帰省まで自炊と引きこもりで切り抜けることにして、冬季休暇突入を記念し、隣駅のシネコンで、早場価格35HKドルで「跳出去 Jump!」を観て来ました。

原作:チャウ・シンチー周星馳、監督:スティーブン・フォン馮徳倫の、少年マンガスポ根部門のスピリッツに溢れた映画です。ステこと馮徳倫といえば、トニー・レオンに誘われて2人で北海道でスキー三昧したこともある35歳です。ユニットDRYとして活躍していた頃の相棒、マーク・ロイ雷頌徳はすっかり貫禄を増して横幅がすごいことになっていますが、ステのイケメンぶりは相変わらず。

♪夢中ーーでーー頑張る君にーーエールをーー部門。
年に数回は、こういう映画も観たくなる、nancixはモラトリアム人間(^_^;) 「フラッシュダンス」とか「カンフー・ダンク!」とか。
製作はチャウ・シンチーが母や姉妹を幹部に迎え(名前借りてるだけという説も)家族経営しているという映画製作会社、星輝公司と、北京の映画製作会社と、北京映画スタジオの共同制作。
冒頭は、ドドド超弩級農村の朝から始まります。
農家の木製窓の雨戸を引き開ける、お下げ髪のすっぴん少女。
旧式にもほどがあるラジオのダイヤルをひねると、「ローズ、ローズ、アイラブユー[王久]瑰[王久]瑰我愛イ尓」が流れてくる。姚莉の歌声かしらん?
自分で料理を始める少女。包丁で野菜をリズミカルに刻み、饅頭(餡なし)をふかし…。
庭には茶色いニワトリもいる様子。自給自足、現金収入はあまりないけど、食うには困らないわけですな。
農家の前に広がる、棚田の美しい姿。風にそよぐ稲穂はすでに黄金色に色づき、収穫の時を迎えています。
たわわに実った稲穂の間から、ひょいと顔を出して少女を呼ぶ、若い農婦3人。少女の幼なじみらしいです。
ここから映画は突然、ミュージカルに突入。村歌というか民謡というのかを、少女と農婦たちが歌い踊る。
農村ミュージカル……「劇団ふるさときゃらばん」のカントリーミュージカルですか?
歌の間に点景として描かれるのは、イマドキありえねーオールバック髪型の青年が朝飯をかき込み、川辺には洗濯物を棒で叩く農婦、広場で朝のラジオ体操…じゃなく功夫を学ぶ子どもたち、それを指導する老人らの姿。

ニコニコしながら作業服に麦わら帽子、鎌を手にして日除けの手ぬぐいを帽子から垂らして姿で歌い踊る、お下げ髪の鄙には稀な美少女は、彩鳳(キティ・チャン張雨綺)。母は数年前に亡くなり、農夫でも功夫師匠でもある老父(ユエン・チョンヤン袁祥仁、ユエン・ウォーピン袁和平の弟で、今作の武術指導も兼任。「カンフーハッスル/功夫」の、「如來神掌」本をいつも携えている謎のホームレス役)と二人暮らしです。
ここでようやく、タイトルロゴ登場。手書きで何だか可愛い♪
のどかな農村に、一台の車が入り込んできます。老若男女、大騒ぎで見物の図…昭和初期か!
車から降り立ったのは、この農村出身で、いまや成功して上海郊外で紡績工場を経営している男。彼は故郷に、自分の工場で働く出稼ぎ労働者を募集に来たのです。
ますます、昭和初期のとーほぐ東北か!
「脱貧致富」の有名な文句の横断幕が飾られた集会場で、村人を集めての男の説明に、大都会に行ける! 働いて現金収入を得られる!と色めき立つ村人たち。彩鳳も、親友の小雪(ヤオ・ウェンシュー姚文雪)もいます。「小雪」と言っても日本のあの美女とは似ても似つかない、子ブタちゃんであります。ヤオ・ウェンシュー姚文雪は、「ミラクル7号」で男装して、23歳にしていじめっ子小学生の暴龍を演じていた、捨て身の女優です。
出稼ぎ勧誘の男は「平等に公平に、争いにならないように」と、希望者から10人の人選の方法を示します。
それはテレサ・テンの名曲「月亮代表我的心」のメロディに合わせての、椅子取りゲーム!
曲は、骨董モノの”蓄音機”で演奏です! 大正浪漫か!
かき集めたらしき椅子や木製台を丸く並べ、周囲を曲に合わせて歩く村人たち。
和やかなムードが一転、曲を男が止めたとたん、ヌンチャク出して兄弟分どもを叩きのめす青年男!
普段は気のイイおばさんも、彩鳳の親友のふくよかな小雪も、悪鬼のごとき形相でライバルと闘う!
死闘の果てに、彩鳳は小雪の悲鳴を聞いてとっさにおばさんの椅子を取り上げ…小雪に座らせるのかと思いきや! ニッコリ笑って自分が座る! こんの小悪魔ーー!
ずりずり床を這い、ついに無念の死を…違う、気絶する小雪。
壁に張り付いたまま気絶している男、集会場の大扉の上に二つ折りになって伏した男…。
この、少年ギャグマンガちっくな表現がたまりません。
シンチーとステ、少年の心を未だ失わない中年男二人は、日本発のギャグマンガの表現力爆発力について、大いに論じ合い盛り上がったことがあると思われ。
かくして、都会に出られる10人は、かなり強引に決定されたのでした…。
ステの「ドラゴン・プロジェクト」などの一連の監督作と同様、父娘は食卓でおかずを奪い合って一戦交える。勝利者はもちろん老父。彩鳳は首をかしげます。「父さん、私たちなんで毎回食事のたびにこんなことしなきゃならないの?」
…セルフパロディか、ステ!
都会に出るために、いそいそと荷造りをする彩鳳に、何か言いたげな父。
「父さん、母さんが縫ってくれた花柄スカートってどこにある?」「あんなもの、捨てた。丈が短すぎる」「ええっ捨てたですって? …父さん、私の目をちゃんと観て!」
にらめっこの末に、父の嘘を悟り、屋根裏に上がってスカートを引っ張り出してくる彩鳳。
彼女は「嘘をつく人、私を騙そうとする人は、目を見れば解る」と無邪気に信じているのです。いいなぁ…nancixには本心からの言葉か社交儀礼か、本心からの仕方無くのお断りか面倒になって・悪意からのお断りなのか、相手の表情や仕草から読み取れない…。
老父は世間知らずの無邪気な娘を心配し、自分の枕の中から600数人民元(たった約8000日本円)の札を出し、娘に持たせます。おおっ、現金収入、あったんだ!
「辛くなったらいつでも帰って来い。この村にだって、おまえにふさわしいイケメンはいるんだぞ」
……そう言われてとっさに彩鳳が思い浮かべる若い村の男は、エヘラエヘラ鼻の下伸ばして笑ってる、ちょっと知恵が足りないタイプの……_| ̄|○。
とにかく、「手紙を書けよ」とせがむ父に、彩鳳は「イマドキ手紙なんて! 父さん、もっと便利なものがあるのよ!」と反論する。
いや、田舎のご老人にパソコンでEメールを打たせるのは無理でしょ…と思えば、彩鳳は旧式テープレコーダーを示し「カセットテープで声の便りを送るから!」と約束するのでした。
父が就寝した頃、彩鳳の部屋に、外から石をぶつける音。
彩鳳が雨戸を開けてみると、そこには水牛を連れた、恨めしげな目つきの小雪の姿が…。彼女だって、都会に出たかったのです。
家の外で話し合う彩鳳と小雪。
「なあんだ、あなたも街に出て働きたいの? だったらこれ、あげる!」。彩鳳はいとも簡単に、紡績工場からの招請書を小雪に譲ります。
「ええっ、いいの?」「私は街に出たいだけで、この工場で働きたいわけじゃないもの!」
「やったぁ! アタシたち、一緒に都会に行けるんだね!」
満面の笑顔で、喜び合う2人。
その喜びの延長で、舞台はすでに上海。
街路をはしゃぎながら歩むカントリーガール2人。周囲の市民もたじたじです。
ほんの一瞬、目を放した隙に親友の小雪の姿を見失い、青ざめる彩鳳。必死に友の名を呼び続けます。
人買いにさらわれたのか! 臓器売買組織に拉致されたか!
やっと見つけた小雪は、なんと整容院=美容整形外科の大広告パネルに見とれていたのでした。
好奇心旺盛な少女2人は、さっそくその整容院へ。
医師のデスクに飾られたセルフポートレートは、あの周星馳の軍師的存在(だった?)、「少林サッカー」「少林少女」にも出演した、ティン・カイマン田啓文その人のもの!
であるからして、次に映される医師の姿は、当然田啓文だと、思いきや!
少女2人を前に、爽やかに微笑むのは、イケメン代表選手のダニエル・ウー呉彦祖!!!!!!!
ダニエル、友情出演です。ただし広東語版の声の出演は、ティン・カイマン田啓文です。
田啓文、どこまで自虐的なんだ……。
顔はダニエル、声は田啓文の美容整形医、どうやら風邪を引いているらしく、やたらにくしゃみする。
ついには、付け鼻が小雪のほっぺたに飛んで張り付いた!
嗚呼、鼻がはなが、ダニエルの美貌の大部分の要素を占める、鼻筋の通った立派な鼻が!
必死に欠けた鼻を隠しつつ「私はハーバード大学卒業ですよ! 安心して! 大丈夫!」と強調する医師。
整形費用が10数万人民元と聞いて仰天し「私たち、お金無いわよ、割引してよ!」と無茶を要求する彩鳳。
その彩鳳の顔にまで、付け耳?がくしゃみと共に飛んで来て…。
美容整形をすっぱりあきらめた小雪は、やがて送迎バスに乗り込み、紡績工場に向かいます。
一人、上海の街に残った彩鳳は、街頭の大型液晶スクリーンに目が釘付けに!
そこに映されたのは、ストリートダンスに興じる若者たちのイカした姿!
ゴキゲンな音楽についつい体を動かしてしまう、彩鳳。
そう、彼女の夢は、街に出てダンスを学ぶことだったのです!
大型液晶パネルの下には、上海でまもなく行われるストリートダンスコンテスト「挑戦世界冠軍街舞比賽」の参加者募集のポスターが!
弾む心でポスターに見入る彩鳳に、眼鏡にワイシャツにネクタイ姿の男が声をかけます。
自分は「星探=タレントスカウト」だと名乗る男(リー・ションチン李尚正、「ミラクル7号」のカオ曹先生役)。……いかにも怪しい…日本ならAVプロダクションに売り飛ばされて無理やり契約させられ出演させられ…危ない彩鳳、逃げて逃げてー!
しかし、世間知らず=怖いもの知らずの彩鳳は、スカウトマンのストリートダンスコンテスト「挑戦世界冠軍街舞比賽」に代理申請してやるという勧誘を熱心に聞きます。彼女のおなかがぐううぅっと鳴ったのを悟ったスカウトマンは、彼女を伴って、上海麺屋へ。代理申請費用が要ると持ちかけます。
恥も外聞もなく麺を掻きこむ彩鳳。「お金なら、持ってないわ!」の一点張りです。
「現金は600数人民元ならあるけど、今は用心のために紡績工場にいる友達に預けてるの」
彩鳳からようやくそこまで聞き出した、スカウトマン。
「その工場まで、ここからどのくらいかかるんだ?」
「んー、歩いて行くと2日かな!」
「……車なら?」
ひょんな成り行きで、彩鳳に麺代と、交通費を支給することになる、ずるそうでいて実は人がいいのかもしれない、スカウトマン…彼は麺屋の閉店まで、いつまでもいつまでも、彩鳳の帰りを待つことになったようです…。とほほ。
さて、ヒッチハイクで紡績工場までたどり着いた、彩鳳。
守衛に「中にいる友達に会いたいの、緊急の用なのよ!」と訴えますが、仕事中は面会禁止、仕事時間以外も面会禁止だと断られます。
こういう紡績工場は、女工哀史で女工の逃亡防止と侵入者防止のために、厳重な戸締り(鉄鎖何重にも巻き付け!)をしているものだというのは、いつぞやのドキュメンタリー番組で見た記憶がある。
やはり、鉄柵鉄扉鉄鎖で牢獄のようなありさまの、女工宿舎。
ここで、この物語のもう一人の主役、朗少爺(坊ちゃま)(レオン・ジェイ・ウィリアムス立威廉)が登場します。

彩鳳がうっとり見つめたポスターに紹介されていた、上海「挑戦世界冠軍街舞比賽」の主催母体である、ダンス専門学校の経営者。そしてコンテストの主催者でもある財閥CEO。28歳にして一代で凄まじい財を築き、美女は選り取りみどり取っ換え引っ換え。運転手付きベンツもありオープンカーもあり、なぜか左耳だけにダイヤのピアスを付け、ダンス講師のサミュエル・リー先生(サミュエル・パン彭敬慈、アニタ・ムイ梅艷芳の弟子の一人、「鉄拳高 同級生はケンカ王/我的野蠻同學」「ヒロイック・デュオ英雄捜査線/雙雄」)に向かって堂々と「私はダンス自体には何の興味もない。若者たちの消費力に目をつけ、企業のイメージアップのために学校を経営しコンテストを開くに過ぎないのさ」と言っちゃう、嫌ーな実業家であります。
宿舎に忍び込むものの、監獄並みの鉄扉鉄鎖に行く手を阻まれる彩鳳。そこに近づく、懐中電灯のあかりと、人影!
絶体絶命? しかし彩鳳は幸運にも、懐中電灯片手に様子を見に来た小雪と再会・合流できたのでした!
もちろん、こういう女工宿舎には、鬼舎監のオバサンが存在するのがセオリーでして。
「アーデルハイド!」と、アルプスの少女ハイジを厳格にしつけようとしたロッテンマイヤーさんそっくりの、いやもっとふくよかで何故か傘をいつもたばさんでいる、女舎監(プルーデンス・カオ高宝雲?)が女工を監視する。
小雪と同室の女工たちに庇われ、機転を利かせてどうにか宿舎に留まれた彩鳳。
小雪のベッドに一緒に寝かせてもらい、ストリートダンスへの夢を膨らませるのでした。
ところで「少林サッカー」「カンフーハッスル」をご覧の皆様ならすでに御存知の通り、チャウ・シンチーの”美男美女ではない方々”への執着は、並々ならぬものであります。一種のフリークと言ってもいい、通常ならスクリーンに映し出されることのない、吉本新喜劇団員のような個性豊かな面々が、シンチー作品を彩るのです。ある意味、ギャグ漫画の記号論を用いているともいえます。
この小雪といい、彼女の同室の女工たちといい、なかなかのフリークぶり。なかでも、水前寺清子をもっと粗野にしたような「女」工がすごい。胸はペッタンコだし、どう見てもパパに激似なのか、男顔。シンチーテイストなら、男に演じさせて声だけ吹き替え…いや声も中性的で(泣)。
ある日、ついに鬼の女舎監に見つかってしまう彩鳳! 居候は当然追い出されるものと思いきや、女舎監は憤慨し毒づきながらも「明日からあんたも女工として働きな!」と、お目こぼしを…!
一方、彩鳳はあの上海ストリートダンスコンテストの主催母体である、ダンス専門学校を見学に行きます。エレベーター内で一緒になったのは、実はそのダンス専門学校の経営者で、コンテストの主催者でもある財閥CEO、朗坊ちゃま! ところが実業界雑誌など読んだこともない彩鳳は、彼のことを何も知りません。学費として払おうと持ってきた小銭をエレベーター内にばらまいてしまったのに、拾い集めるのを手伝ってもくれないで先に出て行った彼に、ブツブツ言うばかり。
ところが、先に出ていったはずの朗坊ちゃまは、エレベーターの外から小銭集めを手伝ってくれた…。優しい笑みにボッとなる彩鳳。
おっと、それどころじゃありません。受付でダンスレッスンの受講手続きをしようとした彩鳳ですが、彼女のあまりのみすぼらしさに、受付嬢らは「煩わせないで、さっさと裏に回ってちょうだい! 清潔工人の応募者でしょ?」とすげない。
「清潔工人? あ、ああそうです!」と目を輝かせる彩鳳。彼女は工場での作業の後、この専門学校で清掃しながら、正規レッスンを盗み見て、テクニックを学ぼうと決意するのでした。
昼間は工場でミシン踏み、昼休みは屋上でダンスステップの練習、夜は宿舎を抜け出て、専門学校で掃除をしながら、ダンスの勉強。若いからこそやれる、無茶です。ダンスステップを踏む薄化粧で、右頬にソバカスの巣もある彼女の、しかし幸せそうな、輝く笑顔といったら! まさにカメラが彼女に恋している、としか思えません!
トイレ清掃の合間に、個室で父へのメッセージをカセットテープに吹き込む彩鳳。「父さん、私はいま理想に向かって突き進んでいます! 理想を持つことはたやすいけど、それを続けることは大変です、でも私、頑張るから!」
ああ、なんてけなげで可愛いんでしょう…。
そんな彩鳳の姿を、実は経営者である朗は、ダンススタジオの上から、あるいは出入の際に、そっと観察していたのです。
朗のビジネス仲間なのか大学同級生なのか、ダンススタジオの上で生徒の女性たちを品定めする男たち。赤がいい、いや黄色がいいと盛り上がる友人たちに、朗は「俺なら灰色だな」と漏らします。「灰色?」と怪訝な顔をする友人たち。そう、生徒に灰色の服装の女性はいないのですが、その脇で必死にダンステクを見て覚えようとする、灰色の清掃工人制服の彩鳳の姿が…!
いつものように颯爽とスーツを着込み、、ブランドもので身を固めた美女とデートに出ようとした夜、彼はゴミ収集所でゴミ袋に埋もれてぐうぐう寝入ってしまった彩鳳を見かけます。
肩に手をかけて「お嬢さん、仕事上がりの時間だよ!」と声をかける朗。
目覚めた彩鳳は驚きうろたえ、慌てて駆け去るのでした。
あああ、この朗坊ちゃまが、やはり、彩鳳の「紫のバラの人」ですかー!
「笑っている方が可愛いよ、お嬢さん!」と丘の上でささやいてくれる王子様なんですかー!
(例えが古すぎる)
そんな彩鳳ですが、やはりお年頃の女の子。清掃の合い間についついダンススタジオ内のベンチの上に放置されたキンキラのデコ電 (デコケータイとも)に興味を持って手に取ってしまい、コンテストに向け特別編成されたストリートダンスチームのキツネ目女に目を付けられ、意地悪されてしまう。ストリートダンスチームのメンバーは、世界的にも有名な強豪の韓国チームに、たとえ勝てなくても精一杯の演技をしろとコーチに命じられ、カリカリきているのです。
その特別編成クラスに、コンテスト出場チームメンバーではないけど、熱心に通ってくる眼鏡のサラリーマン・ハン恒(フォン・ミンハン馮勉恒、「ミラクル7号」の体育の先生役やトニー・レオン梁朝偉&ミリアム・ヨン楊千[女華]主演「行運超人」(未)のタクシー強盗役など…実は脚本家だ!)が一人。彩鳳が話しかけるといつも「申し訳ないけど時間がない!」とそそくさと去ってしまう、何だかオタクっぽい男です。ダンスも決してうまくない。
工場では、昼休みに疲れが出て小雪にもたれかかって爆睡し、ミシン掛けに大失敗して女舎監に叱られ、冴えない彩鳳。
ある日、いつものように清掃にかこつけてレッスンを見ていると、あのキツネ目女が「何見てるのよ! あんたの仕事は清掃でしょ! あたしたち、どんだけ高いレッスン料払ってると思うの!」と言いがかりをつけてきます。
なじられて我慢できず、ダンス勝負に出る彩鳳。キツネ目女とのダンス対決には見事勝ちましたが、李講師が割って入り、「おまえには清掃以外に関わってほしくない!」と彩鳳は怒鳴られます。うなだれる彩鳳。彼女に「君のダンスはすごかったよ、才能あるよ!」と言って、そそくさと去るあのオタクサラリーマン。
彩鳳がトイレの個室で清掃作業していると、突然羽毛のようにフワフワと雪が、いやチリが降ってきます。幻想の世界に入ってステップを踏む彩鳳。しかし我に返ると、それはあのダンスチームの女たちが小麦粉だかコーンスターチだかを彩鳳に浴びせかけ、嘲笑していたに過ぎないのでした。
「清掃人がダンスだってさ! あーおかしい、ダンスだって! 踊ってみなよ、ほらほら!」
屈辱にまみれ、逃げるように立ち去る彩鳳でした…。
外は冷たい雨。いつものように紡績工場の女工宿舎の塀を乗り越えた彩鳳でしたが、雨で濡れたガラクタで足が滑り、着地の時に足をくじいてしまいます。あまりの情けなさに座り込んで動けなくなる、彩鳳。
そこに近づく人影が…。
それはあの、鬼の女舎監でした。
ところがその夜、女舎監はいつも持っている傘を彩鳳にさしかけ、「あんた、毎晩どこで何をしてるんだい?」と問いかけます。
「…ダンスを習ってるんです、私の夢なんです!」と答える彩鳳。
「やれやれ、私も夢を持って都会に出てきた多くの若者を見てきたものだ。でも、いつかは誰だって現実に目覚めなければならない。あんたは格別の美人ってわけじゃないし、工場の仕事だってまあまあ出来るに過ぎないじゃないか。夢は夢、現実にしっかりと足を付けて、地道に生きることを考えな!」
「理想で飯は食えないよ。現実は耳に痛いものだろうけど、よく自分で考えなさい」
諭され、うなだれる彩鳳に傘を預け、何故か持っていた小さな傘をさして、去っていくロッテンマイヤーさん、いや女舎監の後ろ姿、カッコいい……。
2段ベッドの下段で、寝付かれず考え込む彩鳳…。あれ? 小雪ちゃんは? いつの間に1人ベッドに?
その夜から、彩鳳は専門学校での清掃作業を休み、紡績工場では気が抜けたようにぼうっと考え込むのでした。
心配する女工仲間。しかし彩鳳が何も語らないので、どうすることもできません。
日曜なのか、公園のベンチでぼんやりしている彩鳳。
その前に、中高年女性軍団と、中高年男性軍団が、つかつかと行進してきます。
……一触即発の、ヤバい事態?
女性の一人が、抱えてきたのはラジカセ。
女性軍団と男性軍団の中間に、ラジカセが置かれ…。
ダンス曲が流れ出すと、男女は互いに一礼し、始まったのは、社交ダンスだったのです!
上海でも、いるんですねえ、公園でダンスに興じる中高年…。
香港の某公園でも、アンプ&スピーカー&カラオケマシーンを持ち込み、カラオケ&ダンスに興じる中高年が名物ですよ。
彩鳳がうっとりと眺めていると、走ってきたのはあのオタクサラリーマンのハン恒。
老女に手招きされ、手を取って社交ダンスを始めるではありませんか。
彩鳳が驚いていると、恒はやがて彩鳳に気づいてレッスンを中断し、彩鳳に話しかけてきました。
「最近、君を学校で見ないけど。もう清掃の仕事は辞めたのか? …皆がみんな、ダンスの才能に恵まれているわけじゃないんだよ。俺には天賦の才はないけど、好きだからヘタでもこうして続けてる。君はせっかく才能に恵まれたんだから、あきらめるべきじゃないよ!」
そういうと、老女の誘いに応じてまた踊り出す、ヘタだけど本当に楽しそうな恒…。
彩鳳は、彼や中高年の皆さんが無心に踊る姿に、何か悟るものがあったのでした。
好きこそものの上手なれ。基本に立ち戻って、踊りたいという自分の気持に忠実になろうと…。
彩鳳が李先生に厳しく咎められた後、彼女は経営者の朗の部屋に呼ばれます。
彼はサミュエル・李先生に電話し「山出しの村娘が、ストリートダンスの花形ダンサーに育つというのは、格好のシンデレラ・サクセスストーリーだ、わが社の企業イメージのアップにも繋がる。彩鳳をチームに加えろ」と命じるのでした。
それで気がついたんですが、このサミュエル・李先生も、片耳にダイヤのピアスしてる…! まさか、二人はゲイカップル…?
そういうわけじゃありませんでした…。かくして学費免除、清掃作業もしなくていい、生活費は学校持ち、という夢のような条件で、ダンスレッスンだけに打ち込むことができるようになった、彩鳳。
さらに、ある日朗が彼女に声をかけます。「君は、ハイヒールを持ってる?」
セレクトショップを貸し切り、彩鳳の鼻の下の産毛も抜き(女だってヒゲは生えるんですっ!)、メイクにヘアメイクに濃いピンクのシルクドレスにハイヒール、全て揃えて高級西洋レストランでのディナーに誘う朗。履き慣れないハイヒールでピョコピョコ歩く彩鳳が可愛い。でも、これじゃリチャード・ギアとジュリア・ロバーツの「プリティ・ウーマン」で、ジャッキー・チェン成龍とスー・チー舒淇の「ゴージャス」じゃないですかぁ!
しかし、英文メニューが読めない彩鳳(^_^;) 「写真入りのメニューはないの?」という問い掛けが、日本でいうファミレス、香港でいう茶餐廳しか知らないんだなあと、リアルに感じさせられます。
彩鳳は朗に問いかけます。「あなたは、どんな時が一番嬉しいの?」
「そうだな…僕の会社が株式上場した時かな」
「え? 何が嬉しかったの?」
「僕の財産が一気に5倍になった」
「ふううん。私が嬉しかったのは、父と農作業をしていて、頭上に虹が出たのを2人で見た時だったわ。楽しいことをするのに、本当はお金なんて要らないのよ」
……どこまでも異なる価値観の、2人です。
……大丈夫かいな……?
ディナーを済ませ(フォークとナイフの使い方、大丈夫だったのかしらん…?)、夜道を紡績工場に向かって歩く2人。塀に映るシルエットが腕を組んでいるように見えるよう、そっと朗の腕の近くまで手を伸ばす、いじらしい彩鳳。その動作に気づいた朗は微笑み、手を繋ぐのです。
うわーーーー、やっぱり「紫のバラの人」かぁぁぁああああ!
そしてついに、ファーストキッスを朗に捧げる、彩鳳……。工場のあの守衛も、見て見ぬふりを決め込んでくれます。
「それでそれで? その後はどうなったの?」と翌日、興味津々で尋ねる女工仲間。
「その後って…何もないわ、そのまま宿舎に帰ってきたもの」と答えつつ、ウキウキの彩鳳。
費用の心配もなくダンスに打ち込め、恋も順調、何というラッキーガール(^_^;)
ストリートダンスチームのあの意地悪キツネ目女も、彩鳳のダンスの才能に一目置き、プレゼントを通じて仲よくなるし。
すっぴんから薄化粧へ。どんどん垢抜け、綺麗になっていく彩鳳。
ある日、デート中にあのスカウトマンに出くわした彩鳳は、義理堅くも上海麺代金と紡績工場までの交通費を返すのでした。突然美女に声をかけられお札を渡され、当然のように受け取ったものの実は相手に心当たりがなく、首をひねるスカウトマン…実は人のいい人、だったんじゃん!
しかし…今までプレイボーイとして名を馳せて来た朗が、どこまで本気なのか? 実は彩鳳も心底彼を信じるところまでは、いかなかったのです…。
彩鳳が小雪をあの高級レストランでのディナーに招待して朗と引き合わせようとした時、朗は「急用が出来たので、ディナーに付き合えない。ここの勘定は僕が持つから、2人で好きなものを食べて」と彩鳳に告げ、急いで去ってしまうのです。
小雪は「彼、あなたに対してどこまで本気なの?」と不安を彩鳳に告げます。
彩鳳はついに、電話を聞いて急に自宅を出て行った朗の車を、タクシーで追うという行為に出ます。あちゃーー。
朗の車は、上海国際空港に到着…到着ゲートから出て来た一人の美女を嬉しげに抱きしめ、車の助手席に乗せるのでした。
それを見届け、タクシーで自宅に戻る彩鳳は、車内でひたすら泣きじゃくる……。
夜、あの空港の美女を伴って帰宅しようとした朗の前に、立ちふさがる小雪。
「あんた、彩鳳に何をしたの! 彩鳳、失跡しちゃったわよ! あんたたちのせいで!」
呆然とする朗…!
朗への不信をきっかけに、失意の彩鳳は突如、ダンスレッスンを辞め、紡績工場も辞め、郷里に一人戻ってしまったのでした…。
少しも変わらぬ田園風景、少しも変わらず彼女を迎えた老父。
BGMはピアノソロで奏でられる、テレサ・テンの「月亮代表我的心」。
寝床で毛布をかぶって泣きじゃくる娘に、なす術のない老父。
「その…ファーストキッスを捧げた以外にも…何か…あったのか?」
彩鳳のうっかりした返事に「その男、殺す!」と気色ばむ老父。「父さん、違うの、キッス以外何もなかったの!」あわてて止める彩鳳。
……えーーーっ、てっきり同棲してあーんなこともこーんなことも捧げちゃった後かと…!
朗、意外に純情じゃーーん?
父の励ましも聞かず、寝床で泣きじゃくるばかりの彩鳳…まだまだ、子供だねえ…。
どこを蹴飛ばしてしまったのか、いきなり彩鳳の声があのテープレコーダーから流れ始める。
あの、声のメッセージです。老父、数度の彩鳳のメッセージを1本のテープにダビングし直したのか? やるなあ。
「父さん、私はいま理想に向かって突き進んでいます! 理想を持つことはたやすいけど、それを続けることは大変です、でも私、頑張るから!」
その自分の言葉を聞いた彩鳳は、ハッとするのです。
果たして彼女は、何もかも放り出したままで、いいのでしょうか!(いいわけがなーい!)
彩鳳のいない間に、あのストリートダンスコンテスト「挑戦世界冠軍街舞比賽」が開幕していました。
世界チャンピオン、韓国の南城隊に挑む、中国の紅星隊!(ダサッ)
そう、あの上海の、朗が経営する専門学校の精鋭によって構成された、男女チームのことです!
アフリカン系アメリカンの司会者によると、会場の拍手喝采が多い方が勝利を収めることになるのです!(だったらサクラを配置すりゃいーじゃん?)。
闘志みなぎる、男ばっかりでの野性的なアクロバットを見せる韓国チーム(プロ?)に比べ、中国男女混成チームはいかにもお上品。やっぱ中国で高いレッスン料払って、わざわざ海外のストリートダンスを学ぼうなんてのは、坊ちゃんお嬢ちゃんなんでしょうか?
チームの花形、あのキツネ目の女が、持ち時間あと1分!というところで、足をくじく。
李先生、焦る。「彼女の代わりを、シンディ、おまえ務められるか? 芋芋は?」
女メンバーが辞退する中、「はい、やります!」と明るく返事してニコニコするのは……!
ところで、上海ストリートダンスコンテストの開催年月日が、2007年10月21日〜25日となっているのが悲しい…。
あのエディソン・チャン陳冠希が朗役で撮影が進められ、あの大失態なエロ画像流出事件のせいで、この映画が危うくお蔵入りするところを、急遽知名度にはやや欠けるレオン・ジェイ・ウィリアムス立威廉を代役に、全て撮り直して(一部合成だった気がする。背景そのままで、エヂの部分をレオンに置き換えるという荒業をやってのけたのではと。輪郭が不自然だった記憶が)、遅れにおくれてようやく2008年11月に公開できたというわけで…。

当初の記者会見には、キティ・チャン、ステ監督、手前にえぢもいたんですよね。
でもね、朗の役はえぢじゃない方が却ってよかったと思うわけですよ。
自分の築いた財富やマネーゲームに飽き、地位と名声に寄ってくるどんな美女とも長続きせず、むしろウブで素朴で飾らない、素材のまんまの少女に惹かれ、彼女をプリティ・ウーマンに変身させることでピグマリオンコンプレックスを癒す成功者の役は、未だ独身、恋が長続きしないチャウ・シンチー周星馳その人の投影でしょうが。今回のキティ・チャン張雨綺、やや太めの眉毛といい、デビュー当時のセシリア・チャン張柏芝そっくりだもの。あああ、好きなんだろうなあ、こういう美少女タイプが、シンチー。(ステの女の好みは知らん)。
そんなの、えぢじゃないわな。
えぢだったら、ディナーの後に即、当然のようにベッドインして「ふふふ、君の生まれたままの美しい姿を映像として永遠に残そうじゃないか」と巧みに口説いて口説き落として写真は撮るわビデオ回すわお下げ髪にセーラー服着せて機関銃持たせてコスプレさせるわでカントリーガールに向かい変態行為に及んでオモチャにしたあげく、すぐ飽きて非情にポイ…っとっとっと。
そこへいくと、少しタレ目でいかにも笑顔が優しく、韓流スタァの一人かと勘違いしそうになったレオン・ジェイ・ウィリアムス立威廉は、いやらしいところが少しもなく、品があって紳士的でよかったなあと。彼だからこそ、オチもまあ許せるかと。でもまあ、女たちとのラブアフェアーに倦んだ、退廃的な雰囲気はチョット出てませんでしたが…。
レオン・ジェイ・ウィリアムス、父方の祖父はイギリス人、祖母はドイツ人と日本人のハーフ、母はシンガポール人だそうで、モデル業だけでなく、今後も中華圏映画界で活躍してもらいたいイケメンです。
それにしても監督のステが「災難片(災難作品)」とまで形容するほどケチがついた作品で、よくえぢの代役を引き受けたなあ、と、ちょっと彼の男気に感動。
しかし…やっぱり、男かーーー!
文無し後ろ盾無し女が夢想に向かって突き進むのには、金のある男の協力が不可欠かー! パトロンか!愛人か!理解のあるダンナか!
中国女性であるにもかかわらず、いつも嬉しそうにニコニコし過ぎて、(もしかして、知能に問題がある…?)とまで思わせたキティ・チャン張雨綺。この作品公開が大幅に遅れて随分損をしたとは思うけど、黒木メイサ主演の「昴-スバル-」よりよほど才能を感じさせ、観客を惹き付ける魅力を持った女優だと思うので、今後も精進していってほしいです。いやもう今ではケバいけど。彩鳳よりもっとも=っと気が強そうだけど。
うん、「昴-スバル-」で物足りなかったのは、天賦の才を持ってるはずの昴が、あまりバレエやダンスをしていても楽しそうじゃなかったことにあると思うんだ。キティ・チャン張雨綺のように、ああ踊れてうれしい、楽しい、思い通りに自分の体動かせて快感!って表情が、もっともっとあるべきだったと思うんだ。「フラッシュダンス」のジェニファー・ビールスが魅力的だったのは、キュートな容姿とひたむきさと、あのバネのような肢体が限界までしなることによる清純なエロさのおかげだったと思えるし…。って、ジェニファー・ビールスって主演第2作目が不評で約20年も低迷してたんだっけ?あわわ。
♪夢中ーーでーー頑張る君にーーエールをー……エールだけをくれるのはよき友人たちだけど、実際問題、金がなければ夢も見られない! 食ってくだけで精一杯! 諦めるなと自分に言い聞かせるのは大事だけど、到底不可能で諦めないと周囲に迷惑かけるだけって夢もある!(あの中国人ファンが親を犠牲にしてまで夢見た、アンディ・ラウ劉徳華とふたりっきりで何時間も語り合うという夢想…) 退くべきか進むべきか、どうすりゃいいのかねえ…苦苦苦。
本当は楽しい、ご都合主義な娯楽作なのに、nancixには鬼の女舎監の忠告が、何だか胸にズシンと響いた一作でありましたよ…。でも「昴-スバル-」よりは、何度も見返したい作品だけどね。
しかし、側近に次々と愛想をつかされた、星輝公司での片腕的存在だった田啓文にも2007年に契約解除された(俳優としての出演契約だけでは?)などと八卦雑誌に書かれるチャウ・シンチー周星馳、今後どうなっていくんだろうなぁ…? 「ドラゴンボール・レボリューション」に関わったことといい「少林少女」でフジテレビに関わったことといい「青蜂侠ことグリーン・ホーネット」降板でケチがついたことといい…最近、周星馳が沙田競馬場でのイベントに珍しく顔を出したとき、ますます白髪が増えて老け込んでいたことに胸が痛くなったですよ。トニー・レオンと同い年だというのに…。(トニーが奇跡的なのか)


