2007年02月10日

アン・リーインタビュー拙訳

 遅ればせながら、1月28日付Sina.comのアン・リーインタビューを訳してみました。
 誤訳はご容赦くだされ…。そして言うまでもないことだけど、どちらさまも、まんまパクリはおやめになってね。すぐ解ることだからね。

アン・リー白黒

 映画「色、戒」はまもなくクランクアップを迎える。アン・リーはトニー・レオン梁朝偉、タン・ウェイ湯唯、ワン・リーホン王力宏を率いてきた。彼はトニー・レオンを「全ての監督の夢想であり、私が映画監督になって以来、最も愉快なパートナーだ」と称した。またタン・ウェイを「幾山河を越え、何度も熟慮した末に選び出した神秘的な女性」だと称した。ワン・リーホンに対しての評価は「最大の驚喜」である。
 注目を集める張愛玲の原作「色、戒」はどのようにアン・リーによって銀幕に運ばれるのだろうか。先日、彼は記者のインタビューを受け、あの時にタン・ウェイをヒロインに選んだのは一種の縁というものであると自分から言い出した。なおアン・リーは「色、戒」はもう今年のカンヌ映画祭に参加するには間に合わないと表明した。

 ●「張愛玲の小説は私の出発点でした」

 記者(以下、記):張愛玲の原作「色、戒」のタイトルには(色と戒の文字の間に)読点(、)を用いています。改編して映画にするのに、あなたはどのように区切りましたか? "色"と"戒め"は結局何を代表しているのでしょうか?

 アン・リー:張愛玲は初めはただ単純に分けてみただけでしょう。しかしこのような学問上の隔たりはとても大きく、"色"は単なる"色情"ではありません。ある"色相"の意味なのです。"色相"とは人生の諸々の情欲を代表していて、感覚器官の世界があるのです。
 "色戒"とは仏教家の語る、色情を戒める意味ではなく、"戒"とは物語の中のキーワードになる、あの指輪を代表しています(中国語で指輪は「戒指」と書く)。人は指輪にしっかりと繋がれます。彼の行為にはとても正確な作為が必要です。これは当初は"戒め"の字の語源であり、同時にまた"警戒"の意味もあり、隔たりはさらに多くの想像空間を増やします。その読点には、張愛玲は決して満足してはいません。なぜなら本来それは句点(。)だったのです。しかし当時の出版社はそのような方式を使っていなかったこともあり、出版の際に読点(、)を打ったのです。そこで映画を撮影する時には、私たちは本来の意味を使うべきでした。

 記:小説の本来の姿はもう娯楽性に富んでいて、深刻さも充分足りています。ではあなたはまだそれに対して、どのような改編をすることができたでしょうか?

 アン・リー:彼女(張愛玲)は本来、映画の手法を用いて書いています。彼女は一人の映画ファンでした。ただしもしも彼女の(書いた)文字をそのまま翻訳するだけなら、私は永遠に勝てないのです。最も重要なのは、彼女が道に背く視点で事を見たことが、私に対して一種の震撼を呼び起こしたことです。私はこの物語から逃げられず、困惑させられます。ですから私は映画を撮影する方式を用いて、答案を探したいのです。

 記:ではあなたは、どのように張愛玲及び作品を評価しますか?

 アン・リー:私は張愛玲はとても西洋的だと感じました。彼女の中国語文も英文もとても素晴らしい。彼女は自分が英文の中で学べたものを中国語で表現することが出来ます。この方面で、彼女は全ての作家のなかで最もよい一人で、最も真に迫っています。彼女は西洋映画の手法を用いて小説を書きます。彼女は多くの劇作の手法を用います。甚だしくは抽象的な風格さえあり、当時では非常に先鋒的でした。

 記:ただし彼女の視点はとても女性的ですね。(男性の)あなたはどのように介入しますか?

 アン・リー:この世界にはただ男性と女性がいるのではありません。張愛玲が描いたものは単なる女性の悲劇ではなく、中国人の一種の百年の埃塵なのです。彼女は一人の堕落した貴族であり、彼女の書くものはとても細々としたものです。男らしくて勇ましい種類の作家ではありません。彼女は垣根が壊れた廃墟の中で、わずかな中国の元素を探しているようです。その後、彼女はまた中国を経過して西洋へと越えて行くのです。本来は非常に複雑なのです。張愛玲の小説は私にとって終点ではありません、創作の一つの出発点なのです。

 ●「仕事上では私は易先生のようです」

 記:今回"王佳芝"を選定することは、以前"玉嬌龍"(「グリーン・デスティニー」でチャン・ツイィー章子怡が演じた貴族の娘)を選ぶのと同じようでしたか? それともあなたの人間性に対する見方を照射して、1人の女の子の内心の変化を描きたかったのですか?

 アン・リー:完全に異なっています。王佳芝(「色、戒」のヒロイン))は実は一人の演劇ファンで、彼女は日常生活の中では何も重さはありません。しかし芝居を演じることで、真実の自分を探し当てることができます。これは私自身ととても似ています。玉嬌龍の性格と私自身ははっきりと相反しています。私は私の裏側から彼女を作り出したのです。しかし王佳芝の心の動きは私にとても近い。私も演劇をやったことがあり、その後この道(映画監督の道)に入りました。しかし脳裏では、私はまた[廣β]裕民(ワン・リーホンの役柄)のようでもあり、彼に比べれば私はとても節制するなどなど……。ある一つの(元素)はとても重要で、つまり易先生ですが、彼らも全て私の体の中に存在するものなのです。

 記:易先生? あなたのどんな面がですか?

 アン・リー:私は仕事の面ではそう(易先生のよう)ですね、映画撮影も含みます。時にはどうしても心を鬼にして、どんなことでもしなければならない時があり…。

 記:タン・ウェイの何があなたを動かしましたか?

 アン・リー:私は彼女を一目見たときに、このストーリーが彼女の身の上に発生することがありえると感じたのです。もしも誰かが"王佳芝"と呼んだら、彼女のそのような様子を育てることができます。彼女自身の素質も、ある古典作品を形作ることが可能かもしれません。私はタン・ウェイを選んだ最も主要なものは一種の縁であり、一種の直感です。私は最初に彼女を見たときに、彼女はとても王佳芝のようだと感じたのです。

 ●「私自身がセールスポイントなのです」

 記:ワン・リーホンは以前も映画に出演しましたが、反応は思わしくありませんでした。今回「色、戒」を撮影するにあたり、またあなたが彼の演技に不満だという噂が流れました。まずは、なぜ彼を選んだのですか?

 アン・リー:(笑)彼は歌を歌う者であり、俳優ではないと。私も当初は大きな期待を抱いてはいませんでした。ただ彼のイメージと気質が非常に[廣β]裕民に近かったためです。彼は撮影半ばにようやく出発し、それから彼のシーンは演じれば演じるほど重要になっていきました。私はようやく彼の中に、発掘することができる潜在能力を発見できたのです。ですから私は彼に対して特別に工夫し、彼もその時にゆっくりと納得がいくようになったのです。

 記:トニー・レオンの造型は、彼が演じてきた「花様年華」「2046」などの王家衛作品のイメージと、ある程度は異なっています。しかしあのようなオールド上海の風格はどうしても、人に(過去の王家衛作品と)比較させることになります。あなた自身は、映画の中に似たようなシーンが現れることを心配しなかったのですか?

 アン・リー:(比較)できないことを希望します。あるシーンの演技は(比較を)免れにくいでしょう。彼のその外見は(頭髪を)ポマードで固めて光らせ、口には煙草をくわえて、傍らにはチャイナ・ドレスを着た女性が再び立っているのですから……しかし彼の役柄は、以前とは完全に異なっています。私は彼が最も素晴らしい一度(限りのシーンを)を演じているのだと感じます。

 記:トニー・レオンを選んだのは、商業的な考慮からですか?

 アン・リー:ただ彼がよい俳優だからです。私自身がセールスポイントで、チャン・ツイィーは私も不用であり、私はタン・ウェイを選びました。ですからいわゆる商業上の考慮などないのです。私は本当にトニー・レオンと組んで仕事がしたかったのです。彼は最もよい俳優です。

 記:「色、戒」は今年のカンヌ映画祭に間に合いますか? あなたは残念なことにパルムドールを手にしたことがありません。

 アン・リー:行けませんね、間に合わないのです。私はまた王家衛ではないので、私たちには(ギリギリまで引き伸ばして上映スケジュールを変えさせてまで間に合わせる)方法がないのです(笑)。

 というわけで、中国の記者はさすがに容赦なく突っ込みを入れてきますねえ。日本の配給会社に遠慮しまくりのヨイショインタビュアーとはエラい違いだ(笑)。そりゃオールバックにクラシックなスーツ姿、ヒゲ無しのトニーさんを見りゃ、どうしたって「花様年華」を連想してしまいますよね。でも「花様年華」の周慕雲さんにはインテリの繊細さと紳士の奥ゆかしさと文筆家の少年っぽい夢想と、心の奥底に秘めた激しい情熱と妻への憤怒とほんの少しの意地悪さが備わっていたけれど、漢奸の易先生には……(ナイショ)。

 "色"と"戒"及びその2文字の間の「、」のアン・リー式解釈が興味深いです。確かにネット上で読めた「色、戒」関連記事には、「色。戒」と表記している記事もありましたしね。モーニング娘。より先を行ってたんだ、張愛玲って。(んなわけない、ない)

 だから「ラスト、コーション」と邦題を付けられちゃうと、張愛玲の、アン・リーの"色"と"戒め"について表現した苦心が損なわれそうで、とっても嫌です。漢字の国の人なのに。だいたいさ、コーションって何だよコーションって。中学英語で習ったっけ?誰か何とかしてください…(人頼み)。

 
posted by nancix at 00:08 | Comment(3) | TrackBack(0) | 「色、戒」特集
この記事へのコメント
{Lust}=渇望(心から望むこと)強い欲望
{Caution}=注意 警告
ということはどういう意味になるんでしょう...(・・?)





Posted by YUKI at 2007年02月10日 20:37
わー、素晴らしい!
こういうインタビュー記事があっても
ちゃんと読めないアタシにとっては
目をウルウルさせながら読んでしまいました。
だってアン・リー監督の言葉に感動しちゃった。
トニさんをそんな風に言ってくれて嬉しいな。
早く映画を観たくなりました。
それにしても本当に中国の記者さんたちは
容赦ないし鋭いですね〜(笑)
それにくらべて日本は本当に袖の下でも
もらってんじゃないの?ってくらい
配給会社に遠慮しまくりですもんね(笑)
そんなこんなで、
nancixしゃま、ありがとうです(感涙)
Posted by ガオ at 2007年02月10日 22:01
はじめまして、nancixさん。

記事のトラックバックありがとうございます。
インタビューの翻訳、素晴らしいですね。

また、遊びに来させていただきます〜
Posted by heyelien at 2007年02月12日 21:10
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのTrackBack URL
http://blog.seesaa.jp/tb/33314714
△TOPへ