2006年08月30日

♪誰か方蘭を知らないか

 ♪リ〜ル リ〜ル 何処(どこ)にいるのかリル
 誰かリルを 知らないか〜〜

 なんてNHK懐かしのメロディーで覚えた古い歌「上海帰りのリル」を歌ってる場合じゃなかった。

 誰か方蘭こと吉田とよ子女史の近況を知りませんか。

 アン・リー李安監督&トニー・レオンの新作映画「色、戒」撮影が、もうマレーシアイポー市を皮切りに9月から始まる予定だってのに、この映画が日本で公開されるかどうかも、現在のところ全く心もとない。
 せめて「色、戒」の原作者、中華圏では日本における林芙美子&林真理子よりもさらにさらに超有名なアイリーン・チャン張愛玲(1920〜1995)の作品集が、金庸先生のごとく、全集として日本語訳されていればもっと話題になるかもなあ…、張愛玲作品なんて「浪漫都市物語―上海・香港’40S」(91年出版)に短編小説の数編が収録され、やはりチョウ・ユンファ周潤發主演で映画化され、あのプレノン・アッシュが配給した「傾城の恋」が1995年に出版された(Amazonマーケットプレイスで少数ながら中古を入手可能)だけだもんなあ…と嘆息しながら、先月に某書店の店頭端末で検索かけてみたんですよ。

 半生縁―上海の恋 すると出て来たのが「半生縁―上海の恋」勉誠出版 (2004/10) 。
 訳者は、方蘭。

 うわお! レオン・ライ黎明と、亡きアニタ・ムイ梅艷芳と、アン・リー監督の旧作「飲食男女」で主演したン・シンリン呉倩蓮の主演映画の原作ではないですかー! 知らないうちに日本語訳が出ていたなんて! 嗚呼なんて不勉強なんだろう!
 "張愛玲の長編小説『半生縁』の本邦初の翻訳"とあるけど、いやあの、上記以外の他の小説も日本語訳されていないはず…と後書きを立ち読みすると(買えってば)、この訳者、方蘭こと吉田とよ子氏は、張愛玲本人が存命中に、彼女の全作品を日本語訳する許可を書簡で与えられたとあり、張愛玲自筆の書簡の写真も出ているではありませんか。
 そうか! では中編小説「色、戒」も、今のうちにこの吉田女史にお願い奉って、他の中短編小説と共に翻訳しておいてもらって、映画の日本公開の時期に合わせてトニーのスチール写真の表紙でババーンと出版を!と妄想が膨らむんですよ、韓流ドラマや映画ノベライズ本コーナーを目の当たりにした後には!

 で、この吉田とよ子女史。本のプロフィールには、1940年東京生まれ、1978年〜上智大学中国文学・思想、日中比較文学教授、とあるんです。
 ところが、ネットで検索する限り、現在の上智大学には吉田とよ子さんという教員は所属されておらず、外国語学部アジア文化副専攻の教員にもお名前はなく…。
 2006年4月には比較文化学部が国際教養学部に改組し、現在は募集停止したとのことなので、比較文化学部比較文化学科におられた吉田先生は、学部改組に基づいて退職なさったんでしょうかねえ…(泣)。上智大学の出版書物一覧に「色は匂へど 『源氏物語』と中国の情艶文学」という2004年10月の著作が出ているので、2年前には大学におられたことと思うのですが…。
南京城の鬼
 「南京城の鬼」なんて興味深い、ちょっと妖艶そうな著作もおありの様子ですが、これも2000年の出版だし……。
エロスと貞節の靴―弾詞小説の世界 方蘭名義では「エロスと貞節の靴―弾詞小説の世界」を出版されておられますが、これも2003年の出版…。
 つまりネット検索だけでは、2004年以降の吉田女史の足取りは掴めないのです…。

 張愛玲の著作の日本語訳は、その後どう……?
 「色、戒」は先生が訳してくださらない限り、日本語で読めないんですか〜〜?
 大学の先生で張愛玲を研究していらっさる方々は、跡見学園女子大学文学部人文学科教授の池上貞子先生(「傾城の恋」訳者)ほか何人かおられるし、卒業論文に張愛玲を取り上げた学生さんも日本各地に存在してるんですが…。
 翻〜〜訳〜〜権〜〜。
 「素人が心配しなくても、いま鋭意翻訳中だわよ!」ってことなら、感謝感激雨アラレなんですが…。

 ♪方蘭 方蘭 何処にいるのか方蘭〜
 誰か方蘭を知らないか……?
posted by nancix at 23:34 | Comment(4) | TrackBack(0) | 「色、戒」特集
この記事へのコメント
上智大学の定年は65歳なので、1940年生まれということは、もう定年退職されたのではないでしょうか。
READでも、退職者・転職先不明者にされていますし。
http://read.jst.go.jp/ddbs/plsql/fs0_knkysh_detail_j?KEY=%E5%90%89%E7%94%B0%E3%81%A8%E3%82%88%E5%AD%90&KOU=RECORD&CODE=5000064273&OP=DUMMY
Posted by cya at 2006年09月02日 00:11
 cyaさん、さっそくありがとうございます。
 そうですよねえ…定年退職なのですかねえ…。
 執筆・翻訳に専念しておられるとか…?
Posted by nancix at 2006年09月02日 01:04
nancixさん
私も以前からの張愛玲迷です。『色、戒』は『封鎖』と共に一番好きな短編です。『色、戒』は
『西洋鏡』の胡安監督が6年ぐらい前にチャン・ツィイーと姜文で撮りたいと交渉してたらしいのですが、権利を持つ皇冠出版社(かの台湾のロマンス小説作家チオン・ヤオ女史のご主人ですね)と上手くいかなかったそうで諦めたそうです。李安監督が映画化すると聞いて、同じ台湾人に許可が下りたのかなあ、と思いました。
方蘭先生の「エロスと貞節の靴」はタイトルに惹かれて読んだことがありますが、『半生縁』を訳された吉田とよ子さんと同一人物であることは、
nancixさんの文章を読むまで知りませんでした。
張愛玲の全作の日本語翻訳権をお持ちなら、是非とも、この2作を訳していただきたいものです。
徐克監督も張愛玲が好きで、いつか映画化したいと言っていました。徐克には是非『封鎖』を映画化して欲しいなあ。
上坂冬子の「我は苦難の道を行く」(文春文庫)と佐野真一の「阿片王」(新潮社)あたりも汪兆銘傀儡政権や当時の上海について詳しいですよ。
Posted by マダム・チャン at 2006年09月22日 16:00
 おおっマダム・チャンさん、貴重な情報をありがとうございます! ロマンス小説家といえばあの瓊瑤ですよね?(北京語読みを知らなかった…)姜文ではこの役には背が高すぎるかもしれませんね。
 現在のところ「我は苦難の道を行く」と犬養健の「揚子江は今も流れている」は読破。あの時代に何とか日中の友情を保とうとした男たちがいたこと、その彼らが弾圧されたことに涙です。(しかし犬養先生、テン・ピンルーを甘く見すぎている…)。伴野朗の「シャンハイ伝説」は、いささか口に合いませんでした。元新聞記者にしては「ゴルゴ13」的な劇画調で。後の短編にロアン・リンユイ阮玲玉が出て来たときは驚愕! ツイ・ハークには伴野朗作品の方が似合いかも…ツイ・ハーク作品だと、人が上海の空を飛び去りそうだし。
 次は「上海ラプソディー 伝説の舞姫マヌエラ自伝」を読む予定です。本当は晴気慶胤著の「上海テロ工作76号」を捜して東京の「東洋文庫」に行きたかったのですが、同館での閲覧には紹介状が必要なようですね。関西を大横断して、国立国会図書館関西館に行ってみようかな…?
Posted by nancix at 2006年09月23日 01:34
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