2007年01月07日

壮大華麗、壮絶なる家庭不和劇「滿城盡帶黄金甲」

 さて、夕方までKCR(九廣鉄道)で馬鞍山などで旧友に会っていて、旺角まで戻るのに直通のバスがなく、KCRに乗って意外に時間を食ってしまったnancix。
 通い慣れた定点観測地・信和中心とその周辺の偵察を済ませましたが、いやもう、せっかくのトレンド最先端を示す大看板が並ぶ西洋菜南街も、Rain(ピ)や”猟奇的な彼女”チョン・ジヒョン全智賢ちゃんに侵略されて、港産アイドルは影も形も…(泣)。
ピの大型看板
 アジアコンサートツアーを香港から始めるピ(レイン)の大看板。

 「時間廊CITY CHAIN」という90年代には数々のドラマ仕立てCMで魅了してくれた、時計屋チェーンの店頭を飾る、ダンディなアンディ・ラウ劉徳華の3種の看板だけが、香港スターとして気を吐いておりましたよ。
アンディ大看板

 あ、あとはイーキン・チェン鄭伊健の大看板がネイザンロード側にどどーーんと。やはり腕時計の宣伝。
 
 この旺角にあるシネコン「旺角百老匯Mongkok Broadway」で、年末年始の映画界を制した王者?、チャン・イーモウ張藝謀監督の新作「満城盡帯黄金甲」を鑑賞です。信和中心に突入する前に座席指定券を買いに行ったら、チケットブースはさすがに週末だけあって、長蛇の列。
 列に並ぶ前に、向かいにオクトパスカード八達通かクレジットカードでチケットを買えるタッチパネルが3つ並んでいるのに気が付いた。
 持っててよかった八達通。他の女の子が「NANA2」のチケットをクレジットカードで買おうとしても、途中から進めなくなってモタモタしていたのを尻目に、こちらはオクトパスカード八達通で、すんなりチケットを買えました。
 ほーほほほっ、まだこちらにはジャック・ニコルソンが背後霊として憑いているのよ、眉毛無し中島美嘉には負けなくてよ(ワタシはいったい、何人…)。
 
 んがっ!、場所的な便利さで選んだこのシネコン、上映前に果てしなく階段を上り、帰りも一気に階段を下りないといけない恐怖の心臓破り館なのを、すっかり忘れておりました…上映10分前に映画館に到着して安心してたら、5院(スクリーン5)は途中からエスカレーターがなくなり、階段を香港若者と一緒に、3階分は駆け上がりましたよ。帰りも7階分くらい下りました。ゼイゼイゼイ。朝の九龍公園ウオーキング、明日は中止だ。

 しっかし、ようやくたどり着いてみると、スクリーン、ちっちゃい……_| ̄|○
 このキンキラ大作こそ、ワイドスクリーンで堪能すべきなのに…。
 
 今回の予告編は、ビデオ映画ですか?と聞きたくなるほど画質の悪い、オーバーアクションも80年レベルの「ツインズ・ミッション」と王晶プロデュースのマージャンギャンブラーもの「雀聖3」でした。
 Twinsがサモハン・キンポー洪金寶や「SPL 狼よ静かに死ね/殺破狼」の悪役ウー・ジン呉京(船越英一郎似)と闘う「雙子神偸/ツインズ・ミッション」、敵に双子のカンフー使いを何組か集めたのが新趣向らしく。これは「ツインズ・エフェクト」などを日本公開した会社が買うんじゃないかなあ。権利金、「傷城」などよりずっと安そうだし。
 どっちも「カンフー・ハッスル/功夫」の家主夫妻、元秋と元華が出てたような。
 家主夫人こと元秋、さらにキョーレツな厚化粧下品オバサンぶりでした…吉本新喜劇でも通用するよ。中山美保玉砕だな…。

 そして、「満城盡帯黄金甲」。
 いやはや、何と壮大・絢爛・豪華な家庭不和劇であり、壮絶な夫婦喧嘩であることか。
 いつコン・リー鞏俐がアリアを高らかに歌い出すかと思うほど、ギリシャ悲劇やシェイクスピア(「ハムレット」は絶対入ってるよな)を意識した、中華オペラでありました。
 イーモウは「LOVERS」を経て「PROMISE 無極」に刺激されて、
 行き着いたのは結局「HERO 英雄」秦帝国の集団武力への回帰だったようです。某国だの某宗教団体だののマスゲームの不気味さを思わせる、あまりに揃い過ぎて個の魅力を圧殺したようなシーンが、たっぷり。
 さすがに人民解放軍を持つ国の……んがぐぐ。
 ただし、完全なるオペラだと、コロス(群集)はたっぷりいても、黒装束の忍者の群れは出てこないよな(大笑)。
 どうしても、何が何でも忍者を出したがるのは、トニー・チン・シウトン程小東アクション監督の執着なのか。
 日本では「どろろ」をアクション指導し、イーモウ作品でも架空の時代の架空の大王に忍者を操らせる。程小東、大資金を得てしたい放題やりたい放題じゃないですか!

 そして「上海ルージュ/揺 揺、揺到外婆橋」に引き続いて、またもやコン・リー鞏俐が酷い目に遭わされる。
 文字通り身をワナワナ震わせてすすり泣き、悔し泣きをする彼女の、鼻をすする音が、耳について離れません。
 "ワナワナ震え女優コンテスト"があったら、文句なしにダントツで世界一だよなあ…。
 いや、ないけど、そういうの。
 「上海ルージュ」では、もはや言うことをきかなくなってコントロール不能になった驕慢な愛人を、「オレの言うことを聞けずに勝手に離れていこうとしたら、こうだ!」と男がネチネチいたぶり、愛人の心身を痛めつけていくのがとっても不快でしたが(プライベートでは鞏俐と監督がその頃どうだったか知らない)、今回のネチネチぶりもすごい。
 これだからプロデューサーだの監督だの、支配欲剥き出しの"ピグマリオン症候群"の男ってば…。
 ……まあ、鞏俐扮する王妃も、自分でせっせと家庭不和の種を蒔きまくった割には、マクベス夫人ほどの権勢を持てずに自己破壊衝動に襲われたのか、作戦大失敗だったんだけど…。
 彼女が陥る「孤寒症」って、「宮廷女官チャングム」にも出てきた気がするなあ。映像では自律神経性更年期障害で起こるホットフラッシュ(顔面や胸のあたりがカーっと熱くなる。紅潮、のぼせ。体温調節の乱れ)の酷い症状っぽかったんだけど、ああいうのは本当に人為的に起こせるものなんでしょうか。東洋医学の先生に取材したいものです。

 「HERO 英雄」への回帰といえば、 音楽が……今回は「HERO 英雄」の現代中国が誇る大作曲家・タン・ドゥン譚盾ではなく梅林茂さんだったのに、
 どうしても男女コーラスに「♪ワッワッワッワッ」と歌わせないと、
 太鼓をドンドコドコドコドコ叩かせないと、気が済まないのか、イーモウは!
 そしてチェン・カイコー陳凱歌もイーモウも、"リウ・イエといえばヘタレ男"なのか? 眉毛を八の字にさせて、あのつぶらな瞳をうるうるさせて、追い詰めて、いたぶらないと気が済まない「ドS」なのか?

 場内の失笑をいちばん買っていたのは、あまりにあまりなヘタレぶりの、リウ・イエ君でした…かわいそー…。 そういえば、架空の王朝とはいえ、成人男子はヒゲを蓄え、声の甲高い宦官だけはヒゲ無しという風俗はそのままだったのに、立派な成人男子のはずのリウ・イエ君、ヒゲがなかったなあ…。
 
 そしてとっても英雄でとっても清廉潔白(単細胞とも思える…)でとってもカッコよくアクションを撮ってもらって得をしたのが、あのジェイ・チョウ周杰倫。
 役名も、ちゃんと名前から1字取って「元杰」だしなあ。
 ヒゲの似合う、無骨な容貌のおかげなのか?
 彼がダンスの特技を生かしてか空中を舞い、槍をふるい、バッタバッタと周囲をなぎ倒すシーンでは、観客から感嘆の声が漏れておりましたぞ!
 
 情念を、家族の愛を規律、規律で縛りつける無慈悲な大王役の、チョウ・ユンファ周潤發。

 あの、情に厚く慈悲に満ちた雰囲気、何ともいえず人好きのする笑顔を、どうやって封じるのだイーモウよ!とハラハラしていたら、色の薄いコンタクトをはめさせてましたよ。
 ただし、ユンファ兄貴が黄金の上衣をケレン味たっぷりに脱ぎ捨てて戦闘モードに入るとき、あまりの仰々しさに失笑する、香港人らであった…。
 だって、歌舞伎役者が見得を切るのと同じぐらい、大仰なんだもん。

 思えば、香港市民がお茶の間で育て、映画界に送り出し、理想の男性像、理想の兄貴・息子・先輩像として感情移入しあがめてきたチョウ・ユンファ兄貴も、お茶の間アイドル出身トニー・レオンも、国際的舞台に身を置く2000年代後半において、悪とは言わないけど一癖ある、大衆の支持を得られそうもない人物像を演じることになってるんです。
 俳優として役幅を広げることは大切なことだし本人も大いに挑戦したいだろうけど、果たしてそれは中華圏で、成功するのか。
 ちょっと心配。

 そして、ユンファ兄貴といい、トニーといい、どうして妻に○○盛って、いろいろと企む役なのか…。
 これは偶然の一致よね? そうよね?
 
 今日は香港島巡りの予定です。香港島サイドで「傷城」2回目鑑賞を目論んでいるけど、もはやUA時代広場か皇室ぐらいしか上映してないなあ…うまく時間が合いますように。
posted by nancix at 10:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | 旅行記
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