2004年10月09日

「2046」国内外映画評について

nikkansports.com の 相原斎の「裏CINEMA」が結構まともなわかりやすい映画紹介。今週木曜まで読めます。バックナンバーには「インファナル・アフェア」「インファナル・アフェア 無間序曲」もあります。
 登場人物紹介やあらすじは含んでいるけど、これくらいは頭に入れておいて映画を見た方が、混乱しなくてすむかも。
(ただ回想の中のマギーは「黒いチャイナドレス」だったかどうか。モノクロシーンだったからかな?)
 おすぎのコメントと比較すると、受け手の有しているものによって、同じ映画でこうも物語られるかたちが違うのだな、と納得させられる。つまりは映画を年間何百本、何千本見ていても、自分の中身がからっぽだったら、ろくすっぽ人を惹きつけるよい映画評は書けない、話せないということだ。

 中国や香港の映画評は、かなりインテリが書いているので読み応えがある。
 ときどき「花様年華」の設定と取り違えている場合もあるけど(^_^;) ただ長いんだよねえ。ざっと読み流すならともかく、翻訳となると難しい〜。

 こないだから訳して載せよう、載せようと思いながら機会がなかった香港の映画評論家、セッ・ケイ石[王其]の「2046」評(10月3日、4日、5日付の3部作)は、何だかユーモラスなもの。王家衛監督を手馴れた"大シェフ"にたとえ、さながら「2046」は豪華なカーニバル用料理フルコースのようだと言っていた。甘い辛い酸っぱい苦い、全部の味が含まれていると。「2046」は王家衛の作品中でもっとも「俗に媚びる」=大衆に迎合したものだが、とてもスタイリッシュだとも。
 そして彼は追憶する。60年代香港はまさに龍と蛇=大物小者が入り乱れた混乱の世界で、理想のある教養人も往々にして卑俗な市場を対象に、食うために働かざるを得なかった。文壇でもそれは同じで「何でも書いて」こそ食っていけた、毅然として清貧を貫くことはできなかった、あの有名女流作家の張愛玲でさえ「南北和」式の通俗小説を書いたのだ、しかし節を曲げるとは限らなかったと。

 こういうのは香港に活きてきた、現在も生きている人でないと書けない評なんだよねえ。石[王其]さん、弟子にしてください。広東語はできないけど、愛はありますっっ!(無理)

 ちょっと補足しておきますと、
 内乱の続く中国、とくに上海から、多くの文化人が文化大革命発生前後に、迫害を逃れて香港にやってきた。言ってみれば明治時代の東京の文士さまが、港町で荒くれ男や蓮っ葉な下町女が怒鳴りあい、識字率も低く、小説や雑誌なんかヘの役にも立たねえとうそぶいてる南の町(土佐? 高知? 九州? 在住者の人失礼つかまつります)に逃れてきたようなもの。
 
 石[王其]は、トニー・レオンが演じた周慕雲は立体的な人物像で、この映画の長所だと評している。わざと策略を仕掛け自分を「助平」だと自称するが、情義を保ち、人を騙さず欺かず、軟体動物の蛇のようでいて実は良心を失わない男である。博打を打ち卑語で罵るが、紳士の道義をまだ失っていない。頽廃的であってもユーモア感覚を失わないのだ、とも。うんうんうんうんーーーー!(同意ボタン連打)
 
 フェイ・ウォンはいつも、捉えがたい不思議ちゃんの特質を持っているが、今回のホテルオーナーの娘役は猫みたいだ、って。実はこの映画の男女はみな猫風で、梁朝偉は加菲猫=ガーフィールドみたいで、チャン・ツイィーは小さな山猫のようだって。
 ガーフィールドトニーさん……(爆)

 この人は香港ではまだ朝日新聞のように思われている方の「明報」に良心的な映画評を連載しているベテランで、文化不毛の地と言われる香港で長年「香港映画評論人協会」に君臨しているおじさまだ。香港電影金像奨実行委員会にも名を連ねているはず。公式HPを陸離という人と一緒に運営している。著作もかなりあるんだけど、日本語で読めたらいいのになあ…。
 
posted by nancix at 22:09 | Comment(2) | TrackBack(2) | 2046
この記事へのコメント
なるほど〜そういうことだったんですか。だいぶ前だったと思うけど、トニさんが「チャウだけどあのチャウじゃなくって・・・でも、そうでもなくって・・・あれ?」と説明に苦慮されていたのを思い出しました。その後、「別演技のチャウ」という言葉でまとめられちゃってましたが(^^;)
失恋でちょいとグレて(?)はいても、チャウさんはやっぱりチャウさん、ってことなんですね。よかった。
とんでもねー助平親父のはずがない!とは信じてましたけど♪・・・けど・・・ねえ(^^;)

映画を評する人の頭の中は、大きく加点方式と減点方式に分かれるけど、どちらかというと加点志向の私は、やはり辛口の貶し節よりも、いいところに眼を向けてくれる方の評論が、好きですね。トニさん映画に限らず。一度見て「うーん、ハズレ・・・」と思っても、気づかなかった「ここが見所」という紹介を読むと眼からうろこ、輝いて見えることが多いもの。一般向け映画評論は、そういうのが断然いい。わざわざ嫌な思いをしに映画を見に行くんじゃないんだもの。感動に水をかけられたくないもの。相原氏の文は、映画を素直に楽しんで見ておられる雰囲気が伺えて、好感持てます。
Posted by レイ at 2004年10月10日 09:40
2度目の失礼いたします。
いつも楽しませていただき、ありがとうございます。

>南の町(高知? 土佐?

飛行機の機内サービスで「あっぷるジュースとりんごジュースどちらになさいますか?」と聞かれたときのことを思い出して、一人でうけてしまいました(^^;;;スミマセン
Posted by ちま at 2004年10月10日 22:39
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