2005年04月29日

ハリウッドリメイクは成功するか?

 実を言うと、nancixは4月上旬の香港行きのキャセイ・パシフィック機内で、日本語吹き替え入りの「Shall We Dance?」を一足早く見てしまいました。
Shall We ダンス? (通常版)
 周防正行監督の「来跳舞[ロ巴]」…じゃない、「Shall We ダンス? 」(96)は、小ネタのたっぷり詰まった大好きな邦画。
 周防作品は香港でもロングランになった「五個相撲的少年」こと「シコ踏んじゃった」も「ファンシィ・ダンス」も好き。
 そりゃ香港電影金像奨に周防夫妻が招かれても当然だよなーと思ってますですよ。レスリー主演の「色情男女〜夢翔ける人」でも、周防さんの監督処女作「変態家族兄貴の嫁さん 」を、ダビングビデオだかVCDだかで見ながら「あの有名監督だって、ピンク映画出身なんだ」とレスリーが職人気質の撮影監督に教えられるシーンがありましたよね。
 『Shall we ダンス?』アメリカを行く
 もちろん、周防監督が書かれた「『Shall we ダンス?』アメリカを行く」もむさぼるように読み、へえと感心したり「えーっ!」と仰天したり、監督と一緒になって憤慨したりしたものだ。
 この本には様々なことを教わった。当時の日本では、監督にはこの映画の海外配給に関して何の権利もなかったこと、米国人は基本的には字幕入り外国映画を見たがらないこと、米国ではスクリーニング(試写)とそのアンケート調査によって、作品をどんどん編集してしまうこと、ミラマックス社とはどんな会社かということ。これは後に、ミラマックス社が全米配給権を取得したのになかなか「英雄〜HERO」を公開せず塩漬けしていたとき、心構えするのに大いに役立ちましたわ…。

 そして、たびたび報じられていながら「リング」や「呪怨」と違ってなかなか実現しなかった「Shall we ダンス?」ハリウッドリメイク。
 主演がリチャード・ギアとジェニファー・ロペスという情報からして、椅子から転げ出したんだけど。
 実現しちまったよねえ。
 しかも、こんなにもオリジナルに忠実に、日本でしかありえないシチュエーションだと思い込んでいた「通勤電車の窓から見上げる、憧れの女」までそのまんまだとは。
 でも英国ブラックプールでダンスの「全英選手権」をきちんと取材・撮影し、欧州では伝統ある社交ダンスと、「日本的なしみったれ感」満点の社交ダンス教室のギャップを見せるおかしみと「へぇーへぇーへぇー」連押しのハウツー感は、やっぱりハリウッド版では出せなかった。
 女性ダンス教師がささっと酒を盗み飲みするシーンも、そんなにピンと来なかったし。
 役所広司ら、日本のサラリーマンがワイシャツ(腕まくりしてなかったっけ?)にネクタイでぎごちなくステップを踏む可笑しさ、トホホ感も、遺言作成専門弁護士リチャード・ギアでは出せない。
 カッコよすぎるんである。
 ギアなら、あっさりとどんなダンスでも1週間で踊れそうな気がしちゃうんである。
 踊れなくてもタキシード着て立ちさえすりゃ、女はその周囲でステップ踏んで手足巻きつけて勝手に酔っちゃうよー!と思ってしまうんである。
 さらに、専業主婦で郊外の一軒家に住めて(まずまず、私って幸せ♪)と何も考えずにぶくぶく太っちゃったような妻(原日出子)が、米国だとお仕事バリバリやってるスーザン・サランドンなんである。
 しかも部下の女性の、夫に対する不倫疑惑の愚痴に付き合わされているうちに、自分も不安になっちゃうんである。
 わかりやすすぎ〜。
 思春期の娘も、物分りいいしなあ。
 息子なんてのが、突然出てくるし。

 何より、リチャード・ギアに「傷ついた鹿のような」と評された繊細な草刈民代さん(でもセリフが少々棒読みでした…)が、見るからに勝気で情熱家っぽいジェニロペになっちゃうんだもん。
 舞先生と父との喧嘩も略され、ブラックプールでの失敗によって、舞が人生における、職業における目的を見失った空虚さも何だかぼかされていたような感じ。
 リチャード・ギアや生徒たちを教えたことで、彼女の何が変わったというのか?ギアが 「相手を心の底から信頼する。相手を信頼して踊ることのすばらしさを教えてくれた」とジェニロペが感じるくだりがない(これは米国公開版から、舞と父の喧嘩シーンがカットされたせいなのだと周防監督は書く)ので、よくわからないまま、ギアは妻のご機嫌取りに向かい、職場でダンスを踊って仲直りっと。
 ……ああ、秘めやかな憧れは、エロスは。
 とても手の届かないダンステクニックの主、真摯な求道者としての面だけで、役所は舞先生に憧れたわけではなかったはずなのに。美の化身に対する胸のときめきは、きっと初恋のように悩ましかったはずなのに。
 感心したのは、職場で新聞のダンス競技会報道写真により、社交ダンスをやってることがばれてさんざっぱら馬鹿にされた竹中直人、じゃなくてスタンリー・トゥッチが、女性社員をくるくると回して颯爽と去っていくシーンだった。
 ここは、オリジナルで辛抱できなくなった役所さんが怒鳴るより、よかったなあ。

 映画の感想はここまでにしておいて、周防監督はやっぱり出版してくれました。
アメリカ人が作った「Shall we dance?」
アメリカ人が作った「Shall we dance?」
 表紙イラストも前作にそっくりだ。書店で手を出すとき、思わず前作と間違えてないか、よーくタイトルを確かめたものだ。
 内容もやっぱり前作のノリのまま。でも米国の旅は、愛妻とべったりだから幾分シニカルさが薄れてトーンが明るい。
 ちなみに周防監督、昨年10月にニューヨークへ向かう機内で「インファナル・アフェア2 無間序曲」もご覧になってますよ!
 そして、彼我の作品分析。
 オリジナル版の当事者がだよ、当の監督がだよ、こんなに緻密にオリジナル版とリメイク版を比較分析してくれるなんて!
 こんなこと、香港映画だと絶対ありえないよ…アンドリュー・ラウ監督かアラン・マック監督が米国にデジタルカメラ携えて向かい、レオナルド・ディカプリオらと2ショット写真を撮り、マーティン・スコセッシ監督と会話するなんてこと、まずありえない!(監督コンビ、「頭文字D」もあって忙しいんだもん)
 それに「無間道」メディア・アジア側が、どんな契約をワーナー・ブラザースと結んでいるかも不明。
 まさか「ミュージカル化権」とか「テレビドラマ化権」「テレビゲーム化権」「続編製作権(これはまあ、3部作にしてもかまわないが)」「遊園地でのアトラクション化権」などなどをセットで売ってないでしょうね??
 ブロードウェイ・ミュージカル版「インファナル・アフェア」……。
 踊るサムボスと、ヤンと、香港マフィアたち…_| ̄|○。
 妄想停止します。

 とりあえず「故人」、じゃなくて「The Departed」は、4月4日、ボストンではなくニューヨークでクランクインしたそうです。
 いつの間にか紅一点に、ヴェラ・ファミーガVera Farmigaさんのお名前が。テレビドラマ「UCアンダーカバー特殊捜査班」(2001〜2002)に潜入担当で出演した関係で起用されたのかな。リー先生にあたる役回りでしょうか?
 

 そして、現在米国を「2046」プロモーションで旅しているトニー・レオンさん。
 嗚呼、あなたが文章を綴れる人だったら、周防監督にも負けない(いや、勝ち負けの問題じゃないけど)珍道中とカルチャーギャップのおかしさと異文化コミュニケーションの苦労を綴って、たっぷり我々にも読ませてくれるだろうに…。
 どう考えても、よりによって「2046」が米国人受けするとは考えにくいんですけど。
 「それで結局、何が言いたい作品なわけ?」と逆噴射する連中が多そうで。
 「カンフー・ハッスル」ならカルトムービーになれても。まだ王家衛作品なら「恋する惑星」の方が…。

 ※王家衛関係者の皆さん、くれぐれもハリウッドで「2046」リメイク権やアニメ化権や続編製作権など売って来ないでねえええ!
posted by nancix at 00:59| Comment(3) | TrackBack(3) | インファナルアフェア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。

私も周防監督の作品が好きで、今回DVD−BOXなど買ってしまったのですが、その中の監督インタビューでも「Shall we ダンス?」リメイクについて語っておられました。
まさかリメイクといわれて、「アニメ化権」「ミュージカル化権」「前日談や後日談を製作する権利」までひっくるめてのものだとは思わないですよね。さすが契約社会と感心すべきなのでしょうか。

この監督インタビューを見ながら、「じゃあ『無間道』リメイクってどこまでの権利を売ったの??」と私も思いましたです。
Posted by pekky at 2005年04月29日 12:10
nancixさん、「カンフー・ハッスル」はアメリカじゃ「R指定(17歳未満の未成年は、親か成人の保護者の同伴がない限り入場することが出来ない)」です_| ̄|○

冒頭の残虐シーンやら、お馴染みの口から血が出るシーンとかダメなんですかねえ(泣)

個人的には「カンフー・ハッスル」の「正統派ヒーロー映画」の側面も好きなんで、アメリカでのカルト映画扱いもちょっと悲しいです。
Posted by safra at 2005年04月29日 13:40

個人的には無間道のリメイクしだいでは、こけそうな気もしますねー。
反面、期待もしてますが…。
ニキータとアサシンでも、???でしたけど、
アジア映画となると、これはもう…微妙ですよね。キリスト教と仏教が、宗教という集合体でくくられると一緒ですけど、やっぱ違うしなぁ。
う〜ん微妙。

「2046」はアメリカ人に受けますかねぇ?
全然関係ないですけど、SEX&THE CITYを見る限りでは、まず一般受けしないです。

え? 日本でも一般受けしてないって?
え? 香港でも??えーい、どこでもかい?

いやぁ、私好きですよ「2046」。
監督はトニーにアメリカでのプロモするのに
「一緒に行かないか?」と行ったのでしょうかね。ベタ?
Posted by マディ at 2005年04月30日 14:37
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映画鑑賞「Shall we Dance?」★★★☆
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Tracked: 2005-04-29 21:46