2007年08月31日

ワールドプレミア迎えた「色、戒」

 そして現地時間8月30日午後7時(日本時間31日午前2時)、「色、戒」はついにワールドプレミア上映の時を迎えました。

 アン・リー監督、トニー・レオン、タン・ウェイ湯唯、ワン・リーホン王力宏、ジョアン・チェンらが揃って正装で現れ、レッドカーペットを踏みしめて上映会場のSALA GRANDEに入ったのでした。

 今回は独りのトニーさん。何を思う…。
赤絨毯トニー

 ていうか、トニーのマネージメントオフィス「Project House」http://www.projecthouse.net/の女ボス、ジャッキー・パン彭綺華女史もちゃんと香港から駆けつけて、李安監督の背後にいるんですけど。
赤絨毯李安とジャッキーさん
 黄色い矢印の女性が、彭綺華女史。

 李安監督と、やはりハイヒールを履くと易先生より、じゃなくて監督よりも高いタン・ウェイ湯唯。
赤絨毯李安と湯唯

 全員集合。やっぱりトニーさん、端っこが好き……(^_^;)
赤絨毯全員集合

 突然ですが欧州合作の新作映画「遥運的北極」をひっさげてベネチアに乗り込んできたミシェール・ヨー楊紫瓊姐さんも、「グリーン・デスティニー」でお世話になったアン・リー監督に敬意を表して、レッドカーペットの上に登場。化粧濃いよーー!
赤絨毯楊紫瓊
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「色、戒」公式記者会見開催

笑顔フォトセッショントニー
 ベネチアライオンさんと寅年トニーさん。

フォトセッション02
 ほんとは隣にタン・ウェイ湯唯ちゃんがいました。上のはカットしてすまない。


フォトセッション01
 (誰に何と言われようとも、僕はこの映画が好きなんだもんね!)と内心決然と覚悟しているようなトニーが、何だか痛ましいような……あっぱれと手を叩きたくなるような……。考え過ぎ?

手を振るサングラストニー
 サングラスがミラータイプに変わった?

 フォトセッションの画像集は、こちらに。
 http://ent.sina.com.cn/m/p/2007-08-30/19121696351.shtml

 プレス試写の終わり、Alexandre Desplatによるゆっくりとしたテーマ音楽が再び流れ、字幕が現れると、Salalidoの広々とした上映会場では、すぐには割れんばかりの拍手が巻き起こりませんでした。数百人の観客は自分の席についたまま、依然として映画が造り出した雰囲気に浸っていたそうです。

 現地時間29日、「色、戒」は2度のプレス試写を終えました。長いながい、2時間半の上映が終わると、鑑賞したプレスの人々は一致してこう考えました。「映画がNC-17の等級を"授与された"のは、まさに名は実を伴うというものだった」と。
 初めて銀幕に身を投じたヒロインの湯唯の素晴らしい表現力は、たちまち彼女を今回の映画祭の主演女優賞候補として絶対的な人気者にしました。

 そして現地時間30日正午、ベネチア国際映画祭での「色、戒」公式記者会見が行われました。
 広い場内は超満員、立錐の余地もないとはこのことです。
 アン・リー李安監督が場内に姿を見せた時、満場の記者や映画批評家から拍手が巻き起こり、いつ終わるともしれないほどその拍手は続いたといいます。誰もがアン・リーと、彼の偉大なこの作品に拍手を送らずにはいられなかったのです。
 会見場にはアン・リーのほか、脚本家で製作プロデューサーでもあるジェームズ・シェイマス、及びトニー・レオン、タン・ウェイ湯唯、ジョアン・チェン陳沖、ワン・リーホン王力宏が揃いました。

ベネチア記者会見全員集合
 ………また、端っこ好きなトニー…端っこに引っ込んでる…(^_^;)

 席順は、右からジョアン・チェン、トニー・レオン、アン・リー、タン・ウェイ湯唯、通訳男性、王力宏、ジェームズ・シェイマス?
 アン・リーは黒っぽいジャケットに襟元を開けたチャコールグレー色のシャツ姿、トニーは白ドレスシャツに白いジャケット、黒っぽいジーンズに茶色のベルト。湯唯はその年齢にしてはシックな黒カットソーに白と黒のスカート+ペンダント、髪を後ろできりっとまとめていました。王力宏は黒っぽいジャケットに白シャツで凛々しく、ジョアン・チェンはあでやかな、紺色に青い花柄のワンピース+白ベルトでしたが、これは北京での会見でも着ていたそうな…。
 アン・リーは宣言しました。「性と暴力はこの映画のテーマの一つです。私は持てる限りの力と資源を費やし、私がかつて期待しながら、今まで触れることができなかった内容に直面することができました」と。

 以下は記者会見内容の抜粋です。完全版は他記事と突き合わせてみないと、何とも…。
 会見の主役は、やはり「2046」での王家衛と同じく、アン・リー監督でした。

 記者:「ブロークバック・マウンテン」のなかで、あなたは同性愛に対してとても多く細やかな表現をしました。この「色、戒」では、また男女の愛に戻って描写していますね。外界からの各種の憶測についてどう思われますか?

 アン・リー:演出を通して心の中の仮の自我に触れるのです。本当は自我は性別を持って分けられるものではありません。同性でもいい、異性でもいい、通常我々は愛情を用いて接触するには文章をもってすればできるのであって、一般的な同性、異性の方式で分けることは望みません。どの人の心の中もとても複雑なものです。たとえば今回の小説についていえば、湯唯の役柄は女性ではありますが、私が性愛について撮影するとき、私は彼らの中間で浮遊することになります。実はそれが私を非常に困惑させました。非常に困難な一つの創作過程、それが映画撮影です。私は観客が私と共にこの種の複雑な性と曖昧模糊な性を分かち合うことを望みます。我々は道徳や、社会規範や習慣を説くのではありません。法律を説くのでもありません。我々は二つの性に介在する、ある曖昧模糊とした地帯について物語るのです。

 記者:あなたのこの映画での表現は相当大胆ですね、とりわけ情欲の部分が。何があなたを駆り立てて、このような選択をさせたのですか?

 トニー(北京語で)僕は実は、自分に対しての要求がとても高いのです。僕は毎回、演技に新しい挑戦があるように希望しています。今回、僕は非常にうれしいです、このように優秀な映画人の皆さんと一緒に、このような映画を創れたからです。
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posted by nancix at 03:38 | Comment(1) | TrackBack(0) | 「色、戒」特集

2007年08月30日

トニーは「この映画が本当に好きだ」

 台湾の聯合晩報の唐在揚記者によれば、ベネチアに到着したトニー・レオンは、すでに昨晩、映画館が閉館した後に映画祭事務局の特別な取り計らいにより、完成した「ラスト、コーション/色、戒」を鑑賞しました。
 もちろんトニーはあらすじは知っていましたが、編集済みの完成フィルムを見るのはこれが初めて。編集され、音響も入ったフィルムの効果は格別で、トニーは非常に満足した様子です。彼は映画を見終わるとホテルに戻り、アン・リー李安監督らと合流しました。トニーはまず「僕は本当にこの映画が好きです」と告げ、後期処理作業や英・伊字幕挿入作業で疲れきったアン・リー監督はついに、彼のトレードマークである輝くような笑顔を見せたのでした。

 トニー・レオンは以前から、身近な親友知人らに会うと「今回の映画での表現は、とても大胆だから」と警告し、将来この映画を見た時に腰を抜かさないように、あらかじめ"予防注射"をしていたといいます。彼の言葉を真面目に受け取る人は少なかったのですが、ベネチアでプレス試写を見た人々は「トニーって、(ちゃんと警告してくれるなんて)本当に誠実な人なんだ…」と思わずにはいられなかったといいます。
 ジェットトーンの幹部は「こんなに難易度の高いベッドシーンを、どんなふうに設計したんだろう? アン・リーは本当に創意がある…」と語ったそうです。

 で、聯合新聞網には、もう一つ、プレス試写された「色、戒」についての唐在揚記者の記事「「色,戒」 大膽尺度 梁朝偉露三點」がアップされているのですが……。


 すいません……あまりに形容が露骨で、到底訳せません…_| ̄|○

 ああぅ…おしめを替えたり入浴させたりしたトニーママと、カリーナだけが知っていればいい部分が、ついにスクリーンに…40代にもなってとうとう、観客の好奇の目にさらされるのか……(号泣)

 日本ではもしや、ボカシが入るんだろうか…?
 ジャン=ユーグ・アングラード主演のフランス映画「傷ついた男」(83)程度の露出……?

 男女の支配と服従の関係、若く美しい女の身も心もとことん征服し従属させなければ到底満たされない中年男の、焦燥と若さへの嫉妬…。寝首をかかれることにたえず用心しなければならない、売国奴と呼ばれる身の怯えと深い孤独感…。
 日本軍占領下において明日をもしれぬ身での、激しくも切ないパッションを描くには、アン・リーはそういったシーンがぜひとも・絶対に・どこの誰に何を言われても必要だ、と考えたのだろうか?


 ある中国の新聞記者は、鑑賞後に呆然として「これが『推手』を撮ったアン・リーなのか? 完全に別人の監督のようだ…私はよーく考えをまとめてみなければ…今夜は1文字も書けないよ…」とブツブツと呟いていたそうです。

 それでもトニー……。
 …撮影中にどんなに辛かったとしても、あなたはこの映画を好きなのよね…?


 ファンとしては赤面し顔を両手で覆いながらも、指の間から見るしかないのかしらん……?

 香港で見るべきか、台湾で見るべきか……まだ悩む…。

 ていうか中華マスコミ、ちゃんと時代考証や美術面やストーリー展開や登場人物描写についてを、まず書いてくれーーー! 
posted by nancix at 17:12 | Comment(1) | TrackBack(0) | 「色、戒」特集

「色、戒」ベネチア・プレス試写の反応は

 第64回ベネチア国際映画祭では、レッドカーペット・タイムにちょうど「色、戒」プレス試写が行われたそうです。これは開幕作品「Atonement/贖罪」(英国)を除けば、もっとも早いコンペ部門出品作品となります。

 出席した捜狐娯楽の記者、[木匪]子さん(女性のようだ)によると、レッドカーペット・タイムとかち合ったにもかかわらず、場内は満席。各国の記者や業界人が、行列を作って入場する盛況ぶりでした。
 さらに、[木匪]子記者はこう鑑賞後の印象をまとめています。
あっけにとられてものが言えません:場内はかたずを呑んでスクリーンに見入る雰囲気だった、特に後半の大きい(長い?)ラブシーンで。

大胆な画面:トニー・レオンと湯唯は両方とも数回、正面からの全裸のシーンがあり、さらに"残酷な恋"(SMのことらしい…)の場面がかなりある。

アン・リー式のユーモア:後半では、アン・リーのユーモアも大いに異彩を放ち始め、場内に数回、笑い声が響いた。

震撼好評:私達は無作為に数人の観衆とジャーナリストに取材を行った。すべての人が口をそろえて褒めた。

 この捜狐娯楽の記者は、この作品がNC-17に指定されたのは、やはりMPAA(全米映画協会)の受容能力が相当高かったからだろう、同時に我々は(この作品が)中国当局の審査を通過するかどうか、ちょっと心配だと述べています。

 ネットで流されている予告編では、ただタン・ウェイ湯唯の背中からのオールヌードと部分的なベッドシーンしか見られませんが、実はそれらは氷山の一角に過ぎないそうです。トニー・レオンと湯唯には数回の正面からの全裸シーンがあり、体位も相当ずば抜けていて、少なからずSMシーンもあり…大胆さにおいては今回コンペティション部門に(「レンブラントの夜警」で)参加しているピーター・グリーナウェイに少しも遜色がない、とのこと。
 つまり、今回アン・リー李安は観客と張愛玲に、超大型の驚きと喜びをもたらした、というのですが…。

 …いやその、張愛玲は必ずしも、性愛場面をたっぷりと描いてほしいと望んだわけではないと……。
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posted by nancix at 15:23 | Comment(0) | TrackBack(0) | 「色、戒」特集

トニー・レオン、ベネチア入り〜!

 「色、戒」ベネチアニュースを収集してまとめるために、遅い夏休みを1日だけ何とかぶん取ったnancixです。どもども。

 30日正午(日本時間で30日午後7時)、「ラスト、コーション/色、戒」公式記者会見が開かれ、世界初のプレミア上映が行われます。

 トニーは現地時間の29日午前11時(9時40分説も)、北京出発香港乗り換えで、ニューヨークからのアン・リー李安監督よりも20分早くベネチアのマルコ・ポーロ国際空港に到着しました。空港でさっそく取材陣に取り囲まれたトニーは、長旅で疲れていたに違いなく、フラッシュ避けのいつものパンダサングラスを外さず、しかし微笑を絶やさず穏やかに北京語で対応しました。動画は今のところ、こちら…。

空港トニー01

 小さいけど、これも。
空港トニー02

 動画だと、やはり後頭部の短い頭髪がちょっと立ってしまってるのがわかります…寝癖? ねえトニー、ファーストクラスで爆睡した後の、寝癖?(*^^*)
 誰か、トニーに飛行機を降りる寸前には、櫛で髪を整えるように、忠告してくんないですかー。

 このライトグレーのパーカー、とっても馴染みがあるんですが…。
 2000年に日本・大阪に来た時もパーカー着てたし、2002年の「インファナル・アフェア」公開前にアンディと一緒にトーク番組「小燕有約」に出演した時も、ライトグレーかホワイトの、似たようなの着てました…。2003年は、空港でナイキのホワイトパーカー着てたときもあった…。

 なぜか中国人記者が「撮影中の『梅蘭芳』の状況は?」と聞き、もちろん同作品には出演していないトニーは「??」とキョトンとなったものの、怒りもせず。「ベネチアに何回来てますか?」と聞かれて「4回、今回で4回目。10数年(ベネチア映画祭に)来ていない。とてもうれしい」と答えました。また「ベネチアの印象は?」と聞かれて、(まだ空港から出てないのにぃ…)「ますますきれいになったね」とだけ答えました。また、「色、戒」が米国でNC-17級にされたことについては「特に感じることはないね。今回観客と同じように、初めて(完成した映画を)見るんだよ、だから緊張している」と答えました。またカリーナ・ラウは付き添うのか?と聞かれ、笑って「彼女は来ない」とだけ答えました。

 20分後に取材陣の前に現れたアン・リー李安監督。空港内ですでに待ち構える取材陣を目ざとく見つけ、微笑んで手招きしたそうです。主なインタビュー場所は、空港建物を出て、映画祭実行委員会が用意した迎えの車の前だった様子。
空港でのアン・リー監督
 10数時間のフライトで幾分むくんだ顔で、疲れは隠せなかった李安監督、 やはり妻子は同行せず、空港ロビーではタン・ウェイ湯唯とワン・リーホン王力宏を伴っていました。
李安湯唯王力宏

 またまたNC-17問題について取材陣に問われた李安監督は「編集作業中にもう、NC-17指定されることはわかっていたよ。配給は重要だが、さらに重要なのは映画としての完成度なんだ。NC-17級はポルノ映画ということではない、ただ児童が見るには適さないというだけなんだ。米国の級別指定については尊重すべきだ。しかしこの機会に、この映画が米国で、NC-17級のイメージを変えることを望むよ」と穏やかに、やや仕方なさそうに答えました。
 「色、戒」が監督人生における最大の尺度の作品か?という問いに対しては、アン・リーは笑って「色情について言うなら、最大の尺度だね」と答えました。また台湾で上映するバージョンは全くカットせず、中国バージョンはカットを加えて短くなるだろうとも答えました。

 また、ベネチア国際映画祭が出品国として「Taiwan,CHINA」と表記したことについては「その方面は政府機関が処理することだ。私の仕事(責任とも)はよい映画を撮ることだ」とかわしました。また審査委員長を務めるチャン・イーモウ張藝謀について聞かれると「私たちはよき友だ。私が初めて国際的な大賞(「ウェディング・バンケット」で93年にベルリン映画祭金熊賞)を受賞したとき、張藝謀は同映画祭の審査委員だったんだ。まあ、いくらよい友達でも、審査に私情は挟めないからね。審査委員にはそれぞれの意見がある。彼は彼の1票を投じるだけだろう。私は彼が公平に審議すると信じている。一切は平常心だよ」と答えました。
 開幕式での、今年の審査委員団。
ベネチア映画祭審査委員団

 迎えの車に乗り込む寸前、アン・リーは「君たちはもうトニー・レオンに会った? 彼の演技は本当に素晴らしいよ!」と、右親指を立てて記者たちに告げたのでした。

 ありがとうございます…監督ぅぅ…(感涙)。

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2007年08月28日

朝日新聞朝刊に陳凱歌監督登場

 現在、朝日新聞では朝刊で「歴史は生きている 東アジアの150年」という特集を不定期に掲載しています。
 今朝の特集は、韓国の「明成皇后(閔妃)、日本海海戦と「三笠」。そして「シリーズ・識者20人に聞く――東アジア近現代史の10大出来事は?」のコーナーに、中国のチェン・カイコー陳凱歌監督が登場。京都の立命館大学ででもインタビューしたんでしょうかね。「京劇の名女形を描く『梅蘭芳』を制作中」とも紹介されています。
 陳監督が選んだ「10大出来事」は。
1:アヘン戦争
2:ペリー来航と日本の開国
3:日本の倒幕と統一国家の形成
4:戊戌の変法と失敗
5:中日戦争
6:米軍の日本占領
7:中ソ、日米の同盟関係
8:文化大革命
9:[登β]小平の改革・解放
10:温家宝、安倍晋三首相の相互訪問
 というもので、読者が日本人であることを前提にしているとしても、やや意外。
 監督の実の父との、あまりに苛酷な記憶を抱えた、文化大革命がもっと上位に来るものと思っておりました。

 で、高2からは日本史を選択してほとんど世界史をやらなかったnancixは、「戊戌(ぼじゅつ)の変法」を知りませんでした。日本の「戊辰戦争」なら覚えているんだけどなあ。

 「戊戌(ぼじゅつ)変法」とは、清朝末期の光緒帝の御世の1898年に起きた政治改革運動のことなんですね。日本では「戊戌の政変、または百日維新」と呼ばれているそうよ朝日新聞の記者さん。あえて陳凱歌監督の口にした用語に合わせたのかしらん。

 光緒帝自ら立憲君主制への政治体制の変革・現代化を図るも、慈禧太后こと西太后と清朝廷内の保守勢力、並びに袁世凱の武力に阻まれて、光緒帝は軟禁され、「日本明治変政考」の著者で広東省南海出身の康有為は、英国領事館員の援助を受け上海〜香港経由で日本に逃げ去り、康有為の弟は殺され、康有為の弟子の梁啓超は日本大使館に逃げ込んで保護を求め、そのほか数十人が逮捕されて主要な6人の官僚は斬殺され、永久監禁を言い渡された者もいたという体たらく…。

 たったの103日で、清国を一気に近代化・改革の夢はあえなくも費(つい)えたのでした。
 …あー、何だか映画「ラストエンペラー」「火龍」つながりで西太后や光緒帝関連の本を読んだとき、そういう逸話も織り込まれていたような気が、かすかにする。光緒帝が幽閉されたために、わずか3歳で愛新覚羅溥儀が即位したんだよね?

 とにかく、陳凱歌監督が不思議がる「日本の急速な近代化」、そういわれてみれば確かに、内戦を幾つも経ながら、どうにかこうにか欧米ロシアに侵略されずに、政治経済に於いてぐんぐん近代化を推し進められたことは、奇跡的だったのかもしれないなあ。多くの血は流れたんだけどなあ…と、"日本最後の内戦"とされる西南戦争で西郷隆盛+桐野利秋側に加担したご先祖様が一人いたnancixとしては、思ったりなんかする。

 まあとにかく、asahi.comにインタビュー全文が載ったら、興味のある方は読んでみておくんなまし。って、まだ載ってないけど。

 この「歴史は生きている 東アジアの150年」特集、次は「辛亥革命と民衆運動」がテーマで、10月初めの朝刊に載るらしい。ではアン・リー監督へのインタビューは、その次の特集に載れば「色、戒」日本公開に間に合うかな、などと。取らぬ狸の皮算用。

日中戦争の全貌 (河出文庫) まだ張愛玲が愛した"漢奸"胡蘭成の著書「今生今世」(中国語! 分厚い!)も読み終わってないのに、昼休みに文庫本「日中戦争の全貌 (河出文庫 (た22-6))」(2007年7月20日初版発行)なんか買っちゃったよ…。
 というのも、文中に挿入されている白黒写真のなかに「ガーデンブリッジにおける中国車両の検閲」という一枚があり、「色、戒」予告編のなかに出てきた鉄橋と車両、日本兵の姿が酷似していたものだから。この文庫本の写真・資料協力は「近現代フォトライブラリー」となっているけど、アン・リー監督らも、この写真やそれに近い資料をもとに、あの外白渡橋(旧ガーデン・ブリッジ)のシーンを作り出したのだろうか。

 上海事変、南京攻略、広東攻略、桐工作と汪兆銘(精衛)政府の承認、日本、米英に宣戦、香港を占領…と、読み進めるのは日本人としてまことに辛いけど、その時代に生き、その時代に斃れた易先生や王佳芝を想うには、やはり基本的な時代の流れを知っておかなくては……(-_-;)
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2007年08月27日

東京国際映画祭でエドワード・ヤン追悼特集?

 本日届いた「香港電影通信」第203号に、東京国際映画祭アジアの風部門の新ディレクター、石坂健治氏の文章が載っていた。

 「東京国際映画祭はエドワード・ヤン追悼特集をやります」という見出しで、どうやら同映画祭では、初期作品「海辺の一日」「タイペイ・ストーリー」の35mmフィルム・字幕付き初上映や「恐怖イ分子」「ヤンヤン・夏の思い出」上映、関係者による追悼トークは期待できそう。
 「海辺の一日」は未見だし、主演があの、敬愛してやまないシルヴィア・チャン張艾嘉ですよ! ほうちゃんこと侯孝賢も俳優として出てるんですよ! 撮影はクリストファー・ドイル杜可風なんですよ! 見たいなあ……。

166分もあるけど……。

 問題は、それらの日程が平日か否かってことなんですよ、地方の勤め人には…………_| ̄|○

 追悼トークはこの際無念の涙を呑むとして、大阪でせめて同じ内容で上映を……ダメ?

 それにしても「恐怖イ分子」、「エドワード・ヤンの恋愛時代」「カップルズ」が、プリントは配給会社に残っているが上映権が切れているという状態というのは、いささかショック。まして、「クーリンチェ([牛古]嶺街)少年殺人事件」の権利関係が、そんなややこしいことになっていようとは…。あわてて文中で紹介されていた、シネマヴェーラ渋谷館主の内藤篤氏のブログ「館主のひとりごと」を読みに行きましたよ。

 いつかはトニー・レオン出演作特集上映なんて、日本でやれないのかなあ、と胸ときめかせていた時代もあったけど、トニーも旧作は全くバラバラな配給会社が諸権利を持っているわけで、「月夜の願い〜新難兄難弟」みたいに上映権が切れたものも多々あるんだろうなあ。市川雷蔵特集、ジェラール・フィリップ特集のように、一部の企画者の情熱と苦労で可能になる企画もあるんだろうけど…。
posted by nancix at 23:55 | Comment(1) | TrackBack(0) | アジア映画

2007年08月25日

「色、戒」は米国でNC-17指定に

 fanfunfuanさんがコメント欄で教えてくださった通り、「hollywood reporter」サイトによると、8月23日にアン・リー李安の新作「色、戒」はMPAA全米映画協会によって、NC-17の指定を受けました。
 つまり、米国では17歳以下の観客は映画館への入場を拒まれる、ということなのでしょうね。(等級の解説は「>>続きを読む」以降を参照)

 「hollywood reporter」サイトと中国・南方都市報報道によると、MPAAは「色、戒」についてNC-17指定を受けるだけの多くのシーンがあり、少なくとも3シーンにおいて、性行為への挑発を含んでいる(うち一つは長いモンタージュ)と判定したそう。映像は特定の時代のもと、当時の人々のあいまいで複雑な感情を表現しようとしているのですが、この映画を看た多くの人が、性描写暗示の成分が比較的濃厚だと感じたというのです。
 「トニー・レオンの正面からの全裸はありません!」と、ある華人のトニーファンが迅速にファンサイトのフォーラムで表明しています。どうもヒロインの裸身、それも背中を見せるだけのヌードではないシーンがあるのと、男女のオーラル何とかシーン(*^^*)と、男女の間の攻撃性と感情的な闘争を伝えて、幾つかの非伝統的な体位が表現されるとか何とか……非伝統的? 米国基準での?

 ……でもきっと、いや絶対に、中華圏映画の伝統にのっとって、湯唯ちゃんのおっ○いの中心部分は見せてないのよね…? 日本の男性諸君、期待し過ぎないよーに(^_^;)

 そりゃ「恋愛は戦場」みたいなタイトルの戯曲を書いたアイリーン・チャン張愛玲の作品の映画化なんだから、ベッドシーンだって男と女のせめぎ合いだわよ。テロリスト・アターーック!だわよ。(……え?)

 アン・リーの「アイス・ストーム」も「ブロークバック・マウンテン」もR指定だったために、「色、戒」は彼にとって初のNC-17作品となります。

 NC-17の指定を受けると、米国の一部の新聞やテレビ媒体で広告を打つことができなくなり、一般観客への告知には不利になります。
 しかし、「新京報」によると、製作会社のFOCUS FEATURESは、等級を変えるためにこの作品をカットすることは、絶対にしない、と表明しました。フォーカス・フィルムのCEOであり、「推手」(91)以来、アン・リーとずっと二人三脚でやって来て、「色、戒」のシナリオも共同で手がけ、エグゼクティブ・プロデューサーを務めるジェームズ・シェイマスは、この映画の最終編集権はアン・リーに属し、全てのシーンは彼の思いの実現であるので「グリーン・ディスティニー」「ブロークバック・マウンテン」と同じく、製作会社が手を加えることはしない、と断言しているそうです。

 中国電影局の副局長である張宏森は、24日に記者の問い合わせに応じ「すでにこの作品は中国での内容についてと技術についての審査(ありていにいえば検閲)を通過した。審査過程で確かに一部、削除した部分があるが、ほんのわずかだ。決して観客のストーリーに関する理解度に影響を与えない」とのこと。また「全米映画協会の成人指定の影響はない、オールヌードのシーンはとても少なく、中国国内で上映するバージョンには、問題となるシーンは現れない」とのこと。

 ……って、やっぱり中国版はカットされてるんだぁぁぁ(>_<)

 日本版は米国版に準拠してくれーーー! 大阪・天六ホクテンザ(隣が成人映画専門館)にまでなら行ける、行ってやるぅぅぅ!

 ちなみに、全米公開はインディーズ系ながら9月28日に決定済み(10月5日から拡大公開予定)、台湾では9月25日、香港では9月27日に上映が開始されます。中国での公開開始日だけが未発表。
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2007年08月24日

「待ち暮らし」金城&ツイィーで映画化

 ジョン・ウー呉宇森監督作品でトニー・レオン、金城武らの「赤壁」や、ピーター・チャン陳可辛監督のアンディ・ラウ、ジェット・リー、金城武主演の「投名状」はもちろん、
 チェン・カイコー陳凱歌監督の新作「梅蘭芳」、チャウ・シンチー周星馳の新作「長江7號」、ジャッキー・チェン成龍とイー・トンシン爾冬陞が組む注目の「新宿事件」、ルー・チュアン陸川監督の「南京! 南京!」などに出資している、半官半民の、中国最大の映画会社といえば、中影こと中国電影集団公司です。
韓三平董事長
 ↑中華圏映画界で独り、ブイブイ言わせまくってる"勝ち組"の中影集団・韓三平董事長。

 23日、中国では「中影星美院線」の中国映画配給網についての「上映検討会及び国産映画推介会」が、北京の中影で開かれ、香港から駆けつけたピーター・チャン陳可辛監督、「温故一九四二」の著名な作家で「手機」やブラックユーモアコメディ映画「我叫劉趺進」のシナリオライターでもある劉震雲、女優のチン・ハイルー秦海[王路]らが出席したそうです。
 その席で、中影集団董事長の韓三平が、中影の今年と来年の上映予定及び撮影計画を説明しました。そのなかの目玉として、なんとピーター・チャン陳可辛が長年温めてきた企画、ハ・ジン金哈による小説「待ち暮らし」の映画化を、チャン・ツイィー章子怡と金城武で実現するという発表もあったのです!

 新華網の記事はこちら
 Chinafilm.comの記事はこちら。


韓三平とピーターさん
 会場でいかにも和気あいあいとした様子を見せる、韓三平とピーターさん。(ピーターさん、キミはもう、香港の中国回帰による中国共産主義の絶対圧力を怖れ、規制のない自由な映画作りを切望してハリウッドに行った時期のことは、無かったことにしておるのだね…)

 ぐあああああぁぁぁぁぁぁぁん………_| ̄|○

 そりゃ、チョウ・ユンファ周潤發兄貴とマギー・チョン張曼玉が出演を承諾するのを待ってたら、それこそ18年経ってしまうけどさぁ……。

 ツイィーですかぁ……。

 そりゃアジア圏以外の、日本や欧米にも売れる女優ではあるけどさ……。
 広東語訛りを心配しなくても済むけどさ……。

 「待ち暮らし/Waiting」は、米国で最も権威のある文学賞とされる全米図書賞(99年)や、ノーベル賞受賞作家のウィリアム・フォークナーの名前にちなんだPEN/フォークナー賞(00年)を受賞した、全編英語の小説。
待ち暮らし ハ・ジン金哈は中国遼寧省に生まれ、14歳で人民解放軍に入隊、中ソ国境の警備をしながら読書に励み、文学に目覚めます。19歳で除隊後、文化大革命が終わって学校が再開された年に大学に入学、米国文学を専攻します。1985年にボストンの大学に留学。4年後、あの天安門事件をテレビで見てショックを受け、もう中国で作家活動を続けることはできないと絶望してから、英語で小説を書き始めたという大器晩成型の作家なのです。

 中国ではその受賞・米国での評価・作家活動がほとんど報道されておらず、この「Waiting」も、英語で出版されてから土屋京子先生による日本語訳が2000年に早川書房から出て、その後台湾で中国語訳が出版されたはず。中国では今ではもう出版されたんでしょうか?

 あらすじはこんな感じ↓
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posted by nancix at 23:55 | Comment(0) | TrackBack(1) | アジア映画

2007年08月22日

イ・ビョンホンとショーン・ユー余文樂も出る「I come with the Rain」

 あらら、何だか情報が錯綜している…。

 2000年9月の台湾金馬映画祭の頃からトラン・アン・ユン(中国語表記は陳英雄)監督が撮りたい、撮りたいと表明していた「I come with Rain(仮の中国語タイトルは2000年当時は「他從雨中來」、今年6月頃は「我隨雨來」、現在は「伴雨行」)」。

 トニー・レオンとハーヴェイ・カイテル共演で、"現代の短髪キリスト"的な人類の救世主やら、連続殺人犯やら私立探偵やらが出てくると聞いただけで、当時は(……「アンディ・ラウのアルマゲドン/天地雄心」的トンデモ映画?)と引きまくっていたのですが。

 香港ロケハンにやって来たトラン・アン・ユン夫妻を迎えて、もてなしていたトニーが、夫の仕事中に香港見物させてあげようと、何の気なしにトラン・ヌー・イェン・ケー陳努安姫夫人を助手席に乗せたせいで「トニーに新恋人出現か! しかも結構年齢いってるし、オンナの趣味を変えたか!」と失礼な騒がれ方をした今年6月の事件を経て、いよいよ撮影開始してたんですねー。
 「バベル」(06)のセントラル・フィルムズや、王家衛作品「The Lady from Shanghai 」にも出資予定のStudio Canal(フランス)など4社による、米国・フランス共同出資映画ですが、全編英語だそうです。海外配給会社はTFIインターナショナル。すでに今年のカンヌ映画祭フィルムマーケットで、同社がイ・ビョンホンの出演予定をセールスポイントとしてアピールしてたんですが、キム・ジウン監督の韓国映画「いい奴、悪い奴、変な奴」の撮影スケジュールと重なるので無理かも、とビョンホン側は慎重だったはず…。スケジュール、何とかなったんですね。

 しかし、あくまで主演はクライン役のジョシュ・ハートネット(29)。クラインはロサンゼルス市警の元刑事、シリアル・キラーを自分の手で射殺したトラウマを癒やすことができず退職し、今は私立探偵(ん? どっかで聞いたような設定…)。ハーヴェイ・カイテルがやるはずだった役なんでしょうね。

 共演が、クラインの調査協力者となる香港警察の刑事「孟子」役のショーン・ユー余文樂と、マフィア組織ボスのス・ドンポ役のイ・ビョンホン李秉憲。その美しき愛人だが麻薬依存症のリリ役がトラン・ヌー・イェン・ケー。クラインが射殺の記憶に悩まされるシリアル・キラーのハスフォード役が、カナダ出身、アクターズ・スタジオで演技を学んだイライアス・コーティーズ(エリアス・コーティアスとも表記。「ゾディアック」(07)「コラテラル・ダメージ」(02)「シン・レッド・ライン」(98)「悪魔を憐れむ歌」(97)デヴィッド・クローネンバーグ監督の「クラッシュ」(96)ほか)。

 そして、失踪し誘拐の疑いがあると家族がジョシュ・ハートネットに捜索を依頼することになる富豪御曹司、シタオ役の木村拓哉さん。ショーン・ユーとの共演シーンがかなりある様子です。
 これは……中村獅童と木村拓哉さんの共演映画実現を目論む某A社映画部門のプッシュがあったのか…? いやこれは単なるナントカの勘繰り。トラン・アン・ユン監督はドラマ「華麗なる一族」も見ていて、7月下旬には密かに来日して打ち合わせしていたそう。うわーん、緊急来日トニーとはすれ違いだぁ!

 というわけで、助演とはいえ、ショーン・ユー君のカンヌ・レッドカーペット闊歩が楽しみですねえ。今月は4作の映画が同時にクランクイン、今年後半で6作の映画を撮る予定というほどの売れっ子になってますし♪(10月には南京大虐殺を描く中国映画に出演し、一般庶民を演じるとか…ひぃぃ、大日本帝国軍の兵隊の銃剣で殺されるのかぁぁ! まさか自分で墓穴掘らされて、日本人兵士が日本刀で首を……あああぁぁぁあ…)

 韓国系新聞サイトでは、イ・ビョンホンの役名は「蘇東坡」_| ̄|○。(ヲイヲイ…北宋代最高の詩人の名前じゃないか…)。木村拓哉の役名は「石島」。うん、シタオよりはマシ…。

 中華系新聞サイトには、失踪したのは中国富豪の御曹司で、木村拓哉の役は現在のところ不明、と報じているところもある。


 残念ながら米国滞在中に足を負傷して、アクションシーンの撮影が不可能だからと降板を余儀なくされたダニエル・ンー呉彦祖ですが、なぜか21日、イ・ビョンホン、ショーン・ユーの九龍城・旧啓徳国際空港跡地でのカーチェイス撮影現場にいたとか。午後4時過ぎでもまだまだ炎天下で暑く、ダニエルはジュースや冷やしたお茶を段ボール箱一個分、気前よく差し入れし、イ・ビョンホンと握手して挨拶し、ショーン・ユーと談笑していたとか。…ダニエルの友情出演も有り得る??
 イ・ビョンホンはパパラッチに気づいてもムッとした顔もせず、微笑して手まで振っていたそうです。
 あいにく午後6時過ぎには夕立に見舞われ、6時15分過ぎには撮影はお開きに。

 このフレンドリーな皆さんのフレンドリーな雰囲気の中に、果たしてまたまたの日本代表選手?は溶け込めるんでしょーか…?
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posted by nancix at 23:52 | Comment(3) | TrackBack(0) | アジア映画

2007年08月21日

「色、戒」についてのちょっとした呟き

 そんなわけで次々とスチール及びポスターデザインがネットにて公表されている「ラスト、コーション/色、戒」ですが、
 nancixはこのポスターデザインの方がお気に入りだったりする。

新ポスター?

 お気に入りの理由は、もう一つの方のポスター(米国・アジア版)はタン・ウェイ湯唯が作り物っぽい表情なのに比べ、こちらはトニー・レオン本人の無意識の「口元に手をやる」動作が活用されていて自然だから(笑)。
 別に易先生が「中年になってから、こんな若妻のピチピチした肢体を抱ける僥倖に恵まれるなんて」とヨダレを拭いているわけではございません。

 …だよね、トニー?

 で、今さらながら気づいたのですが、原作小説には「易先生」としかなく、姓だけで下の名前はないのかー!と困ったりしたのですが(別に日本人オタクが困る必要はない)、どうも映画版ではこの役には「イー・ショウティエン易守添Yee ShouTian」というフルネームが与えられたようですね。「易守添」で検索したら、わらわらと「色、戒」の映画版あらすじ解説がヒットしましたわん。「INK印刻文學生活誌」48号の「《色・戒》外景現場解秘」(ロケ現場解説)という記事にも「易守添」という名前が頻繁にちりばめられていました。もっと早く気づけよ>自分。

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2007年08月20日

アン・リーインタビュー(2)

 前回のアン・リー李安インタビュー・「色、戒」はいかにしてヌードシーンの尺度を把握したか? の続きです。
 今回は少し家庭人としての顔も覗かせています。
アン・リー近影

 【張愛玲には愛と父の愛が欠けていた】

記者:映画は一度、「老易的故事」と改名されましたね。どんな原因だったのですか?(昨年9月頃の話題

李:(笑)いえいえ、それは誤報です! あの時私たちはシナリオ進行の秘密を守るために、表紙に「色、戒」と書けなかったのです。主要スタッフが落とし、誰かが拾い上げることを恐れて。そうなると痛ましいことになります(笑)。ですから見てもとてもつまらない、吸引力のない名前を書くことにしたんです。私は「易さんの物語」に決めようと思いました。スタッフも全て了解できます。たとえスタッフの誰かがうっかり落としても、これが「色、戒」だと解りません。その後、スタッフカードも全て「易さんの物語」に変わり、ある人は映画タイトルを変えたのだと思った(笑)。実は全く(題名変更なんて)ことはなかったのです。

記者:あなたが「色、戒」を撮影する前に、台湾のエドワード・ヤン楊徳昌やペギー・チャオ焦雄屏(有名映画評論家で映画プロデューサーの女傑)と中国のアン・フー胡安監督(「西洋鏡-映画の夜明け-」(00)の女性監督)もこの小説を映画化しようとしました。あなたは最終的にいかにして改編権(映画化権だと思う)を手にしたのですか?

李:私が撮影したいと思った頃にはもう、誰もこれを必要としていませんでした。私は彼女の版権代理人――台湾の「皇冠」雑誌と版権について話し合いました。彼らは可能だと言い、私はそれを買い取ったのです。権利金は最後には張愛玲の古い朋友に渡りました――老夫婦です。以前、國泰(キャセイ)フィルムの映画企画者だった宋先生夫妻にです。彼らは「皇冠」の代理人でした。

>>ちょっとネタばれ覚悟で続きを読む
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2007年08月19日

アン・リーインタビュー 「色、戒」はいかにしてヌードシーンの尺度を把握したか?

 撮影監督の談話も興味深いけど、やはりアン・リー監督の言い分が聞きたい。
 いっぱい聞きたい。
 あれもこれも気になる。
 トニーの発言に対しての監督の言い分も聞きたい。どうよどうなのよ。

 というわけで、sina.com.cnが8月17日に掲載した、アン・リー李安インタビューを訳してお送りします。
 ズバズバと聞きにくいことも聞いてしまう、日本人的感覚では無遠慮なインタビュアーは、記者の許涯男さん。性別不詳。

撮影現場での李安
 
全ては愛から生じた

全ては見分ける方法がなかった
 「一人の普通の女性が、一つの非凡な任務を与えられた――ある人物を暗殺することだ――彼女は必ず彼の心を捉えなければならず、同時に自分自身を壊した」

 以上のキャッチコピーのように、中国語映画界の誇りとする巨匠のアン・リー李安が、全地球を風靡した「ブロークバック・マウンテン」の後、再度へヴィーなパンチを放つのが中国語大作映画「色・戒」だ。
 初めて公開された予告編では、そのわずか"黒い1分46秒"の中で、張愛玲が描いた王佳芝、易先生と、枯れて落ちる乱世の男女たちの姿が次々と登場する。交錯する愛欲、彷徨、怨み憎しみと殺戮の盛大な上演は、哀愁と悲しみで千回百転する厳かな挽歌を伴っている。アン・リーが選出したタン・ウェイ湯唯とトニー・レオンのヌードはその予告編のなかで一瞬きらめき、その後で熱血青年が大物売国奴を暗殺しようと謀り、そして計画は全面的に失敗し、"彼女"と"彼ら"は"彼"に捕えられて殺される……ラストの画面は、"彼女"が死の前に窓の外の遠くを眺める淋しい後姿であり、全裸なのだ。

 このような映画に惹き付けられないわけにはいかない。絶対に張愛玲からアン・リーの世紀までの「色、戒」を逃すことはできない。この(公開を)ひたすら待ちわびる日々に、我々は米国のアン・リー監督に連絡を取り、彼に独占特別インタビューを行い、最後の瀬戸際の「色、戒」について詳細を述べることにしよう。

 【「色、戒」にはまさに異なる尺度のバージョンがある】

記者:映画は現在どの程度進行しているのですか? 9月28日に全世界公開できるのですか? 中国においてもですか?

李:おそらく8月中旬には完成する必要があります。現在は、録音と作曲の仕事を進めている段階です。中国では中秋節(今年は9月25日)前後に上映できるでしょう。私は米国(9月28日公開予定)と歩調を合わせるべきだと思います。

記者:予告編を見ることができましたが、タン・ウェイ湯唯は背中の部分をフルヌードで演じているシーンがありましたね。聞くところによると彼女には3つのベッドシーンがあるそうですが、そのラブシーンはどんな尺度で設けられたものですか? 中国国内の審査制度を考慮して、中国版と海外版を分けて(中国版は)その部分をカットしたりするのでしょうか?

李:全てのシーンはストーリー上の必要から配置されたものです。中国では間違いなく審査制度による制限を考慮することを肯定します。実は世界中の各地にこのような問題があって、各地に異なる基準と国民の(性描写についての)民意があります。制度と級別も一様ではありません。我々は各地で、それぞれの事情に合わせた調整をすることがありえます。中国でどのような級別を受けることができるかは、今はまだ話すのにふさわしくありません。上映される時を待ってまた話しましょう。

記者:ある消息筋の話では、タン・ウェイ湯唯のギャラは7ケタなのだとか? なぜ新人女優にそれほど高いギャラを与えるのですか?

李:私はその情報のニュースソースがどこのものかわかりません。製作サイドが決定したのでしょう。私はただ役柄の角度から見て、一人の演技者を把握するだけです。私は湯唯が確かに王佳芝の役にふさわしいと考えました。だから彼女を選んで用いたのです。その他の事情は、私はあまり考慮しません。

記者:撮影当初、あなたが王佳芝役を選ぶ時に、とても多くの女優の起用を考えているというニュースが流れていました。あなたはチャン・ツイィー章子怡を用いないと言って湯唯を選びました。だから別に映画の商業性を考慮したのでないのなら、なぜ当初はチャン・ツイィーを候補として考慮したのですか? ツイィーはどうしてこの役に適さないのですか?

李:私はチャン・ツイィー章子怡では、この種のストーリーが(身の上に)起こるような女の子らしくないと感じたのです。ですから彼女を起用しませんでした。王佳芝について言えば、私は更に多くのイメージ上の条件を考慮しました。その他のことはあまり考えていません。

記者:かつてあなたは、スー・チー舒淇も王佳芝役に起用しようかと考えたことがあると聞きます。「グリーン・デスティニー」の時の最初の人選でも、スー・チーを選ぼうとしました。あなたがこの女優をとても好きだということを説明できますか? あなたは彼女をどのように評価しますか? 今後彼女を作品に起用することがありえますか?

李:彼女は絶対によい女優です。機会があれば当然一緒に仕事がしたいですよ。


 【"易先生"は謎のような人物】

記者:予告編から見ると、トニー・レオンの造型はとても、彼が以前、ウォン・カーワイ王家衛の映画の中で見せた姿のようです。ではあなたはどのように気質と映像の上で、以前の王家衛、スタンリー・クヮン關錦鵬の映画を含むオールド上海映画と区別をつけましたか?>>続きを読む
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2007年08月18日

撮影監督ロドリゴ・プリエト談話

 いよいよ台湾で「色、戒」公式サイトが登場ですね!

 記念に、このblogでも右サイドにバナー貼り付けちゃったりなんか、しました。

 米国も、まもなくFocus Featuresが公式サイト設置発表、かな?

 日本は?

 期待が増す、今日この頃。

 お宝の「INK印刻文學生活誌」から、今回は撮影監督、ロドリゴ・プリエトのインタビュー記事を訳してみます。
 日本でもアン・リー監督のインタビューはいろいろ読めそうですが、撮影監督の談話はちょっと珍しい。
 撮影技術に関する話になると、いつも以上に翻訳の精度に自信ないんですが…。
 ロドリゴ・プリエトは1963年メキシコシティー生まれ。トニーより1歳下なだけですね…。
 

 「色、戒」の風韻
 撮影監督プリエトを訪れて


 上海の[金壽]秦氏によるインタビュー。文章整理はLenaさん。

 ロドリゴ・プリエトの名前は多くの中国映画ファンにとって、聞き慣れない名前だろう。しかし彼が撮影を担当した作品は、みなさんもよくご存知だ。「ポワゾン」「8Mile」「21グラム」「アレキサンダー」「ブロークバック・マウンテン」「バベル」、どれも名高い作品だ。この1965年生まれのメキシコの撮影監督はもう完全にハリウッドに溶け込んでいて、撮影の実力を公認されている。今回、アン・リーは「色、戒」の撮影監督に彼を招請し、またオールド上海の歳月を、彼に初めて中国にやって来て撮影する機会を与えた。我々は彼に独占インタビューし、彼自身の映画遍歴と「色、戒」の物語について話を聞いた。

ロドリゴ・プリエト01

 どんな理由から、あなたは「色・戒」の撮影という重圧を引き受けたいと願ったのですか?

 まずアン・リーが理由です。僕は「バベル」の後、6、7ヶ月かかる多忙な仕事から抜け出して、少し休息しようと思いました。なぜなら「バベル」の撮影の仕事はとても複雑で、多くの国を行き来しての撮影は、確かにとても疲れるものでしたから。そこで僕は映画が完成した後、帰宅してCM撮影をしていました。その時、僕は何冊かの映画シナリオを読んでいました。しかしそれらの撮影を引き受けようという、具体的な考えはなかったのです。当時、アン・リーは僕に電話をくれましたが、具体的に何を撮るべきなのか解らなかった。ただしアン・リーとは以前に「ブロークバック・マウンテン」で一緒に仕事をしました。彼はとても特殊な監督で、僕は彼の映画監督としての才能を非常に敬服しています。ですから彼が、僕にこの映画を撮らなくてはならないと話した時に、僕はシナリオを読んでもいないのに「やりましょう」と答えたんです。
 後になって、彼は僕にこの短編小説を送ってくれました。僕は非常にこの物語が好きです。これはとても独特で、とても興味深い。それに僕について言えば、ただ中国での映画撮影ということだけでも、とても興味を惹かれたのです。

 あなたには「色、戒」の物語が理解できましたか?

 これは、ある人の自分探しに関する物語です。ヒロインは当初、演技として、一人のスパイとなり、自分を別の人間に装います。しかし最後には自分自身を見つけるのです。撮影のために、僕らは原作についてある程度研究しました。僕はこの物語の興味深いところは、ヒロインが最初は自分が何を見つけるのか考えもせずに、努力して自分を一人の俳優に変えていくところだと思います。あの組織に加入し、彼女はある事を成し遂げようとしますが、思いがけない別の情況になっていくのです。彼女は、自分が真実の自我を見つけ出すとは思いもよらなかった。それがこの物語の興味深いところですね。

 「ブロークバック・マウンテン」を撮影する前、アン・リー李安は入手した1枚の写真を、作品の参考にしたそうです。今回は撮影前に、この映画の撮影について基調を定める何かはありましたか?

 この映画を撮影するにあたって、僕とアン・リーは一緒に映画の撮影スタイルやスチールの風格について討論しました。「ブロークバック・マウンテン」と何を変えるべきか? 実際「色、戒」と「ブロークバック・マウンテン」は完全に異なります。全てが新しい経歴となります。「色、戒」の主人公は一人の女性であり、撮影時の照明は「ブロークバック・マウンテン」のように写実的ではありません。我々は光線によってさらに何層もの感覚を作り出し、一種の異なるフィルム・ノワールのスタイルを創造しようと思いました。たとえば濃厚で重い陰影処理を避け、努力して一種の新鮮なフィルム・ノワールスタイルを創り出そうとしたのです。

 「色、戒」と、従来のフィルム・ノワールの、撮影上の違いを具体的に話してみてくれますか?

 たとえば、今回はとても柔和な光線を用いました。僕は撮影の過程でずっと、柔らかい光線のコントロールを試し、同時に光線の出どころと陰のコントラストを示し、光線によって画面の奥行きを表そうとしたのです。光線によってそのフォーカスの所在を示すのです。

 あなたはどのように映画のなかに「オールド上海」の雰囲気を表現しましたか?

 僕らはとても多くの準備をしました。アン・リーは細部に至るまでとても高い要求をする監督だからです。彼は可能な限りどの部分も真に迫っていて、当時の実際の情況に符合するようにしようとしました。どこも一様に、間違いがあってはならないのです。僕らが撮影しようとしている街路は完全に当時の街路と同じ寸法でなければならないし、ビルも家具もそうです。事前の準備と調査の仕事が僕を大いに助けてくれました。それがあってこそ、僕は銀幕の上にかつての上海、香港を出現させることができたのです。僕らは当時の上海に忠実であるように、スタイリッシュ過ぎないように努力しました。撮影スタイルにおいては、上海と香港のパートを区別するようにしました。フィルターを用いて、上海は香港よりも色彩を抑えるようにしたのです。上海は香港ほどカラフルではなく、ただし一種の優雅さがある場所なのです。僕らは力を尽くしてその種のオールド上海の優雅さを伝えようとしました。香港なら単純であるべきです、そこはさらに若々しく活力がある街で、さらに簡単なのです。ですから僕らはライトを使ってそこを照らしました。

 これはあなたが最初に中国人のために撮影する物件ですね。撮影上で何か改変したことがありますか?

 いいえ、特別に変えたものはありません。当然特定の俳優に対しては、彼らのカメラテストをして、異なる顔かたち、体型のためにライトなどを調整します。それらの撮影装置が俳優の情緒を表現するのに有利なように試すような仕事はありますが、本質的には何も変わりません。

 「ポワゾン」「アレキサンダー」にはベッドシーンがありますね。我々も「色、戒」に類似のシーンがあることを知っています。その方面について我々にちょっと話してくれますか?

 僕は最も重要なことは、彼ら(演技者)のために一種の心地よい環境を創り出し、彼らの信頼を得ることだと考えています。僕の意見では、最も重要なのは彼らにリラックスさせ、彼らが撮影技術の点で演技に制約を受ける心配をする必要はないと保証することです。僕は俳優に対して「動くな! 光線がちょうどいい」なんて言ったりできません。光線(照明)を調整して、彼らがどんな演技だってできるようにすべきなのです。撮影現場でレンズを覗く時、僕は彼らの感覚がとても心地いいことを最優先すれば、美しいショットが撮れて、俳優のプライバシー保護と映像美の間で一種の平衡を保てると考えるのです。
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2007年08月17日

舒[王其]氏のブログにも有った、楊徳昌と「色、戒」。

 そんなわけで本日は久々の平日休み…昨夜は焼き鳥&芋焼酎を痛飲してきたせいもあって、自宅から一歩も出ずにのんびりと骨休みして、夏風邪を追い払いましたよ。

 で、台湾の文芸雑誌「INK印刻文學生活誌」で、先日亡くなったエドワード・ヤン楊徳昌監督が張愛玲の小説「色、戒」を映画化しようとしていたことを初めて知って、どっひゃーー!と驚いたりしみじみしたりしていたわけですが、

 トニー・レオン梁朝偉の台湾系ファンは、とっくの昔にその事実をつかんでいたんですね…。

 中華系ファンによる、貴重な中国語資料満載のフォーラム「梁朝偉森林」に、実は映画製作者で映画脚本家で映画評論家で、「さらば、わが愛〜覇王別姫」ほかの中華圏映画の海外配給及びセールスに尽力してきた映画人、シュウ・ケイ舒[王其](女優のスー・チー舒淇に非ず)のブログと、その中の友人・エドワード・ヤン楊徳昌を悼み想い出を語る一文が紹介されていたのです。

 nancix、舒[王其]さんのブログがあることすら知りませんでしたよ…。
 ダメじゃん…_| ̄|○

 そのブログによると「恐怖イ分子」(86)を完成させたばかりの新進気鋭監督時代の楊徳昌は、その才能を高く評価され、舒[王其]の友人の映画プロデューサー(もじゃもじゃ頭のジョン・シャム岑建勲か?)が次作の出資を申し出ていたのでした。
 楊徳昌はある企画をそのプロデューサーに提出する。その企画とは、張愛玲の短編小説「色、戒」を改編すること。楊徳昌と舒[王其]は、シナリオを共同執筆することにしていた。それが「暗殺」だったのです。

 86年当時、舒[王其]は頻繁に台湾を訪れ、楊の自宅に出入りし、楊が最もお気に入りの軽食店やレストランに連れ立って行っては、新作「暗殺」について語り合っていた。版権問題をクリアーするため、2人は香港に行き、張愛玲作品のエージェントを務めていた宋淇にも掛け合う。舒[王其]の記憶では、その時にすでに、映画化権の手付け金を払ったはず、なんだそう。
 楊徳昌の企画では、ヒロインは当時30代だったブリジット・リン林青霞だった。あるとき、ブリジットは香港の自宅に2人の映画青年を招いてディナーをご馳走する。食後は、当日に開かれる予定の「飛竜伝説 オメガクエスト/衛斯理傳奇」(86)レイト・プレミアショーにご招待、の予定だった。サミュエル・ホイ許冠傑、ティ・ロン狄龍、ジョイ・ウォン王祖賢が出演している娯楽SFアドベンチャー映画です。
 まだレイト・プレミアショーが始まらないうちに、満腹した彼らは客間のテレビで、英文台(英語チャンネル)を見始める。それは往年のハリウッド名作についてのドキュメンタリー番組であり、往年の女優たちと彼女らが主演した作品が次々と紹介され、彼女らの晩年の生活ぶりも映し出される。舒[王其]と楊徳昌は腕白坊主のように奇声を挙げ、騒々しく「いやあ、あの美人女優やセクシー女優が、こんな白髪のばあさんになっちまうんだなあ!」なんて感慨にふけってしまったらしい……。

 あの、もしもし君たち? そこは何を仕事にしている、誰の家?

 まもなく、ブリジットは「着替えるわ」とさりげなく中座し、寝室に入っていった。ようやく、現役女優の前で失礼なふるまいをしてしまったと気が付いた2人の映画オタク青年は、舌を出して恐縮した…。
 まったくもう、男ってのはー! なんてデリカシーがないのぉぉ!

 ま、舒[王其]によると楊徳昌版「色、戒」の「暗殺」が未完成に終わってしまったのは、この一件のせいでは決してなく、シナリオの進行が始終理想通りにいかなかったせいだ、短編小説をいかに長編映画に拡大するか、いい案が浮かばなかったのだということで、彼は(責任を負うべきは自分だ)としておられます。
 そしてこの作品のシナリオについて話し合っているときに、楊徳昌は「[牛古]嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」(91)にとりかかり、まもなく「暗殺」はちょっと棚上げ・後回しにされ、そのまんま永遠に幻となったのでした。
 楊徳昌にもまさか「クーリンチェ少年殺人事件」が製作に4年もかかり、完全版にして4時間もの大作になってしまうとは、企画当初は予想もしなかったようで…。

 今年7月、楊徳昌の訃報を受け取ったとき、舒[王其]がまずしたことは、引き出しの中からかつて受け取った楊徳昌からの手紙を探し出すことでした。
 そもそも台湾ニューシネマの旗手と呼ばれた若手監督らが自作を香港で公開するとき、舒[王其]は一面識もなかった彼らと、映画だけをコミュニケーションツールとして午後中熱く語り合い、夕食を共にし、さらにバーに繰り出したのでした。
 その2ヶ月ほど後に、彼らのなかで最も無口でノッポだった楊徳昌から、一通の丁寧な礼状が届きます。当時はファックスもEメールも携帯電話のショートメッセージもなかったわけで、遠方の人との通信手段は手紙あるのみだったのです。そして、楊徳昌は"便箋愛好家"の一人でした。

 舒[王其]は朋友の手紙、その文字と行間から、剛毅な中に少しも強情さのない個性、彼の創作に対する堅持とintegrity(誠実、正直、高潔、品位)を、そして自分自身に対する厳格な要求を感じ取っていたのでした。

 舒[王其]が自分のブログに引用している手紙とは、サンフランシスコから楊徳昌が1987年4月に書き送ったものでした。当時、楊徳昌は健康を害していて気が弱くなっていて、友人たちに対する自分の友情の在りかたを見つめ直し、反省しようと決心したようなのでした。
 当時の「[牛古]嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」はほぼストーリーが完成し、クランクインについて出資会社のゴーサインが出るか否かのデッドライン、というところまで来ていました。その年の夏休みにクランクインできないと、張震ら学生のスケジュールが取れず、また翌年の夏休みまで待たなければならなかったのです。

 そんななかで、楊徳昌が舒[王其]に書き送ったのは、やはり棚上げ状態になっていた「暗殺」のことでした。
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2007年08月16日

「INK印刻文學生活誌」48号入手。

 うおぉぉぉぉーーーーー! やったぜ、とうとうやったぜーーー!

 keroさんにこのblogにコメントをいただいて以来、どうにかネット通販できないかと苦心惨憺していた台湾の文芸雑誌「INK印刻文學生活誌」48号、「張愛玲 李安 色・戒」特集。
INK印刻文學生活誌48号

 んがしかし、台湾内の会員制書店サイトでは「我們所提供的産品配送區域僅限於台灣本島=我々の提供する商品は台湾本島にしか送付できません」という但し書きがあったり、1年分まとめての予約しか受け付けていなかったり。
 海外の、北京語できない一日本人には、ハードルが高すぎた…_| ̄|○。

 とうとう見かねたkeroさんが、台北で買って日本に帰国後に送ってくださったのだ。真的謝謝、本当にありがとうございます。もー足向けて寝られません。どっちに向けたらいいでしょーか。

 表紙は中国の映画雑誌「看電影」からの提供写真ということで、内容にも、昨今次々とネットで紹介されている映画のスチール写真はない。
 しかし、文章については充実そのもの。アン・リー李安監督インタビューはもちろん、ロドリゴ・プリエト撮影監督インタビュー、アートビジュアル解説、セットやロケ現場解説、原作小説の成り立ちと例の鄭蘋如事件の影響をどれだけ受けているかの考察、歴史的背景解説などなど、期待以上の盛りだくさんな内容で、もうもう貪るように読んでおります。(夏風邪ひいて、なかなか進まないのだけど)
 果たして大陸発行の「看電影」による「色、戒」特集とどれだけ内容が重複しているか謎だけど、とりあえずこちらは繁体字だー。はっはっはっはーーっ(意味のない勝ち誇り)。

 この特集、そのまんま翻訳してムック本として出版してほしーーーーー!
 1800円、いや2000円でも買う。トニーの美麗スチールさえ巻頭に載ってれば、トニーへのインタビューが入っていれば、必ず買います。

 ワイズポリシーさん、どうかどうかどうかお一つ、ご考慮願いたいーーー!

 日本で客死した胡蘭成や、張愛玲の研究者も日本におられるし、劇団四季「異国の丘」の某演出家にも一筆書いてもらえばいいじゃん!

 それはともかく、今回のアン・リー李安版の前にも、やはり台湾では「色、戒」映画化の動きが今までにも、あったのですね…。
 驚いたのは、先日亡くなったエドワード・ヤン楊徳昌監督で、主演をブリジット・リン林青霞で、という話がかなり具体化していたという、音楽評論家の符立中氏による記述。

 1984年のチョウ・ユンファ周潤發&コラ・ミャオ繆騫人版「傾城の恋/傾城之戀」(アン・ホイ許鞍華監督)が、張愛玲映画ブームを中華圏映画界に巻き起こし、フレッド・タン但漢章監督は「連環套」と「第一爐香」に興味を示し、ちょうど「恐怖イ分子」(86)で注目を集めていたエドワード・ヤン楊徳昌は「紅[王攵]瑰與白[王攵]瑰」をブリジット・リン林青霞を起用して映画化したいと望み、チャン・イー張毅という監督は「怨女」に興味を持ったというのでした。
 ところが、エドワード・ヤンらとオムニバス映画「時の物語/光陰的故事」(82)の1エピソードを撮影したことで台湾ニューシネマの旗手の一人と目されたチャン・イー張毅監督は「わが愛」(86)を発表後に、離婚し主演女優のヤン・ホイシャン楊惠柵(1歳上)と手に手を取って台湾映画界を退出、一緒に中華圏初のガラス工芸工房を開いて、国際的ガラス工芸作家に転じてしまいます。
 結局、すったもんだの末に但漢章監督が「怨女(邦題:怨の館)」(88)をパット・ハー夏文汐主演で撮影。これが但漢章監督の遺作となりました。わずか41歳で、90年に過労死されたんだとか…合掌…。

 エドワード・ヤン監督は何年も撮影準備を続けていたのですが、映画会社が途中でコン・リー鞏俐を出演させることを提案するなど、ちっとも話がまとまらない。ブリジット・リンは「もう待てないわ」とばかりに、張愛玲作品ではなく張愛玲の半生を投影した女流作家を演じた「レッド・ダスト/滾滾紅塵(こんこんこうじん)」(90)に主演。監督はイム・ホー厳浩で、共演は当時ブリジットと恋愛関係にあったチン・ハン秦漢と、マギー・チャン張曼玉だったのでした。
 結局、「紅[王攵]瑰與白[王攵]瑰」を94年になって映画化できたのは、スタンリー・クァン關錦鵬でした。主演はウインストン・チャオ趙文[王宣]と、易夫人でもあるジョアン・チェン陳沖と、当時女優として上り調子だったヴェロニカ・イップ葉玉卿。

 そんななか、エドワード・ヤン監督について、台湾「聯合報」が1988年1月30日に「香港に赴いて"暗殺"を撮影する予定」と報じたのを、符立中氏は覚えているというのです。構想は張愛玲小説の「色、戒」から取ったものの、4ヶ月もの間、シナリオの推敲を繰り返し、大幅に内容が変わったので、題名も「色、戒」ではなく「暗殺」にしたのだと、記事は報じていたんだそう。
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2007年08月05日

「消えた天使」とアングリー・コントロール

 公開2日目の映画「消えた天使」を、「傷だらけの男たち」上映が終わったばかりの三宮シネフェニックスで鑑賞。
 職人アンドリュー・ラウ劉偉強監督、ハリウッドデビュー作でも映像マジックを駆使して、現在と過去、現実とイメージ、幻想と幻想の境界を軽々と超えて、観客をたっぷりと幻惑してくれます。このMV的手法、多分今後のハリウッド映画でも多用されて定着していき、いつかは飽きられてしまうんでしょうね…。

 いやはや、それにしてもオトコの"アングリー・コントロール"について、「傷だらけの男たち」に続いてまたも考えさせられましたよ。

 「怪物と闘う者は、その過程で自らが怪物と化さぬよう心せよ。おまえが長く深淵を覗くならば、深淵もまた等しくおまえを見返すのだ」

 哲学者フリードリヒ・ニーチェの「善悪の彼岸Jenseits von Gut und Bose」に書かれているというこの警句を知ったのは、一世を風靡したロバート・K・レスラーの著書「FBI心理分析官―異常殺人者たちの素顔に迫る衝撃の手記」によってだった。

 いきなり臆面もなくこの警句を掲げるとは、なんと正攻法な映画なんだろーか。

 「羊たちの沈黙」以来、どれほどのサイコサスペンス小説を読んだことか。レスラーが「捕食者」と呼んだサイコパスと闘う、刑事やFBI心理捜査官や精神科医、そして女性検屍官。
 なかには捜査官の恋人の女性精神科医が、自分の家族による性的虐待のトラウマによる多重人格のシリアル・キラーだった!なんて何でも入りの荒唐無稽な筋立てのものもあって、最後まで一読するやすぐにBOOK OFFに叩き売ったけど。
 もちろん、中にはそれこそ長く深淵を覗き過ぎたせいで、コッチの世界に戻れなくなった刑事もいて、ジェイムズ エルロイの「血まみれの月」「ホプキンズの夜」「自殺の丘」に登場したロス市警強盗殺人課のロイド・ホプキンズ部長刑事などは、上司も部下も敵に回して暴走しまくっていた。ま、「ブラック・ダリア」作者のエルロイ自身が母親を絞殺され、10歳にして深淵を覗いてしまった作家だからね。

 どうしてそれらの小説に読みふけっていたかというと、猟奇的殺人や虐待に興味があるというより、ニンゲン自身に興味があったから、としか言いようがない。

 想像を絶する鬼畜の所業に出くわした被害者とその家族と捜査官が、どうなっていくのか。どうしようもないほどの心の傷は、果たして癒やされることはあるのか。何によって癒やされるのか。
 だから「羊たちの沈黙」のクラリス・スターリング捜査官は好きだが、その後のレクター博士を自身の分身とばかりに大活躍させて彼女を虜にさせて悦に入ってるような作家自身は、好きじゃない、とは以前から言っていることだな。

 ところで、米英のそれらの小説に食傷するほどに登場した刑事や捜査官ではなく、しかし性犯罪者と最も関わるべき存在なのが、米国公共安全局の監察官。捜査協力者または妨害者としては今までにも小説内に現れた気がするけど、この「消えた天使」で初めて主役として意識したよ。日本の「保護司」とはかなり意味合いが異なるようだ。
 米国で、7歳の少女が、向かいに住む累犯性犯罪者にレイプされ絞殺されプラスチック容器に押し込められているのを発見された、両親は性犯罪者が向かいに住んでいるのを知らなかったという実際の事件と遺族による運動を契機に作られた、出所後も性犯罪者の名前、住所を公開する法律「性犯罪者情報公開法」(本作映画ではミーガン法とあるが、被害者の名前からメーガン法だと主張する人もいる)によって、性犯罪の前科者は等しく、公共安全局の監察官に居所を把握され、行動をチェックされることになる。しかし、監察官一人に対して、担当する"登録された性犯罪者"は1000人だと、この映画は冒頭で説明する。

 1人で狡猾な性犯罪者、しかも性衝動に突き動かされると理性も体面も世間体も吹っ飛ぶ相手を、1000人もチェック? そりゃどう考えたって無理だよ…激務過ぎる。

 かくして、18年間という長きに渡って監察官を続けてきたエロル・バベッジ(「Shall We Dance?-シャル・ウィ・ダンス?」と比べてもおっそろしく老けたリチャード・ギア、しかし劇中で彼はエロールとフランス語っぽく呼ばれていた気がするんだけどな)は、燃え尽きる寸前である。彼の退職まで、あと18日。そこに赴任してきたのが、新米監察官の若い女性、アリスン・ラウリー(クレア・デインズ)。上司のスタイルズに、彼女を指導するように言い渡されるエロルだが、一方スタイルズはアリスンにも、バベッジについて何かを示唆した様子だ。

 この上司のスタイルズを演じている男優、一目で(あれっ見たことがある!)と直感しました。そう、あのデヴィッド・リンチのテレビドラマシリーズ「ツイン・ピークス」で、ローラ・パーマーの父親リーランド役で怪演を見せていたレイ・ワイズでしたよ! あの、大真面目に歌い、踊り、泣きじゃくるオーバーアクションを思い出すと、しかも彼の家庭内性虐待がローラ・パーマー殺害事件の発端だったことを連想すると、皮肉過ぎて(コイツも実は…?)と最後まで疑いが捨て切れなくて、困りました…。

 かくして、バベッジとアリスンは師父と師妹、または暴走男とそれを監視しコントロールするべき冷静沈着女、という複雑な関係のコンビとなる。
 …この「暴走男とそれをコントロールするべき冷静沈着女」、しかし否応なく暴走に巻き込まれてほだされて行動を共にすることに…の図式は、Xファイルシリーズのジョン・モルダーとダナ・スカリーを模倣しているようで、これまた新鮮味がないんだよねえ…香港映画なら絶対に、ベテランと新米の男性コンビにして腐女子もワクワクドギマギさせてくれるところなのに。米国だと、女の母親的包容力と洞察力と忍耐で、男のアングリー・コントロールをやろうってことになってしまう。ジョン・ウーも「ブロークン・アロー」で、主人公と男まさりの女性をペアにさせられていて、ファンを少々ガッカリさせましたっけ。

 バベッジはアリスンを伴い、担当している登録者たちを訪れる。その強引さ、あからさまに現在進行中の犯罪者扱いして尋問する態度、プライバシー侵害ぶりに、アリスンは嫌悪感さえ覚える。中には過去の犯行があまりにセンセーショナルだったのでペーパーバック「LOVE and DEATHs」が出版されたほどの登録者もいる。それが、現在では美容師として働くビオラ(ケイティー・ストリックランド)。やつれた地味な現在のビオラには、バラバラ殺人3件で死刑になった夫とつるんで、被害者を拉致・性的暴行に加担していた頃のパンク女の面影はない。ビオラは「私も夫に被害者の予行演習に使われた、被害者も同様。それなのにバベッジは毎週、私に嫌がらせに来る」と語り、アリスンのバベッジへの反感を強めさせるのだった。

 このビオラと、死刑になった夫って、いわゆる共依存によって相乗効果を呼び最悪の犯罪を次々に起こしてしまう"ハネムーン・キラー"なんですよね…デヴィッド・バーニーとその妻キャサリンとか、ジェラルド・ギャレゴと妻のシャーリーンとか、実在するペアが何例も。胸が悪くなるような行為を幾つも犯した連中です。

 一方、登録者の一人でハンサムでインテリで裕福、交際する女性を飴とムチで支配し操縦するのが、エドマンド(ラッセル・サムズ)。「饒舌で一見魅力的 /過大な自尊心、自己中心的 /異常なほど嘘をつく /後悔や罪悪感が全くない /冷淡で共感がない /行動の責任を取れない」のサイコパスの典型に当てはまる…のかな。
 ちなみに、先日来日したものの疲労でダウンしたと話題の歌手アヴリル・ラヴィーンは、エドマンドの現在交際中の金髪少女として登場する。
 バベッジに名前を問われて「ベアトリス・ベル」と答えるのだが、耳変質者のnancixは「ベアトリス・ダル」と聞き間違えてププッと笑いそうになった。「ベアトリス・ダル」だと、あの、作家の卵の男を愛しすぎてどんどんわが身を滅ぼし、男に絞殺される「ベティ・ブルー/愛と激情の日々」のヒロインを演じたフランス人女優である。まああの映画では、男が最も美しかった頃のジャン=ユーグ・アングラードなので、何をされても悔い無しだろうけど。
 ベアトリス・ダル本人って、プライベートでも麻薬や傷害事件で逮捕歴があり、なんと刑務所へのボランティア活動中に服役中の囚人と結婚してしまった、典型的な共依存型の女なんである。そりゃリチャード・ギアも皮肉をこめて「そりゃ素敵な名前だ」と言うわよね。案の定っていうか、アヴリル・ラヴィーンにしてはあまりな目に遭わされて……なんだけど。
 アヴリル、よく引き受けたなあ、こんな端役。同じ人気歌手でも、日本のあ○だったら、いくらアンドリュー・ラウ監督からの出演要請でも絶対に断ってるよね。
 もとはしさんもブログでおっしゃっている通り、「アヴリルちゃん、オマエはそんな役柄でホントにいいのか!」ですよ! 今後のフィルモグラフィーでずうっと「処女作は『消えた天使 The Flock』」と書かれるんだぞ! そしてうっかりDVDを手に取った世界中のファンは、キミのあの姿を見てしまうんだ!

 このエドマンドはニューメキシコ州に引っ越してきたばかり。バベッジは「ウェルカム トゥー ニューメキシコ」とか、エドマンドに皮肉な歓迎の台詞を吐く。後に、エドマンドが夜の専門学校?前で女生徒を物色し、獲物として狙いを定めている時に、覆面の大柄な男に棒でめった打ちにされるのだが、その男も「ウェルカム」と一言。

 ……バレバレですよ、バベッジおじさん…_| ̄|○
 もうちょっとうまいこと、自分だとバレないような手口考えないと…。

 このバベッジの暴走ぶり、果たして退職を目前にして、いっこうに減らない卑劣狡猾な犯罪者に思いつめての確信犯的行為なのか、彼の中の別人格がそうしていて本人格には記憶がないのか、映像では定かではない。
 「傷だらけの男たち」の阿頭は、アングリー・コントロールを本人としてはきちんと出来ている上での、計画的犯行(しかも周囲がある程度容認…コラコラ香港警察!)だったけど、バベッジの場合はどうなのだろう。

 バベッジの変容は、やがてダイナー(食堂)のテーブルの上に、自分の癖と同じように、性犯罪関連のニュースや統計結果を報じる記事に、マジックで丸をつけた朝刊を発見して動揺するまでに至る。アリスンは、これが同僚たちのイタズラではないかと推理、帰宅後に同僚に電話して聞き込みするが、ある同僚が「バベッジは6年前にある誘拐事件にのめりこみ過ぎ、トラブルを抱えて、銃を持ち歩くようになった」と彼女に告げる。その誘拐事件とは、女子大生のアビゲイルが大学から突然消え、行方不明になったまま未解決に終わったもの。エロールは今でもアビゲイルの両親のもとを尋ね、悲しむ母親を慰め「自分にはもっと何か出来たはず」という悔恨にさいなまれているのだった。

 そして映画の冒頭で示唆された通り、またしても馬術を楽しんだ直後の女子大生ハリエット・ウェルズが、乗馬ブーツを残して、消えた。
 警察の捜査は難航し、捕えられた彼女がベッドにくくりつけられ、絶叫を上げていても誰も気づかない…。
 バベッジはこのハリエット事件を知り、業務を超えて関わろうとし、ハリエットの自宅で、警察に追い返される。涙目を伏せて煙草を吸うハリエットの母親のやつれた姿をかいま見たアリソンは、その深い哀しみに胸を締め付けられる。しかし、バベッジの暴走は諌めなければならず…。

 ハリエットの乗馬ブーツが発見された踏切に、バベッジとアリスンは立ってみる。(現場100回は東西問わず鉄則ですな)。バベッジは踏み切りの向こう側に立つアリスンにハリエットを重ね合わせ、幻覚を見て眩暈を起こす。アリスンは、貨物列車の乗務員が拉致を目撃している可能性に気が付く。警察には何も話さなかった乗務員らだが、アリスンには正直に「女の子が車の中の人物に話しかけているのを見た。しかし運転席ではなく、助手席の方に話しかけていたね」と話した。
 拉致監禁犯人は、複数?
 拉致監禁犯人は、ハリエットと顔見知り?

 バベッジとアリスンは登録者の一人、ポルノカメラマンのグレンが根城にしているスタジオ?に乗り込んだ。(まるでお化け屋敷だよこれじゃ…(^_^;)) SMプレイに身もだえする刺青女に、今にもグレンが刃を向けようとしたその時…バベッジらの侵入に気づいて、グレンは愛犬と共に車で逃げ去った。グレンのラボに有ったネガフィルムを、バベッジはやはり登録者でスーパーの現像ショップで深夜働いている黒人男のもとに持ち込み、脅して現像させた。そこに写っていたのは、数枚の人体の部分と、ベッドに縛り付けられている少女。ショッピングモールで虚ろに少女たちを眺めていた別の登録者を脅し、少女を紹介させたバベッジ。生存していた少女の証言によって、次第にハリエット拉致監禁事件の犯人の姿が明らかになっていく…。

 バベッジはアリスンの自宅に同行するが、世間話どころかどうしても尋問風にしか話せない。やがて彼はソファーで寝込んでしまう。アリスンが自分の寝室に戻り、ベッドでビオラと夫の実録風小説を読みながら眠りかけると、猛犬が吠えかかってきた。逃げ惑うアリスン。バベッジが彼女を庇って犬に腕を咬まれ、重傷を負う。犬は外で待っていた、グレンのピックアップトラックに乗って逃げ去った。これは犯人からの報復か、牽制なのか。

 ハリエットから母親に「西海岸にいる」と電話があったことから、警察は単なる家出だと見て捜査を打ち切ろうとする。バベッジも、暴漢にめった打ちにされてケガを負ったエドマンドからの抗議で、退職が早まった。アリスンの自宅に、いきなりバベッジが現れ、彼女をかき口説いてハリエット捜索に協力させようとする。性犯罪者と変わらぬ常軌を逸した不法侵入と脅迫ぶりに、アリスンは恐怖に震えながらバベッジを追い返そうとする。車の中で悄然とするバベッジ。やがて、車の窓ガラスがノックされる……。
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2007年08月03日

最終上映に、間に合えば。

 とうとうこの日が来てしまいましたよ。

 大阪・梅田「傷だらけの男たち/傷城」最終上映日。
OS劇場前で

 早出だったので30分早く帰れるはずが、夕方突然忙しくなって、死に物狂いで本日の業務を終了させて最寄り駅前のベーカリーに立ち寄り、硬めのパン1個を買ってOS劇場/OS名画座に向かう。
 最終上映は午後6時25分から。座席指定券をもらい、コンビニでまた酒GET。昨夜も女子飲みで、終電ギリギリまで結構飲んだので、今日は白角水割ペットボトルだと沈没間違いない。サンミゲルビールライトを飲みたいところだけど、スーパードライスリムボトル缶で我慢する。

 おっと、さすがにOS劇場から客席130席ちょっとのOS名画座に、劇場が変わっています。それでも入りは半分以下、30人台ってところか。
 いかにも金城クン目当ての女性グループに加え、男性お一人様も結構いる。大学生や、会社帰りのビジネスマン、白髪の熟年男性も。スリムな眼鏡男性ビジネスマンに、一瞬(阿頭?)と錯覚する自分が物欲しげで、ヤダッ。

 思えば、この映画一本で、様々に楽しませてもらいましたよ。

 撮影情報をネットで追っかけつつ日々胸をときめかせ、
 今年1月には香港で鑑賞+ロケ地巡りを楽しみ、
 香港特別版DVDで、夢のような製作日誌(AV Blog)の付録で、撮影中のトニーの素顔を満喫でき、ますますトニーを好きになり、
 日本公開までにあれこれワクワクドキドキハラハラし、
 この映画で金城武クンがトニーと共演していなかったらすっ飛んで行かなかった「死神の精度」in神戸ロケで改めて映画撮影の大変さの一端を知ることができ、初めて生金城クンを目撃し、何より気のいい金城ファンの皆様と知り合え、
 ジャパンプレミアと、「赤壁」参加で半ばあきらめていたトニー・レオン緊急来日舞台挨拶で二度も東京に行け(トニー本当にありがとう)、
 広東語の勉強も少しはでき、ブログを通じて皆で情報交換できて、この映画を堪能でき…。

 うん、一回試写だけ見て星付けなきゃいけないプロ映画批評家よりも、1酔いどれ女ファンは、遥かに面白い体験ができましたさ。

 今夜だけは、ゆっくりとエンディングテーマの最後まで見て、心の中で拍手しながら、帰りました。

 ……あー、ちょっと寄り道したっけ。
 何だかさびれかけてるナムコ「浪花餃子スタジアム」で、奈良の「天上天」冷やしワンタン餃子とミニセイロ入りのフカヒレ餃子食って、また生ビール飲んで帰りました。OS劇場/OS名画座のある「シネマ横丁」からこんなに近いとは、知らなかったよ。

 しかし、映画鑑賞が続くと外食が続いて、体重とお財布の中身には悪影響…(-_-;)

 で、2006年の時間経過ですが。
 一応、日本独自のノヴェライズは、読まずに見ていきます。
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2007年08月01日

それでも残る、これだけの謎

 2枚がポストカード目当てに劇場で買った全国共通前売券、10枚がチケットショップで1枚1000円で誰かが発券したファミマの前売券。
 「傷だらけの男たち/傷城」の前売券も、あと2枚に減った。日比谷みゆき座でトニーの緊急来日舞台挨拶に加えて映画を見たときは、関東の友人にチケットを買ってもらっておいたので、前売券が使えなかったのだ。

 ええと、結局14回見るわけ? 自分。
 香港でも2回は見たし…。

 香港での第一印象は、こちら
 二回目鑑賞完了後の感傷は、こちら
 ちなみに、電話会社のサーバーらしき機械にノートパソコンを直繋ぎしデータを不法ダウンロードして、スポーツパブ「世界杯」のカウンターで封筒パンパン、阿邦に渡して報酬をもらっていた「線人」こと情報屋は、やはり撮影カメラマンのライ・イウファイ黎耀輝ではなく、脚本家のロー・イウファイ羅耀輝サンの方でしたね。谷徳昭と組んで「ゴージャス/玻璃樽」を書き、ジェームス・ユン阮世生とジェシカ・フォン方晴と一緒に共同脚本で「神經侠侶」「我要成名」を書いた若手。せっかく阿邦に強いられてビールジョッキで乾杯したのに「行け! ビールは外買(おいまい=テイクアウト)しろ!」と追っ払われてまごついていた、あの人のよさそうな=要領の悪そうな兄ちゃんです。
 ……生ビールはいくらなんでもテイクアウトできないって、阿邦。ここは突っ込みながら笑うべきところ。

 今日も大阪梅田で鑑賞。
OS劇場前で

 この映画館=OS劇場&OS名画座は9月21日にいったん閉めて、「TOHOシネマズ梅田アネックス」として10月1日からグランドオープンするらしい。
 はるか昔は名画座の方で、見たくてみたくて待ちわびていた「グラン・ブルー」も見たっけ。
 ここで「上海の伯爵夫人」も見たし、てっきり「ラスト、コーション/色、戒」もここで見るものとばかり思ってきたけど、どうなるのかなあ。映画業界、本当に再編や経営母体変更が多くてまさしく"ウォータービジネス"です。働く人も浮き草稼業だよなあ。

 さて、こんなに見ているのに、やっぱり今回も冒頭、パブでの阿頭の指輪の有無を確認するのを忘れて、阿頭の挙動に会話に引き込まれてしまう。
 一応DVDでは、指輪をしているのを確認したんだけど。
3年前の阿頭の指輪

 3年前だし……阿頭の計画は2002年にすでに開始されてるんだし…きっと電光石火の素早さでソッチャン周淑珍のハートを射止めて、婚約してたんだきっと。シンプルなプラチナのあれは、婚約指輪だきっとそうだそうに違いないアハハハ…捜査に取りかかると急いで外してしまいこんだんだ…と勝手に納得。

 それと、阿頭が阿邦に依頼して入手してもらい、妻にプレゼントしたクラシックなカメラ。「TO My Dearest wife」なんて恥ずかしくなるくらいラブラブの英語メッセージは多分、トニー本人の字だよね。でも、機種は…?
ポラロイド社カメラ

 反転してみると、こうなる。
カメラ反転
 ポラロイド社というロゴはかろうじて読めたんだけど、どんな形式のどんな機種だか、全然ワカリマセン。プロ用なのか…?
 ポラロイド社って、ポラロイドカメラ以外も作ってたのかよー!
 グラフレックスとかローライフレックスとかライカとかしかわからないよー!
 LOMOやHOLGAだったら、現代ブロガーにも人気だけどさ…。
 ポラロイド社なら「SX-70」だろーがよー!
 キャノンやペンタックスやミノルタなら、メーカーに問い合わせメールだってできるのに…。

 それと、今回はスー・チーの歌うような調子の「朋友〜」の台詞がしみじみと心に残った。
 スー・チーってどうも同性に受けが悪い様子だけど、nancixはいずみさの国際映画祭で生スー・チーを見たせいもあってか、彼女を長く支援している某S氏の熱い語りを聞いていたせいもあってか、結構彼女はいいと思ってる。
 多分、この「傷だらけの男たち」の第一稿だか、トニーがフェリックス・チョンやアラン・マックにローレンス・ブロックの酔いどれ探偵マット・スカダーシリーズについて熱く語ってた頃の設定では、フォン細鳳はもっと翳りのある女性で、阿邦の心から去らないレイチェルの影に呆れたり悲しくなったり苦しんだりで、もっともっと二人の仲はアンニュイな膠着状態、袋小路に陥っているという設定だったんじゃないかと思ってる。マット・スカダーの恋人で元高級娼婦(街娼ではなく、自分の住む豪華マンションに固定客を迎え入れるタイプ)エレインをイメージして。

 それが、酔いどれ探偵役を金城クンが演じ、彼を愛する女性をスー・チーが演じることになって、かなり設定が改変され、大人のアンニュイな男女ではなく、もっと生き生きとした、香港の若者に受け入れられるような「可愛い」関係になったのではないか。

 スー・チーの、天真爛漫な中に寂しさを垣間見せる演技、見る人がみなければ「またかのブリっ子演技」にしか見えないかもしれないけど…。
 阿頭が妻を阿邦に初めて引き合わせ、フォンがサンミゲルビール・ガールとして初登場するシーン。実は、彼女はこんな台詞を吐いているのだ。

人生には真の朋友が

 「人生有個真正朋友呀!(人生には真の友ってものがいるものじゃないの!)」…真の友ならgive&takeで助け合うものでしょ? なのにあんたはこのサンミゲルビールキャンペーンガールの格好のワタシに、ビールじゃなくてウイスキーのロックばっかり注文するのね!友達にしたってあんまりにも無神経で役立たずだわ!とばかりに阿邦をなじるわけなんだけど、
 パッパラパーでちょっと見目良いとか金持ちの男とすぐに寝て、享楽的に生きてるだけのオンナノコだったら、こんな小難しい台詞を吐くだろうか。と思ったら、この台詞は他でもない、フィリピン原産のサンミゲルビールの、香港で育った人なら誰でも知ってる有名宣伝コピー「人生有個真正朋友、的確好極!」(人生に真の親友がいれば、確かに素晴らしいことだ!)のもじりらしい! メディア・アジアの公式サイトのニュースコーナー2006年11月26日分に紹介してあった。

 小難しくはないのね…でもさっとコピー文をもじれるんだから、機転が利くオンナノコではあるわよね…。

 少なくともnancixは、あの時点ではまだ、3日前に店で沈没した阿邦がフォンの家に連れて帰られても、泥酔してしまい男性機能が役に立たなくて(こらこら)、ただ寝かせてもらってただけなんじゃないかなあ、と類推してるんだけど。

 バーで初めて会話した時に阿邦に「人生には真の朋友ってのがいるものじゃないか。ていうか、あんたと俺って、真の朋友になれるかな? なれそうじゃないか?」みたいな口説き方されて(何じゃそりゃ、俺のセフレにならないかってことかい。ワケわかんないこの飲んだくれって)と思いつつも、
 定期券入れ…じゃなくて八達通オクトパスカード入れから出された若い女の写真にちょっとジェラシー感じつつも、
 阿邦のきらめく切れ長の瞳、笑顔に惹かれるものがあって、電話番号交換して、また逢えるかなと胸ときめいて、
 だけど先輩らしきカップルと再度来店した彼は、フォンを覚えていないかのように振る舞い、あげくに偉そうに「何だその接客態度は」と言い出す…。

 そりゃキレますよねえ、普通。
 絶対、こんな飲んだくれの甲斐性無しなんて無視無視!ってなっちゃうはず。

 そうならないところが、彼女の包容力であり若さゆえのひたむきさであり、人恋しさであり。

 阿邦に"宿泊代"を出されて「次は値上げするわよ」とイヤミを言っても「朋友之間清楚點好=友人の間では(金銭のことは)はっきりさせておく方がいいよな」とかするりとかわされて、ドライな関係にしかなれないのかと寂しさを漂わせつつも(まあ、どうせ私たちはただのセフレだし)と自分に言い聞かせるような調子で呟くあの「係ォー朋友(そうよね、トモダチ)、行拉ー朋友(行こうか、トモダチ)…」の歌うような台詞、何だか忘れられないと思う。

 で、あそことかでキィィッとなって「ワタシはアンタの何なのよ! ワタシをないがしろにするのもいい加減にしてよ!」と口汚く罵り泣き喚くのが昔の香港映画の"警官の妻または彼女"。そうしないのは、あるいはフォンはやっぱり、プライド高いくせに実は甘えんぼな香港ジモティ女性ではなく、台湾もしくは大陸から香港に移住して、素敵なカレシとの出会いも夢見ながら、それまでできるだけ独力で生き抜こうとしている女性という設定なのかなあ、と勝手に妄想もしてみる。

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posted by nancix at 23:55 | Comment(4) | TrackBack(0) | 「傷城」特集
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