「色、戒」の、ベネチアでの中華系メディア限定会見について日本語に訳そうと思いつつ、なんせ長いし内容にかなり触れるものですから思案しているうちに、あっという間に時間が経ってしまった…。
日本の配給会社ワイズポリシーさんのところで何らかの日本語訳が出る予定のようなので、とりあえず保留にしておきます。(それとも中華メディア向けじゃなくて、合同会見の方だけかしら?)
今回は、ベネチア国際映画祭金獅子賞を受賞直後に、祝賀パーティーでアン・リー監督が中華メディアから受けた合同インタビュー(東方娯楽が掲載)を訳してみます。作者は唐小浪。
インタビュー中、監督は何度もタン・ウェイ湯唯のずば抜けた表現力を口にして、彼女自身が自分を大事にしてほしい、メディアも彼女に対して愛護してほしいと訴えたのでした。(トニーのことも愛護してクダサイ…)
なお、授賞式で監督がステージを下りた直後からインタビュー会場までの数百mの移動の間にも、監督の携帯電話はバンバン鳴り出しました。お祝いの電話をかけてきたのはまず湯唯、そしてトニーのトロント映画祭残留組。二人は受賞したと監督に聞かされ子供のように飛び跳ねて喜んだ、というのですが、ト、トニーも飛び跳ねた…? スタッフ、アン・リー監督の家族親族、プロデューサー、友人、そしてチャン・ツイィー章子怡だったのです。「グリーン・デスティニー」出演以来、アン・リー監督とはご無沙汰のはずの彼女の名前を聞いて、インタビューに集まった中華メディアの記者連中は軽くどよめいたと言います。
問い:チャン・イーモウ張藝謀監督はどのように「色、戒」を評価したのでしょうか?
アン・リー:彼は私がタン・ウェイ湯唯を"調教"したことを認め、またこの映画の主題意識についても、この種の人間性の抗争は私のテーマでもあると認めました。唯一の批評は、王力宏の出番がとても少ないというものでした。
問い:中華圏監督がもう連続して2度、金獅子賞を奪取しています。チャン・イーモウもまた中国語圏の映画人です。彼は再びあなたに金獅子賞を与えることに、プレッシャーはなかったのでしょうか?
アン・リー:彼は確かに、初めは自分の華人としての身分に困惑を感じていました。しかしマルコ・ミューレル主席の建議はとても頷けるものでした。彼はイーモウに、以前のことは考慮する必要はない、誰の作品かも考慮する必要は必ずしもない、誰が誰に票を投じてもいいのだと伝え、彼の負担を軽減したのです。
問い:この映画が上映された後の、米国の映画専門媒体の評価は高くありませんでした。あなたはどのようにみますか?
アン・リー:この映画は欧州とアジアではやりやすいのですが、しかし米国では比較的難しいのです。リズム、内容と処理方式を受け入れることができるかの問題なのです。ですから(私の過去)2作の映画も初めは評価がよくなくて、私もさらにオスカーをあえて期待することはなかったのです。(米国アカデミー賞では)6000人余の水準がまちまちな人が、票を投じるのです、誰がどんな結果になるか解るでしょうか? 幸いに、この映画(の金獅子賞受賞について)は、7人の審査員にはいかなる意見の相違もなく、討論もなかったのです。私にとっては大衆が何を言おうと重要ではなく、重要なのは同業者がこの映画に何を感じるかだったのです。
問い:あなたは「安」女郎(アン・リーガール=監督に抜擢され教育されたヒロインのこと、監督と男女関係を結んでのし上がる新人女優のことをも暗喩している)に対してどう思いますか?
アン・リー:もしも私の映画のヒロインの中から評価するのなら、最初の「安」女郎は「推手」(91)の王瀾王おばさんにするべきですね(朱老人が密かに好ましく思う、陳さんを演じた女優か)。私はこのような言い方を気にしません。私は確かに湯唯の身上について多くの心血を注ぎました。私自身だけではなくて、この映画製作チームの精力を全て彼女の身に集中させたのです。私たちが彼女のイメージを保護することも含めてです。彼女自身が自分を大切にして、メディアもまた彼女を愛護するよう望みます。一人の優れた俳優を世に出すのは、本当に容易ではないのです。
問い:あなたは以前、チャン・ツイィー章子怡を起用することを考慮したのでは?
アン・リー:私たちは長年のよき友人です。彼女はいつも私に電話して「ご機嫌いかが?」と聞いてきます。とても善意のある人です。彼女の年齢では、チャン・ツイィーだけが国際的な名声を得る能力を持っています。その他の女優は(海外では)新人です。この役(王佳芝)に関して、私はチャン・ツイィーと少し話したことがありますが、(彼女には)適さないという感じがしました。そこで私に新人を起用するよう促したのです。新人は(与えた)仕事に対してとても真剣で、未知数です。しかし私たちは彼女が誰を演じるかを心配する必要がありません、彼女は王佳芝なのですから。
問い:あなたは、湯唯に「最優秀女優賞」を与えることを水の泡にしたのだと言った人がいます。あなたはこのような事情だと認めますか?
アン・リー:彼ら(トニーと湯唯)は私がステージを下りるのを待って私に電話をくれ、私にお祝いを言ってくれました。私はただ、彼らに対して申し訳ないと言うだけでした。なぜなら金獅子賞を得ると、その他の賞からは(技術的な賞以外は)候補から外されてしまうからです。彼女とTONYは私に電話してくれ、子供のようにうれしそうにはしゃいでいました。私は、湯唯が(主演女優賞をもらえなかったことが)不満で争うことなど、ありえないと信じます。
湯唯がベネチアからニューヨーク〜カナダのトロントに向かった後に、彼女の出身校である中央戲劇學院の先輩にあたり、テレビドラマ「警花燕子」で共演した若手俳優で現在は國家話劇院で働く、ティエン・ユィ田雨(1m80cmの長身!)と、一時北京で同居し結婚を考えるほど愛し合っていたのに、「色、戒」の114日(全撮影日程は118日間)にも及ぶ撮影に没頭するあまりに、別離を迎えたというニュースが中華圏で取り沙汰されています。(トニーは単なる相手役で、関係ないってばさ)
交際・別離の真偽のほどは解りませんが、女にとって確かに恋愛と仕事の両立は難しいもんでして…。アン・リー監督が「この映画のために多くを犠牲にした」とトニー&湯唯に何度も謝辞を述べているのは、そういうプライベートを犠牲にした事情も察してのことなんでしょうか?
2007年09月10日
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ところで、ここに書いてある文章では監督に新人を起用するように薦めたのはチャン・ツィイーのようにとれるのですが正しい解釈でしょうか?
>新人を起用するように薦めたのはチャン・ツィイーのようにとれるのですが正しい解釈でしょうか?
そこが訳していて悩ましいところでして、他のインタビュー抜粋記事を読んでいると「ツイィーと(この役柄について)話し合ったが、出発点では王佳芝は清純であどけない女学生なので(自分としては現在の)彼女には適さないという気がして新人を起用することにした」という書き方をしているものもあれば「話し合ううちに、ツイィーが(自分には)適さないと判断して私に告げ、自分も同意して新人を起用することにした」という書き方をしているものもありました。どれが正しいねん?と今日も悩んでいたところであります。
ベネチア国際映画祭では、ワイズポリシーさんが日本人向け単独会見を設定されたようですので、その時に誰かがちゃんと聞いていてくれればいいのですが…。