2007年09月30日

日曜朝の「色、戒」、これで3度目

 待望の日曜日。朝9時からの「色、戒」を試しに見てみることに。
 8時半の回が初回でしたが、さすがに起きられない、朝ごはんが食べられないってばさ。

 夜のチケットは63ドル(958円)でしたが、朝の上映は40ドル(608円)でしたよ。
 ……ていうか、これはアメリカン・エキスプレスカードで映画館窓口でチケットを買ったら1割引に!の割引を適用しての価格でした。普通に窓口で現金で買えば、この10%増しか。

 ちなみに、「色、戒」のチケットには、このように「三級片」なので、入場の際に年齢を証明する身分証明書の提示を求める場合が有るという警告文がホッチキスで留められます。
中国語警告チケット 
 表が中国語、裏が英語。
英語警告チケット

 ……これまで2回の上映では、パスポートを念のため持参していても、身分証明書の提示は求められませんでしたが。……ええ、ええ、どこからどーみても20代以上ですよ悪かったね。

 ちなみにここで、大変遅くなりましたが、楽園男さんの疑問にお応えすると、香港で上映される映画には中国語・英語の字幕は当然付きます。これがなかったらわざわざ香港くんだりまで来て映画を見る価値はありませぬ。DVD買えるまで待ちます。
 使用台詞は全て北京語でしたが、一部広東語と上海語、日本語も混じりました。いずれにせよ、どの地域でも書き言葉は北京語ですので、字幕を読めばどの台詞も意味が理解できます……ただし字幕が猛スピードで消えてしまう(涙)。もうすごい速さです。読みきれない。

 台湾でも、中国語字幕は絶対入ってるはず。英語は…どうだっけ…? 長い間台湾に行ってません。

 そしてレイトショーというか、この日=公開後初の日曜の「色、戒」は、シネコン2館での12回上映。11時40分、午前0時の上映もありました。「色、戒」は上映していませんが、尖沙咀東の「華懋廣場戲院(チャイナチェム)」だったら、曜日によってはもっと遅くの午前1時とか3時上映もあったりして。
 ただし、公開開始から日が経つにつれどんどん上映回数・上映館数が激減しますから要注意。当日の上映時刻も、前日と違ったりするのでWEBもしくは映画館窓口での確認は欠かせません。

 さて旺角朗豪坊内のUA CINEMAS旺角。日曜朝なのに、昨夜と同じ館内は前10列を残してほぼ満席に。今までは若いカップルがほとんどだったけど、年配の男性一人や、大人の家族連れもいる様子で。

 ……そうか、そうなのか。休日の朝っぱらから、君らはトニー・レオンのアレもコレも見たいというのかー!
 正しい香港市民のあり方だ。うむうむ、大いによろしい。それでこそ香港人だ。

 ここで、どんな悲劇でもどんな厳粛な歴史劇でもどこかで笑わないと気がすまない、香港人の笑いのツボをまとめると。

☆老曹ことチン・カーロッ錢嘉樂の登場。……まあ彼はアクション俳優というより、今じゃ人気バラエティー番組「超級無敵獎門人」のレギュラーとして認識されてしまってますから…。

☆香港の海辺で男子大学生らが射撃訓練をしていて、女子2人が見守るシーン。易先生暗殺計画を企ててもう2ヶ月近くになり、苛立った資金提供係兼運転手役の黄石×3(台北藝術大学戯劇系卒の高英軒が演じる)はだいたいこういうことを叫び出す。「こんなに金と時間を費やして、空き瓶1本を撃つのが精一杯か! 邸の借り賃、みんなの生活費、車などのレンタル費、王佳芝の衣装も全部僕が払ってる! なのに僕は運転手として夜通し、車で彼女を待つばかりの役目だ! 実家は僕が妓女に入れ揚げてると思い込んでカンカンだ、仕送りを打ち切ると言って来たんだぞ!」。「もう新学期も始まるし、そうなったら暗殺なんて無理だよ…」とか何とか言ったのは誰だっけ。とにかく観客は大笑いです。

☆標的の易先生が王佳芝の誘いに乗らずあっさり去ったことに気抜けする学生たち。しかし、王佳芝はある決断を迫られていました。
 易先生はそう遠くない将来、再び彼女と2人きりになる機会を持つだろうと、彼女は直感していたのです。
 そして人妻であるはずの彼女が、えーとその、その時にバージンであっては、すぐに芝居を見抜かれてしまうわけで。
 年上の女友だちでルームメイトの頼秀金は、彼女に尋ねます。「あなた、その…男女のことには、経験があるの?」
 男子学生らを見つめ、王佳芝は困惑して尋ね返します。「無いわ。彼らのなかだと、誰が…? あなた方で決めて」
 「梁潤生しか…」
 「…遊郭での体験なんでしょ?」 商売女と寝た男なんて、と嫌悪感を滲ませる王佳芝。
 しかし、憧れの君・[廣β]裕民がまだ童貞で、その方面には潔癖とあっては、致し方ないわけで……。

 ていうか、もう易先生誘惑計画をあきらめればいいじゃない…何もそこまで自分の身を犠牲にすること無いのに…と思うnancixは、レジスタンスにも学生運動家にも永遠になれない一庶民。
 nancixのぶつくさに関係なく、王佳芝は勇敢にも、仲間が寝泊りしている邸宅の一室で、気後れしまくりの梁潤生を相手に、味気な〜〜い初体験を……。
 それにしてものあまりの梁潤生の不器用さに、思い切り笑う香港人カップルたちなのであった。自分らはどうやってん、身に覚えがあるから笑うのか、あそこまで不器用じゃなかったよの安心しての笑いなのかと、内心突っ込み。
 ちなみにこのやさ男・梁潤生こそ、エドワード・ヤン楊徳昌監督の「クーリンチェ少年殺人事件」(91)で主人公小四の友人"飛機"役を演じ、「カップルズ」(96)ではルンルン役を演じたクー・ユールン柯宇倫なのであった。最近では「百年恋歌/最好時光」(05)でも、ビリヤードやってたなあ。

☆1938年の香港で仕掛けた罠が不首尾に終わり、易夫妻が香港から上海に急遽移住することを知らされ、大学生たちがやむなく英国人から借りていた住居から撤去する作業をしているその夜に、かろちゃん…チン・カーロッ錢嘉樂が訪れるシーン。こないだまで香港の貿易商、麥先生に扮していたはずの恰幅のいい欧陽靈文(両親が粤劇の有名俳優という香港男優、ユン・タッチャン阮徳鏘)も、王力宏が扮する[廣β]裕民も「嶺南大学」とデカデカとロゴが入ったランニングシャツ着てるんだもんなー。大学生だとモロばれですよ。ていうか、1930年代に、もう中国の大学生はランニングシャツ着てたのか。そうか。
 帰国後に調べましたが、嶺南大学とは、1888年に米国キリスト教長老会によって、広東省に設立されたミッション系の大学だったんですね。1906年には中国初の男女共学校となり、1938年には映画の通り、確かに香港に移転し、香港大学の校舎を間借りして講義が行われたそうです。終戦後は広東省に戻りますが、1952年に中山大学に吸収合併され、今の広東省には嶺南大学は実在しません。現在、新界屯門にある香港の嶺南大学は、1999年に開校したようですね。笑った観客のなかには、実は香港の嶺南大学卒業生もいたりなんかして。

☆……トニーさんの全力疾走シーン……。余り多くは書かないことにします。
 トニーのことで笑われたのは、それだけだなあ。

 あっ、あと重大な発見が!
 易先生が命令書に細筆でさらさらと署名するシーンがあるのですが、やはり「黙成」と署名していた!
 易先生のフルネームは「易黙成」だったのですね!

執務室にて

 書斎のデスクの背後にある「自由 平等 博愛」の揮毫額、やはり易先生の直筆でした!
 嗚呼、かつて易先生だって、孫文の革命思想に共鳴し、祖国を自分たちの手で変えるのだ、欧米列強を退け、天下国家を中国民衆の手で変えるのだと、血潮をたぎらせたはずだったのに…。

 3度目鑑賞ともなると、当初は衝撃が大きくてクラクラした3度の性交シーンも、だんだんとその意味合いの違いが解ってきた。

 易先生ってば、大革命家であらせられる孫文先生の顔写真入り封筒で、逢引場所のアパートメントの部屋番号を報らせるんじゃなーい!
 この洋風アパートメントが、原作にちょっと触れられる、夫が「集中営=政治犯収容所」に送られてしまった英国人女性の家だってことが、飾られた家族写真でかろうじて見てとれます。……収容所に送ったのも、易先生の指示ですか…?

 ここでの王佳芝の行動……大胆すぎる……。そんな挑発的行為、40年代の人妻がするものなんですかぁ…?
 オイタが過ぎたので、易先生は突如、お仕置きをすることを決意……。

 いやもう、もうね…かつてはトニーファン同士で冗談で言ってたんですよ。
 「トニーには一生、レイプ犯の役は無理だねえ〜。殴って押し倒そうたって、香港女人は一発平手打ちされても『何すんのよ!』って3発ぐらい往復ビンタで応酬するからねー。トニーだったら『ハ、ハイ、ゴメンなさい…』ってすごすご退散するよねー」と。
 「力任せに押し倒そうたって、華奢なトニーだったら女が突き飛ばして蹴飛ばして抵抗したら、簡単にひっくり返ってお目目がウルウルしちゃって、おじゃんだよねー」とか。

 ………嗚呼、あの純情無垢な時代は、もう帰って来ないのか。

 かつて「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー3」でジョイ・ウォンに「…やっぱり下がいい」と告げ、自ら押し倒されてたあのトニーが、「相手が女でもレスリーでも、おまえは下か下敷きにされずには気が済まないのかーっ!」と突っ込まずにはいられなかったあのトニーが、こーーんな行為に及ぼうとは。
 愛の行為とか、情交なんてもんじゃないです。ただただ、こみ上げる憤怒のまま、激情のまま、獣のように肉欲を満たすだけで。
 単なる「交わり」。

 これ、アン・リー李安監督のインタビューやベネチアなどでのレビューで、ある程度想像して妄想して覚悟つけて見たnancixでも、結構(ひえーーーっホントにそのまんまヤっちゃいますか、トニー! 事前の準備運動・お遊び無しで男の欲望を性急に満たそうとすると、相手の方はすっごい痛いもんなんですけどー!)だったのに、予備知識ゼロで「インファナル・アフェア」のトニーさんだぁ♪と見てしまったファンは、どうなっちゃうんでしょ。
 17歳以上でも、湯唯と同年代が見ると、結構トラウマになるかもしれない……。
 (婦人のガーターベルト姿にうひょうひょの趣味を持つ紳士諸君は、うひょうひょ×10倍かもしれないが…。)

 しかし、王佳芝は、タダモノではない。
 ここで、そういう表情を浮かべますか。ううむ。
 女って。

 あんな扱いを受けた後でも、彼女は易先生宅に滞在し続ける。
 4日ばかり放置プレイを受けても、めげない。
 ていうか、ついに夫人の不在の間に帰って来た易先生に「あなたを、恨みますわ…」と泣かんばかりにかき口説いてみせる。
 女って。
 女ってやっぱり、怖い。

 2度目でも、まだ易先生は警戒を解いていない。しっかりと抱きつこうとする王佳芝の顔を何度も突き放し、あえぐ彼女の表情を、自分が与えた悦楽と苦痛による反応をじいっと観察している。官能に酔い痴れていない。カラダはせっせと励んでいるのに、どこかで醒めてる。
 人を信じることができない、裏切りや罠にかけることが日常茶飯事になっている特務の、それが宿命ともいうべきもので。

 最後の逢瀬は、もう男女の体が複雑に絡み合い、絡み付き、放すまい、放されるまいと必死になっているようで。
 歓喜天像や、ロダンの彫刻「接吻」や、グスタフ・クリムトの絵画「接吻」よりもさらに激しくもつれ合い、溶け合う二人。美しいとか簡単に言うな!と自分に厳命したくなるくらい、生々しい。
 そして切ない。二人が共に昇り詰め、易先生もついに低い呻き声さえ上げて高潮に達することができたのに、やっぱり切ない。
 「ブエノスアイレス」(97)からもう10年……老いは確かにトニー・レオンの引き締まったしなやかな体をも、容貌をも徐々に侵食していて。
 
 生まれたての赤ちゃんのように放埓に、精神的に解放され、大らかになれるHしか好きでないnancixには、やはりどう考えても「痛ましい」という言葉しか、見つからないのです。

 この映画を200字以内で紹介しなきゃいけないからって「40年代上海を舞台にした愛の物語」とか「親日家の大物官僚と女スパイの愛憎物語」で片付ける連中が日本には多分いるんだろうけど、nancixはそんな連中を心底軽蔑するぜベイベー。
posted by nancix at 10:00 | Comment(1) | TrackBack(0) | 「色、戒」特集
この記事へのコメント
Thank you so much!!! (涙)

みなが寝静まってから、夜具に隠れるようにして
こればかりはっと、nancix diaryをi-modeで
拝読しておりました日々です。nu.です。
ご無沙汰しておりますです。

も一度っ。

Thank you so much!!! (敬礼)

と、謎のせんきゅーそーまっち連発。

いまかいまかと“信和中心と旺角巡り”後の
「初・体・験」報告を待機しておりましたが
あれよあれよのうちに
nancixさん。。。
もう4回もご覧になったのですね。。。

そうですか。
痛ましいのですか。トホホ。

ひっさしぶりに
艶艶モード全開sexy bombなトニさに逢えるのね
的な、お軽い心構えでは観れないちゅうカンジ
なのですな。

くらしっくスーツなトニさに垂涎、とか
そうゆうんじゃないんですね。。。

どーしよ、どーしよ。
すっかりロンパールーム化しているワタクシに
この試練(・・・なのか?)果たして
乗り越えられるのでせうか?

なーんて。

めっちゃくちゃに
期待、高めてます。
いやー、はやく、こいこい
お正月ー。
て、いつなんでしたっけ日本海。
あ、ちがた、日本公開。

腐乱筆、御赦しを〜
Posted by nu. at 2007年10月09日 23:47
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