
やっとテストが終わりましたーーー。
オーラルテストでは広東語組のリーダーである男先生と、最年長の女先生の2人がかりでの尋問…いや面接で、すっかり緊張してしまい「この部屋に学生は何人いますか?」の質問をクラスの総数だと思いこみ「このクラスには20人の学生がいます!」と断言してしまった……_| ̄|○
「今日は何年何月何日ですか?」という易しい質問に、堂々と「2008年11月27日ですっ!」と答えてしまった………_| ̄|○_| ̄|○
28日、28日ですよ、ええ。
いくら悔いても、後のまつり…。
気を取り直して、クラスメイトと尖沙咀で韓国料理のランチセットをいただいた後は、映画ですよ映画鑑賞!
昨日が初日だった、ニコラス・チェー謝霆鋒主演作「証人」を、迷いなく選びました。
……ていうか、このタイトル、どうなの?
てっきり、裁判での重要な証人の身辺保護を死に物狂いで完遂する刑事役がニコちゃんなのだと信じていたら……。
むしろ
「傷だらけの男たち・ニコラス編」
と名づけたい、手に汗握る1作でした。
もうね、ニコちゃん、あのクールで端正で白皙なお顔が、ガラスの破片の突き刺さった痕だらけだし額を怪我してるし、アンディ・ラウ劉徳華の後釜ですかーー!と叫びたいぐらい、鼻血タラタラです。ここぞというときに、それっとばかりに鼻血出します。
やっぱりアンディが鼻血動作指導したんでしょうか…?
嘘です、してません。
監督は「重装警察」(01)、「ティラミス/戀愛行星」(02)、「ツインズ・エフェクト」(03)のダンテ・ラム林超賢。最近は香港産アニメ映画の監督にも進出してますね。アクション監督は、もはやベテランのトン・ワイ董[王韋]。
物語は、蒼過ぎるほど蒼い空から始まります。
赤みの全くない、灰色にも近いクールな色合いです。この映画、独特の色合いにこだわっていて、ともすればクリストファー・ドイル杜可風&ウィリアム・チャン張叔平の創り上げた映像を連想するほどです。「ブエノスアイレス」あたりのスチール写真にあるような。(専門用語わかりません)
まず、カメラはごくごく日常的な、香港の下町の町並みをテンポよく映し出していきます。そして1軒の茶餐廰での朝に、ズームイン。
テーブルで新聞を広げてのんびり飮茶しているように見える、眼鏡の男2人。
年配の方がベテランの新爺(リウ・カイチー廖啓智)で、若い方がTommyのようです。
リウ・カイチー廖啓智、アーロン・クォック郭富城の「C+偵探」に続いて、"若いの"の名補佐役を務めていい味を出してます。かつてケネス・ツァン曾江やンー・マンタッ呉孟逹おっちゃんが務めたような、経験豊かで若者の暴走を戒め、心の底には慈愛を秘めてて、人間味豊かでちょっと息抜きさせてくれる役柄です。

「ん? 今度俺が男にしてやるのは誰だ? ニコラスか? よしよし、任せろ」とでも言って気軽に引き受けてくれたような…というのは妄想ですが。
彼らのもとに中国茶と點心が運ばれてまもなく、元朗A地区のトン・フェイ唐飛隊長(ニコラス・チェー謝霆鋒)が、鼻に小さなピアスを付けた茶髪の若い女を連れて現れます。実は彼ら、全員が刑事なのです。まもなく、茶餐廰の近所でガサ入れが始まる予定…らしい。
彼らはやがて、トン・フェイ唐飛組と新爺組の二手に分かれて古びたビルの上階へ。ハンマーやら大きなハサミ…もといカッターやらの飛び道具ももちろん準備。女刑事が鍵をドアに差しこみ、さあ中へ飛び込む!
大混乱の室内から、裏口に回って逃げようとする男が一人。もちろん裏のドア前にも、捜査員が待ち構えている。
ところがほんの一瞬、逡巡した刑事がいたばっかりに、新爺が撃たれた! 血相を変える仲間たち、そして唐飛!
……もちろん、新爺は防弾チョッキ着用でした……。やれやれ。
「傷だらけの男たち」の阿頭こと劉正煕も、突然キレるリーダーでしたが、唐飛もいったん激怒すると手がつけられない。逡巡を見せた刑事を激しく罵ります。その峻烈さに、周囲も大いに引きまくり。
新爺らのとりなしで、ようやく唐飛が落ち着いた時に、警察無線が新たな事件を告げます。指名手配中の凶悪犯・チョン・ヤットン張日東が、上水から元朗方面へ車で逃走中だというのです。現場付近だと直感して、新爺の運転する車で街を流しながら、周囲を見張る唐飛。突然、目の前でNA558のナンバープレートの車から違う車に乗り換えた男たちが、その凶悪犯らだと感づきます。
追尾してくる唐飛らの車に気づく、凶悪犯の首領、張日東。その横には、若い部下が腹を血まみれにしてぐったりしている姿が…。
様子をうかがうようにいったん停車した張日東の車に、不審を抱いたパトロール中の制服警官が近づき、車を発車させるように手まねで伝え……あああっ、その制服警官が、車内の血まみれの部下に気づきました! 制服警官、危うし!
とっさに張日東の車にオカマを掘る…失礼、追突して注意をそらす、唐飛隊長。制服警官はのけぞり尻餅をつきますが、危うく命拾いしたのか?
さあ、ここから苛烈なカーチェイスが始まります、ワクワク。自分の乗った車の右側に位置する張日東の車に何度もぶつかり、あくまで強気で攻めていく唐飛隊長! 死に物狂いで隊長の命令に従う、運転手役の新爺!
ところが交差点で、唐飛隊長らの車に左から来た車が激突! 唐飛隊長らの車は挟み撃ちに遭い、宙に舞います!
スピンしながらも、ようやく止まる張日東らの車! 裏返しに地面に激突した唐飛隊長らの車! それだけでなく、なんと、新爺の足に車のブレーキレバーだか部品だかが突き刺さってる! こーれーはー痛いーーー!
張日東らはなおも事故現場で急停止した車に強引に乗り換え、さらに逃げる! 必死に車から新爺を引っ張り出し、自分も這い出して、張日東の車を追って走り続ける、超人・唐飛隊長! 何とか車を止めようと、車の後ろから拳銃を乱射します!
ついに、張日東らの車は壁に激突! フロントガラスに頭を突っ込んで、生死の定かではない張日東! 3人の仲間は、即死か?!
追って来た唐飛隊長は、しかし流れ出した血に気づいて車のトランクを開けてみて、息をのみます。
そこには張日東らが車を奪った時に無理やり押し込められたとおぼしき、ピンクの制服姿のょぅじょ…失礼、小学生の女の子が!
………彼女の小さなからだには、銃痕が……。
唐飛隊長の銃弾が、トランクを突き抜けて彼女に当たってしまったのです……。
呆然とする、唐飛隊長!
若い母親(チャン・ジンチュー張静初)の悲鳴、泣き崩れる姿がスローモーションでインサートされ、舞台は病院へ…。
小学生の体から摘出される、血まみれの3発の銃弾……。
自らも包帯ぐるぐる巻きの身でありながら、唐飛隊長がその様子をじっと見守っています。
彼の鼻から、ドクドクと鼻血が……!
小学生女子の小儀ちゃん、手当ての甲斐なく、亡くなりました……。
3ヵ月後。
フロントガラスに頭を突っ込んでいながら、まだしぶとく生き残っていた凶悪犯、張日東の目から、包帯が外されます。
その様子を真剣なまなざしで見詰めている、若い女性。
エリートらしく、スレンダーなボディを黒い上品なスーツに身を包んで、髪をアップにして、イヤリングも高価そう。
彼女はどこかに携帯電話をかけます。「張日東が、視力を回復しました」
舞台は、裁判所だか検察官らの会議室だかに変わります。
おっ、部下の報告を聞いている李専員役は「インファナルアフェア2 無間序曲」でのヤン父役を演じた、香港映画界の名世話役、ジョー・チョン張同祖さんだー!
……ちょっとふくよかになられましたか…?
どうやら李専員は裁判所の上層部の人間(裁判官? 検事長?)であり、張日東の罪状について部下に報告させているらしい。
張日東はかつて、覆面して銀行強盗を働き、警備員1人と警察官1人を殺して逃亡した凶悪犯の一人と目され、かつまた唐飛隊長と新爺を負傷させ、コウ・マン高敏の娘を間接的に死なせた犯人でもあるのでした。
しかし、李専員は「我々が審議できるのはあくまで、銀行強盗事件の犯人が彼かどうかだけだ。高敏の娘を(故意にではないにしろ)撃ったのは唐隊長であって、彼ではない」と結論を下します。「しかも、覆面の犯人が間違いなく張日東本人だと断定できる要素は、強盗事件の現場に残された血液の判定結果だけだ」と…。
李専員の部下はまた、高敏という人物が果たして、冷静に裁判に臨めるのかどうかと疑念を口に出します。
…確かに事件被害者の遺族を、大いに事件と関連性のある裁判に起用してはまずいでしょう香港裁判所!
しかし李専員は「彼女を信じよう」と、あっさりと起用を許してしまうのです!
その高敏検察官とは、あの小学生女児の母親、その人だったのでした……。
とある公園で、スケッチに興じている、いかにも良家の子女でございって感じの制服の小学生たち。
その小学生の中の、ひときわ可愛い女児を見つめて座り込み、クロッキーを描いているのは…あらー、ニコちゃーーん、じゃなくて唐飛!
彼の端正な顔には、ガラス片を摘出した無残な傷跡が、まだ点々と残っているのでした。そしてこめかみには、白い大きな絆創膏が貼られています。
明らかに「目つきの鋭い、怪しいオジサン」なのですが、そんな怪しいロリコンオジサン…もとい、唐飛に向かって、天使のように無邪気に微笑みかける女児が一人。
……似ています。
あの、トランクの中でぐったりとしていた、ピンクの制服の小学生女児にそっくりです。髪型も制服のデザインも全く同じです。
彼女(後にリンリン玲玲という名前だと判明)は「唐飛おにいちゃん」に親しげに話しかけ、唐飛もまた、女児に優しく応え、高価そうな小箱入りクッキーだかビスケットだかを与えるのでした。
どうやら彼女は、あのトランクの中にいて唐飛の銃弾に斃れた、高敏の娘の、実の妹らしい…。
…小学校の先生! 監督不行き届きですよ! 傷痕のあるニヒルな男なんて、小学生に近づけちゃいけませーーん!
唐飛隊長……ロリコンだったのか…_| ̄|○
場面は突然変わります。
足にカラフルな入れ墨を入れた、いかにも裏社会の男、ホン・ケン洪荊(ニック・チョン張家輝)が登場します。
どうやら右目が白濁していて、全く視力を失っている様子。
ニック・チョン、怖いよ…不気味だよ…迫力有り過ぎだよ…。
その彼に監視され、座敷牢ならぬフラット内の牢の椅子に手足を縛られ、目隠しをされて閉じ込められている太めの女が、一人。
片目の男、洪荊の携帯電話に、何者かからの指令が届きます。
女人質に弁当を食べさせる洪荊。彼女は食べかけのまま、突然腹を押さえて苦しみ始めます。…弁当に毒だか下剤だかが入れてあった?
苦しみ悶える女の首に、かけられるロープ!
無表情にそのロープをぐっと引く、洪荊…。
哀れみも、もちろん殺人の快感に酔いしれる表情もない。淡々としたものです。
場面変わって、どうやら必殺仕事人…いや始末屋稼業らしい洪荊に、元締というか請負人というかの初老の男が「今回は4万(香港ドル)だ」と、謝礼の取り分について話しかけています。
白濁していない方の目に目薬を差す洪荊の様子を見ながら「おまえの目はますます、酷くなるようだな」と言いつつ「次の仕事は、子供相手だ。この子供を捉えて拉致したら、2万だ」と、請負人。
……え……てことは、もしや、コウ・マン高敏検察官の次女を誘拐・拉致監禁して、張日東に不利な証拠を、検察官自らに、隠滅させようって魂胆?
何も知らない母・高敏と娘のリンリン玲玲は、マリージェーンプライマリースクール(私立小学校)の「母の日イベント」に参加し、ケーキデコレーション競争に楽しげに興じているというのに!
母でも父兄でもないのに、その姿を見守っている、アンニュイ唐飛……。
彼は席を外し、どうやら男性用トイレに行ったようです。
その間に、サングラスをかけてゆっくりと階段を上がってくる、洪荊。
やっぱり父兄には到底見えない彼の侵入を、なぜ許す私立小学! 学費高いだろうに、警備があまーーーい!
彼は手馴れた様子で、右手にはめた軍手にクロロホルムらしい薬品を染ませる。
「では児童の皆さん、手を洗ってきましょうねー!」との先生のアナウンスに、トイレ前の手洗い場に駆けて行く小学生たち!
その中から確実に、玲玲を抱き上げ口をふさぎ、逃走する洪荊!
「誰かが玲玲をさらっちゃったー!」と機転の利く子供が叫び、男性トイレから出て来たとたんにそれを聞いて異変を直感した唐飛が、単独で後を追う!
だが悲しいかな、ニック・チョンよりも体格的に劣るニコちゃん、いや唐飛は、一発で倒されるのであった。…だから刑事に単独行動は禁物だというのに…。
ようやく意識を取り戻し、額からだらだら血を垂らしながら学外に飛び出した唐飛は、そこで母親仲間と一緒に娘を探す高敏と出くわすのです。
その途端、高敏の携帯電話に、1本の電話が…。
「娘を無事に戻してほしかったら、張日東の血液標本を隠滅しろ」という、脅迫電話でした…。
洪荊は首尾よく、自分のフラットに戻って来ます。
重そうな赤白青の特大チェック柄バッグを抱えて…。
近所のやかまし屋らしい苦情バアサンが追いすがり「あんたんちのトイレを何とかしろ! 年寄りにトイレを使わせない気か!」とわめきたてますが、洪荊は馬耳東風。
……え……それってもしや、解体した人質の肉片を、無造作にトイレに流してるってこと…?
ぐぇぇぇえええええぇぇぇ……。
とにかく室内に入った洪荊は、チェックバッグのファスナーを開き…。
あああ、やっぱりぐったりとした、玲玲ちゃんの小さなからだが、中からーー!
例の座敷牢、いや室内牢に玲玲ちゃんを座らせ、目隠しとさるぐつわをはめ、小さな手足を椅子に縛り付ける、洪荊。
そこに、彼の携帯電話に中国語のショートメッセージが入る。
「老公、いつ帰ってくるの?」という内容の……。
なにっっっ! 仕事人ともあろう者が、女房持ちかいっ!
まさか、「婿殿!」と金切り声を上げる、菅井きんも??
さて、その頃、打ちのめされた高敏は一人、一軒家の高級そうな自宅へ。
彼女に追いすがる、長身痩せ型の優男。
どうやら彼は離婚を前提に別居中だか離婚後の高敏の元夫で、あの長女が死んだ事件以前から夫婦仲が冷え切っていて、それなのに「明日、俺のオヤジが(中国の)故郷から出てくるんだ。(体裁を整えるために)玲玲を連れて会いたいから、いますぐ玲玲に会わせろ」と要求してきている様子。なぜか夫婦の会話は中国語(普通話)である。…夫は内地の人間なのか?
高敏はそれどころではなく、「玲玲は体調が悪いからダメ、会わせない」ときっぱり言い、「何だって? 今朝は何ともなかったじゃないか!」となおも言い募る夫を締め出し、扉の内側で泣き崩れるのだった。
そして、あの日の回想……。
車内で電話相手の夫と「あなたは小玲、私は小儀を引き取ると別居の条件で決めたじゃない!」「小儀だって仕事ひとすじ、1日18時間も仕事場にいるお前を怖がり、独りぼっちは厭だと俺に電話してきたんだぞ!」「私が必死に仕事している時に、あなたは別の女と浮気してたくせに!」と言い争っていた、高敏なのだった。
そして張日東の車と唐飛隊長の車の事故を目の当たりにし、後部座席で怯える上の娘、小儀を車から逃がそうと夢中で外に出たところで、撥ね飛ばされ気絶し、娘ごと車を奪われ……。
そしてまた、下の娘の玲玲までも、悪の組織に奪われ、生死すら定かでない有様…。
どんな気丈な女でも、そりゃガックリ来ますよ…。
一方、唐飛は警察の射撃訓練場に来ていた。
事件で、一命は取り留めたものの、片足が不自由になった新爺は、訓練場の職員に降格されていたのだった。
「あれは事故だ、上層部からだっておまえはお咎め無しだろ。ここに配属されたおかげで、俺は娘に絵を教えられる」と、前向きに語って唐飛を慰める新爺。
唐飛は、そんな新爺に「あんたは顔が広い、俺の頼みごとを聞いてくれる者を知らないか?」と、頼みごとをするのだった。
その頼みごととは、高敏の携帯電話に掛けられた、脅迫電話の出所を突き止めること…。
夜の運動場のスタンド席に独り佇み、また鼻血を垂らし、また涙ぐむ、孤独な唐飛…。
あのー……泣くより先に、警察病院で脳と鼻の検査を受けた方が、今後の捜査に支障をきたさずに済むと思われますが…?
高敏の携帯電話に掛かってきた脅迫電話は、北角の天文台道近くの公衆電話ボックスで掛けられたものだった。
その公衆電話で指紋を取るよう、新爺に連絡をもらったという女性鑑識課員は、なんとあの事件まで唐飛の部下だった、茶髪に鼻ピアスの女刑事だった…(香港の警察組織って、狭いのね)。
彼女を帰すと、唐飛は周囲を観察し、公衆ボックス前のビルの1台の監視カメラに目を留める。
それは、"一楼一鳳"という形式で客を自分のフラットに誘い込む、娼婦が密かに(自衛のため? 常連客を逃がさないため?)仕掛けたカメラだった。
彼女のフラットで警察だと名乗り、監視カメラが捉えた映像を再生してみる唐飛。
後頭部が薄い男の後ろ姿こそ、高敏の携帯電話に脅迫電話が掛かってきた同じ時間に公衆電話付近に現れた男だった。
彼が公衆電話ボックスの横のゴミ箱に何かを捨てたのを、唐飛は見逃さなかった!
彼はゴミ収集所に走り、大量のゴミを必死に漁る!
あああ、そんなことをしている間に、玲玲の命はぁぁぁ!
ところが始末屋稼業の洪荊は、玲玲の監視を怠り、ベッドに横たわっている女に何やら吸わせ(大麻?)、薬を与えている…。
えーー、ヤク中なんですかぁ? 始末屋ともあろう者が?
薬の力を借りてお楽しみぃぃ?
と思いきや、女は本当に病人らしい。
息が荒くなり、悶える彼女に、洪荊は痛み止めなのか発作を抑える安定剤なのか、カプセルを与えて水を飲ませ、甲斐甲斐しく介護するのだった……。
え……この洪荊とお揃いの入れ墨が手足にある女が、もしや彼の女房?
一方、唐飛はゴミと格闘し続け、ようやく1枚のSIMカードを見つけ出す。
ええと、日本にもFOMAカードとか、あるでしょ。日本ではSIMロックが掛かってるから、機種変更の時程度しかいじらないけど、SIMフリーの香港や台湾では、普通にカードを端末から入れ替えて皆さん使ってます。日本では犯罪の温床になるとしてほとんど死滅しかかっている、プリベイドカード方式のSIMカード(身分証明書無しで買える)も健在です。
唐飛は新爺と連絡を取りますが、頼みの綱の彼は「俺はもう深[土川]に帰った」と告げます。…ん? 家賃も物価も安い中国広東省深[土川]市に住んで、新界地区の銃撃訓練場に通勤してるってことか? 香港特別行政区の公務員が、そんなことでいいのか?
新爺の「沙田警察署に、大ロ米という奴がいる、奴に頼め」と言われて、深夜の警察署に赴く唐飛。
しかし彼の前に現れた大ロ米とは、あの事件当日、新爺が撃たれたことに激昂して激しくなじった相手、あの"逡巡刑事"その人だったのでした!
ここぞとばかりに、唐飛を激しくなじり、恨み言をぶつける大ロ米! 言い返す言葉もなく、うなだれる唐飛。
「何よりムカつくのはな、俺はお前の従兄だってことだ! 親戚なんだぞ!」と、大ロ米はついに口にする。
ますます言葉もない、唐飛。
ストレスのせいか、内に秘めた千の言葉の代わりか、鼻血が都合よく彼の形のいい鼻から、たらたら流れ出す。
「………だからな、従兄なんだぞ、身内に、なんで一言SORRYが言えないんだ(言えたら許してやるのに)」と、バツが悪そうに矛先を納める大ロ米。
「……SORRY、表哥(従兄)」と、素直に口にする、さすがはニコちゃん、根は可愛いのです。
「……それでいいんだ」と、一転、頼もしい協力者になってくれそうな従兄のおにいちゃんなのでした。
手がかりをつかんだ勢いで、玲玲ちゃんの母、高敏を自宅に訪ねる唐飛。
「ドアを開けてください! 手がかりがあるんです!」と必死に頼むが、絶望している高敏は扉を開けずに追い返す。
なおもあきらめず、ドアの下の隙間から、自分の携帯番号を書いたメモを差し入れる唐飛。
そこに、またもや高敏の携帯電話(NOKIAだー)に、MMSメッセージが届く。
「律政署に保管されている張日東の血液標本を始末しろ。法廷に出る前に、おまえと接触する」というメッセージに、さるぐつわに目隠しをはめられ、椅子に座らされた玲玲の映像が、添付されていて…。
悲鳴を上げる、高敏。
一方、そのメッセージを電波の中継基地で捉えたのか、大ロ米が再構成して、映像を唐飛の携帯電話に転送してくれた。
囚われの玲玲の姿に衝撃を受ける、唐飛。
一方、始末屋稼業の洪荊も、危機を迎えていた。
彼のフラットの扉を激しく叩く音。
覗き穴から外を見ると、あの苦情婆さんと、制服姿の男女の警官が…。
「洪さん、この婆さんが通報してきたんです。悪臭とトイレの詰まり方が近所迷惑だと。一応、中を改めさせてください」
洪荊はとっさに玲玲を抱き上げ、隠し扉から入って隠し部屋に彼女を移動させ、何食わぬ顔でドアを開き、苦情婆さんと警官を中に入れる。
じろじろと室内を見回す、警官2人。
「こんなに天井が高くては、空調代がかさむでしょう」とか何とか、雑談しながら洪荊の様子を観察する、男の警官。
隠し部屋では、玲玲がいましめを解いて、さるぐつわをはめられたまま何とか脱出路を探そうと、室内を歩き回っていた。
そして彼女はついに、あのベッドに寝たきりの、洪荊の妻と出くわしてしまう!
小さな女の子の姿に驚き、彼女も夫のターゲットなのだと悟って発作を起こす妻。
何とか警官を帰し、妻のもとに駆けつけた洪荊だが、怯えた玲玲が冷蔵庫にぶつかり、上に並べてあった薬のカプセル3瓶分が割れて中身がごちゃ混ぜになってしまう。
いまの洪荊の視力では、何もかもが白黒の濃淡でしか見えない状態。効能によって色分けされていたカプセルも、区別がつかないのだ。
仕方なく、洪荊は自分の顔を見た玲玲を口封じに殺すどころか、彼女に頼み、カプセルの選別をするしかなかった。
食事を買いに行く洪荊に、恐れを知らない玲玲は「サラダもほしいの」とねだる。
洪荊の携帯電話に、あの請負人から指示が届く。
「事情が変わった、子供の片手を切って、その映像を送れ」という、あまりに残酷な指示だった…。
唐飛は新爺を伴い、洪荊の根城のすぐそばまで来ていた。
高敏の携帯に送られて来た映像には、玲玲の背後の窓の外に、赤いネオンの一部が映っていたのだ。
わずかな手がかりを元に、何とか拉致犯人の根城を突き止めようとする唐飛。
「任務でもないのに、いいかげんにしろ。おまえのためなのか、それとも誘拐された女の子のためなのか、よく考えてみろ!」とたしなめる新爺だが、唐飛には馬耳東風。
眠らない、休息しない、ブラックコーヒー以外口にしない唐飛のために、新爺は近所の茶餐廰に向かう。
そこに、お持ち帰りのサラダの出来上がりを待つ洪荊もいた。
彼の片方の目が灰色なのを観て、唐飛が出くわした玲玲誘拐犯人だと悟る新爺。
彼の携帯メッセージを受け取り、茶餐廰に駆けつける唐飛!
だが新爺の鋭い視線に、一瞬にして危険を悟った洪荊は、厨房奥のトイレを借りるふりをして、従業員に斬り付け、逃亡を企てた!
いやもうね、きっとゲリラ撮影です。追跡劇をノースポイント北角だかどこかの街角で、望遠レンズでリアルに撮ってる。行き交う通行人が本当に立ちすくみ、ぎょっとしてるもの。誰も「きゃぁぁ、ニコラスぅぅぅ!」なんて笑ったり舞い上がったりしてない。
執拗に追い続けた唐飛だったが、洪荊は現金輸送車の警備員を殴り倒してライフル銃を奪い、唐飛と制服警官に撃ち続ける!
あの無我夢中で銃を乱射し、玲玲の姉を撃ってしまったトラウマのせいで、車の陰から、どうしても飛び出せない、逡巡し続ける唐飛……。
銃声がやんでから飛び出すも、すでに洪荊の姿はどこにもなかった…。
もちろん、銃乱射事件は所轄署の扱いとなり、傷の応急手当を受けた唐飛は警察車両内に待機させられ、うなだれる。
その彼の姿をテレビニュースで見て逆上する、高敏。
現場に駆けつけた高敏に平手打ちを食らい「あなたが勝手な捜査なんてするから、私はもう一人の娘まで喪ってしまう!」と怒りをぶつけられる唐飛…だが彼は捜査の進展を告げ「残る赤いネオンは、この上のアレ一つだけです。僕はどうしても玲玲を助け出したいんです」と、理解を求める…。
工事用の竹棚を伝い、ネオン近くのフラットを外から覗き込む唐飛……。
ついに彼は、玲玲の制服の裾と足だけを目撃する!
彼女はまだ、生きている!
だが唐飛と新爺がそのフラットに踏み込むことを決意したそのとき、洪荊もまた、屋上をつたってフラットに戻ろうとしていた!
ベッドの妻に「すぐ戻るから、待っていてくれ」と言い残し、玲玲を横抱きにして出て行く洪荊。
間一髪で彼を取り逃がし、玲玲を連れ去られてしまった唐飛と新爺……。
洪荊はヤミ医者とおぼしき男のもとへ玲玲を連れて行き、彼女に「鉛筆を持つのはどっちの手だ?」と聞き、利き腕でないと判断した左手を切り落とすように、医者に依頼する。
抵抗むなしく、腕に麻酔薬を打たれる、玲玲!
彼女の細く小さな腕は、切り落とされてしまうのか?
唐飛らは洪荊のフラットで、ついに隠し扉を見つけ、隠し部屋で洪荊の妻を発見する。
何とか娘の居場所の手がかりをつかもうと必死な高敏は、指先とまぶたしか動かせない妻を言葉で責め立てるが、興奮した妻は発作を起こす。

新爺の機転で薬カプセルを飲ませ、発作を抑え「救急車を呼ぼう」と決めた3人。
妻のかろうじて動く指先の近くに備え付けてあった携帯電話で、高敏は洪荊に連絡を取る。
「娘に手を出さないで! あなたの奥さんはちゃんと病院に運ぶから!」と必死に交換条件を出す高敏。
部屋の壁一面に張られた、幸せだった頃の洪荊と妻のカップル写真や、結婚披露宴での笑顔の二人の写真に見入る唐飛。
洪荊は元ボクサーだったらしいと、写真を見て悟るのだった。
救急車内には、付き添いとして新爺が乗り込むことになる。
救急車のすぐ後に続く、唐飛の車。
だが洪荊が、いつのまにか救急車内に潜入していた…。
洪荊は新爺を救急車から突き落として車をジャック、唐飛はぎりぎりで新爺を轢くことを回避できた。
重傷を負った新爺だが、車内に自分の携帯電話を残す機転をきかせ、大ロ米が新爺の携帯電話が発する電波を追う!
救急車ごと妻を奪還した洪荊は、請負人に自ら電話するが、冷たく突き放されてしまう。
彼は救急車を、とある地下工事現場に隠していた。(あのー…2人いたはずの救急隊員は…? 始末されちゃったんですかー?)
救急車内には、縛られたままの玲玲も転がされている。
現場をようやく突き止め、単身乗り込む、唐飛!
一方、高敏も張日東の銀行強盗殺人事件の法廷に、検察官として毅然として出席し、娘が殺されるという怯えと闘っていた!
救急車内の玲玲は、何とか手足のロープをほどこうと頑張る。
そんな彼女を、寝台に寝かされたままの洪荊の妻が視線と指先だけで呼び寄せ、かろうじて動く指先で、後ろ手のロープをほどいてやった…。
ずっと夫をかばってきた彼女の胸に、何が去来したのか…?
夢中で脱出を図る玲玲の耳に、彼女を呼ぶ懐かしい声が聞こえてきた…。
「唐飛おにいちゃあん!」…彼の胸に飛び込む、玲玲。
しっかりと彼女を抱きしめ、抱えあげて立ち上がる、唐飛!
だが、その背後に迫る、洪荊の姿が……!
高敏は脅迫に屈せず、法廷に無事、あの血液標本を証拠として提出したのだ。
「電話しろ、電話だ!」と被告席で叫び続ける、憎悪に凝り固まった張日東。
請負人が、洪荊に電話で無情な指示を出す。
「事情が変わった。娘を殺せ!」
唐飛と洪荊の死闘は続く。
何とか玲玲を助けようと「何があっても振り向くんじゃないよ、君のママが言った通り、走り続けるんだ。そうすればきっと…!」と言い聞かせ、彼女に携帯電話を持たせて唯一の脱出路の土管の中に送り出す、唐飛。
土管を走り抜けた玲玲だが、唐飛を気絶させた洪荊は彼女を追い続ける。
母親の高敏に電話する玲玲だが、法廷に出ている彼女は電話を聞けない。
「ママぁ、怖いよう……早く電話に出てよぉぉ」と、泣き声を留守録に吹き込む、玲玲。
その声を、休廷中にやっと聞けた高敏は、控え室で震え出し、崩折れる。
法律家として、絶対に護るべき一線を護ったがために、母親としてまたもや娘を失うのか…?
そして、
立て、立つんだ、唐飛!
いたいけな小学生女子・玲玲を救えるのは、君しかいないんだぞ!
逡巡しているヒマは、気絶しているヒマは、鼻血を抑えているヒマはないっっ!
守るべきものを抱えた男と男の闘いが、ぶつかり合いが、再び始まるっっ!
果たして、勝つのは、生き延びるのは、どっちだーーーーーーっっっっ!!
というわけで、ネタばれすれすれの線まで紹介してしまいましたが、いやもう、ドキドキハラハラスリル満点で、突っ込みどころはニコちゃんの盛大な鼻血と鼻水だけ、という力作でありました。
因果話が、最後の最後に明かされるしね。
あの一件が、そうまで登場人物を繋ぎ合わせているとは、いや参りました。
この映画を「単なるアクション映画じゃない」と強調していたというニコラス、納得です。
心のひだひだを、彼は丁寧に表現していると思う。
クライマックスを、ネタばれしないように書けないのがとっても残念だけど、いやもうなんていうか、抱きしめたい!ぐらい、けなげ。いとおしい。不死身のタフガイ・無敵のヒーローとしてではなく、無限の悲しみと悔恨をずっと抱え込んでる生身の人間が何もかもかなぐり捨てて身悶えする姿を、わずかな希望を指の間から零れ落ちさせまいとあがく姿を、クールさをかなぐり捨てて、芸能生活11年・いまやパパともなった彼は、果敢に見せきったんですよッッッ!
できれば、使い古され手垢にまみれた(?)「鼻血」以外で表現してほしかったなー、ダンテ監督……。
でもやはり、映画評論家や香港金像奨審査員が助演女優賞候補として評価しそうなのは、まぶたと指先だけを動かせるという、寝たきり全身麻痺状態での心理葛藤演技を要求された、洪荊の妻役の苗圃だろうと思うわけでもあります。
苗圃は北京電影学院卒業の、中国の女優さんだそうで。何だか他の女優さんに、似た人がいるような気もするんだけど…亡くなった范文雀さん? それとも香港のサンドラ・ンー呉君如…よりは整った顔立ちだしなあ…??
「セブンソード/七剣」(05)、「門徒」(06)と香港映画出演をこなし「ラッシュアワー3」(07)にも起用されたチャン・ジンチュー張静初、やはり気丈な中にも悲哀、たおやかさがにじみ出る役にはもってこいですな。
知性も感じさせるし、5歳年上の「傷だらけの男たち/傷城」のシュー・ジンレイ徐静蕾に負けず劣らず、いい感じで年齢を重ねていきそうです。
ていうか、こんなふうに女優を中国や台湾から気軽に呼んで来れるから、お膝元の香港女優が育たないんだよなあ……。
香港のテレビタレントは知性にはほど遠い、キャピキャピ型が多いし…。
蒼い、蒼い空が、最後の最後にもまた、目に沁みる……そんな感慨が持てる、映画でした。
……凛々しい女たちにいつも護られているトニーさんより、ずっと年下のニコちゃんの方がずっと大人びて思えるのは、何故なんだろうなぁ……??



