2006年03月15日

「SPIRIT」は端正で真面目な物語だった

 「SPIRIT 霍元甲」の試写会in大阪に、行ってまいりました。
 この映画は主題歌差し替え問題と、中国での霍元甲の子孫からの訴訟問題で気が重く、うっかりヒットした日にゃ日本の配給会社の担当宣伝マンが映画宣伝セミナー講師として得意がって語るのかと思うとケッタクソ悪く、スルーしてもいいかと思っていたのですが、お誘いを受けて、タダなら行ってもいいかなと(貧乏性)。
 トニー・レオンがいつか演じるはずの…予定の…王家衛の予定は未定だけど…広東省+香港が誇る詠春拳の武術家、葉問さんの映画の予習も、兼ねてね。
来、来ポーズご本家はりんちぇだ!
 「マトリックス」キアヌじゃなくて、「来、来!」ポーズのご本家はやっぱり、りんちぇですよ!!!!!!!
 弁髪が凛々しくも愛らしく、あのたっぷりとした麻混衣装が似合うのは、りんちぇならではですよ!
 しかし「マルコメくーん♪」と、ご本人に聞こえないように日本人ファンが愛でていたりんちぇも、ごま塩弁髪が似合う初老、いや人生50年の時代には熟年男性といってもいい年頃を、演じるようになったんだな…感慨深い。

 そしてくのいちブログさんから拝借の、このバナーを使うときが、いよいよやってまいりましたよ。
ジェイ・チョウの主題歌が聴きたかった

 予告編だけでなく、まあひとつ、ココで渋いジェイの姿を見ながら、試聴してみてくださいや。
 光ファイバーなど、高速回線の方は、こっちのM.V.の方が全曲聴けるかな。
 あ、それ「♪クォークォークォクォー クォークォクォークォー!」

 万が一、あくまで万が一ですが、いくらジェイ・チョウでも、日本人には「マン○」とか「チン◎」とかその他の卑語に聞こえて空耳アワーしてしまう歌ならば、ジェイとりんちぇの名誉のためにも、急遽差し替えという事態も考えられなくはないですよ。
 だけど、そんなわけないでしょ? 今回、要は、商売っ気でしょ?
 も一つ「♪クォークォークォクォー クォークォクォークォー!」

 いやもうホント、漢(おとこ)が惚れる稀代の武術家の一代記の締めくくりに、女性ボーカルの歌はないだろうと。
 しかも、日本語のはずの歌詞が全然聞き取れない。何かゴニャゴニャ言ってましたっけ。
 ……日本語でしたよ、ね? 英語でしたっけ?
 タイトルが、「罪」……。意味不明です。
 霍元甲は、いうなれば列強に屈しようか民族の誇りを賭けて踏みとどまろうかという瀬戸際だった、中国の動乱の時代の、犠牲者ですよ? 何がどうして「罪」について日本人に歌われなければならないんでしょ?
 「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー3」の日本公開でだけ、松井五郎作詞のジョイ・ウォン王祖賢のエンディング・テーマが劇場に流された時も(……おいおいおい…)だったけど、まだあれはヒロイン自身による話題作りとして、仕方なく目をつぶ…いや耳を塞げたけど。
 「風の谷のナウシカ」で、安田成美が歌ったふにゃふにゃのイメージソングと同じくらい、速やかに忘れましょう。香港版DVDを取り寄せれば済むことです。
 あ、それ「♪クォークォークォクォー クォークォクォークォー!」

 香港映画=功夫映画、香港人はみな跳躍力が凄くて空が飛べてカンフーが体育科目に入っている、との日本人の思い込みに「そんなワケあるかいぃぃ」と、吉本芸人的突っ込みを長年かましてきた門外漢のnancixには、
 香港スターなら当然カンフーも得意でしょ、カンフー以外に香港スターの存在価値ないでしょと無邪気に決め付ける皆様に(いや…その…トニーみたいな演技派男優もいるんですけど…)と力無く呟いてきたnancixには、
 今作のカンフー技について語る資格はないです。昔から熱くあつく語って来た、知野二郎さんにお任せします。
 今回、何となく「体の小さな者が、相手の勢いや力を利用して倒す」とはどういうことか、南拳(猫爪、いや虎爪を使ってたいじめっ子が修業してきたほう)と北拳の違いについて、うっすらと解ったような気もしたけど。
 ちなみに、りんちぇの厳父を演じたコリン・チョウ鄒兆龍(倪星)は、実は南拳の使い手。南拳は「短く」、北拳は「長」いために、北拳の使い手になりきるべく、1週間かけて必死に矯正したそうです。…って、何が長くて何が短いのか、サッパリ解ってません…_| ̄|○

 しかしそれでも、ジェット・リーが自分と同じ年齢で無念の死を遂げた霍元甲を演じることを通じて、語りたかったことはビンビン伝わってきました。

 たゆまぬ鍛錬を、禁欲を、トップ・アスリートたちが長年かけて行えるのはなぜか。
 強くなりたいから。
 じゃあ、真の強さとは何か。
 「どっからでも、かかってこんかーい!」と大声で呼ばわるのは、もちろん強くない(笑)。

 ウォン・フェイホン黄飛鴻シリーズでも端正で真面目で、女には少年以上にウブな武術家に徹したジェット・リー李連杰、今作でも気まじめすぎるくらい真面目に、ある意味説教にも思えるほど真の武術について、強さについて、重々しく語ります。
 「全ての武術に優劣はなく、ただ個人の技能の差があるのみ。究極の敵は、自分自身。己に克つために、試合はある」というような考え方、おそらくは実際に霍元甲が主張していたのでしょうが、現代のオリンピック精神に通じるものがありますよねえ。実際、霍元甲の子孫と弟子たちは「精武門体育会」を大切に守り育て、世界に広めるのです。
 超人的な能力と長年の鍛錬が必要な武術ではなく、心・技・体の「三育」を目指す体育として広められたのは、各地の武術家を抱き込んで利用しようとした国民党と違い、中国共産党が中国武術を(半ば恐れて)弾圧したことや、文化大革命中に武術が破壊すべき前世紀の遺物とみなされたことも、絡んでいるのですが、ね。
 
 血沸き肉躍る異種格闘技戦をひたすら見たいと願って劇場に足を運んだ、脳みそまで筋肉なオトコノコたちは、多分、宴会に明け暮れる退廃の日々や家族団らん、滋賀県にもありそうな雲南省?の緑の棚田での「風のハルカ」な日々、中村獅童との茶談義のくだりで、退屈するんだろうなあ…。

 で、りんちぇってば、今回も亡き妻以外に女体への関心を見せません。
 酒宴で席を囲むのも、むくつけき男がほとんど。「英雄、色を好む」って言うのに。
 13歳から急激に視力が衰えたという少数民族(雲南省のミャオ族のような…)の娘、月慈とも、同じ屋根の下で寝起きしていたというのに、何だか手を出さずに兄妹のように暮らしていたような。
 りんちぇが演じるからこその、禁欲ぶりだなあ。
 童心に返って娘とにらめっこしてみせる光景、あのスマトラ沖大津波で愛娘を必死にかばって逃げた、りんちぇ本人とだぶって見えました。
 
 監督はレスリー・チョン張國榮主演の「キラーウルフ/白髪魔女伝」「夜半歌聲〜逢いたくて、逢えなくて」を経てハリウッドに進出、「チャイルド・プレイ/チャッキーの花嫁」「フレディVSジェイソン」などキワモノも手がけて来た、ロニー・ユー于仁泰監督です。さすがにCGをふんだんに使い"天上からの視点"で往時の上海を描く技法が流麗で、手練れです。
 何だか「夜半歌聲」で見た、豪華絢爛ハイカラモダンな劇場ゴシック調天井ドームと、今作の試合会場の天井とが共通する気がしたんですが、あれは上海に実在する(した?)建造物がモデルなのでしょうか?

 そういえば今作で、りんちぇが、対戦相手が、遺恨の相手が流す血は、血糊らしい鮮血ではなくて、どす黒かった。
 監督の美意識によるこだわり? それとも、りんちぇの?

 そうそう、日本のコミックが原作の「頭文字D」にさえも登場、一部ファンに物議をかもした「嘔吐シーン」。
 りんちぇも、英雄だからって例外ではなく、画面の下の方に遠慮がちにちらっとですが、口から白いどろどろをちゃんと出してます……うぇっぷ。
 昔むかし、テレビで見たジャッキー・チェンとその他の皆さんのカンフー映画群の、「怠け者で弱虫の青年が成り行きで師匠に出会い、超人的カンフー技を修業するも、師匠が悪漢に殺され、その師匠の娘(たいていお下げ髪で、かなり勝ち気)と共に仇討ちを決意。しかし最初はぼろ負けに負けて屈辱を噛み締めるが、粘りにねばって形勢逆転(ここからが長い!)、ついに相手をとことん叩きのめして、姑息な反撃にも耐えて本懐を遂げる」とは異なる。
 ブルース・リー李小龍の「ドラゴン 怒りの鉄拳/新精武門」とも、語り口は、格段に進歩を遂げています。
 あれは、突然急逝した恩師が、霍元甲その人という話だったんですよね。
 主人公はその弟子で。日本人はとにかく卑劣な悪役…。

 今回は、卑劣な日本人もいれば、端正で礼儀正しい日本人武術家も、いる。

お茶談義の2人
 …田中安野氏(当然架空の人物)が、なぜ上海くんだりにいるのか、よくワカリマセンが。そして羽織袴姿は端正ですが、なぜあんなに目立つ家紋がついているのかも、ナゾ。

 んでもって棒読み北京語な獅童クン、大会中の遠景で後ろ斜め姿は、頬から顎にかけてのラインがシャープで、一目で(スタントさんだ…)と解ってしまいましたよ(^_^;) まあいいんですけどね。原田真人監督の怪演?に助けられていたっていう気が、しなくもない。あれくらい無骨な方が、らしいっちゃらしいんですが。

 オマケ。
 りんちぇの子ども時代を演じた子、一瞬女の子かと思ったほど色白で、目がクリクリしてて、愛らしかったんです。
子役りんちぇ

 「この子を『PROMISE 無極』のニコラスの子ども時代に起用すれば、よかったのよー!」っと、誘っていただいたのえるさんと意見が合ったことでした。
 
 オマケその2。
 霍元甲の幼馴染で、文人でありながら料亭を継ぎ、陰に日なたに霍元甲をかばい、支えて来たスポンサーの彼。どこかで見たような気もするけど、俳優は誰でしたっけ?
 霍元甲と親友

 パンフレットには載っているんだろーか。
 映画館でパンフだけ買って来ようかな…?

 それにしても、中国ではあんなに有名な津門大侠こと霍元甲の、伝記や紹介本が日本には皆無だなんて、本当に残念無念。ブルース・リー本は英語版の訳本など各種あるというのに。知野二郎さんの著書には登場するのかしらん?
 一応ココに、霍元甲の生涯が簡潔にまとまっていますが、中国語っす。
 実際は、2人の息子と3人の娘がいて、奥さんは苦労して子どもを育て上げ、91歳で逝去。長女が長生きして今も天津市に健在なのですよね。
 そういう虚実を正しく知ろうにも、日本語の文献がないと……_| ̄|○

 オマケその3。
 剣が交わされる時のカンカンカーン! キュイーーーーン!!の効果音が、「英雄HERO」でのものとよく似てます。
 さすが、ビル・コンプロデューサー作品(あまり関係ない)。
 思わず、黒ずくめのりんちぇと青残剣様の、
 秦王と緑残剣様の在りし日のお姿が、目に浮かんできてしまいました。

 あああ、夜中までかけても、ちっともまとまらない。メモ書きで、失礼いたしました。
 「♪クォークォークォクォー クォークォクォークォー!」
posted by nancix at 23:45| Comment(2) | TrackBack(6) | 香港映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ほんとに、リンチェならではの真面目な物語でしたが、それはそれで新鮮でした。禁欲ぶりも(^^;)相変わらずですね。
そうそう、パンフによると、あの幼なじみ役は董勇(ドン・ヨン)、中国の売れっ子TV俳優で、映画では「秋天的流星雨」(01)で高い評価をうけたとか。
Posted by tomozo at 2006年03月23日 21:20
>風の谷のナウシカ」で、安田成美が歌った
>ふにゃふにゃのイメージソングと同じくらい、
>速やかに忘れましょう。

いやん、ここ、爆笑です(笑)
だって、すっごくツボなんだもん!
確かあれ宮崎監督がどうしても使いたくなくて
あのような結果になりましたよね(笑)
しかし、ほんとに、
ジェイ・チョウ君の歌が聴きたかったなぁ。
でも、香港版DVDを取り寄せれば
すべて解決ですね、うん(笑)
Posted by ガオ at 2006年03月28日 12:23
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