いっぱい聞きたい。
あれもこれも気になる。
トニーの発言に対しての監督の言い分も聞きたい。どうよどうなのよ。
というわけで、sina.com.cnが8月17日に掲載した、アン・リー李安インタビューを訳してお送りします。
ズバズバと聞きにくいことも聞いてしまう、日本人的感覚では無遠慮なインタビュアーは、記者の許涯男さん。性別不詳。

全ては愛から生じた
全ては見分ける方法がなかった
「一人の普通の女性が、一つの非凡な任務を与えられた――ある人物を暗殺することだ――彼女は必ず彼の心を捉えなければならず、同時に自分自身を壊した」
以上のキャッチコピーのように、中国語映画界の誇りとする巨匠のアン・リー李安が、全地球を風靡した「ブロークバック・マウンテン」の後、再度へヴィーなパンチを放つのが中国語大作映画「色・戒」だ。
初めて公開された予告編では、そのわずか"黒い1分46秒"の中で、張愛玲が描いた王佳芝、易先生と、枯れて落ちる乱世の男女たちの姿が次々と登場する。交錯する愛欲、彷徨、怨み憎しみと殺戮の盛大な上演は、哀愁と悲しみで千回百転する厳かな挽歌を伴っている。アン・リーが選出したタン・ウェイ湯唯とトニー・レオンのヌードはその予告編のなかで一瞬きらめき、その後で熱血青年が大物売国奴を暗殺しようと謀り、そして計画は全面的に失敗し、"彼女"と"彼ら"は"彼"に捕えられて殺される……ラストの画面は、"彼女"が死の前に窓の外の遠くを眺める淋しい後姿であり、全裸なのだ。
このような映画に惹き付けられないわけにはいかない。絶対に張愛玲からアン・リーの世紀までの「色、戒」を逃すことはできない。この(公開を)ひたすら待ちわびる日々に、我々は米国のアン・リー監督に連絡を取り、彼に独占特別インタビューを行い、最後の瀬戸際の「色、戒」について詳細を述べることにしよう。
【「色、戒」にはまさに異なる尺度のバージョンがある】
記者:映画は現在どの程度進行しているのですか? 9月28日に全世界公開できるのですか? 中国においてもですか?
李:おそらく8月中旬には完成する必要があります。現在は、録音と作曲の仕事を進めている段階です。中国では中秋節(今年は9月25日)前後に上映できるでしょう。私は米国(9月28日公開予定)と歩調を合わせるべきだと思います。
記者:予告編を見ることができましたが、タン・ウェイ湯唯は背中の部分をフルヌードで演じているシーンがありましたね。聞くところによると彼女には3つのベッドシーンがあるそうですが、そのラブシーンはどんな尺度で設けられたものですか? 中国国内の審査制度を考慮して、中国版と海外版を分けて(中国版は)その部分をカットしたりするのでしょうか?
李:全てのシーンはストーリー上の必要から配置されたものです。中国では間違いなく審査制度による制限を考慮することを肯定します。実は世界中の各地にこのような問題があって、各地に異なる基準と国民の(性描写についての)民意があります。制度と級別も一様ではありません。我々は各地で、それぞれの事情に合わせた調整をすることがありえます。中国でどのような級別を受けることができるかは、今はまだ話すのにふさわしくありません。上映される時を待ってまた話しましょう。
記者:ある消息筋の話では、タン・ウェイ湯唯のギャラは7ケタなのだとか? なぜ新人女優にそれほど高いギャラを与えるのですか?
李:私はその情報のニュースソースがどこのものかわかりません。製作サイドが決定したのでしょう。私はただ役柄の角度から見て、一人の演技者を把握するだけです。私は湯唯が確かに王佳芝の役にふさわしいと考えました。だから彼女を選んで用いたのです。その他の事情は、私はあまり考慮しません。
記者:撮影当初、あなたが王佳芝役を選ぶ時に、とても多くの女優の起用を考えているというニュースが流れていました。あなたはチャン・ツイィー章子怡を用いないと言って湯唯を選びました。だから別に映画の商業性を考慮したのでないのなら、なぜ当初はチャン・ツイィーを候補として考慮したのですか? ツイィーはどうしてこの役に適さないのですか?
李:私はチャン・ツイィー章子怡では、この種のストーリーが(身の上に)起こるような女の子らしくないと感じたのです。ですから彼女を起用しませんでした。王佳芝について言えば、私は更に多くのイメージ上の条件を考慮しました。その他のことはあまり考えていません。
記者:かつてあなたは、スー・チー舒淇も王佳芝役に起用しようかと考えたことがあると聞きます。「グリーン・デスティニー」の時の最初の人選でも、スー・チーを選ぼうとしました。あなたがこの女優をとても好きだということを説明できますか? あなたは彼女をどのように評価しますか? 今後彼女を作品に起用することがありえますか?
李:彼女は絶対によい女優です。機会があれば当然一緒に仕事がしたいですよ。
【"易先生"は謎のような人物】
記者:予告編から見ると、トニー・レオンの造型はとても、彼が以前、ウォン・カーワイ王家衛の映画の中で見せた姿のようです。ではあなたはどのように気質と映像の上で、以前の王家衛、スタンリー・クヮン關錦鵬の映画を含むオールド上海映画と区別をつけましたか?
李:トニー・レオンはただスーツを着て、再び旗袍(チャイナドレス)を着た女性と立っているだけでも、皆さんは彼が『花様年華』のなかの人物のようだと思うのですね。実は今回の役柄は彼にとって初めての、全く新しい改変だといえます。彼は中年の人物を演じたことがありません。憎まれ役を演じたこともありません。もしも彼が別の顔を用いてみなさんとお会いすることができれば、私はそれが新鮮な事であるべきだと感じます。この役柄のさらに重要なことは、あのような息吹の上のものです。トニー・レオンにとって、小説を熟読すればできるというものではありません。その年代への理解をも含むのです…私は彼に、他の人と同じように要求しました。
記者:トニー・レオンは彼が演じた"易先生"について、非常に残虐な人間であると同時に、とても男らしく勇ましい人物であると言いました。これは"易先生"という売国奴が小説の中に現した気質で、同時に大多数の人が想像できる人物の質感です。ではあなたはどのように、彼を符号化・イメージ化して撮影したのですか? あなたはまた、どのように易先生という役柄を評価しますか? 彼があなたを最も惹きつけたのは何でしたか?
李:易先生は一種の可能性を代表します。彼は王佳芝のようではありません。彼女のどの一歩も極めてはっきりとしていて、どのショットも全て彼女に従います。易先生は一人の謎のような人物で、彼はどのシーンにも現れるわけではありません。しかし最後にはまた彼の身の上に戻る必要があるのです。ですから私は必ず、各種の可能性を入手することから始める必要がありました。彼の神秘性と可塑性が、私を最も惹き付ける部分です。
当然、トニー・レオンの表現は非常に素晴らしいものでした。彼が結局何をしたかは、言葉では言い表せません。しかし彼の立ち居振る舞いの中から、限りある銀幕の時間のなかで、彼へのとても大きな興味と推測が(時間を)伸ばすことがありえます。トニー・レオンは必ず、この種の可能性からとても多くの準備作業をしなければならず、ほんのささいな手がかりからその種の質感を表現したのです。ほとんど張愛玲の小説と同じように、いくつかの落差を用いて……いくつかのものは合わず、いくつかは飛ばして……その合わないものは、中間でおそらく何かのポイントが発生したのだと推測します。自分の推理と演技に頼らなければなりません…合理的な一歩ずつ進める、表面的な演技ではありません。そんなに簡単なものではないのです。それはとても深い演技力を必要としてこそ、表現できるものです。トニー・レオンはとても素晴らしくやれたのです。
記者:トニー・レオンは彼が「色・戒」の撮影によって精根尽き果てた、撮影終了後も役柄からなかなか抜けきれなかったと話し、「赤壁」に続けて出演する力がなかったと言いました。あなた自身も全力を尽くしたのではありませんか? 心身に何らかの影響はありましたか?
李:シナリオ創作からクランクアップに至るまで、とても長い時間がかかりました。ですからこの映画は私に深い影響を与えたと肯定します。しかし私はトニー・レオンのようではなく、撮影が終わっても何ともありませんでした。次に私は編集に取りかかる必要があり、その間の空白の時間はとても短かったのです。私はすぐに新しいことに取りかかりました。撮影がクランクアップしても私の仕事は半分終わったに過ぎません。いまもまだ途中であると言えるのです。ですから私は精力の3分の2を費やしただけです。長い道のりを行く必要があるのです。ですから彼のような虚脱感は、しばらく感じることはないでしょう。
記者:あなたはトニー・レオンがまた「赤壁」撮影に加わり、周瑜を演じることをどのように評価しますか? 彼はあの役柄に合うでしょうか?
李:それを(私が)語るのはよくないでしょう。彼は一人の非常に優秀な俳優です。彼はどの役柄でも、とてもよく掌握することができると信じます。
【ロマンチックなフィルム・ノワールをどのようにすべきか】
記者:前回の私のインタビューで、あなたは「色、戒」はまさに1本の"フィルム・ノワール"だと言いましたね。そのようなジャンルの映画は昔からハリウッドに存在していました。あなたはこのジャンルの映画の何が最も好きですか?
李:私は早期のフィルム・ノワールが非常に人を魅惑すると感じます。それは光ではなく黒色(漆黒の意味か)なのです。漆黒の底にいる時に一種のロマンチックな気持ちがあって、どの人物もどのようにすべきかわからないでいます。私はあの種のノワールの彷徨が、とてもロマンチックだと感じます。前世紀から5、60年代以降に、フィルム・ノワールは純粋に暗いだけになってしまい、とても苛烈でただ暗さが残るだけになり、何もロマンチックな感情がなくなってしまった。醜くて不潔な一面だけがあり、人間性あるいは情感の面でロマンチックなものを見い出すことができなくなってしまいました。人物の内心の挑戦からどうしたらいいか解らないあの立場のあのような情緒まで、無くなってしまったのです。
私は張愛玲の描いた小説は本来、映画にとても関係があったと感じます。なぜなら彼女は大の映画マニアだったからです。張愛玲を語るのに、とりわけその「色、戒」では、ただ文字を読むだけで映画を読まないわけには行きません。私は彼女が数作の映画を参考にしたと感じます。ロマンチックな愛情映画も関係があり、探偵映画やフィルム・ノワールも関係があったでしょう。彼女の筆法、彼女の線描は全て映画に関係があります。彼女の光と影の運用に対してさえも、人物や進行に対しての、切り口に対してのあのような手法に対しても、フィルム・ノワールに全て関係があります。だから私は30、40年代の映画の中に、必ず幾つかの霊感を探さなければなりません。
記者:あなたは王佳芝と易先生の間に、真実の愛はあったと感じますか?
李:当然ありますよ! 全ては愛から生まれたのです。ただあのような時代背景のもとでは、全てのものはもう見分けがつかなくなってしまったのです。
【父親のイメージを用いてトニー・レオンと王力宏を指導した】
記者:映画はクランクアップしました、現在あなたはタン・ウェイ湯唯の「色、戒」での表現をどう評価しますか? またトニー・レオンの今回の演技をどう評価しますか?
李:彼らの年齢層で言えば、今回の演技は相当よいものです。キャスティングの妙とも言えます。
"王佳芝"を選び出すのはとても困難なことでした。私は再三挑戦しました。湯唯の気質はいろんな面に於いてとても(役柄に)接近したものでした。彼女が受けた訓練は最も多く、8ヶ月は休むことなく続きました。1週間7日、休みなしです。
トニー・レオン自身の程度は比較的よいもので、彼には豊富な経験があり、年齢的にも比較的成熟していました。彼は中国標準語を話す一点で損をしていて、だから彼はその面ではより多くの練習が必要でした。口調や態度も新しくしなければならず、彼が香港でいつも演じているあれらの映画と「色、戒」の時代はとても異なっています。「上海灘」(TVBドラマ版のことか)のようなたぐいとも、とても異なっています。彼は国民党の特務、一人の官僚を演じる必要があり、それらは彼が熟知しているものではありません。ですから彼も訓練が必要だったのです。私はたいてい、私の父親のように彼を教えたのです。
ワン・リーホン王力宏も多くの技量を持っています。彼は米国で成長したので、北京語も彼にとっては第二言語なのです。しかし私は彼がとてもよい教養があると感じました。私が彼に教えたのですが、中国・香港・台湾で成長した同じ年代の子供を教えるよりもさらに習得が早かったです。彼のイメージ上では以前の時代の人物の様子にとても近く、彼の容貌はとても古典的です。私の言う古典とは3、40年代の、五四青年のあの様子です。彼らは徐志摩らの影響を受けて、とても私の父親のようでした。父親がもしも存命であれば90歳余りになります。王力宏の祖父母と年齢が大して変わりません。私は彼に、帰って彼の祖父母や、母方の祖父母を見させ、再びあの種の感覚を復習させました。彼は時々、米国的な自然な表情を露出してしまうので、私は特に彼にちょっと注意しなければなりませんでした。
記者:王力宏が演じた[廣β]裕民は原作の中ではあまり多く描かれていません。映画の中ではこの役柄を膨らませましたか? 聞くところによると、映画では最後に易先生が暗殺者(王佳芝を含む)を銃殺するシーンがあるそうですが、原作では(その末路に対して)ただ一筆(軽く)触れただけですね。どうしてこのような改作をしたのですか? 易先生の残酷さと現実の無情さを突出させるためですか?
李:[廣β]裕民の役柄は、小説ではとても(出番が)少ないのです。しかし彼は一人のキーパーソンです。全ての事は彼によって起こされたのです。易先生もそのようで、私は先ほど、この人物に対する幾つかの理解と見方を言いましたね。張愛玲のこの小説はとても短く書かれていて、もしも真に演じるのなら、本当に不合理でとても可笑しくて、ある意味狂想曲のようです。その真実性はとても疑わしいのです。しかし彼女はそれを注意深く書いていて、内面に多くのものが隠れています。その上彼女も多くのものを避けていて、とても聡明です。ですから私たちはシナリオ上で幾つかの"愚かな工夫"を創作する必要がありました。映画を撮影する時には、我々は張愛玲に代わって考えます。あの無いものの血肉を出して、それの合理性を下敷きにすることで、彼女の内心のものを映画で表すことができると。
記者:なぜジョアン・チェンを易夫人に選んだのですか? あなたはこの女優をどのように評価しますか?

李:彼女で押さえがきくからです(笑)。彼女がいて幸いでした。なぜならあの種の夫人は――上海風の官僚の夫人です、彼女のような年齢層の、30、40歳代の――とても探すのが難しいのです。彼女がちょっと座ると、とても貫禄があって、非常に値打ちがありました。
後半に、続く。
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