(またかいーーっ!)と突っ込みを入れたい部分、いっぱいあるんだ。
リフレインばかりで、いっこうにフェイドアウトしないロンド(輪舞)のように、
王家衛作品は決まったモチーフを繰り返す。
地球の裏側でも60年代でも、ホテルのネオン看板は楕円形でないといけないし、

(「ブエノスアイレス」でウィンが一人で泊まっていたホテル。酔ったファイが殴りに行く)

(「2046」の安宿「東方酒店=オリエンタルホテル」。「花様年華」の真っ赤な内装のホテルとは別だった)
そのホテル屋上で、誰もがタバコを吸う。カタギのお嬢さん役のはずの、あのフェイ・ウォンさえもが。
そしてロゴが描かれたガラス窓越しに、トニーはたたずむ。

(「ブエノスアイレス」タバコに火をせがむレスリー、与えるトニー)

これは1968年のクリスマスイブに、日本のカレシに国際電話をかけさせるために、古巣の新聞社にホテル経営者の長女ワン・ジンウェン王靖[雨/文](フェイ)を連れて来た周慕雲。
60年代当時の香港では、国際電話は限られた企業や公的機関でしかかけられなかったのだろう。
ジンウェンちゃんは懸命に、日本人青年に広東語で(だから…日本語でないとTakさんは…)語りかけ、声が小さいと言われたのか叫ぶように話す。
彼女の姿を窓越しに眺める周さん、この直後に絶品の表情を見せるのですよ。
慈愛?
初恋のときめきを思い出したオジサンの郷愁?
愛した人に愛し返されない寂しさ?
その、全部が入り混じったような――。
もうもうもう、その表情だけで、オカズにして飯が3杯食える…
もとい、往復3万円近くの交通費はモトが取れたねっっ。
(本当になあ、トニー出演映画は法外に高くつくんだよなあー)と情けなく思っていた自分が恥ずかしくなるくらい。
すまんかった、周さん。
「花様年華」では、生真面目な人妻に予行演習なんか仕掛けてどんどん罠にかけまくり、まったく何と人の悪い”策士”だと、悪くとってばかりいた。
人に言えない秘密とは、実は誰のことも、自分のことすら愛せない人間なんだということかと思い込んでいた。
だけど周さんの真情は(俺はサンタの気分だった)と心中でつぶやくほど、純なものだったんだよね。
思えば20代のnancixもそーいう海千山千とうそぶくオジサンたちに飲みに連れてってもらい、おいしいものをゴチになり、ウンチクをいろいろ聞かせてもらい、エッチなしで無邪気に楽しく付き合ったもんです。
あのオジサンたち、向こう見ずで小生意気なくせに下ネタに弱いnancixを、どんなふうに思ってたのか?
王家衛は、もっともっと人の悪い女泣かせの男を描きたかったのかもしれないけど、
トニーの個性が、持ち味がじわじわとにじみ出て、知らずしらずのうちに王家衛の設定した周慕雲を凌駕しちゃったんじゃないかなあ。王家衛はいつも「俳優の真の姿を役柄に反映させる」とうそぶいているから。
役者としてはそれでいいのか、自分とまったくかけ離れた役を演じる方がやりがいあるだろうに、と疑問も残るけど。
ちなみに北京でのトーク番組収録中「周慕雲はトニーの実像のような奴だ」と言い張る王家衛の横で、トニーは苦笑するだけで無言だったそう。
(俺はあんなに辛抱強く女を口説くみたいなめんどくさいこと、とてもできませんよ〜)とか思ってたんじゃないかな。
毒舌監督のジョニー・トー杜[王其]峰がまた「フン! いつもの梁朝偉じゃないか! 新味がないぞ、ヒゲつけたぐらいの小手先のテクなんかわしは認めん!」と吼えたとしても、聞く耳も〜たな〜い。
もうひとつ、絶品!と幸せなため息をついたセピアカラーのトニーシーンがあるんだけど、それは見てのお楽しみってことで。
わたしも、フェイとトニーのパートは、このリフレインと交錯の【2046】の中
で最も穏やかでかわいかったですね。ふっと心がほだされるというか。
やっぱりそれは、nancixさんが書いていらっしゃるとおり、トニーの演技に
つきるでしょう。
セピアカラーのシーンは、あの、「無防備なお姿」でしょうか、やっぱり!
ではでは、お礼とご挨拶まで。
nancixさんからトラックバックして頂けるなんて嬉しかったです。ありがとうございました◎
<2046>本当に楽しみに待ってるんです。
さっき、Yahoo!のニュースでキムタクの登場場面がカンヌ版より増えたという記事を読んだのですが、
やっぱり何と言ってもトニーを見なければ!!!nancixさんの感想を読んで強く思いました笑