2007年04月23日

出演の中国女優が語る「色、戒」撮影現場

 さて、ヴィヴィアン・ウー郎君梅ら、現代中国とハリウッドのはざまでもうまくやっている華人映画人もいるんだなと納得したところで、アン・リー李安監督の最新作「色、戒」撮影現場を経験した中国女優・スー・ヤン蘇岩さんの談話を、ネットの「TOM 娯楽」で見つけたので、ちょっとご紹介。
 残念ながら、彼女がトニー・レオン梁朝偉と絡むシーンはなかったのかな…談話にトニーは出てきません、あしからず。

 このスー・ヤン蘇岩さん、サミー・チェン鄭秀文とレオン・カーファイ梁家輝、フー・ジュン胡軍出演の「長恨歌」(未、東京国際映画祭で上映)にも、ヒロインの女学校時代からの親友役・蒋麗莉役で出演した中国女優です。nancixの目から見ても、劇中の彼女はかなり当時の上海女性の雰囲気を醸し出していて好演だったと思えました。
「長恨歌」での蘇岩と梁家輝
 上海の女学生に扮した蘇岩さんと、レオンはレオンでもイエテルの方のレオン・カーファイ梁家輝。
 蘇岩さんがとっても小顔に見えま〜す。

 実際、この映画での彼女は高く評価され、昨年は「長恨歌」によって第25回香港電影金像奬と、第12回香港電影評論学会大賞では最優秀助演女優賞にノミネートされました。「長恨歌」原作者の女性作家、ワン・アンイー王安憶には演技をとても気に入られ、彼女の書いた本を送ってもらったとか。米国の雑誌「Variety」でも紹介されたことがあるそうです。

 うーん、でも自分でちゃんと書いているというblog「三岩両語BLOG」で、ほとんどスッピン!の彼女を見ると……化粧映えするタイプなのかなあ、と思ったり。
 9月5日生まれというから、現在31歳?には、とても見えない若々しさだけど。
 
 山東省濟南市生まれの彼女は、山東藝術學院戲劇繋表演本科に在学中の93年に、18歳になったばかりで学校推薦を得て、チャン・イーモウ張藝謀監督の「活きる/活着」(94)に、看護師役で出演したこともあります。その後、無事に山東藝術學院を卒業。中国のテレビドラマで活躍すると同時に「愁眉笑臉」(98)「相伴永遠」(2000)など、数本の中国映画に出演してきて、順調にキャリアを積んだ女優なのです。
 彼女が最近出演した映画「結婚七年」(07)は、オーストラリアの映画祭(ブリスベン国際映画祭か?)に出品されたそうです。

 テレビドラマ版「舞台姉妹」の出演契約をした後だったために、彼女が 「色、戒」の撮影に参加できたのは、わずか10日間のみ。しかし彼女は他の映画撮影よりもずっと疲れた、と話します。

 「なぜなら、アン・リー監督の要求は非常に厳格なもので、細部にわたってとても苛烈な要求をされました。ですから私たちはみんな、いいかげんに済ませる勇気はとても出なかったのです。
 この映画では、ヘアメイクの時間がとても長かったんです。毎日3、4時間はかかりました。俳優の造型の上では、アン・リー監督は何も目新しいような変化は起こさず、ただ前世紀の30年代オールド上海の感覚を再現しようと努力したのです」

 ハリウッドでも有名な監督が今回とった撮影方法について、蘇岩はこうも語ります。
 「今回、アン・リー監督は、彼がハリウッドでも組んできたスタッフを連れて来ていました。何が(中国映画界での撮影と)変わったかというと、仕事への態度です。まずみんな非常に真剣でした。しかし一緒にいる間の雰囲気はなごやかで、打ち解けたものでした。普段、撮影のない時間には、スタッフのうちの米国人の録音技師がヨガの本を読むのが好きで、私も一緒にヨガの練習に熱中したんです。私はヨガのポーズをして彼らに見せたんですよ。みんなは仕事上でも互いに励まし合っていました。アン・リー監督は、俳優に演技について意見を言うときには、いつも細い穏やかな声で話すんです。でも彼の語気はしっかりとしていて、意見を堅持します」。

 記者に役柄の決定について尋ねられると、彼女はこう応えました。「『色、戒』のなかでは私の役は出番がとても少ないのです。当時、(所属)会社は(この映画への出演を)少し躊躇していました。いまの私の状態なら、1作の映画のなかで大黒柱的な役を演じることもできるからです。でも最終的に私はやはり、参加することを選びました。主な原因は監督にあります。私自身、非常にアン・リー李安監督が好きだったのです。今回は彼と一緒に撮影ができる機会を得られ、彼の仕事方法を体感することができ、仕事上で大きな収穫を得られました」。

 10日間の短い期間でしたが、彼女は「撮影を通して、私にはやり遂げられたものがあった」と断言します。「アン・リー監督の仕事中の状態が、深くふかく私に影響したのです。その上彼は、私個人に対しても助けてくれ、演技の指導もしてくれ、私にとって収穫はとても大きかったです。ある日などは私一人を特別に残し、私に演技について語ってくれました。それは私自身にとっては、とても大事で重要なことだったのです」。
 また蘇岩さんは、他の監督たちとの違いについてこうも語ります。「彼は中国、香港の監督のどの監督とも異なっていました。私が付け足したことは、監督に肯定してもらえました。私の出番が全て終わると、監督は私を二度ハグしてくれたんですよ。アン・リーは完璧主義者です。撮影中、何か不調和が現れると、彼はいつも撮影を止めて誤りを指摘し正しました。たとえば俳優の化粧の、とても細かい点の問題についてもです。眉毛のどこかがおかしかったら、彼は直ちに指摘します。彼は二度、単独で私を残して、私がもっとうまくできるように、演技を教えてくれました。上手くできて監督の信任を得ることができると、私はとても嬉しくて、とても感動したんです」。

 素直な女優さんですよね…。アン・リーだって教え甲斐があったことでしょう。

 記者が「もっと細部まで教えてほしい」と頼むと、蘇岩さんは少し困ったようです。同じことを繰り返して答えています。
 「アン・リー監督と仕事をした時に私が忘れられないのは、わずか10日間の短い期間の間に多くの収穫があり、体得できたことがあり、感慨深いことや面白いことがあったことです。ただし製作チームが、撮影について秘密厳守を要求していますから、私はいま具体的に、感じたものを話すことはできません。ちょっと残念です。同時に、それらが私の心の中に堆積していることが、とても素晴らしく美しいと感じさせます! 10日間で、私はまた高い水準に挑戦する鍛錬が出来ました。注意力を高めて集中する辛さのなかで、私は監督に最後にはしっかりとハグしてもらうことができたのです。」
 「アン・リー監督は私たち華人の誇りです。彼は仕事のなかに西洋の理念を帯びてやって来て、方式方法は同じようではありません。(私の)役柄自体では、今回のとても多い収穫を発揮できる機会はないのですが、さらに多くを、参加した私自身が感じられたのです」。

 芸能界入りして10数年、何十もの映画に出演し、蘇岩が今まで組んで来た監督は大勢います。なかでもチャン・イーモウ、「長恨歌」のスタンリー・クァン關錦鵬、そしてアン・リー李安は疑いなく最も注目を集めている監督です。
 蘇岩は正直に「チャン・イーモウ作品に出演した時は、チャン監督やコン・リー鞏俐とあまり交流は多くなかったです」と認めます。「しかし彼らとの仕事を経て、私はこの世界での自分の力量を知る事ができました。私自身の理想を樹立できたとも言えます。この世界に入って仕事がしたいと、とても渇望したんです。チャン・イーモウ監督に対しては、私がたどるこの演技者の道の激励者であると言えます」。
 また「長恨歌」については、「その時はこの年代をまたがる撮影で、私は一人の成熟した俳優として撮影過程を経験させてもらいました。また私に才気を見せる機会を与えてくれ、私の更に新しい舞台を与えてくれました。香港の監督と中国の監督の仕事ぶりは違っていて、その中から私が学ぶことは多かったです。その上に、スタンリー・クァン監督は私にとてもよい機会を与えてくれ、私が自分のその年代に近い、成熟した女性の演技をさせてくれたのです」と語ります。

 香港と中国の監督の仕事ぶりの違い、もう少し具体的に言ってほしいな…。

 さて、彼女が「色、戒」で演じた役は、チャン・イーモウ監督の「活きる」と、スタンリー・クァン監督の「長恨歌」の間といえる出番の量なんだそうです。チョイ役ではないけれど、物語を通しての脇役でもない。
 その彼女(しかも31歳)さえ「とても疲れた」というのだから、主役のトニーがもっともっと疲れて(しばらく30年代北京語は聞きたくない…売国奴の役なんてもーやだっっ…当分映画出たくないよぉぉぉ…)と落ち込むのは、当然のことだったかもしれませんね。

 しかも、監督に憧れて10日だけ参加したスー・ヤン蘇岩さんと異なり、トニーにはアン・リー監督の喜怒哀楽が手に取るように解るわけですから。
 せっかくトニーはちゃんと演じたつもりでも「トニー、ごめん。彼女の帽子の角度が…」_| ̄|○。
 せっかくトニーが台詞をちゃんと言ったつもりでも「トニー、すまないが、あの女優の返答がちょっと訛ってる…もう一回頼む」_| ̄|○。
 それに休憩中はヨガまでやっちゃう、気ままでかしましい女優陣&スタッフに囲まれ、口数の少ない男同士の、やや哀愁を含んだ会話もありえたのではないか、と勝手に類推(^_^;)

 それでもトニーが撮影終了まで頑張れたのは、やっぱりアン・リー監督の(絶対この映画をいいものにする、東西の観客が納得するようにきちんと撮り終える)という気迫に共鳴してのことでしょう。そして東西映画人の良好なチームワークに乗せられて、のことなんでしょうね。

 とりあえず「色、戒」が日本公開されたら、蘇岩さんを捜そう、っと密かに心に決めるのであった。
posted by nancix at 00:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | 「色、戒」特集
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