神戸の観客〜〜。「どろろ」見るよりこっち見ようよーー!

嘆きつつも、面白く興味深く見ましたですよ。
告白いたしますと、nancixはかつて「ビッグコミック」よりも「ビッグコミックスピリッツ」派でありまして、ビッグコミックでの「墨攻」連載時は「画力のあるヒトだなあ、描き分け上手いなあ」と感心しながら立ち読みしてたんですが(買えよ)、何しろ週刊だとなかなか話が進まない。
しかも泥臭いかクセのある人物ばかりで、ちっとも爽やかな王子様だとか、すらりとした美青年だとか、美少年小姓だとかが活躍しない。
主人公が澄んだ眼をした"ヒゲのおっさん"で、見た目はちっとも強そうじゃないのに超人的な跳躍や五感をフルに駆使して智略で活躍するのがミソ、と解ってはいたんですが、やはりオンナとしては美形に弱く。
単行本で一気に読もう、よもうと思いながら月日がいたずらに流れてしまったことでした。
かつて「北朝鮮で大軍勢のモブシーンを撮影する、北朝鮮軍部も全面的協力を約束してくれたよ」と嬉しげにジェイコブ・"ラヴリー"・チョン張之亮監督が語っていたのも、おそらくはこの「墨攻」のことだったんでしょうね。
「北朝鮮だけは関わるのやめとけーー! 拉致軟禁されて将軍様の偉大さを称えるアクション映画を作らされたらどーするんだ! 朝鮮戦争での将軍様の尊父の大活躍を描く映画を作らされたら! 奥さんと娘さんと双子の息子さんがどれだけ心配するかーー!」と叫んだものでした…。
結局、北朝鮮の代わり(というわけじゃないけど)に、ブイブイ言わせている韓国企業が出資してくれて、アン・ソンギ安聖基とアンディ夢の競演が実現して、この上もなくうれしいよん。
若者向け韓国映画「デュエリスト」では、あまりにコミカルな演技をさせられていて(おいたわしや…アン・ソンギともあろう名優が…)と内心ハラハラと涙をこぼしたものですが、今回は渋い!
いつかはアン・ソンギと緒形拳とチョウ・ユンファが異なる立場に立ちながら、熱い男の友情の絆を結ぶアジア合作映画を創ってほしいよ…と密かに願っているのですが、どーでしょうか井関惺(さとる)プロデューサー!
妄想はこのへんにしておいて、映画の話。
荒れた大地で、振り向く寂しそうな幼女に「隠れているのよ、絶対に出ちゃダメ…」と別の少女の声が響く、ちょっと謎めいた冒頭から、すでに「どろろ」とは異なり”映画だぁー!”と引き込まれます。
革離って、北京語ではクーリーって発音するんですね。
頭の中で勝手に「苦力」って誤変換するので、困りました。
粗末な麻衣、粗末な靴(ブーツ?)に厩舎の藁くっつけたまま宮廷で梁国王に謁見する姿は、まさに「苦力」でしたけどね。
その革離は、軍師として諸国に頼られている墨家の一員であり、なぜか墨家のグループではなく単身で、大国・趙の軍勢に蹂躙される危機を迎えた小国・梁の城にやって来る。
趙といえば、「HERO 英雄」の残剣さまと飛雪の出身国であり、まもなく秦帝国に滅ぼされる運命にあるあの国でありますよ。映画「墨攻」ではまだ大国として権勢を誇っていて、燕国への侵攻を目論んで10万人の大軍勢を送り出したわけですが。
燕国と趙国との境にあるのが、小国・梁なんですね。
「HERO 英雄」中国語原作本では、軍師として趙国王に秦に立ち向かう軍略を説いた青年残剣さまに、ヘタレ趙国王が従わず、城を出た残剣さまが血の涙を流して咆哮し、一刺客となる経緯が描かれていましたっけ。
一刺客となった残剣さまが、実の両親及び趙国民の復讐を目指す無名に、そして無名を通じて間接的に秦王に説いた「天下(を思え)」というのも、墨家が説いたという「非攻」「兼愛」の精神に近かったのでしょうか…?
いやしかし、「大国の強大な統率者が天下統一してこそ戦乱の世を終わらせることができ、民の心を安らかにできる」という考えは、墨家の「非攻」の正反対の考えなのか。超人的な力を身につけた残剣さまには、凡人を統率したり弾圧したり政治的術策を謀ったりなんて面倒なこと、できないもんなあ。
浦川とめさんも書いているパンフレットを読んで、いろいろ考えさせられました。
後の趙国王がヘタレなら、「墨攻」の梁国王(ワン・チーウェン王志文)も祖国存亡の危機だというのに美姫をはべらせて酒宴にふけるばかりのヘタレ。確か、老獪な重臣の司徒(ウー・マ午馬)の勧めでだったか、あっさりと趙に「降伏する」と伝える親書を送ったと思う。なんせ10万人の大軍勢に対し、梁国は全住民足しても4千人…。
梁適王子と牛子張将軍(チン・シウホウ銭小豪)だけが、危機感を露わにします。国王直属近衛兵の騎馬隊を率いるオスカル…じゃなくて女戦士の逸悦(ファン・ビンビン)もです。
…って、おおっ! さすがはラヴリー・ジェイコブ。ちゃんと香港から昔なじみのチン・シウホウ銭小豪を起用しているではないですか。
銭小豪、銭嘉楽(チン・カーロッ)兄弟といえば、幼時から武術を学び、80年代から90年代にかけて主演級のアクションスター兼アクション指導者としてならした兄弟。兄の方がすっきりと整った容貌で、女性にモテモテでスピード感溢れるアクションやカースタントを魅せてくれていましたよ。「セブンスカース・七番目の呪い/原振侠與衛斯理」(86)ではチョウ・ユンファ演じるウェスリー衛斯理の助手・原振侠の役とはいえ、実質的には主役として大活躍でした。懐かしいなあ。ジェイコブ・チョン監督とは監督の作品「玩命雙雄/Goodbye Hero」(90)で、身体障害者になってしまった元スタントマン役を演じて以来の縁なのかなあ。イー・トンシン爾冬陞監督とは縁が深いようだけど、アンディとは共演したことあっただろーか?
そして名バイプレイヤーとして、台湾と香港で活躍したウー・マ午馬さん。「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」シリーズで人気を呼んだら、さっそく台湾でモドキ映画を製作し出演してたっけ。監督・映画製作者としてもベテランです。最近あまり見かけなかっただけに、何もかも、懐かしい…。
梁適王子に侮られ「墨家に送ったはずのナントカ玉を持っていない」と疑われ、厩舎にしか泊めてもらえない革離。平気のへいざで飼い葉桶に藁を詰め込み、寝台にしてさっさと寝てしまいます。……ん? 飼い葉桶? まさか救世主イエス・キリストになっちまうのでは…?
なりませんでした。しかし趙国の先遣隊を率いる高賀用隊長(将軍?)の出鼻を、逆光で放った1本の矢でくじき、弓隊の一兵卒・子団(ニッキー・ウー…っていうかウー・チーロン呉奇隆)の信望を得て、国王に要望してついには戦略に関する全権を得ることができました。
……さすがは元アイドルトリオ・小虎隊のニッキー。「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのレゴラス王子ばりの気品と凛々しさで、戦場に咲いた一輪の花と化します。
…花と思ったのはnancixだけか?
革離は巧みな演説で国民の危機感を煽り、老若男女に囚人まで大動員して、食糧や物資をかき集めます。一兵卒の子団の抜擢に気を悪くし、弓の腕勝負を挑む梁適王子は、さすがに「宮廷女官 チャングムの誓い」でラスト近くにミン・ジョンホとの弓勝負を挑んだ"王様"晋城大君と同じ国の人…。いやいや。
マクダラのマリアならぬ逸悦に付きまとわれ、困惑するストイックぶりは、いつものアンディ映画のノリですな。どうも逸悦の甲高い声が耳障りで、柴崎コウと声だけトレードしたかったです。
趙軍の偵察に出ようとした革離に付きまとってペラペラ話しかけて離れない緊迫感ゼロのシーンは(絶対このオンナ、足を引っ張るって! 絶対人質になっちゃうでしょー! あーもう、オンナは邪魔! 革離はむしろ子団ともっと親しくなってくれ〜い!)と思わせられてしまいましたよ。
他の中華圏映画では賢くて凛々しい女の活躍に大喜びさせてもらってるのに、アンディ映画だけ、何でだかそう思っちゃうんだよなあ。だって、後半の巷掩中将軍(アン・ソンギ)との対話、アンディあまりに近づき過ぎじゃない? 異様に男と男の顔の距離を、詰めてましたよ?(カメラワークのせいなんでしょうけど…)
案の定、革離と逸悦が絶壁に追い詰められた時は(……どうせ「PROMISE/無極」のチャン・ドンゴンとセシリア・チョン張柏芝の二の舞なんでしょー!)と予想がついたり。
ただし、水面に浮かび上がった革離が、気絶した逸悦を水を吐かせて蘇生させるシーンは、後の伏線になるんですよね…。
さらに、ジェイコブ・チョン監督らしいなあと思ったのは、戦闘後の死体の始末を、映像で見せたこと。原作にあったのかもしれないけど、他の監督なら真っ先にカットしそうなものなのに。
名も無い民衆が将兵の甲や甲冑を剥ぎ、積み重ねて、死体は城外に埋めるというところまで映像で見せるんですよ。今までの中華チャンバラ映画だと、歌舞伎か京劇のごとく死体は舞台脇まで自分で下がるのかーっ!と突っ込みたくなるほど片付いていたじゃないですか。チャン・イーモウ張藝謀の「満城蓋尽黄金甲」なんて(イーモウ、ゲーム脳にでもなったか!)と叫びたくなったほど、何百万何億もの名も無き将兵をプレスして殺して、宦官のような連中がきれいさっぱりと片付けてましたからねー。敗者の人命など何とも思っちゃいない。だからマスゲーム好き、全体主義の連中は嫌いよ。
「もういくさはいやだぁ」と妻子を連れて脱走し城外に抜け出したものの、赤ん坊が激しく泣き出し趙兵に見つかり、さらに苛酷な運命に見舞われる農民数人も、重要な登場人物として描かれます。泣き声を止めようとおくるみで鼻と口を塞ぎ、守りたかったはずの赤ん坊を窒息死させてしまうのは、満州でソ連兵に追われた開拓民、沖縄の自然洞窟で米兵に見つかるのを恐れた住民、空襲下で気が立った防空壕内の市民の間でも起こった悲劇……。つ、辛い。
いつもいつも、いくさで、天災で酷い目に遭うのは、最前線の一兵卒や無力な庶民ばかり。超能力者でもなければ、あっけなく命を落とすばかりなのですわ。戦争になれば真っ先に犠牲になると自覚しているnancixとしては、そりゃ「血沸き肉躍る武侠たちのスカッと痛快大活躍劇」もワクワクするけど、どっちかというとジェイコブ・チョン監督の視点の方が身近なんだわ…。
映像が一瞬、フォトショップでフィルター加工したような油絵調になるのも、そういった戦の無残さ、苛酷さを表しているかのようで、やたら映像加工していて(そんなに元絵のままだと間が持たない、時系列が混乱すると自信がないのか!)と失笑してしまった「どろろ」よりも効果的でした。
しかーし。後半になり、革離が梁国王や重臣の司徒のせいで追放され、革離に心酔していた子団や逸悦、農民の一人の蔡丘らが捕らえられてからの展開が、どうもねえ…。
アンディ革離、五感をフルに使って逸悦をさっさと見つけろよーー!
ていうか、彼女の名前を連呼して駆け回るようなオロカな真似をしている間に、「逃げたなー!」と友軍に虐殺されていた無力な女子供をもっと助けられたんじゃないの? 「兼愛」というより、それじゃ執着に過ぎないんじゃ…。非常時に、男女の愛なんて実らないもんっすよ? 軍師に愛を語らってるヒマなんかないはずでしょ?
かなりイライラさせられましたです。やっぱり「女は、邪魔!」なんだよね…アンディ映画を見てると…って、nancixだけか、そう感じるの。
そして、ラストミステリー!
子団は垂直に立った剣の下に倒れ伏していたのか、それとも部下を置いて、たった一人でいずこへともなく去っていったのか…?
解りにくかったです。余韻を持たせすぎ、でしたかねえ。
全体的には、投降したはずの将兵の虐殺や五体馬裂きの刑などの残虐シーンは、上手に一部しか見せずに処理していたのもあって、それほど重苦しい作品にはなりませんでした。これならハリウッドに持っていっても拒否反応は示されない、かな…?
エンタティーメントとしての視点を保持しながらも深い、そんな映画に完成していましたよ。
だから、もっと日本の観客に入ってほしいんだけどなあ…。



私も全体的に殆どnancixさんと同じ感想です。
時代劇ドラマで鍛錬してきただけあって、ニッキーはナイスでした。母親のような気持ちで観ていた(爆)。ビンビンちゃんは物語的には要らなかったです(そこに紅一点を入れるのは商業的な見地からか)。小説もコミックも、圧倒的に紀元前ハードボイルドなテイストなのに。
ところで私も「くーりー」にはしばらく苦しみました(笑)。
香港映画が好きで、いろんなブログをのぞいているうちに、こんなすてきなブログにたどりつきました。
さて、墨攻ですが、先日めずらしく月曜が代休で休みが取れたので、中国地方のとある映画館で観ました。平日なのにけっこうお客さんは入っていて(年配のご夫婦がおおかったかなあ?)ちょっとびっくりしました。
感想は・・・私の言いたかったことがほとんどここに書かれていて、感動!
ウー・マさんの場面で、ひとりにやりとし、梁王の演技にうなり、そして、劉徳華に満足。
それからビンビンちゃんの声を、柴咲コウとトレードする案、それ、いいですね、大賛成です(笑)。
また、ちょくちょく、おじゃまさせてくださいね。
本日、大阪某所で見ましたが、結構大きな劇場でほぼ満員でした。
おどろいたのが、いつもの中国系映画とちがって、客層年齢が以上に高くてシルバーがかなり。アンディ主演の映画でなぜ???と疑問に思ったのですが。
隣の日本人爺さんにいっしょう懸命映画の説明をしているおば様。韓国語なまりの日本語で「アンソンギさんが」「韓国で有名な」等等の単語が小耳に届き、ようやく事の次第を納得いたしました。
さて、昨日「墨攻」を有楽町で見てきましたが、大入り満員でしたよ!ここは全席指定なので上映1時間前に席を取りに行ったのですが、この時点で前方の数列及び2階の後方しか空席がなく!
仕方なしに2階後方席を購入しました。でも、それだけ沢山の人が観に来てるんだあ〜、と香港映画ファンとしては嬉しかったですね。
それに、大型スクリーンで迫力のある映像でしたから、2階後方でも、全然差し支えありませんでした。
映画については、いろいろ思うところもありましたが、長くなるのでまたの機会に・・・。
この映画を見るまで全く知らなかったので、ウー・チーロン要チェック俳優となりました!
で、子団の最後ですが、てっきりあれは、もう戦いはやめるという意味で、いずことも知らず去っていったとばかり。ホントのところ、その後はどうなったのでしょうね。
ぐれーすさん、そうかあ、口コミでよさが伝わって観客が増えたんならしめたものですね。
tomozoさん、そうですよね…まさか中華圏ではディレクターズカット版とか完全版が出ていて、謎が解けるってわけじゃ……ないですよね…?(^_^;)
絶対に観て!と久々に人に勧めたくなる映画なので色々な方の
感想を読ませていただいてる旅の途中のものです。
>厩舎にしか泊めてもらえない革離
コミックは読んでないので分からないのですが小説を読むと
墨家の人たちは贅沢を排していて質素を好むとのこと、
革離は自ら厩舎をリクエストして泊まったのではないでしょうか。。。
確か梁適王子が「あの処遇でいい」と言うセリフがあったと思ったの
ですが(不確かです。確かめる為に再度観なければと思いました/笑)
細かい所に突っ込んですみません^^;
小説のストイックさが非常に気に入っているもので・・・。
梁適王子もかなり違うキャラになっていて少々びっくりしたのでした。