「色、戒」が、日本になじまないなんて思い込んでいて、本当に申し訳なかった、です。
大いに関係あるじゃないですか。
主人公が抗日活動に身を投じている女子大生だとしても、
彼女が狙う"愛憎半ばの好色漢"が漢奸こと親日派の中国人政治家だとしても、
キナ臭いのは確かだけれど、充分現代日本人の興味を惹きます、断言します!
だって、劇団四季が誇る、テノールで歌えてアルトサックスが吹けるイケメンスター、石丸幹二VSカンヌ影帝トニー・レオンなんだもん!(……??)
というのもですね。この映画は中華圏ではかなり話題の的でして、中国語の各種ニュースサイトが特集ページを設けていて、キャストや監督のコメント、撮影進行状況などを迅速に報道してるんですが(日本とはエラい違い)、そのうちの一つ、新浪網は原作者・張愛玲が元ネタとした、とある歴史的事件を紹介・解説していたのです。
先日、やっとそのページを一読する時間をもてたのですが、いやあ、あっと驚いた。
近衛文隆という人名が、目に飛び込んできたのです。
近衛文隆といえば、忘れもしません。作家の西木正明氏の労作「最後の貴公子・近衛文隆の生涯」の主人公、実在の近衛公爵御曹司ではあーりませんか!そうそう、日本首相経験者・いまや陶芸家の細川 護熙(もりひろ)氏の親族でもありますよ。
nancixが彼の名を知ったのは、何を隠そう、劇団四季が「李香蘭」の評判に気をよくしてか、昭和史オリジナルミュージカル第二弾として「ミュージカル異国の丘」の制作に入るとニュースリリースを出した時でした。
このミュージカルの元ネタが、西木氏のノンフィクション・ノベル「夢顔さんによろしく 最後の貴公子・近衛文隆の生涯」だったのです。
ミュージカルを見る前にこの本を読み、その面白さ・興味深さにゾクゾク、うひゃうひゃ喜んだnancixでしたが、肝腎のミュージカルは……_| ̄|○
まあ、「ミュージカル李香蘭」第2部が、特攻隊隊員だのが真っ白なマフラーをなびかせて、はたまた人間魚雷の海軍兵が海中を突進し、お国を守るという美辞麗句を述べたり「海ゆかば」を聞かされたりの愛国シーン(それより中国内部の事情を!)の方が、ナヨナヨ被害者サイドonlyの李香蘭よりも目立ってしまったことで完全にゲッソリしてましたんで、どうせ浅○慶○御大の演出だと原作の面白みは消されちゃうんだろうと覚悟していましたが、「夢顔さんによろしく〜」中盤のヒロインといえる中国・日本両方の血を引く実在の美女=鄭蘋如が、まさかあの"宋家の三姉妹"の姪っ子(架空の存在)?に改悪されるとは、夢にも思いませんでした…。まあ、何とも激しいベッドシーンもある原作のまんま、ミュージカルには出来ないでしょうけど…。虚構が過ぎるせいなのか、近衛文隆も九重秀隆という名前にされていたりして…西木氏の緻密な調査や聞き書きは、生かされていないように思いましたよ。ミュージカルよりもストレートプレイにした方が…と後半はトホホでしたし。石丸さんはちっとも悪くないんだけど。
ボヤキはともかく、では「夢顔さんによろしく 最後の貴公子・近衛文隆の生涯」と「色、戒」の接点とは何か?
そう、「色、戒」のヒロイン王佳芝のモデルこそ、近衛文隆と愛し合ったとされる美女・鄭蘋如なのです!
そして、王佳芝が色仕掛けで近づき、愛国主義の大学生らの組織が彼女の手引きで暗殺しようとする漢奸(大日本帝国軍協力者)の易先生のモデルこそ、鄭蘋如が実際に命を賭して暗殺しようとした、実在の大物、丁黙邨なのです!
つまり、近衛文隆こと九重秀隆=初演の石丸幹二VSトニー・レオン…(かなり違う)。
これは興味深い、日中イケメン対決ではないですか!(だから対決しないってば)
というわけで、ハードカバーで買ったはずの「夢顔さんによろしく〜」をごそごそ自室=ブラックホールで探していたんだけど、いつものごとく案の定、肝腎な時に出てきません。
昨日書店に寄ったら、上下巻で文春文庫化されていたので、喜んで購入、今再読中。

読み終わったら、「色、戒」のモデルとなった鄭蘋如VS丁黙邨について、詳細に語らせてもらおうと思いますです。いや、ホントは語る資格があるのは、実際に当時の資料や国会議事録や公文書、新聞記事に目を通せ丹念に分析できた、西木正明氏や近衛家の映像クリエイター、近衞忠大氏や研究者の皆様なんでしょうけどね。
しばし、待たれい。