2007年07月07日

「傷だらけの男たち」初日最終回鑑賞

 「傷だらけの男たち」初日も仕事、早出だったので30分早い定時ぴったりで帰れる。
 最終回は午後6時40分から。50分前に、大阪のメイン館、OS劇場に到着して座席指定券と取り替え。「空いているのでどこでもお取りできます」と言われる(涙)。先にパンフレットを買う。
 近くのコンビニでサントリー白角水割の500mlペットボトルを見つける。金城クンになって阿頭を見つめる(はぁと)つもりで購入。
 ケンタッキーで軽く食事を済ませ、600円のパンフレットを眺める。東京で、とある方にいただいたプレスリリースと同様、トニー・レオンのプロフィールが「中国広東省出身」「非情城市」になったまま。

 精一杯トニーの正しいプロフィールと「悲情城市」の正しいタイトルを広めようとしてきたnancixに喧嘩売ってんのかこらーーーー!

 トニーは香港生まれの香港育ち、香港のお茶の間で育てられたテレビ俳優から香港映画界に飛び込んだメイド・イン・ホンコンのシティ・ボーイだーーー!
 ラジオ番組のトークの一部を訂正編集させた金城ファンのおねえさま方を見習って、せめて「赤壁」ではおまえら間違うなよコラー!と抗議のメール&手紙を送るべきか…鼻で笑って無視するか…難しいところだ。トニーファンってこわーい、と風評が立っても、大人しい温厚なほとんどのトニーファンの皆さんに迷惑かかるし…。

 あ、でも坂口さゆりさんと久保真由美さんによるエッセイ2篇はよかったな。やっぱり女性にしかわからんのかもよ、この映画の真髄は。バイオレンス描写がネックで、一般人の友人を誘うにも相手を選ばなければならない辛さはあるけれど。

 上映時間10分前に入場しようと階段を上がっていたら、前の回から出てきたらしいカップルとすれ違い、女の方が「なんや、ややこしくてようわからへんかったなぁ」と言うのが聞こえた…。
 香港の、リピーターらしかったカップルたちの方が、大阪よりも民度が高いのか?

 そして場内に入ると、目の前に広大な空席の海が広がる…あああぁぁ…(ToT)

 金城クン、そしてトニーに合わせて白角水割を口に含んでいると、結構飲めてしまった。
 やはり何度見ても、あのタパス「Scirocco」でウイスキー談義に興じ、「うぁーっ」と目を閉じてみせるトニーの飄々とした演技がナチュラルでたまらなく味がある。しかし、3年前ということは実は劉正煕Sir、すでに生涯をかけたあの計画に着手してたわけなんである…。計画を思いついたのは4年前だと彼は後に言ったのだから。それを知った上でウイスキー談義のくだりを見ると「事件を追うように、女性の心も追ってつかめないはずがない」との人生の先輩としての示唆が、実に恐ろしいWミーニングとなって、観客の胸を詰まらせるのだ…。

 おす○が嫌悪感を露わにしようが週刊文○や週刊○日で酷評されようが、トニーにしかあの細やかな、自分の身に揉みこむように妻を愛する姿を表現できっこない。ハリウッド俳優にはあの細やかさはまず無理だ。
 新婚男女の軽やかな戯れ、自分の宝物を危険を顧みず持ち出してくれた妻への愛おしさ、抱擁と労わり……あれも確かに彼の真情だった。演技だとしたら劉正煕総督察って、どんだけ名優やねん!ということになってしまう。

 だけど。

 甘やかな、恵まれた暮らしを満喫する妻の安らかな寝顔を見つめ、惨殺され未来を永遠に絶たれた幼い妹や母を思い起こせば、「何も知らない」ことすら罪に思えて昏い目つきになっても、当然かもしれないのだ。
 無垢なることの罪。
 穢れたこの世で、無垢で純真で幸福でいられることの、罪。

 いったい、劉正煕という人間は、大いなる不幸に巻き込まれた被害者には限りなく優しい、頼もしい刑事だったのだろうか。
 胸を、両手を血まみれにして放心していた阿邦の前に立った時、いったい劉正煕がどんな表情をしてみせたのか。
 すがるように"阿頭"を見上げた阿邦が、堰を切ったように泣き出したのは、その表情ゆえだったと思うのだけど、カメラはただ、立ち尽くした劉正煕がポケットに手を突っ込むわずかな仕草しか捉えない……。観客はただ、その時の劉正煕の表情を想像するしかない。
 観客の想像に任せ、余計な解説を加えて人物を多弁にしない…そこが毎週のように放送されている凡百の2時間サスペンスドラマと異なるところだ…トニーも現場で「この台詞、要らないんじゃないかな。なくても伝わるようにするよ」と提案したりしたんだろうな…。

 トニーのこの映画での抑制の効いた演技は、香港・中国ではなく、日本でこそ評価が高くて当然、とずっと思ってきたのだけどな…。

 それにしても、阿頭、ウイスキーはやっぱ「毒の水」っす。

 終盤の"阿頭、介護生活突入"から、ホスピスで母を看取った記憶がまざまざと浮かび上がり、完全に劉正煕に感情移入してしまった。
 動かない白い足をマッサージし、そのむくみ具合に胸が締め付けられたこと。
 異変に気づいてブザーを押し、看護師さんが駆けつけてくれるまでの、果てしなく長かったこと。
 傍に付いていても、何もしてあげられない、医師と看護師に任せるしかない辛さ。
 「あと○時間というところですね、報せたい親族の方がいれば…」と宣告されて、そんな…だってこんなに必死に、肩動かして呼吸しているのに、これが続かないのですか? なぜ?と茫然と立ち尽くしたこと。

 映画が終わって駅への道をたどっていたら、母の死後、職場に戻り、表面上は通常通り残業していた頃、駅前で外食して特急の隅の座席を確保したら、とたんに涙腺が訳もなく緩んで、声も出さずにただ涙を流していたことも甦った。
 駅ホームでむせび泣きがとまらなくなって、親友のOちゃんに電話で「どうしよ…なんでか、涙止まらないよ…どうしよ…」と涙声で訴え、立ち尽くしていたこともあった。

 病院廊下で食事させ、ただじっと傍にいてくれた阿邦のような存在は、nancixにはいなかったけど…Oちゃんは黙って泣き声を聞いていてくれ、やがて「電車に乗れる? 三宮駅に迎えに行こうか?」と気遣ってくれたんだ…。

 香港で鑑賞した時は、涙も出ないほどズズーーーンと心にキタと同時に(トニー、凄い。やっぱりあなたは凄い俳優だよ!)と、どこかで心が弾んだのになあ…。

 いかんいかん、東京行きの疲れが出たのか。
 劉正煕Sirを見つめるのに過去の私事なんか関係ないし。
 帰宅するとしっかりミネラルウォーターを飲み、布団ひっかぶって寝た。
posted by nancix at 23:55 | Comment(0) | TrackBack(0) | 「傷城」特集
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