2004年04月29日

ポーの一族=波族傳奇のこと。

ポーの一族 (1)
ポーの一族 (1)
萩尾 望都
 出張先の福井のビジネスホテルにはケーブルテレビが入っていて、NHKのBS2も見ることができました。以前から気になっていた「マンガ夜話」では、なんと萩尾望都の「ポーの一族」を取り上げていたではあーりませんか。BSこだわり館「THE・少女マンガ 〜作者が語る名作の秘密〜」という特集番組だったのです。思わず最後まで見てしまいましたよ。

 いまでこそ、夢もチボウもない無味乾燥な生活を送っているnancixですが、12〜14歳のときには、いつかエドガー・ポーとアラン・トワイライトが迎えに来て時を止めてくれることを夢見て、窓を開けたまま寝たりもしていたのでした(ただし春夏だけ…爆)。なりたかったのはいつでもメリーベル、もしくはリディア。胴長短足のどてっとした少女だったくせに身の程知らずというしかありませんが「けがわらしい大人になりたくない、これ以上汚れたくない、無垢な子どもでいたい、時間を止めたい!」と強くつよく思い込みすぎていたから仕方がない。
 今では奇声を発して車内を駆け回り、インターホンを鳴らしてはさっと逃げ、ネット上では年齢だけでヒトをそしるため「オバン」「ババア」呼ばわりしてるらしい子どもやティーンズを、無垢だなんて全く思いませんが。 当時、田舎の小学校で「ポーの一族」や「トーマの心臓」を好き、と告白することは、「変わってる」「ヘン」「大人ぶってる」と、バンパネラのように異端者として迫害される覚悟が必要でした。
 番組でも「自分でひっそりと好きだと意識する作品で、ベルばらのようにみんなで盛り上がれる作品ではなかった」との証言がありましたが、まさにその通りでした。誰かが「あんなのつまんないよ」とけなせば、顔で脱力笑いを浮かべていなしながらも、内心そいつの首を絞めかねなかった(^_^;)
 また「掲載当時は巻頭カラーどころか、雑誌のラストに載っていた」と紹介されていましたが、いやトリを飾るのは画力の確かな、テーマ性に満ちた実力派の証しだったと記憶しています。しかし「ガラスの仮面」以前の美内すずえや「スケ番刑事」以前の和田慎二ならともかく、萩尾望都はあまりにマイナー、あまりにセクシャルで哲学的な存在だったのです。おませな女子小学生にとって、エドガーとアランが見交わす視線がどれだけみだらに思えたか。「トーマの心臓」のユリスモールを巡る少年たちのまなざしがどれほど禁断のワクワクに満ちていたか…。

 nancixがずっと疑問に思っていた「ポーの一族」の絵柄の変化(初期の丸っこい、ユーモラスさも兼ね備えた絵柄が大好きだったので、濡れた赤い唇のいやらしいほどセクシャルなエドガーは大ショックでした。まるで素顔のトニー・レオンが突然、メイクしたレスリー・チョンに交代したようで)も、「キリアンの血に深く沈殿したバンパネラの因素を巡る、もっと後の話」の行方も番組で解き明かされ、興味深かったです。nancixは、青年になり研究者助手?になったテオが冷蔵庫にキリアンの血液を保管して研究を重ねているというエピソードの短編を読んだ記憶があるのだけど、あれは記憶違い? 誰かの同人誌だった?
 とにかく「夏への扉」などのSF小説、作家のエドガー・アラン・ポー、ビートルズ、降霊術、英国カルチャー、不老不死思想などなど、小学生のnancixに世界のあらゆることに触れるきっかけを作ってくれたのが、萩尾望都ワールドだったこと、久々に思い出したです。

 ちなみに「ポーの一族」は香港でも中国語版「波之一族」または「波族傳奇」として売られていました。1990年代に信和中心で中古本買ったから、間違いない。いまブラックホールから出てこないけど(^_^;) 「ブエノスアイレス」に焦がれたレスリー迷香港女性の何%かは「波族傳奇」「風與木之詩」の洗礼をモロに浴びていると見た。恐るべし、日本BLコミック
 
 あなたのマンガ夜話
 中国語評論「漫歩在永生不死的哀涼地図中」(要Big-5)
posted by nancix at 23:29 | Comment(6) | TrackBack(0) | 日々のこと。
この記事へのコメント
 こんばんは、『ブエノスアイレス』がきっかけで友人から『風と樹の詩』を紹介され、文庫で一気読みしたという過去があるもとはしです。今もマンガは好きだけど、子供の頃は少年マンガの方が好きだったんですよ。

 こんな感じだったんで、竹宮惠子も萩尾望都も大人になってから読んだのですが、もしリアルタイムで読んでいたら人生観がかなり変わっていたかもしれません。でも実は『ポーの一族』は未読です。文庫では3巻だったと思ったので今度書店で探してきましょう。
 ところで萩尾作品で一番好きなのは『11人いる!』ですね。生まれた星も性格も全く違う連中がケンカしながらトラブルに立ち向かうストーリーにドキドキしながら読みました。チームものマンガが好きってのもありまして。
 
Posted by もとはし at 2008年05月17日 22:33
 ブログでははじめましてm(_ _)m。
 もろにリアルタイムの人でした、萩尾望都も竹宮恵子も。う〜ん、人生変ったかどうかわからないけど、ドキドキしながら新しい号がでるのを待っておりました。「ポーの一族」あたりのとんがった絵が好きでした。「風と木の詩」もリアルタイムで、セルジュに感情移入して読んでおりましたねぇ(遠い目)。竹宮恵子の作品では「変奏曲」シリーズが好きやなぁ。
 萩尾望都の作品は大体好きなのですが、短編、中篇で印象に残るものが多いです。「6月の声」がとても好き、今思い出しても胸が苦しくなるくらい、あ〜、読みたくなっちゃった。今度実家へ行った時に取ってこよう。あと、ちょっとタイトル忘れてしまったのですが、クローン再生した人間には生きてきた過程で付いた疵は再生されないのだ、というエピソードが心に残っております。
Posted by noe at 2008年05月17日 22:33
 訂正:「ポーの一族」ではなく、「小鳥の巣」や「トーマの心臓」あたりのとんがった絵、でした。
 で、そのBSまんが夜話は見逃してしまったのでした。
_| ̄|○
Posted by noe at 2008年05月17日 22:33
おはようございます。
「ポーの一族」「トーマの心臓」私も読んでました(単行本になってから読んだのでリアルタイムよりちょっと時差がありますが、それでも小5〜中1くらい)。竹宮恵子は「ファラオの墓」でファンになったので「風と木の詩」はリアルタイム。「キャンディ・キャンディ」と一緒に本棚に並べてる小学生でした。
「ポー」は友人の家で単行本を読んだのが最初。「これすっごく面白いね!」って言うと彼女は「え〜、ぜんぜんつまらん。あげる」とまさにnancixさんの周りの人と同じ反応でした。その時は1〜3巻(フラワーコミックスだから全5巻だけど、最初に発表された「小鳥の巣」までが収録されていたのがこの3册)をもらって、あとから続きを買い足したのですが、4巻以降は発表年度が下っているので絵柄が変わるんですよね。急に頭身がのびたような、微妙に髪型もちがうような、顔も長いし……でショックだったなぁ、子ども心に。まんが情報誌「ぱふ」は20年位前は研究誌のようなマニアックな本で、萩尾望都特集は今でも大事に持っています。1980年の特集号だったか(うろおぼえ)、研究者になったテオのまんがが載ってなかったかな(すいません、うろおぼえ)。萩尾先生の作品ではなく、アメコミみたいな絵の誰かが描いたまんがだったような。
竹宮恵子はアニメ映画になった「地球へ…」という作品が大好きでしたが、「風木」もビデオアニメになったんですよね。「ガンダム」の安彦さんの絵で。最初はビックリしたけど、作品の世界がかなりいいセンまで表現されていたように思います(今でもビデオレンタル屋さんにありますので、恐いものみたさに是非)。
しかし「ブエノスアイレス」から「風木」へいくルートもあり、とは!nancixさん、無理はし承知でキャスティングしてみてくださいよ〜(笑)。
Posted by 曹雲 at 2008年05月17日 22:33
BS夜話、偶然目にしてお風呂をあとまわしにしてしまいました。
あんなに質の高い、哲学的で文学的な少女マンガを生み出した時代を
誇らしく思いました。どこかうしろめたいようなセクシャルな表現。選ばれたものだけが、理解でき支持できるという優越感。
優等生の仮面をかぶり、えせ文学少女で現実世界に適合できなかったわたしには、あの一連のマンガが理解できるのが秘やかな喜びでした。
でもこんなに長い間高い評価を得られ続けているのだから、けっして選ばれた人間ではないのですが。。。
「ブエノス」はずっと現実で肉感的なので、そこから萩尾望都に至るルートもあるんですね。おどろきました。
ブラピとトム・クルーズの「インタビュー・ウィズ・バンパイア」での吸血鬼像はきれいだけど、健康的でおとなの肉体すぎて、わたしのイメージとはすこし違っていました。
日本女性の精神的な土壌に、萩尾望都や竹宮恵子らのワールドがどれほど大きな影響を及ぼしているかわかりません。
池田理代子、山岸涼子、青池保子・・・独特の世界を持ち、今なお色あせない作品をあの時代に書いた作家たち。
わたしは「少年の愛」が純粋で崇高なものだと、自分の意識下に刷り込まれているのを否定できません。
Posted by みっく at 2008年05月17日 22:33
みなさん、どもども。
みっくさんの>優等生の仮面をかぶり、えせ文学少女で現実世界に適合できなかったわたしには、あの一連のマンガが理解できるのが秘やかな喜びでした。
 かなーりnancixも近いかも…さらに関西人としては「道化」の仮面を被り、おどけることも周囲に要求されるのでした。でないと「優等生だからってお高くとまってる」と非難ごうごうなので(^_^;)
 太宰治の「人間失格」に、道化の仮面を被ることについての記述があり、自分だけじゃないんだなぁと思ったことでした。
 トニーさんが時折り、お茶目ぶりを発揮して周囲を笑わせているとき、本人がノリノリではしゃぎたいからやっている時と、ホントはそうしたくないんだけどしなきゃいけないと思い込んでいる時とがとてもあからさまに解ってしまい、ああこの人も関西人、もとい香港人に生まれたばっかりに、苦労してるのねえ…と思ってしまうのでした。

 日本の誇る少女マンガは、日本女性の精神的な土壌だけでなく、台湾・韓国・香港の女性の精神的な土壌にも影響を与えているかもしれませんよぉ。と言いたかっただけで"「ブエノスアイレス」から「風木」へいくルートもあり"とは言ってないです…「ポーの一族」「風木」があったればこそ、ブエノやトニー&レスリーのカップリングに惹かれるアジア女性たちがいるのかも、と言いたかったのです。ごめんね、解り難かった?(^_^;)
Posted by nancix at 2008年05月17日 22:33
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