「周瑜役」と断言するところもあれば、台湾「総合新聞網」のようにトニーのマネージメント事務所の澤東公司は「トニーはじっくりと脚本を読み、それから役柄についてジョン・ウーと討論する」と言っているところも。
そして奇妙なことに、本来は金城武が演じると発表されていた映画「孫中山」の孫文役を、突然チョウ・ユンファが演じることになると、台灣電影基金會のチュウ・フウション邱復生董事長(かつては「悲情城市」の製作者)が発表したところによると、この作品で孫文を演じるには大量の英語台詞を話さなければならず、ハリウッドでも実績を築いてきたユンファが適任だし、最も重要なのはユンファのまなざしが、孫文のものとそっくりなことだ、と言うのですが…??
nancixは孫文さんとゆかりの深い神戸生まれの神戸育ちで、地元紙などで写真も幾つか拝見していますが、同じくっきり二重まぶたでも、ユンファ兄貴のいかにも南方中国人のパッチリまなこと、孫文さんの、夏目漱石を連想させる文人の奥深いまなざしは、あまり合致しませんが…。
あまりのタイミングのよさに、記者が邱復生に「ユンファは孫文を演じるために、周瑜役を降りたのか?」と問い質すと、彼はこの映画がまだ準備中であるため、キャスティングに影響を与えないために詳細は語りたがらなかった、とのことです。
さて、かつては米国留学中の大学生の身ながら、夏休みにジョン・ウーのもとで映画のタイロケの下働きを務め、映画界入りのきっかけを作り、
なおかつUFO電影人製作有限公司で活躍時には、チョウ・ユンファ主演作として「裏街の聖者」製作を企画し、米国から香港映画界に戻ってからも小説「待ち暮らし」の映画化をユンファ主演でと企画していたピーター・チャン陳可辛監督は、ユンファの降板&ジョン・ウー呉宇森との決裂のニュースに大変ショックを受けています。
ピーターさんのハリウッド進出に大いに貢献し、「ウインターソング」も共に創った米国人プロデューサーのアンドレ・モーガン氏と共に、台湾で新会社「發行拳發行國際有限公司」(東西のメインストリームの映画を配給する会社だそうで、「TAXI4」の台湾配給も手がけるとのこと)を設立したピーターさん(また会社作ったのかー!)。「赤壁」をユンファがギャラ問題と脚本の遅れを不服として降板したと聞かされ、大いに震撼したそう。
俳優が早くからシナリオに目を通すことと、それに関連して待遇に対する要求を提出するのはごく当然のことであり、誰が誰に対して間違っていたかではない、要するにコミュニケーション不足がもたらした悲劇だと、ピーターさんは言うのです。
「(自分の最新作の)『投名状』を例にとれば、昨年12月1日にクランクインしたときはただシノプシスがあるだけで、今年の撮影終了の3日前まで、完全な脚本はなかった。3大国際ビッグスターを起用することは自分にとってとても大きな挑戦で、幸いに自分自身は独裁的な監督ではない、充分にスターと公平に接したので、とても順調に撮影が進んだ。みんな視点は異なるもので、自分が3人のスターのうち1人とコミュニケーションを取る時は、絶対に傍に来てもらって面と向き合い、じっくりと話し合った。そうでなければスタジオ内で(他人を介さずに本人同士で)互いに携帯電話(レシーバーかもしれません)でコミュニケーションを取ったよ」。
「ジェット・リー李連杰と交わした出演契約も、ハリウッドクラスだよ。多くのビッグ・スターの契約項目は、100を超えるものなんだ。ジョン・ウーもチョウ・ユンファも、映画界で最も紳士的な監督と俳優だと僕には思えるのに。こんなに反目するなんて、これでは"相討ち"になってしまう。本当に残念だよ。実際には何があったのか、僕には本当に解らないよ」。
また、ピーターさんはどの俳優も当然自分の役柄について主観と考えがあり、彼は監督はそれぞれの役柄のバランスを取るもので、それが映画のクランクイン時には俳優に完成脚本を渡せない原因だと言います。「投名状」撮影当時、彼は常にその日の撮影終了時に、俳優が素晴らしい演技をしたと感じ、帰宅後再びその日の演技を元に脚本を書き換えた、そのために完成脚本は撮影終了3日前にやっと出来上がったといいます。
ええですから世界中を飛び回ってるおイソガシ屋のピーターさん、どうかサンドラとも東西各国の映画人とも仲よく、穏やかに付き合って、短気を起こさず頑張るんですよー!
ところで、仕事しながら昨夜〜今朝飛ばし読みした中華圏ニュースを思い返してつらつら考えるに。
一見、ユンファ降板劇に寄せてジョン・ウー支持を表明するかに思えた、4月18日の中影集団公司の声明文と、橙天艾迴公司が出した声明文が、にわかに重要なもののように思われてきました。
「橙天艾迴」名義で出された声明文。
艾迴(アイヴィ)は、AVEXの音読みに近づけたらしい。
内容は先日紹介した、中影集団公司の18日付声明文と似通っています。ラストあたりは会社の宣伝ですけど(^_^;)
映画「赤壁」製作チームは、俳優チョウ・ユンファ周潤發が提出した多くの不合理な要求が原因で、配役変更を決定いたしました。橙天艾迴は映画「赤壁」の最大の投資筋であり、製作チームに完全なる支持を表明し、製作チームに対して藝術創作を尊重し冒涜することなく、映画界の規範となる自信と勇敢なる表明に心からの敬意を表してやみません。同時に、きっとさらに役柄に適した俳優が存在すると信じます。さすが日中合弁企業……いちいち、比喩が大げさだわ。神話に奇跡に飲水想源ですか。
我々は再度申し上げます。ジョン・ウー監督、テレンス・チャンプロデューサーが「赤壁」創作チームを率いていけることを深く信じて疑いません。同時にお二人の高尚なる人格を讃え、彼ら二人がゴールデン・ペアであり、無数の華人を率いて豪華絢爛な映画神話を創り上げた後に、さらに中華映画の奇跡を創ることを信じるものであります。
我々も1作の大作映画の誕生には、必ずや多くの風雨を伴うことをよく知っています。橙天艾迴はまさにその風雨を阻み、力を合わせて映画の成功まで付き添うものです。そして各界の友人の皆さんのお力添えと支持を望みます。
同時に、橙天艾迴も会社として多くの契約芸能人を有しており、これをもって鏡となし、「飲水思源」(水を飲みて源を知る=物事の根源を忘れない、今の幸福を考え、恩人に感謝すること)、自己の良好な芸能道徳を培養し、中国の娯楽産業の発展のために自己の前進する力を発揮いたします。
なぜ、このような声明文を、このタイミングで公にする必要があったか。
単に、ジョン・ウー監督らへの非難を避けるため、投資筋も製作チームも一枚岩になっていることを表現するためだけでなく、これはジョン・ウー監督とテレンス・チャンが、このビッグ・プロジェクトの主導権を完全に掌握したことを強調したい、という意志が働いているように思えます。そしてそれが、もしやトニーら出演決定者への、コールサインなのかもしれない。安心して演技に打ち込める環境を必ず保証する、今後様々な圧力で降板させることなどありえない、との。
これだけの巨額の資金を集め、これだけのスターをかき集めるからには、カリスマ的プロデューサーもしくは監督が舵を握り、独裁的に事を運ぶ方が、まだ事は簡単だと思えます。
「船頭多くして、船山に登る」(指図する人が多過ぎるとかえって統率がとれず意に反した方向に物事が進んで行くことの意)という言葉もございます。野次馬的観点でこの映画の製作過程を見るにつけ、本来はジョン・ウー監督が完全に主権を握り、テレンス・チャンが補佐して操舵していなければならないキャスティングやシナリオ創り、スケジュール組みが、船頭が多過ぎて迷走していたように思えてならないのです。なんせ、中国人は面子だの沽券だのという、面倒なこだわりが先行しますから。
香港時代にもハリウッドでも苦労してきたウーさん&テレンスだけど、現在の中国で&東アジア資本で、こんなにもややこしいことになろうとは…と、異なる種類の苦労を強いられ、とまどうことも多かったのではないでしょうか。
本来、ジョン・ウーとは"夢見る人"であり、ロマンチストであり、商売人にはあまり向いていない方なんですし。
考えてみれば、テレンス・チャンがこっそりとチョウ・ユンファに脱稿前のシナリオを見せたのは、たとえば「傷城」のストーリー創りのために、トニー・レオンの自宅にフェリックス・チョン荘文強やアラン・マック麥兆輝が通って、カンカンガクガクを繰り広げて人物設定や物語の細部を練り上げていったように、ユンファにも創作の仲間に加わってほしいという願望があったのでしょうか。それとも、単なるビッグ・スターの要望に応えただけという意味合いだったのでしょうか。
ユンファが意見を出し、それに合わせてシナリオが書き換えられ、他のキャストが決まるたびにまたシナリオが書き換えられ…テレンスによると、トニーには編成途上の第一稿が、ユンファとほぼ同時に渡されたといいます。それはトニーが「色、戒」撮影のため上海に向かう前のタイミング。
で、トニーはあまり撮影前に監督に雄弁に意見を言う方ではありませんから、とにかく監督の意に沿えるよう、物語にどっぷり浸かり、シーンの相手役の演技リズムや台詞回しを想像してみて心積もりをする。
そして「色、戒」撮影を疲労困憊して済ませ、北京に飛んで衣裳合わせをしながら今後の説明を聞き、やけに分厚い最新脚本を渡されてみると…。2部作になっていた=拘束期間が倍になっていたし、せっかく読み込んだシナリオが、またまたユンファ側の意見を取り入れ次々に決まった配役に合わせても、大きく書き換えられていた…。
そりゃ(勘弁してくれよぉ、今後もこの調子であれこれ変わるのか? もう信頼できないよぉ)と考えますってば。
そして、どうも予期していたよりもこのプロジェクトではジョン・ウーの権限が狭く、投資筋などから様々な横槍が入り、孤軍奮闘しているように、見えてならない。
「傷城」製作日誌でスタッフとトニー、金城クン、シュー・ジンレイさんらがかもし出していた、力を合わせて一つの創造物を産み出すのだ、というムードになりそうにない。
あるいは、トニーは降板を申し入れる時に、ジョン・ウーさんに言ったかもしれない。
「結局、この映画は誰の作品なんですか? 誰に権限があり、誰が決定権を持っているというのですか? 僕はあなたの監督作品だから、出演しようと思ったんですよ?」
ジョン・ウーも映画監督としてはどうにも閉塞的な現状を打開したいと考えていて、トニーに言ったかもしれない。「解った、君の思いを尊重して、降板を今は止めはしない。私にも考えがある。いますぐは無理でも、もしも私に全面的に信頼を寄せられると君が感じられる時がくれば、また一緒によい映画を撮らないか?」
トニーも「そうなれば、次はぜひ一緒に!」と応えたかもしれない。
あくまで、類推ですけど。
そうして、トニーが香港で、金像奨領奨典礼の参加準備を進めている間に、ウーさんとテレンスは各方面からの圧力と死闘を繰り広げ主導権を取り戻し、軋轢の源にいつのまにかなってしまっていたユンファ兄貴の降板を断腸の思いで決定し、さらにそれを逆手に取り、投資会社側にも「我々がこれだけの犠牲を払ったのだから、あなた方にも声明文を発表し、余計な口は挟まない、思い通りにならないからと嫌な噂を流して妨害したりしない、という団結の意を表してほしい」と迫ったのではないでしょうか。
あくまで、1ファンの類推ですけど。
トニーの元に、暗い声でウーさんから電話が、入る。
「ユンファには、断腸の思いでこの映画を降りてもらったんだ…ひどく胸が痛むよ…しかし、このままではせっかく集めた資金を、各投資筋が引き上げ、映画製作が座礁してしまうかもしれない。我々にはどうしても、君が必要なんだ。我々はもう、例の連中を手中に収めることに成功し、言質として声明文を出すように指示済みだ。心を一つにして、このプロジェクトをどうしてもやり遂げなければならないんだ! 一緒にこの映画を創ろう!」
驚くトニー。ウー監督もテレンスも、自分よりユンファが大事なようだと何となく感じていたのに?
しかも、脚本のうちトニーの出番はトニーの手元にある、一度は研究してみた第一稿にある程度戻してもいいという。
ウーさんの哀願と情熱の説得に、ついついほだされるトニー。
いやいや、テレンスさんが掌を返して讃えるように「中国映画史上でこれだけ期待されている映画だから、必ず撮り続ける必要性があると理解し」なんて、実はトニーは深く感じ入ってはいないかもしれない。なんせ「国家の威信」だの「民族の誇り」なんてピンとこない、現代香港人ですから。
古語の台詞を覚える苦労があること、諸葛亮孔明以外の役を演じることになること、拘束期間が長いこと…多くの難関はあれども、やはりジョン・ウー監督を信じて、やってみようと心に決めたんでしょうか?
やはり、男は男の意気に感じて動くものなんですよ。
トニーぐらいになると、ギャラが以前より増えようがどうだろうが、とにかく自分の仕事に打ち込み集中できるかどうかの方が、重要だし。
あくまで、1ファンの類推ですけどね。



AVEXが今日付けで「Red Cliff」についてのプレスリリース出していますので貼っておきます。キャストはトニーが最初で金城クンと続いています。
http://www.avex.co.jp/j_site/press/2008/080419.pdf
当然、この映画に投資した日韓台などの企業や投資家には、逐一連絡がいってるでしょうしね。
(しかし脚本家の名前…ワン・ホリエンてっっ(^_^; 王尢謔ウんのことなんだけど…どこがホリ?)