像に見とれるだけで、幸せですわ。
 ナマの本人に会いたいとか、平日に東京で行われるポップアジア2005に行きたいとは思いません(どうして大阪公演じゃないんだよぉぉぉ)。

 よくぞ、香港生まれで香港育ちの若者から、こんなに美しい瞳の俳優が出てきてくれたこと。それだけでありがたい。
 いつのまにか、どしどし出演作が増えていて、めでたい。大陸で撮影された伝記映画「[登B]小平・1928」も見てみたい。

 Flixのインタビューを読めば、彼のお茶目さも闊達さも、よく活写されている。聡明な受け答えが、実に楽しいな〜。
>僕とチャップマンが一緒にトイレから出てくるところを目撃されなくて本当によかったです(笑)。
 ……あれえ? そういえば、誰かさんがノッポの俳優の友人と一緒に、男子トイレの外で写真撮られてナンだかんだ言われてましたね…?
 こらこら。

 こんなショーンくんの瞳が、いついつまでも曇りませんように。
 トニー・レオンの呪縛から放たれ、小粋なラブコメも、大河ドラマも、苦しい恋に悩むラブロマンスも、吉本ノリの香港コメディも、ひょうひょうとやってのけられる環境におかれますように。
posted by nancix at 01:27| Comment(5) | TrackBack(2) | 香港映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
日曜日、見て参りました。
最後の最後にやっと理解できました。
あ〜〜そうだったのか〜〜!やられた〜〜って感じです。
しかし!ショーンのうつむきかげんの表情(きゅ〜ん)を見ると『ショーンのプロモーションフィルム』に見えて私には大満足、ニットの質感が翼くんにぴったりでした。(ファスナーでくっついているんですね。半開きが気になったけど。)ターボを助ける時に現れた翼くんのかっこいいこと!ホテルのベットサイドに立つ翼くんとヨーヨーの映像は目に焼き付いています。
新宿オデヲン(トーアから変更)に行ったのですが、始まる迄時間があったので歌舞伎町のモスバーガーでお茶のんだのですがショーンも来たのですか!!とっても狭いモスなのできっとお持ち帰りだったのでしょうね。
Posted by ユジーナ at 2005年10月11日 06:32
鑑賞後、この落ちに確信が持てなかったわたくし・・・
nancixさんのコメントを読んで、そうよね、そういう考えもありよねと自分がそんなにアホでもなかったかもと思えました。ありがとうございます。(自己満足じゃ)
どちらにしても、この作品、気に入っております。
Posted by 仁仔 at 2005年10月11日 15:52
姐さん!

確かにショーン君のあの瞳、
香港人とは思えない。

インファナル・アフェアーズのパロディ版の
あの、ぶっちぎりぶりにも感動。
(ストーリーは、鼻血もんのシラケ系だと思ったが)

と思いつつも、、、、、

先月、
タイで売られている
「A-Stars」という
アジアのイケメン・フォト・マガジンみたいなのの表紙と、巻頭グラビアには
エディソン君がいっぱいに載っていました。

思わず買いたくなったけど
なんだか恥ずかしくてやめました・・・・・。


それはそうと
同じ雑誌に(カラーじゃなかったけど)
出ていた日本のジャニ系の若者ども、
オール・ヌードすれすれの写真、
やめてくれと思ったのは
私が日本人だから???
Posted by sala at 2005年10月12日 04:29
よくよく読んだら歌舞伎町モスはチャップマンだったんですね。...ついつい焦ってしまいました。
ショーンの瞳が曇らない様、私も願っています。
Posted by ユジーナ at 2005年10月12日 05:54
>どーしてみんな成人してムショから出ると背が縮むの

大爆笑です。座布団5枚!
Posted by 藍*ai at 2005年10月12日 17:40
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